アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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AVENGERS/INVADERSその2

大戦時代のヒーローチーム、インベーダーズが現代へタイムスリップするという衝撃の展開が続いた前回。シビルウォーの片翼を担ったトニーとアベンジャーズを知らないキャップの邂逅をはじめ、分裂したアベンジャーズと固い絆で結ばれたインベーダーズの対比など様々な注目ポイントがありました。しかしインベーダーズを過去へ帰すには分裂したアベンジャーズの結束が必須。失われた地上最強のチームは復活するのか? 後半も目が離せません。

※前編はこちら
f:id:ELEKINGPIT:20210925191858j:imageAVENGERS/INVADERS

 

〈あらすじ〉

謎の霧に包まれて現代へタイムスリップしたインベーダーズは、保護しようと動くマイティ・アベンジャーズナチスと勘違いし攻撃してしまう。さらにマイティ・アベンジャーズを倒すためにシークレット・アベンジャーズが行動を開始、トロ、初代ヒューマントーチ、バッキーを解放する。更にLMDの暴走でSHIELDのヘリキャリアが占領されてしまう。ドクターストレンジが事件の原因をコズミックキューブと特定するも、インベーダーズを過去へ帰すには2つのアベンジャーズが結束しなければならないのだ。

 

〈シークレットインベーション〉

ヒューマントーチの号令で一斉に反乱したLMD(SHIELDの囮ロボ)は、瞬く間にヘリキャリアを占領してSHIELD長官のトニーを拘束していました。トニーと連絡が取れないならばヘリキャリアを奪還できるのはマイティ・アベンジャーズしかいません。解放されたインベーダーズの捜索と連絡の取れないトニーの安否確認、ヘリキャリアの奪還全てを同時に行う必要があります。チームリーダーのMS.マーベル(キャロル・ダンバース)の迅速で的確な指揮が冴え渡ります。縮小能力を持つワスプ、スパイ経験の豊富なスパイダーウーマン、ブラックウィドウによって助けられたトニーは早速LMDの解析を始めました。たとえLMDが反抗心を持っていたとしても、同時多発的に反乱が起きるはずない。どこからかシグナルが送られているはず。トニーの推理は最悪の形で当たっていました。
f:id:ELEKINGPIT:20210925194343j:imageLMDの中に紛れ込んでいたウルトロン。一瞬の隙を付きアベンジャーズ全滅を目論んでいた。

 

一方ドクターストレンジの導きでコズミックキューブの在処へ向かうシークレットアベンジャーズは、タールに満たされた地下道を発見します。そこに潜んでいたのはデスパイア。ダークディメンションの住人で、人々の後悔や悲しみという感情を糧に生きるヴィランです。もしやコズミックキューブが人々の思念に作用されたのはデスパイアの仕業では? そう考える間もなくデスパイアはタールを使ってシークレットアベンジャーズを拘束、悲しみの記憶を引き出し精神攻撃を仕掛けます。
f:id:ELEKINGPIT:20210925234729j:image現れたのは闇の住人、デスパイア。その手元にはコズミックキューブが。

 

耳の聞こえないエコーはデスパイアの攻撃がきかず、シークレットアベンジャーズは奇襲でコズミックキューブの奪還に成功しました。そしてインベーダーズ全員を集結させるためにヘリキャリアへ向います。そしてウルトロンと戦うマイティ・アベンジャーズと共闘する道を選びました。こうしてシビルウォー集結から一年後、アベンジャーズは再び1つのチームになることが出来たのです(一時的ではありますが)。共通の敵が現れなければ団結の道がなかったのは寂しさを覚えますが、こうしてまた結束する姿が見れるのはファンとして色々な感情が込み上げてくるものです。ウルトロンをも圧倒したアベンジャーズは、ついに手にしたコズミックキューブでインベーダーズを過去へ帰すことになります。
f:id:ELEKINGPIT:20210926000806j:image「あの霧」で過去へタイムスリップしようとするインベーダーズ。しかし全てが上手くいくはずなく……

 

〈もしも過去を変えれるなら〉

実は現代へタイムスリップしたのはインベーダーズだけではありませんでした。インベーダーズが霧に包まれる瞬間、たまたま近くにいたポール・アンセムという兵士も巻き込まれていたのです。ポールは直前に目の前で2人の友人を失っており、コズミックキューブが願いを具現化するアイテムと知ってからその奪取を企てていました。そしてインベーダーズが過去へタイムスリップする瞬間、ポールがコズミックキューブに触れたことで暴走してしまいます。この世界……時代は1943年以降全てが崩壊し、ストレンジが命懸けで張ったバリアの内部にいる人間以外全員消滅してしまったのです。ポールはすぐに2人の友人を救いますが、コズミックキューブはある人物に奪われてしまいます。
f:id:ELEKINGPIT:20210926001918j:imageポールを銃撃してコズミックキューブを奪ったのは、1943年のレッドスカル。世界の歴史が真っ赤な地獄へ染まっていく。

 

アベンジャーズ達が気がついた時、1943年のニューヨークが目の前に広がっていました。しかしその光景はインベーダーズの知るものとは少し違っているようです。黒煙に覆われた空、町中に掲げられたハーケンクロイツ、そびえ立つレッドスカルの彫像。ここはナチスアメリカ。レッドスカルが総統としてファシストを率い、連合国が敗北した世界なのです。キャップはすぐさまベルリンへ向かいコズミックキューブを取り返そうと提案します。そのためにはナチスの兵士と戦う必要がありますが、もし現代のヒーローの姿やテクノロジーを見られれば未来へどのような影響があるか分かりません。トニーはアベンジャーズをゴールデンエイジのヒーローに変装させました。
f:id:ELEKINGPIT:20210926002825j:imageニューヨークを占領するナチスと戦うヒーロー達。その姿は大戦当時活躍ひた伝説のヒーローチーム、オールウィナーズを彷彿とさせる。

 

アトランティス王国の協力で海路からイタリアへ、そこから陸路でドイツへ向かうアベンジャーズとインベーダーズは、道中で当時のブラックパンサーを仲間に加えます。イタリアでポールを救出し、ついにベルリンへ踏み込む一行。しかしその情報を得たレッドスカルは不気味な笑みを浮かべます。コズミックキューブを手に入れ無限のパワーを手に入れたレッドスカル。そんな赤い悪魔はある趣味を嗜むようになっていました。ヒーローの死体をコレクションすることです。
f:id:ELEKINGPIT:20210926003602j:image誇らしげにショーウィンドウを見つめるレッドスカル。その中にはゴールデンエイジのヒーロー達が。

 

ナチスの精鋭を倒しようやくレッドスカルに辿り着いた一行ですが、やはりコズミックキューブを持つレッドスカルはアベンジャーズもインベーダーズも敵いません。ワスプやヒューマントーチが死に、コズミックキューブの奪い合いはレッドスカルの勝利が目前になりました。しかしキューブは決してレッドスカルを選ぼうとしません。コズミックキューブは使用者の願いを具現化すると同時に、ちょっとした感情のようなものが芽生えたのです。キューブが最後に選んだのは、アベンジャーズでもインベーダーズでもありませんでした。同行していたポールです。ポールはこの旅で友人を蘇らせたという罪悪感に苛まれていました。自分がそんなことを企まなけらば目の前の悲劇は有り得なかったはず。ならばポールのすべきことは? 答えはたった1つです。
f:id:ELEKINGPIT:20210926004801j:imageポールの願いで復活したゴールデンエイジのヒーロー達と元に戻ろうとする全て。その決断に決して後悔はない。

 

〈死の受容〉

アベンジャーズとインベーダーズの共闘という夢のような物語で幕を閉じた本作。同時に私はトニーがキャップの死を受け入れた物語でもあると感じました。恐らくその死への罪悪感はずっと抱え続けるでしょうが、少なくとも1つの踏ん切りがついたように思えます。トニーは劇中で何度もシビルウォーを彷彿とさせるセリフを言っていました。1年経った現在でも頭に焼き付いて離れないのでしょう。しかしその言葉に弱々しさは感じられません。トニーは「もう一度同じ出来事が起こってもう一度同じことをやるだろう」と言いました。決して後悔はしていないのです。

キャップの葬式を描いたフォールンサン・デス・オブ・キャプテンアメリカでは心理学の「死の受容プロセス」にたとえた物語の構成になっていました。すなわち否定、焦燥、取引、落胆、受容の五段階です。作中様々なキャラが受容まで段階を進めるのですが、唯一トニーだけ落胆のまま終わってしまいました。以来トニーは「取引」と「落胆」の間を反復横跳びしているように見えました。それは今作も同じ。戦闘中キャップと対面して何も出来なくなり、キャップと何度も面談して説得するなど取引と落胆の間にずっと立っていました。

しかしアベンジャーズが過去へタイムスリップして以来、トニーにそのような行動は見られなくなります。トニーが受容の段階へ進んだきっかけはなんでしょうか? 私はもう一度キャップと共闘出来たことだと考えました。前回、トニーはできる限りキャップを別人として扱おうとしていると言う話をさせて頂きました。しかし時代が変わっても外見も性格も変わりません。その度に死んだキャップを思い出させられたことでしょう。同時にその違いも実感したに違いありません。共に戦えば戦うほど、キャップが遠い存在のように感じていたのかも知れません。悲しみを拭うことはなくとも、トニーはフォールンサン・デス・オブ・キャプテンアメリカの時と違いキャプテンアメリカ像を見上げることが出来るのです。
f:id:ELEKINGPIT:20210926014525j:image「もし君の時代までキャップが生きていたなら、きっといい友人になったに違いないよ!」バッキーの称賛にトニーは目を合わせるばかりだった。