アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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YOUNG AVENGERS vol2 FAMILY MATTERS

カーンの撃退という本家でも類を見ない大戦果を上げた前回。チームの発起人であるアイアンラッドの犠牲を胸に、新たなコスチュームでチームを再結成しました。そんなヤングアベンジャーズを待ち受ける次なる試練とは? 時系列としては、アベンジャーズがニューアベンジャーズとして再編された時期にあたります。本家アベンジャーズが再結成された今、ヤングアベンジャーズの進むべき道は? 今回も見どころが盛りだくさんです。
f:id:ELEKINGPIT:20211002023007j:imageYOUNG AVENGERS FAMILY MATTERS

 

〈あらすじ〉

アイアンラッドの犠牲で征服者カーンを倒したヤングアベンジャーズ。キャップにヒーロー活動を辞めるよう諭されるが、コスチュームを一新して戦い続けていた。しかし再びその活躍が新聞に掲載され、ヤングアベンジャーズの存在がキャップにバレてしまう。

 

〈ヒーローの資格〉

キャップに解散を諭されていたヤングアベンジャーズは、それでもアイアンラッドの犠牲を胸に戦い続けていました。アスガルディアンはヒーロー名をウィッカンに変え、コスチュームも一新します。それでも未来ある若者に危険な道のりを歩んで欲しくないというキャップ。新聞にヤングアベンジャーズの活躍が一面で掲載されると、親へ連絡をとって説得するように伝えます。一方ヤングアベンジャーズはそうとは知らずにいつも通り集合していました。しかし中々パトリオットが現れません。真面目なパトリオットが遅刻するという理由は1つしかないでしょう。ウィッカンが位置を探り当てると、麻薬の売人と争っていることが分かりました。それもただのゴロツキではありません。パトリオットが戦っているのは、巨大な体で超パワーを奮うMr.ハイドでした。
f:id:ELEKINGPIT:20211002123656j:imageパトリオットに立ちはだかる巨躯の悪人。1人で勝てる相手ではない。

 

ヤングアベンジャーズが直ぐに駆け付けますが、相手は経験豊富な歴戦のヴィラン。パワーは本家に劣らずとも、経験不足が目立つ若者達は苦戦を強いられます。ついには集まった警察やマスコミの前でケイトが人質に取られてしまいました。奇策でなんとかくらいつきますが、やはり超人的なパワーには敵いません。絶体絶命のピンチです。しかしその瞬間、Mr.ハイドの体が大きく吹き飛びました。敵と同程度の超パワー。新たな味方の救援かと思われましたが、姿を現したのは異常なまでに体が大きくなったパトリオットその人でした。
f:id:ELEKINGPIT:20211002131121j:image筋肉が異常に膨れ上がったパトリオット。Mr.ハイドを倒せはしたが、普通でないのは誰の目にも明らかだろう。

 

Mr.ハイドを倒したと同時に気絶したパトリオットが目覚めたのは、アベンジャーズタワーの一室でした。パトリオットはキャップに問われます。「本当のことを話すんだ」と。キャップはパトリオットの祖母を訪ねており、そこで真実を知っていました。パトリオットはかつて闇に葬られた「もう1人のキャプテン・アメリカ」の孫で、自身もその影響から超人的なパワーを身につけていると説明していました。しかし「もう1人のキャップ」の孫であること以外は全て嘘だったのです。ミュータントグロウホルモン(MGH)と呼ばれる危険な薬で一時的なパワーを得ていたに過ぎなかったのです。キャプテン・アメリカに嘘をついた。超人的なパワーもない。もう自分にヒーローの資格はない。パトリオットは涙を零しながらその場を去ります。
f:id:ELEKINGPIT:20211002133829j:image1人アベンジャーズタワーから去るパトリオット。その背中を黙って見つめることしか皆にはできなかった。

 

チームのリーダーだったパトリオットが辞めて以来、ヤングアベンジャーズは実質解散状態になってしまいました。ヤングアベンジャーズパトリオットがいなければ始まらない。パトリオットが率いてこそのヤングアベンジャーズなんだ。誰もがそう考え、数日後にはいつの間にかいつもの集合場所に集まっていました。パトリオットも含めて。もう誰もかつての普通の生活には戻れないのです。再びパトリオットをチームに勧誘しようとしていたその時でした。突如ハルクリングがスーパースクラルに攫われたのは。
f:id:ELEKINGPIT:20211002135506j:image突然現れたスーパースクラル。ハルクリングを狙う目的とは?

 

すかさずケイトはパトリオットの指示を仰ぎますが、応える様子はありません。かつては初代キャプテンマーベルなどと激闘を繰り広げた強敵。ファンタスティック・フォー全員分の力を持つスーパースクラルに、ヤングアベンジャーズはあっという間に倒されてしまいます。誘拐されたハルクリングを助けるため、敗走したヤングアベンジャーズはその足でアベンジャーズへ助けを求めます。しかしアベンジャーズは別の任務で連絡を取るのも難しい様子。そこでアイアンラッドの人格をインストールして復活したヴィジョンを頼ります。アイアンラッドがヤングアベンジャーズのメンバーを集めたのと同じ方法で新たな仲間を探そうとしたのです。ヴィジョンが見つけ出したのは、ニュージャージーに住むトーマス・シェパード。身体を超スピードで動かすことの出来る能力者です。
f:id:ELEKINGPIT:20211002141426j:image爆音と共に現れたトーマス・シェパード。その姿はまるでウィッカンと瓜二つ。

 

一方誘拐されたハルクリングはスーパースクラルからある秘密を告げられます。ハルクリングは身体の形を自在に変えられるミュータントだと思い込んでいました。しかしスーパースクラルはいいます。その能力はスクラル由来のものだと。ハルクリングの本当の母親はかつてスクラル帝国皇帝を務めたドレッグ7世の娘で、王位継承権があるのだと。当時のスクラル帝国は惑星そのものを喰らうギャラクタスに襲撃され、壊滅状態となっていました。そのためスーパースクラルはハルクリングを新たに皇帝に据え、帝国の立て直しを図ったのです。救出しに来たヤングアベンジャーズが奇策でスーパースクラルへ深手を負わせますが、ハルクリングはまだ気になることがある様子。もし自分の母がスクラルで自分の本当の名がドレッグ8世なら、自分の本当の父親は? スーパースクラルが応える間もなく、新たな敵が現れます。
f:id:ELEKINGPIT:20211002142912j:imageスーパースクラルを撃ったのはクリー帝国軍の兵士。「我らの同胞を迎えに来た」の意味するところとは?

 

クリー軍の兵士は言います。ハルクリングの母は確かにスクラル王女。一方で父はかつてクリー軍に所属していた最強の兵士、マー=ベルだと。かつて長年戦争状態にあったクリーとスクラル。クリー/スクラルウォーのように他の星を巻き込む大規模な戦争を繰り広げたほどです。しかし平和を願う王女はドレッグ7世の独裁体制を嫌い離反、同じくクリー帝国軍から抜け出したマー=ベルへ助けを求めたのです。クリーとスクラル、両帝国の架け橋となるために。
f:id:ELEKINGPIT:20211002184527j:image明かされた衝撃の秘密。ハルクリングはスクラル人とクリー人の間に生まれた、2人の願いを叶えうる存在だった。

 

今やこの世にいない2人の願いを一心に背負ったハルクリング。しかし両帝国はそれを払拭するかのようにハルクリングを巡って争いを始めてしまいます。もはやここにいる誰もがクリー/スクラルウォーの再来を予感します。そこへ現れたのはアベンジャーズ。この戦争を止めるため、アベンジャーズとヤングアベンジャーズは遂に共同戦線を張ったのです。途中パトリオットが攻撃され重傷を負いますが、アベンジャーズはもう決して若者たちへ「危ないから下がれ」とは言いませんでした。これまで少ないながら数々の勇気と度胸を見せてきたヤングアベンジャーズを、1人前のヒーローだと認めたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20211002185822j:image遂に実現した2大チームの共闘。ここにいる全員が最強のヒーローなのだ。

 

戦いも終わり再び平和が訪れた最中、ウィッカンはある確信を抱いていました。かつてのアベンジャーズが解散したきっかけはスカーレット・ウィッチの精神崩壊。そのきっかけの1つに、自身の現実改変能力で産んだ双子がありました。その能力を恐れた悪魔王メフィストが双子から魂を奪い、全く別々の人間にしたのです。本来生まれも育ちも違うウィッカンとトーマス。しかしこの2人こそスカーレット・ウィッチの失われた双子だったのでは? トーマスはそんなわけが無いと一笑しますが、その証拠に2人の能力はスカーレット・ウィッチとその弟、クイックシルバーの能力と瓜二つではありませんか。「まるで双子のよう」な容姿にも説明が付きます。またトーマスもウィッカンと通じ合うものがあったのか、自ら「スピード」というヒーロー名を名付け、ヤングアベンジャーズに参加したのです。ウィッカンの推理が正しいかはまだ分かりません。しかし1つだけ確かなことは、このチームの絆がより一層深まったことでしょう。
f:id:ELEKINGPIT:20211002190833j:image新生ヤングアベンジャーズアッセンブル! もう誰も半人前とは言わない、固い絆に結ばれたチームだ。

 

〈親殺しのヒーロー〉

物語には時々「親殺し」がテーマになることがあります。親殺しとは、単に親を殺すことではありません。親(指導者)を何かしらで超え、あらゆる意味で自立することです。例えばスターウォーズのルークはダースベイダーを倒し、ライトサイドへ帰還させました。ドラゴンボールの悟空は師である亀仙人が命懸けでも倒せなかったピッコロ大魔王を自らの力で倒しました。このように「親殺し」を用いた作品は枚挙に遑がありません。このヤングアベンジャーズという作品もその1つでしょう。

子どもにとって親とは絶対的な存在です。発足したばかりのヤングアベンジャーズは親にバレるから、という理由で放課後の短時間や深夜に活動していました。親がこの活動を許すはずがないと考えていたのです。そしてアベンジャーズ、特にキャップからも隠れて活動するようになっていました。理由は同様です。しかし一方で、絶対的な「親」には反抗的な態度が目立ちます。精神的な自立の手がかりを探っている状態なのです。人助けを自立への1歩として見ている節があり、純粋に人を助けたいという気持ちからヒーロー活動をしている訳では無いことが分かります。しかしそれでは永遠にヒーローにはなれないでしょう。人助けが自立への材料という意味になってしまっているのです。

しかし今回、パトリオットやハルクリングを助けたいという純粋な気持ちがヤングアベンジャーズを動かしていました。そこに理由はありません。親やアベンジャーズを見返すつもりも、また反抗心からの行動でもありません。それこそがヒーローへの1歩でしょう。ヒーローは人助けに理由や意味を見出さない存在と私は考えています。だからこそ反抗心から人助けをするヤングアベンジャーズをキャップは認めず、ハルクリングを助けようとした時にようやく認めたのだと。

そしてヤングアベンジャーズにはもう1つ仕事が残っています。それが親殺しです。認めてもらう存在では超えたとは言えないでしょう。特にハルクリングはクリーとスクラル両帝国の架け橋となる、という使命があります。共に並び立つ存在から本家をも超える最高のチームへヤングアベンジャーズが突き進み続ける姿を、私もファンとして応援しようと思います。