アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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THOR GOD OF THUNDER vol2 GODBOMB

前回から続く屠殺者ゴァとの戦いもついに決着へ。あらゆる神をも上回るゴァにソーはどうやって勝つのでしょうか? そしてゴァの目的とは? 圧倒的なスケールに目眩がしそうですが、ヒーローとして、21世紀の伝説ばかりとしてソーが刻んだ新たな神話に惹き込まれるばかりです。
f:id:ELEKINGPIT:20211023220339j:imageTHOR GOD OF THUNDER vol2 GODBOMB

elekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

はるか昔、自らを破り拷問した屠殺者ゴァが未だ神殺しを続けていたことを知ったソー。ゴァへのアベンジを誓い時間を超えて行方を追うが、またしても逃げられてしまった。しかしゴァへの復讐を誓う者は1人ではない。全能の父となったキングソーの力を借り、ソーの追撃は続く。

 

〈誰がために神はいる〉

時代は遡り893年。ムジョルニアの代わりに戦斧ヤンビョンを操るソーはある悪夢に悩まされていました。先刻拷問され、脱出の際に殺したはずのゴァです。神を痛めつけ、己のプライドをへし折ったゴァへ若き日のソーは恐れの感情を抱いていました。しかしゴァは死んだはず。もう終わったことなのだ。まるで自分に言い聞かせるように、これが夢であることを祈るように恋人を抱擁します。ところがこの悪夢は最悪の形で現実のものとなりました。突如現れた黒き闇の力。ゴァが纏いし武器がヤングソーを襲い掛かります。ヤンビョンではまるで歯が立たず、あっという間に捕えられてしまいました。満身創痍のヤングソーが連れてこられたのはクロナックス。時を司る神都です。どうやらタイムスリップを行う様子。ヤングソーが目を覚ますと、そこは何千年もの未来の世界でした。辺りを見渡すと、丘の上では磔にされた神々の姿が。さらに下では奴隷として働かされ、鞭打たれる神々。憤りを感じるヤングソーでしたが自身も磔にされているため身動きが取れません。しかしそれよりも目を引く光景がありました。空を覆うように居座る巨大な球体です。
f:id:ELEKINGPIT:20211024005918j:image磔のヤングソーが見た巨大な球体。天体や衛生でないことはわかるが、その正体は検討もつかない。

 

数日後、ヤングソーはその世界で鞭打たれ奴隷のように働かされていました。同じく働いていた神曰く、あの球体はゴッドボム。神を殺すためにゴァ自らが考案した爆弾です。900年間あらゆる時代のあらゆる世界の神を攫い、ついに完成間近まで迎えたゴァ悲願の産物でした。もちろんここで働かされている神々もゴッドボムのことは知っていますが、逆らえば自分はもちろん丘の上で磔にされている者達まで殺されてしまいます。やるなら一瞬の隙をついて、ここにいる全員で。しかもゴッドボム完成までに反乱を起こす必要があるのです。唯一の武器は、ゴッドボム製造の際こっそり盗み出していた爆弾の一部のみ。効果的に使えば反撃の狼煙にはなりそうですが、これではゴッドボムにもゴァにも大ダメージを期待できないでしょう。神々は反乱のタイミングを慎重に選んでいました。しかし奴隷として扱われ、畜生同然に働かされるのは神々のあるべき姿ではない。ましてや神々への侮辱を許しておける道理があろうか。ヤングソーは単身戦うことを決意します。
f:id:ELEKINGPIT:20211024012043j:imageこの状況、雷神ならば戦う以外選択肢はない。だが勇気と蛮勇は別物だ。

 

一方現代のソーとキングソーはゴァの行方を追い、太陽風で進む帆船でゴァの世界まで進んでいました。その時嵐の到来を感じます。どうやらゴァに捕えられたヤングソーが戦いを始めた様子。ゴッドボムの破片を爆破させ宇宙まで飛び出たヤングソーに装備を与え、いざゴァとの決戦へ備えます。ところが帆船もゴァの獣達によって既にボロボロ。3人は飛び降りてゴァへ襲い掛かりました。さすがのゴァも無敵の雷神3人は同時に相手できないよう。そこでゴァはさらなるパワーアップを図ります。神々の血を自らの装着する鎧へ捧げるのです。一体どれほどの神々を犠牲にしたのでしょうか? さっきの何倍ものパワーでソー達を地面へ叩き落とします。
f:id:ELEKINGPIT:20211024013559j:image最大の障害、ソーを倒したゴァ。残りの神々が反旗を翻す前にゴッドボムを起動するよう伝える。

 

そもそも何故ゴァはこれほど神殺しにこだわるのでしょうか? かつてゴァは神への信心深い部族で生まれました。常に祈りの言葉を口にし、神のために働き続ける部族です。幼き日のゴァも親からそうして育てられました。しかし父は熱病で死に、母は獰猛な動物に襲われてしまいます。それから数十年後、授かったパートナーはゴァの子を妊娠していましたが、不慮の事故で死亡してしまいます。親しき人々は天寿を迎える前に皆死んだ。もし本当に神が見ているなら、もし本当に神が存在するならば、何故我々を見捨てた? さらに神への憎悪を募らせていたその時、黄金の鎧を纏った何者かが付近に墜落します。ゴァはすぐに確信しました。これが神だと。どうやらそばで倒れている漆黒の鎧を纏うものと戦っていたのでしょう。恐る恐る話しかけますが、ゴァはある一言に怒りを爆発させます。瀕死の神がゴァへ命乞いをしたのです。ゴァにとって許し難い言葉でした。あれだけ多くの人々が祈りを捧げながら何一つ救っていないくせに、自分たちだけ都合よく助かろうとする魂胆。ゴァは怒りのあまり手近な石で神を殺していました。これが後に屠殺者ゴァと呼ばれる者が初めて神を殺した瞬間です。以来黒い鎧をまとい神を殺し続けるようになります。こうして屠殺者ゴァは誕生したのです。
f:id:ELEKINGPIT:20211024020441j:image初めて神を殺したゴァ。それは孤独に苛まれた人間の復讐だった。

 

そして現在。カウントダウンが始まったゴッドボムを止める手段はないとゴァは嘲笑います。ゴッドボムで死ぬのはこの場にいる神だけではありません。その余波はあらゆる時代へ、あらゆる世界へ及び全ての神を殺すのです。ならば余計諦めるわけにはいきません。ヒーローならば、神ならば。ヤングソーは地上でブラックバーサーカーと戦い、キングソーはゴァの動きを抑え、アベンジャーズのソーへ自らのムジョルニアを預けます。全てはアベンジャーズのソーに託されました。瞬間、ゴッドボムのカウントダウンが0になります。眩い閃光が煌めき、神々は逃げ惑いながら全てが終わったことを悟りました。しかしソー達はまだ諦めません。ソーはゴッドボムの基幹をなす黒き鎧の力をムジョルニアで吸収、ゴッドボムを無効化しようとしました。神々は祈ります。ソーよ、願わくば我らを脅かす爆弾を止め、憎きゴァとの争いに終止符を打ちたまえ。神の中の神として。
f:id:ELEKINGPIT:20211024022527j:image神々の願いを背に、全てを引替えに爆弾を無効化しようとするソー。世界はソーに託された。

 

〈ソーとゴァ〉

劇中、2人にはある共通の神仏観が見られました。2人とも神という存在に疑問を持っていたのです。ヤングソーとキングソーはどちらも自分の利益のために打倒ゴァを誓っていました。ヤングソーは己のプライドのために、キングソーは己の過ちを帳消しにするためです。自己中心的で傲慢。万物を超越した存在であるにも関わらず、己のことしか考えられない存在など無用。そうやって断罪しようとしたのがゴァでしょう。ではソーは? 劇中であった通り、ソーは自らが神の祈りの対象となりました。何故ソーはゴァ同様神殺しを行わなかったのでしょうか? ソー自身も神だから、ソーがヒーローだから。もちろんそれもあると思います。しかし1番のポイントは、「信仰する力」を知っているからでしょう。

多くの人間は、危機的な状況に陥らないため神に祈ります。今日もいい事ありますように、テストで赤点取りませんように、賭け事で負けませんように。それは特定の宗教を信じなくとも、神を信じるからこその行いのはず。ところがもし、そんな人々の前に神の死体が現れたら? 考えるだけでも恐ろしい。我々は2度と神に祈れなくなるのです。人々にとって神とは精神的支柱という役割があります。神がいるからこそ、「今日はきっといいことがあるかもしれない」という活力になるのです。神が死ぬとは、人々から希望を奪うことに他ならないのでしょう。

それはゴァ自身も同様です。自分に助けを乞う神を、手近な石で殺したゴァ。この瞬間ゴァにとって神の絶対性が崩壊しました。神は死ぬ。それも呆気なく。だからゴァは神を殺しました。神とはまやかしであり、信仰は無駄でしかない。2人の違いは、「信仰」を信じたかどうかなのです。