アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS OBI-WAN & ANAKIN

現在でも国境を問わず大人気のスターウォーズシリーズ。多くの魅力的なキャラクターが登場し、多くのドラマを生み出してきました。それはコミックであっても変わりはありません。今回紹介するSTAR WARS OBI-WAN & ANAKINもその1つ。時系列としてはEP1ファントム・メナスとEP2クローンの攻撃の間にあたるミニシリーズです。EP2〜EP3ではオビワンを慕いながら反発することも多かったアナキンですが、それでもこの2人をベストコンビと見る方は多いでしょう。なお、今作はカノン(正史)となっております。レジェンズ(平行世界)ではないのでご注意ください。
f:id:ELEKINGPIT:20220105202610j:imageSTAR WARS OBI-WAN & ANAKIN

 

〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

ナブーの危機から数年の歳月が経った。今や若きアナキン・スカイウォーカーはパダワン達の誰よりも上手くフォースを扱い、ジェダイマスターに匹敵するほどの剣術を持っていた。

ダース・モールを倒しジェダイ・ナイトの称号を得たオビワンは、弟子の急激な成長に期待と不安を抱いていた。その高い感受性と自由を求める性格は、掟を重んじるジェダイにとって不向きなのだ。

アナキンを予言の子として大いなる期待を膨らませるジェダイ評議会は、オビワンと共に銀河共和国外の救出ミッションに当たらせる。それが2人の運命を変えかねないとも知らずに……

 

〈バランスをもたらす〉

アナキンはその類まれなる強いフォースから、ジェダイオーダーに「選ばれし者」として期待をかけられていました。「フォースのライトサイドとダークサイド双方にバランスをもたらし銀河を平和へ導くという」という予言を成しうる存在とされていたのです。ジェダイはこれを「シスの暗黒卿を打ち倒すことで銀河に平和をもたらす存在」と解釈していました。そしてその期待通り、アナキンは誰もが驚くほどの急成長を遂げます。かつてオビワンの師クワイ=ガン・ジンを殺したダース・モールを模したホログラムすら倒す程で、ジェダイマスターに並ぶ剣腕を持つと考えていいでしょう。しかし精神面はまだまだ未熟。師匠となったオビワンも「学ぶべきことが多い」としています。とはいえナブーの危機(EP1ファントム・メナスで起こった事件)以来銀河中に緊張感が走っている現在、アナキンの精神的な成長をじっと待っている訳にもいきません。そこでジェダイオーダーは、オビワンと共に銀河共和国外の惑星から発信された救難信号の行方をつきとめ、救出するよう任務を与えます。
f:id:ELEKINGPIT:20220105213443j:image2人がやってきたのは「青磁の海」と呼ばれる惑星。多くの爆煙が上がる先に、助けを求める人がいるはず。

 

爆煙の上がる都市を見て呆気に取られている矢先、今度は近くで飛行船同士の撃ち合いが始まっていました。目の前で撃墜された飛行船から乗組員の2人を助けて事情を聞くと、この惑星は何世代も前から「オープン」「クローズド」という陣営に別れて戦争を続けていることがわかりました。2人は「オープン」のリーダー、マザープランとその子どもコララです。さらに詳しく話を聞くため、オビワンは「クローズド」の飛行船からグレッカーと呼ばれる人物を連れ出します。どうやらこの戦争は「クローズド」が仕掛けたもの。ですが惑星「青磁の海」唯一の都市に毒ガスをばらまいたのは「オープン」の方。戦争が長期化しすぎたせいかお互いがお互いへ憎悪を剥き出しており、話が前へ進みません。そこでオビワンは双方を同じ飛行船に乗せて先へ進むことにしました。お互いが協力すれば「オープン」「クローズド」という垣根を越えられるだろうと考えたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220105235831j:imageどうあっても争おうとするグレッカー(画像左)とマザープラン(画像右)。お互いが打ち解け合うには呉越同舟がベスト?

 

とはいえやはり長年憎しみあった敵どうし。協力関係は長く続きませんでした。オビワンとグレッカーの僅かな隙を見て、マザープランがアナキンを連れ去ってしまいます。数世代にわたる戦争で科学技術が衰退しきった現在、機械いじりを得意とするアナキンは戦局を左右しかねないほど貴重だったのです。オビワン達の乗る飛行船を爆破した後、マザープランらはアナキンを「オープン」の秘密基地へと連れて行きます。一方墜落した飛行船から脱出したオビワンはある人物に助けられます。密かにオビワンを殺そうとしたグレッカーを銃撃した謎の人物は、自分こそが救難信号を発した張本人、セナだと言います。セナの秘密基地は驚くほどジャンクパーツで溢れていました。これらは全て自らが集めたものであり、自分が「スキャベンジャー」としてジャンク品を狙った両陣営から追われていると明かします。中でもセナが大切にしている品。それはライトセイバーを振るう人物が記録された映像です。映像によればこの人物の登場でとある戦争が終結、平和がもたらされたとのこと。セナが救難信号を発したのは、この映像と同じことをしてもらうためでした。つまり、「オープン」「クローズド」へバランスをもたらし、この星を平和へ導いてもらおうとしていたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220106002720j:imageセナが見た「ライトセイバーを振るう人物」。しかしそのライトセイバーが真紅に染まっていたとオビワンは直感する。

同刻、グレッカーを銃撃した人物を探す「クローズド」と、戦争マシンを復活させた「オープン」による衝突が始まっていました。アナキンが飛行船で軽く直した装置が、戦争マシンの起動スイッチだったのです。目の前で起こる激しい戦闘にセナは絶望します。ジェダイが来たら全てが解決するはずだった。むしろジェダイが来て以来状況は悪化したじゃないか。セナの悲痛な叫びも爆音がかき消します。オビワンが交渉にあたろうとしますが、一言も発しないうちに発砲されてしまいました。これではどうすることも出来ません。話し合いでも、青いライトセイバーでも解決できない。爆風で地に伏したオビワンの表情には戦闘での痛み以上に自らの無能さを呪う苦悶の表情が浮かんでいました。
f:id:ELEKINGPIT:20220106004143j:image誰もが恐れていた絶望戦争の始まり。ジェダイの力では平和はもたらせないのか?

 

〈アナキンの学び〉

選ばれし者として期待をかけられ、また自身の力を急激に伸ばし続けているアナキン。今作からさらに6年後にあたるEP2クローンの攻撃では、傲慢とも言えるほど己の実力に自信を持っている様子が描かれていました。しかし今作はスポンジのように様々な知見を学んでいる途中段階。師やジェダイ評議会らにも素直に従います。幼い子どもにとって親が神であり、また先生が神であるのと同様、アナキンにとってオビワンらは正に絶対的存在。一方、今作は同時に「前提を壊す」ことが強調されました。そこで今回はこの物語が後のアナキンへ与えた影響、学びを考えたいと思います。

それを考える上で最も手掛かりになりそうなシーンは、パルパティーンと初めて会うアナキンのシーンです。パルパティーンジェダイ寺院から出てはいけないという掟をアナキンに破らせ、コルサント(銀河共和国首都)のカジノへと連れて行きます。カジノは表向きには禁止されていますが、なんとそこにいたのは元老院議員で財政を司る人物。銀河中から巻き上げた税金をチップに変え、その上で大敗する姿でした。後に議員は逮捕されますが、腐敗し切った議会を象徴する姿だったでしょう。絶対的存在が脆く崩れ去った瞬間です。

「前提を疑う」とはジェダイの教えにも「心を透明にして物事を見よ」のような文言で表れていますが、ここでパルパティーンから学んだことは「絶対的存在を疑う」ことでしょう。そして「青磁の海」での事件は、「大人も間違いを犯す」ということがふんだんに盛り込まれていました。マザープランとグレッカーが誰の静止をも聞こうとせず刃を向けあったことなどがそれです。そしてアナキンはその様を「シスとジェダイ」に例えました。「絶対的存在への懐疑」「何としても争い合う大人達(シスとジェダイ)」。アナキンがこの時抱いた感覚が本人の中で言語化されたかは分かりません。しかし「フォースにバランスをもたらす」行動の根底の一部には、この感覚がどす黒く残っていたのかもしれません。