アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON AGE

今からアメリカのヒーローコミックを読みたい! と思っても、その長すぎる歴史から諦めてしまう人も多いのではないでしょうか? そんな方のために、DCやMARVELでは何度も物語の仕切り直し(リランチ)を行っています。また数話で完結するミニシリーズやリミテッドシリーズも時々刊行されています。今回紹介するIRON AGEもその1つ。時系列としてはオズボーン率いるダークアベンジャーズが倒れ、ヒーロー復権の時代が訪れている辺り(邦訳だとフィアーイットセルフより前)ですが、そういったことを気にせず楽しめる作品となっています。
f:id:ELEKINGPIT:20210824185148j:imageIRON AGE

日本語版関連コミック(?)X-Men:ダークフェニックスサーガ

 

〈あらすじ〉

スターク社主催のクリスマスパーティ中、突如トニーが攫われた。犯人はかつてアイアンマンと戦ったドナルド・バーチ。末期ガンに犯された彼は、人生の集大成としてタイムマシンを完成させていた。過去から呼び寄せたフェニックスの力で、世界中を滅亡させようとしていたのだ。

 

〈アルファ〉

シビルウォー、ダークレイン、シージを経てようやく辿り着いたヒーロー復権の時代。未だ多くの禍根を残しているものの、アベンジャーズも復活し再び団結し始めている。トニーがドナルド・バーチに攫われたのは正にそんな時でした。最新のブリーディングエッジアーマーを無効化させた彼は、自分が末期ガンに犯されたこと、自らの人生をドン底へ追いやったトニーの恨みを語ります。バーチはかつてスターク社の社員でありながらファントムを名乗り、月面ミサイルを乗っ取ろうとした過去があったのです。結果会社をクビにされトニーを恨み続けていたと言います。自分の人生の始まり「アルファ」を生み出したトニーへ、自分の人生の終わり「オメガ」を見せつけることを宣言、そのために完成させたタイムマシンでダークフェニックスを呼び出します。彼女の怒りを最大限増幅させて地球を滅ぼそうというのです。トニーはダークフェニックスを止めるためにタイムマシンへ身を投げます。地球が滅亡したのは正にその瞬間でした。
f:id:ELEKINGPIT:20210824221210j:imageダークフェニックスのパワーに包み込まれ、消滅する地球。たった一人の怨念が一瞬で全てを奪ってしまった。

辛うじて過去へタイムスリップした事で生き残ったトニー。手元にあるのはタイムマシンの一部のみ。こうしてこの物語の「アルファ」が始まったのです。

 

〈5つの時代。6つの試練〉

トニーは滅亡した世界を救うため、地球が消滅する寸前にタイムスリップすることを決意。まずはタイムマシンを修復するためにある人物を訪れます。この時代に生きるトニー・スタークその人です。しかし当時のトニーはオバディア・ステインに会社を乗っ取られ、酒に逃げているばかりでした。そこでトニーは過去のアーマーを借りることにしました。
f:id:ELEKINGPIT:20210824224829j:image酒に酔って現実を見ようとしない過去トニー。とても頼れる状態ではない。

次にトニーはハンク・ピムの元を訪れました。熱心な説得の末何とか協力を取り付けた彼は、共にタイムマシン修復のために必要な破片の居場所を示すGPSを開発します。タイムマシンに接続し、破片を集める度に別の破片が散らばった時代へ自動でタイムスリップするのです。
f:id:ELEKINGPIT:20210824230846j:image2人で開発したタイムマシンのGPS。早速GPSが示した場所は、ウルトロンの体内だった。

 

次にトニーがタイムスリップしたのはイギリス。その時代はSHIELDの姉妹組織、STRIKEが暴走し外出禁止令と超人狩りを行っていました。外出禁止令を破った市民を問答無用で「死のキャンプ」と呼ばれる場所へ連行する横暴っぷりを目の当たりにしたイギリスのヒーロー、キャプテンブリテンは怒りを隠そうともしません。タイムスリップしたアイアンマンにも打倒STRIKEの助太刀を求めます。
f:id:ELEKINGPIT:20210825010538j:imageSTRIKE本部の拷問部屋にいた若き日のバーチ。彼の持ち物こそタイムマシンの破片だった。

 

3つ目の破片は過去のマンハッタンにありました。しかしこの時代のアイアンマンは酒に溺れたトニーの代わりにローディが務めています。無用な騒ぎを起こさないため、トニーはアイアンマンに極力ならないことにします。GPSが指し示している場所はスパイダーマンの有名な古参ヴィラン、ティンカラーの自宅です。生身で相手するにはあまりにも危険すぎる敵。彼は雇われヒーローのヒーローズフォーハイヤーへボディーガードの依頼をすることにしました。
f:id:ELEKINGPIT:20210824235424j:imageトニーの様子を怪しみながらも依頼を受けるパワーマンとアイアンフィスト。トニーが全幅の信頼を置くほどのコンビに守れないものは無い。

 

4つ目の破片を探しにタイムトラベルをしたトニー。すると突然ロボット軍団が襲い掛かりました。ロボットの正体はドゥームボット。Dr.ドゥームが操る機械兵です。ドゥームはタイムマシンのシグナルを追ってドゥームボットを待ち伏せさせ、瞬く間にトニーを監禁してしまいます。そもそもこのタイムマシンはドゥームの技術を流用したもの。トニーを拷問してでも流出した出処を知ろうとするのです。スーツと全ての破片を奪い去るドゥームを打倒するため、トニーはヒューマントーチに助けを求めます。
f:id:ELEKINGPIT:20210825010058j:imageトニーを拷問するドゥーム。その監禁場所に4つ目の破片が。

 

最後の破片は社交界で有名なヘルファイアクラブに隠されていました。トニーも世襲制でクラブに名を連ねており、時々パーティにも参加していると語られます。しかしそれはヘルファイアクラブの表の顔。一般会員には知られていない中枢組織インナーサークルは、あらゆる野望を秘めた秘密結社でありX-Menの宿敵なのです。GPSの示す場所はトニーも知らないインナーサークルの極秘ラボ。そこで音を光に変えるミュータント、ダズラーの力を借りることにしました。
f:id:ELEKINGPIT:20210825011848j:imageダズラーの力で敵を引き付けている間に破片を奪取する作戦。だが作戦通りに事が進まないのはヒーローの性?

 

こうして全ての破片を集め終わったトニー。ですが現代へ戻ろうとする彼を妨害しようとする者が現れます。ヘルファイアクラブの首魁にしてブラックキングに位置するセバンスチャン・ショウです。破片を調査した結果それがタイムマシンの一部であることを突き止めたショウはトニーの持つ他の破片を奪い、タイムマシンを我が物にしようとしていたのです。X-Menの救援で事なきを得ますが、フェニックスのパワーでトニーが未来から来た事を知ったジーンがタイムマシンを破壊してしまいます。
f:id:ELEKINGPIT:20210825014251j:image「ここにあるべきではない」たった一振りで世界を救う唯一の希望が破壊された。

 

〈オメガ〉

物語は再びトニーが拉致されたところからスタートします。戸惑うトニーの前で自身の半生を振り返るバーチ。己の恨みを込めてあの時と同じようにダークフェニックスを呼び出します。しかし同時に本来の歴史と違う出来事が。タイムマシンからヒーロー軍団が飛び出したのです。
f:id:ELEKINGPIT:20210825014810j:imageダークフェニックスと同時に突如現れたヒーロー達。彼らの共通点は1つ。

なんとトニーは破壊されたタイムマシンの代わりに新たなタイムマシンを開発していたのです。バーチもこれには驚き慌てふためきます。この時代のトニーも戸惑うばかり。しかしダークフェニックスのパワーは彼らをも圧倒していました。さらにバーチの装置でパワーが強化されているのです。再び地球を巻き込む暴走がいつ始まってもおかしくないでしょう。そして抑えきれない不死鳥のパワーの前に、ついに犠牲者が。増々加速するダークフェニックスに勝てる者はいるのでしょうか?
f:id:ELEKINGPIT:20210825015850j:imageアーマーの内側から焼かれるトニー。世界を救うために戦い続けてきた男の最期はあまりにも呆気なかった。

 

〈2人の「傲慢」〉

この作品には何度も「傲慢」という言葉が登場しました。バーチはトニーの傲慢さを非難し、トニーは自らの傲慢さを責め続けていました。しかしこの作品に登場した2つ「傲慢」は、2人の思うそれとは少し違うように思いました。1つは言うまでもなくバーチでしょう。彼はスターク社を解雇されて以来醜く肥大したエゴをトニーに、全世界に押し付けて地球そのものと心中しようとしました。自らの半生に同情を求め、「可哀想な自分」に酔い、自分が可哀想だからと必要以上に他人に犠牲を強いるのは傲慢と言えるでしょう。もう1つはトニーです。彼の性格を表す言葉によく「傲慢」が選ばれますが、トニーはただの自信過剰なナルシストではありません。彼はあらゆる出来事全てが自分の失敗だと思い込むきらいがあります。ワンダの失敗、シビルウォー、スクラルの侵攻……これら全てを自分の失敗であり自分が責任を負わなければならないと考えているのです。それこそがトニーの最も傲慢な部分ではないでしょうか? 裏を返せば「自分なら何とかできたはず」という思いが見えてくるからです。何故自分が気づかなかったのか、何故あの時○○できなかったのか……自分がベストな選択肢を取り続ければ全て解決できたはず。という考えが窺えます。バーチの傲慢はひたすら他人に苦痛を強いましたが、トニーの場合はただ自分のみ。他人に犠牲を強いるのか、自分に犠牲を強いるのか。このたった1つの違いが2人の「アルファ」であり2人の「オメガ」に繋がったのではないでしょうか。