アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

MENU

CAPTAIN MARVEL vol2 DOWN

多くのヒーローはそれぞれ唯一無二の信念を持っているでしょう。信念があるからこそ過酷な状況に身を置き、信念に従って人々を助け続けるのです。ヒーローという物語において恐らく最も重要な要素の1つと言っても過言ではないはず。それは日本のヒーローにも、アメリカのヒーローにも当てはまることだと思います。長い歴史のあるキャラクターなだけに一言で表すのは難しいですが、キャプテン・アメリカは「アメリカンドリームの体現」、アイアンマンは「未来を目指すテストパイロット」などがあるでしょう。

今回紹介するキャプテン・マーベルも例外ではありません。1977年にヒーローデビューしたキャロル・ダンバースは、当初MS.マーベルを名乗りX-Menアベンジャーズで多くの人々を救いました。そして2000年代にはマイティ・アベンジャーズのリーダーを務めるなど、様々なストーリーで主役級の扱いを受けます。こうして着実に人気を得た彼女は、今回紹介する2012年のシリーズで遂に夢だったキャプテン・マーベルを名乗るのです。そんな彼女はどのような信念を、どのようなテーマを与えられているのでしょうか? 
f:id:ELEKINGPIT:20210816165059j:imageCAPTAIN MARVEL DOWN

※なお今回紹介するのは第2巻(#7~#12)です。第1巻(#1~#6)は小プロ様より日本語版も発売されておりますのでそちらをご参照ください。

日本語版第1巻

 

 

第2巻は#7~#8、#9~#12の二部構成となっています。そのため今回は各部を分けて簡単に紹介したいと思います。

 

〈#7~#8〉

憧れのキャプテンマーベルの名を継いだキャロル・ダンバース。彼女は先代キャプテン・マーベル、モニカ・ランボーの依頼でメキシコ湾へやってきた。数ヶ月間で多くの船が行方不明になったこの海域を調査するのだ。海底に潜む正体不明の重力源と大戦時代の戦闘機達。判明する事実から導き出されたモニカの推理とは?
f:id:ELEKINGPIT:20210817124714j:image二大キャプテンマーベルのチームアップ。何かが起こらないはずがない?

複雑な経歴やヒーロー名を何度も変えたなどキャロルとモニカには様々な共通点がありました。だからこそ通じる部分も多いのか、2人は親しげな友人関係のように見えます。しかし2人には大きな違いもあります。簡単に表すなら、「元」キャプテンマーベルと「現」キャプテンマーベルということでしょう。栄光の称号を継ぎ、更なる高みを目指そうとするキャロル。ヒーローを引退しスーパーパワーも封印したモニカ。またキャロルがキャプテンマーベルを受け継いだことに形容し難い疑念を抱いているようです。パワーだけを見れば歴代のキャプテンマーベル達にも劣らないでしょう。しかし、共通点の多い友達だからこそキャロルの不安定さ、「弱さ」も知っているはず。確かに一昔前のキャロル(2006年~2010年のMS.MARVELシリーズ)を見ると、モニカの不安も分からざるをえません。
f:id:ELEKINGPIT:20210817152600j:image海底調査中、海底に突き刺さる大戦時代の戦闘機を見てパイロットの血が騒ぐキャロルとそれを諌めるモニカ。歳の離れた姉妹のようにも。

キャロルとモニカは海底調査で奇妙なものを見つけます。人工の重力源です。近づくと海上の船すらも巻き込む程強い重力を発し、キャロルもあわやというところまで追い込みました。結果、モニカある推論を立てます。それは都市伝説でも有名なバミューダトライアングルが移動しているということです。そして対策を考えている最中、先程の騒ぎで「バミューダトライアングル」が目覚めてしまいます。
f:id:ELEKINGPIT:20210817154022j:image「丁度パンチする敵が欲しかった」と意気揚々のキャロルと、スーパーパワーを使わざるを得ない状況に落胆するモニカ。今回は2人の対比が特徴的。

 

〈#9~12〉

キャロルは最近酷い頭痛に悩まされていた。ヒーローとして戦っている最中も激しい痛みに集中できず、遂に意を決して苦手な医者の診断を受けることに。発見された恐るべき「頭痛の種」が、キャロルの生命線にドクターストップをかける。
f:id:ELEKINGPIT:20210817155257j:imageいつものようにトラブルを解決するキャプテンマーベル。その間も着実に「頭痛」は侵攻していた。

頭痛? と思われる方も多いかもしれません。確かに動くバミューダトライアングルに比べれて派手さはないでしょう。しかしキャロルにとっては深刻な問題なのです。最初は大したことないと気にしないようにしていたのですが、頭痛で戦闘に集中できず日に日に弱っているようでした。それも友人のスパイダーウーマンやファンの子どもに心配されるほど。軽口で誤魔化しはしますが、本人もこのままではマズいと病院へ行く決意をします。そこでようやく頭痛の原因が突き止められました。なんと頭の中に大きな腫瘍が出来ていたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20210817175015j:image腫瘍がどんな影響をもたらすかもわからない現状、「飛行」のドクターストップをかけられるキャロル。彼女にとって活力でもあるのに。

飛行を「最も自分が解放される瞬間」と考えるキャロルにとって、この宣告は当然受け入れられるものではありませんでした。一転して「ただの偏頭痛だ」「なんの問題もない」「一介の医者が、特殊な体を持つ私の何がわかるんだ」といつも通りパトロールを続けます。心配したキャップの忠告すら聞く耳を持ちません。これこそモニカの心配した、一昔前のキャロルの「弱さ」でしょう。ついにはキャロルの親友であるトレイシーすら彼女に一喝します。トレイシーの熱心な説得でようやくドクターストップに従うことにしたキャロルは、もう一度医者の診断と向き合うことを決意しました。しかし一方で、ヴィランが待ってくれるはずもなく……脳内の腫瘍と一抹の不安を抱えたまま、物語は#13以降に続くようです。
f:id:ELEKINGPIT:20210817224049j:image医者曰く、キャロルはヒーリングファクター(超人的な回復能力)がなければ最悪死亡していた可能性も指摘。さらに腫瘍を切除しても、記憶が失われるかもしれないと宣告する。

 

〈キャロルの強さとは?〉

キャロルの物語のテーマ(=信念を)とはなんでしょうか? 鋭い皆様はもうお分かりかもしれませんね。キャロルの物語には、常に「女性の強さ」というテーマが付随してきたと考えます。しかし女性一人の意見が女性の総意でないように、キャロルのスーパーパワーが強いからといって女性の強さを描いたことにはなりません。キャロルという個人の強さ、成長を描いた上で裏には先述のテーマを潜ませていたのです。

2006年~2010年のMS.MARVELシリーズでは、キャロルに「最善のヒーローとは何か」を模索させて個人の自立を描きました。では今回は? 私はよりヒーローとしての「強さ」に焦点を当てたように感じました。PTSDであることを告白し、自ら「弱さ」をさらけ出すモニカ。決して折れない信念で敵に立ち向かい続けるキャップ。男性からの差別にも屈さず、正しいと思えばすぐ行動に移すヘレン。皆それぞれ違う強さが描かれました。一方でキャロルは弱っていくパワーに焦るばかりで、決して強さだけを描かれたとは言えないでしょう。最善のヒーローとは、最善の選択を取り続けることではなく自分の精一杯できることをすると学んだキャロル。彼女が自分だけの強さを見つけるのは、もう少し先になりそうです。