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MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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TALES OF SUSPENSE#52〜#53

TALES OF SUSPENSE#39から始まったアイアンマンシリーズ。スタン・リー氏が手がけた最初期のシリーズは、当ブログでも取り上げたように様々な名エピソードや名対決が目白押しです。今回紹介するTALES OF SUSPENSE#52〜#53は中でも最も緊迫した戦いの1つと言っていいでしょう。ブラック・ウィドウの初登場回としても知られており、MARVEL史に残るエピソードであることは間違いありません。
f:id:ELEKINGPIT:20211222020853j:imageTALES OF SUSPENSE#52

 

〈あらすじ〉

それは数ヶ月前のこと、アイアンマンに倒された「かの国」からの刺客クリムゾン・ダイナモ(ヴァンコ教授)はアメリカへ亡命、スターク社に雇われ研究の日々を過していた。だが「かの国」がそれを許すはずがなかった。裏切り者へ制裁を、そしてクリムゾン・ダイナモが成しえなかったトニー・スターク暗殺の命を受け、最強のスパイが放たれる!

 

〈脅威のエージェント〉

トニーの人柄に感銘を受けたヴァンコ教授がアメリカへ亡命して以来、「かの国」はその動向をずっと追い続けていました。ヴァンコ教授は国中探しても2人と居ないような天才科学者で、初代クリムゾン・ダイナモをはじめとする様々な発明品を開発し続けていた存在。それがアメリカへ亡命したとあっては一大事だったのでしょう。スターク社の研究所で出入りする様子をキャッチした「かの国」は、上層部から絶大な信頼を持つブラック・ウィドウを派遣することに。またとてつもない怪力の持ち主で優秀な科学者でもあるボリスをウィドウの部下につけ、万全の態勢でトニー暗殺命令を下します。
f:id:ELEKINGPIT:20211222022157j:image上層部がヴァンコとトニーの暗殺に満場一致で指名したスパイ、ブラック・ウィドウ。その実力や如何に。

 

ウィドウとボリスは早速行動を開始します。ウィドウがトニーを外へ連れ出した隙にボリスが研究所へ侵入、ヴァンコ教授を瞬く間に倒してクリムゾン・ダイナモのスーツを手に入れたのです。早速研究所へ攻撃、アイアンマンが現れるのを待ちます。当時トニーのボディーガードとして知られていたアイアンマンは今回の任務最大の障壁とされていました。まずはその排除を優先しようとしたようです。緊急連絡で研究所の被害を知ったトニーは現場へ急行し、アイアンマンとして救助活動を始めます。目論見通り現れたアイアンマンをボリスは早速不意討ち。気を失ったアイアンマンはひとまずボリス達の基地へ運ばれました。しばらく後に目覚めたトニーは、そこで気絶したヴァンコ教授を発見。その体を抱えて再び研究所へ向かいます。しかし人間離れした怪力にダイナモスーツが加わったボリスにアイアンマンは大苦戦、あわやというところまで追い詰められてしまいます。ヴァンコ教授は目の前で恩人が殴り飛ばされるのをただ見ることしか出来ません。そんな状況に耐えられなかったのか、研究所の瓦礫から未完成の光線銃を取り出します。この光線銃は強力な崩壊光線を放つ代わりに、未完成なためか撃った本人まで光線の影響を受けてしまう危険なものです。電気ショックで動けないアイアンマンにトドメを刺そうとするクリムゾン・ダイナモへ、ヴァンコ教授は躊躇うことなく引き金を引きました。
f:id:ELEKINGPIT:20211222025052j:image自らの死をもってボリスを止めようとするヴァンコ教授。トニーの目の前で大切な友の命が散ってゆく。

 

アイアンマンを妨害しようと企んでいたウィドウは、ボリスの敗北を覚ると1人現場から逃げていました。そして任務失敗の報復を恐れ「かの国」からも姿を隠します。トニーの新発明を知ったのは、そんな生活から1ヶ月以上経とうとしていた時でした。トニーが新たに開発したのは反重力装置。重力に作用することで山をも浮かせる世紀の大発明です。今話が発売されたのは1964年、日本ではカラーテレビが普及し始めた時期にそれを発明したのだから驚きです。ところがこの装置は専用の解析装置を使わなければ解析できず、トニーすら二度と作れないと言わせるほどの機械でした。ちょっとした事故から解析装置が故障してしまい、トニー産反重力装置はまさに空前絶後の存在。これを知ったウィドウは反重力装置を盗みアイアンマンを倒す計画を立てます。
f:id:ELEKINGPIT:20211222030423j:image痺れガスで動けなくなるトニー。世紀の大発明が危険な敵の手へ渡ってしまった。

 

手始めに様々な小物を浮かせ、反重力装置が本物であるかを確認。こうしてトニー暗殺任務が再開されました。反重力装置はその強大な力を持っているため、反重力光線をくらえばアイアンマンですら抵抗もできないほど。まさに最強の兵器と言っていいでしょう。消息不明だったウィドウから約1ヶ月ぶりに活動報告が行われると、上層部も大喜びで新たなスパイを部下につけます。本来なら任務失敗の制裁を加えるところですが、その優秀さに免じて何のお咎めもありません。一方ウィドウはスターク社工場を反重力装置で破壊し、大打撃を与えます。被害の規模は今まででも過去最大。まるで自分の手足のように反重力装置を操るウィドウに、アイアンマンの勝ち目はあるのでしょうか?
f:id:ELEKINGPIT:20211222083235j:imageブラック・ウィドウvsアイアンマンの初対決。1度敗れたトニーはある解決策を思いつくが……?

 

〈驚異のスパイ〉

アイアンマンのヴィランとして初登場したブラック・ウィドウ。連載当時は冷戦中だったこともあり、今作は時勢を大きく反映した1話だったと言えるでしょう。しかしブラック・ウィドウの活躍は現在でも色褪せないほど。そんなウィドウですが、現在のスパイスーツとはコスチュームが大きく異なります。その名の通り貴婦人風の衣装を身にまとっていたウィドウ。その意味を考えていきたいと思います。

ブラック・ウィドウはレッドルームで鍛え上げら首席で卒業した期待のスパイです。後の作品ではトニーと出会う前も現在のようなスパイスーツを着用していたと設定されており、むしろ貴婦人風の衣装は今回だけと考えるのが妥当です。本編だけだとトニーを色仕掛けで罠にはめようとした、という結論で終わってしまいますが、後年の作品や後付けされた設定も込みで考えるのは現代の楽しみ方の1つでしょう。以前ブラック・ウィドウのミニシリーズを取り上げた時、ウィドウは常に居場所を求めていたという結論を出させていただきました。手刀1発で倒せる相手にわざわざ色仕掛けをする必要性を考えると、今回もそれに当てはめることが出来るのではないでしょうか?

本編でウィドウが恐れていたように、任務失敗後は必ず制裁、恐らく死が待っていたことでしょう。またレッドルームの記憶は長くウィドウを苦しめることとなり、その壊滅に半生を費やすほど。それらを考えればウィドウは「かの国」への忠誠心をどこまで持っていたのか疑問です。このままアメリカで暮らすことも考えていたのでは? と思わせる描写も。実際ウィドウはボリスの敗北以来アメリカで逃亡生活を送りますが、大きな邸宅に暮らすなど逃亡生活とは思えない程でした。「かの国」が行方を追い続けていたことを思えば身元を明かして家借りることもできなかったはず。もし事前に用意していたならば、最初から逃亡することまで計画していたということになります。ブラック・ウィドウがトニーへ色仕掛けを行ったのは、任務の行方に関わらずアメリカへ逃げるためだったのかもしれません。