アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

X-MEN PHOENIX ENDSONG【2021年10月の私的ベストアメコミ】

今回紹介するのは、2005年に刊行されたX-Menのミニシリーズです。X-Menに登場して以来、マーベルユニバース全体に何度も波乱と混乱を巻き起こしたフェニックス。それは今回のストーリーでも変わらず。名作ダークフェニックスサーガへのオマージュも散りばめられ、ページをめくる度にハラハラとさせられる激動の展開には目が離せません。
f:id:ELEKINGPIT:20211019175140j:imageX-MEN PHOENIX ENDSONG

 

日本語版関連コミック

 

〈あらすじ〉

ジーン・グレイが死んでからしばらくの時が過ぎた。スコット(サイクロップス)は亡き妻を慕いながらもエマとの交際を始め、X-Menもそれぞれの道を歩んでいた。一方新たな依代を求めてフェニックスの断片が地球へ接近。埋葬されていたジーンの亡骸に憑依し、ダークフェニックスが復活してしまった。

 

〈不死鳥の復活〉

死と再生の象徴であるフェニックス。墓を掘り起こしてジーンを復活させるなどその力は未だ健在でした。その衝撃はスコットの夢という形で現れます。それはテレパスであるエマも感知。悪い夢であってくれ。そう願いながらジーンの墓を調べると、無残にも掘り返された跡だけが残っていました。X-Menはすぐにジーンの遺体とフェニックスの捜索を開始。フェニックスに遭遇していたウルヴァリンは「本物のジーンだ」と主張しますが、スコットは「あくまでフェニックスのパワーを得ただけの遺骸に過ぎない」とその排除を決意します。かつて宇宙で50億人以上の命を奪った悪魔を野放しにするわけにはいかないのです。
f:id:ELEKINGPIT:20211019183852j:image死体に憑依し復活するフェニックス。この冒涜を許しておけるはずがない。

 

こうして始まったフェニックスの捜索。ところがフェニックスを狙うのはX-Menだけではありませんでした。1つはシーアーです。かつて領土の星がダークフェニックスによって破壊され、50億人以上の臣民を殺されたシーアー。その命を持って償わせようとフェニックスの行方をずっと追っていました。もう1つはキッド・オメガ。フェニックスならば死んだ恋人ソフィーを蘇らせれるに違いないと信じてX-Menを妨害してでもその力を手中に収めようとします。3者入り乱れる複雑な勢力図ですが、全員の必死の捜索により北の寒山でついにフェニックスを追い詰めました。未だ完全復活出来ていないフェニックスも実力行使へ。スコットのオプティックブラストを糧に更なるパワーアップを目論みます。キッド・オメガの助力もあり、全身でオプティックブラストを浴びるフェニックス。完全復活まで秒読みとなってしまいました。
f:id:ELEKINGPIT:20211019222707j:image無理やりバイザーを外し、オプティックブラストを浴びようとするフェニックス。災厄が再び現実となってしまうのか?

 

このままではフェニックスがフルパワーになってしまう。エマは決意します。自らがフェニックスの依代となり、その精神力で抑え込もうと画策したのです。狙い通り誘いを受けたフェニックスはエマに憑依、スコットと共にハンク(ビースト)の開発した封印装置へ身を投げます。装置の中で情熱的な愛を確かめ合う2人はまるで直後の展開を予測しているようでした。スコットのバイザーを外し、瞳を見つめるエマ。しかし世界最高のテレパスでもフェニックスを抑えることは不可能でした。エマの精神を完全に乗っ取り、なおパワーアップしたフェニックスが姿を現します。ならば今度はフェニックスから離れたジーンの出番。最早ジーンとフェニックスは切っても切れない関係にあると言い、今度は自分の意志でフェニックスを自身に憑依させます。この悪魔から皆を守るために。エマは自身のテレパスを最大限使って、世界中のX-Menの思念でジーンの名を呼びかけます。この悪魔にジーンを乗っ取らせないために。
f:id:ELEKINGPIT:20211019233958j:image手を伸ばし、羽を広げ、真っ直ぐ見つめながらジーンの名を呼びかけるX-Menジーンの献身を無駄にはさせない。

 

〈求めるということ〉

今作で印象に残ったのは、スコットを巡るジーンとエマの姿でしょう。2人共心の底からスコットを愛しているからこそ、バイザーを外してその瞳を一心に見つめようとしていました。エマ、フェニックス、ジーンの3人それぞれが見たスコットの瞳。同時にそれを見るということはスコットの本当の姿を知るということでもあります。今作では4回あったバイザーを外すシーン。それぞれどんな違いがあったのかを見ていきましょう。

最初にそのシーンが見られたのは、スコットがジーンの悪夢を見て飛び起きた場面です。世界最高のテレパスであるエマも当然スコットがどんな夢を見たのか知っており、亡き妻を心底愛している事実に胸が淀んだことでしょう。スコットがジーンを忘れることは出来ない。それは分かる。しかし今は自分だけを見ていて欲しい。エマはスコットのバイザーを外します。

次のシーンはフェニックスがスコットのオプティックブラストを吸収しようとするシーン。スコットを拘束し、バイザーを外し、ブラストを糧にしようとしていました。ジーンと同じ姿、同じ声でスコットを誘惑しますが、スコットの瞳に関心は抱きません。

3つめのシーンはハンクの開発した封印装置へスコットと共に身を投げたエマの場面です。フェニックスが憑依した途端エマは察したのでしょう。自分の力では抑え込むことが出来ない、時期にフェニックスに乗っ取られて死ぬかもしれない。そう覚悟したエマはスコットとの愛を確かめながらバイザーを外します。赤い閃光に包まれながら。

そして最後のシーン。全てが終わり、一時復活したジーンがスコットの瞳を見つめながら昇天する場面です。自分はここにいるべき人間ではない。それでも。スコットの激励の言葉を胸に、ジーンは最後に一言、「あなたの瞳が見たい」と願いました。バイザーが外れた瞬間から赤い閃光に染まる世界。しかしジーンの目は真っ直ぐスコットを見つめていました。

それぞれには一体どんな意味があるのでしょうか? そもそも、スコットにとってバイザーを外すとは本当の姿をさらけ出すということ。恐れを知らない司令官ではなく、X-Menのリーダーでもなく、ただ1人のスコット・サマーズという姿を見せる行為でしょう。それは同時に、スコット・サマーズという個人を理解してもらうことに繋がります。ところが前半の2つのシーンはそれに注目しようとしていたとは思えません。フェニックスは言わずもがな、エマもジーンを忘れられないスコットへ、かつてのジーンと同じ行為で上書きしようとしました。どちらもスコットの瞳を見ることが目的ではありません。

大して後半の2つのシーンは、スコットの瞳を見ることが目的でした。どちらもスコットの瞳を見つめ、互いの愛を確かめるためでした。死を覚悟したエマに応えるようにスコットもまた見つめ返し、ジーンの最後の願いに応えるためにその目を見つめました。互いの気持ちを言外で理解し合ったのです。

ミュータント。それは時に世界中から恐れられ、憎まれ、敵対視されてきた存在です。しかしもっと良く見つめてみると、異形の姿の中には我々と何も変わらない心があることに気づくでしょう。被差別種族であるミュータントは他人と理解し合う難しさも我々以上に知っているかもしれません。しかしその第1歩は、お互いの瞳を見つめ合うことにあるのかもしれません。
f:id:ELEKINGPIT:20211020013725j:image昇天する直前、見つめ合うジーンとスコット。真っ赤な視界で互いの今をもう一度受け入れ合う。