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MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS PURGE

スターウォーズには数多くのスピンオフ作品が存在します。当ブログで取りあげたダース・ベイダーシリーズなどがそれです。しかし初公開から長く時が経った現在、スピンオフ作品だけでも膨大な数となってしまいました。そこでディズニーはルーカスフィルムスターウォーズの制作会社)を買収後、2014年以前に公開された作品からEP1〜EP6、クローン・ウォーズなど一部を除いたスピンオフ作品全てをレジェンズ(平行世界)、それ以降に発表された全ての作品をカノン(正史世界)としました。今回紹介するSTAR WARS PURGEは、そんなレジェンズに属する作品です。当ブログで紹介したカノンのスピンオフ作品同様、今作もまたEP3シスの復讐直後を描いています。同じ時系列を描いたカノンとの違いを比べるのもまた一興でしょう。
f:id:ELEKINGPIT:20220131150324j:imageSTAR WARS PURGE

 

 

 

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〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

シス1000年の復讐はついに叶った。今や銀河を支配するのはシス帝国なのだ。

皇帝の指揮するオーダー66が速やかに行われた後、今やジェダイの絶滅は確定的となった。

かつてアナキン・スカイウォーカーだったシスの暗黒卿ダース・ベイダーの復讐は終わらない。自らを溶岩に叩き落としたオビワンを抹殺するまで……

 

〈粛清〉

オーダー66を終え、ジェダイはそのほとんどが絶滅してしまいました。しかし極わずかながら生き残ったジェダイも。皇帝は「奴らに何が出来る」と気にも留めていない様子ですが、ダース・ベイダーは違いました。捕らえたジェダイ一人一人に拷問を繰り返し、最後には怒りに任せて惨殺する日々を繰り返していたのです。「帝国の脅威となる可能性がある」とベイダーは説明していましたが、オビワンの行方を追っているのは誰の目にも明らか。見かねた皇帝は、ベイダーへジェダイと関わるのは止めるよう厳命します。
f:id:ELEKINGPIT:20220131155829j:imageジェダイの首の骨を折り惨殺するベイダー。黒衣の内の激しい怒りが露わになる。

 

一方、とある惑星では生き残ったジェダイによる密会が行われていました。ブルター・スワンもそのメンバーの1人。銀河の各地から生き残りを集めてようやく10人近いメンバーが揃った時、スワンはある作戦を実行します。ダース・ベイダーの暗殺です。ジェダイオーダーの再興とシスの弱さをベイダーの首を持って証明しようと考えていたのでした。またスワンには秘策がある様子。その表情は自信に充ちていました。いくらベイダーでも10人近いジェダイが束になってかかれば倒せるだろう。そんな確信に近い自信がメンバーを動かします。スワンはオビワンもこの会合に参加すると嘘の情報を流しベイダーをおびき寄せました。
f:id:ELEKINGPIT:20220131205321j:imageベイダーの襲撃を待ち構えるジェダイ達。その決意は誰よりも固い。

 

オビワンを探すベイダーはスワンの偽情報に簡単に騙され、目論見通りまんまとスワンらの元へやって来ました。そしてオビワンがいないことを知ると激怒。真紅の光刃が容赦なくジェダイ達へ襲い掛かります。ここまではスワンらの作戦通りです。誤算があるとすればベイダーの実力でしょう。いつの間にか1人が倒され、呆気に取られる間にまた1人……連携をとる刹那もありません。ここでスワンは取っておきの秘策を披露します。特別製の短剣です。ある金属で鍛えられた剣はライトセイバーを無効化させる力を備えていました。この短剣でセイバーを無効化すればベイダーなぞ取るに足らないとばかりにスワンは突撃しますが、この戦術すら黒衣の怪物には及びません。右腕を切り落とされてもベイダーは止まりませんでした。
f:id:ELEKINGPIT:20220131211110j:image短剣で胸を刺し、同時にライトセイバーを奪い取るベイダー。劣勢すら奇策に転じる最強の暗黒卿に敵う者はいない。

 

〈騎士と暗黒卿の狭間〉

今作は数多くのジェダイが登場しました。しかし一方で「本当にジェダイなのか?」と疑いたくなるような場面も。スワンらは純粋なジェダイだったのかを考えたいと思います。

そもそもこの密会のメンバーはほとんとがジェダイマスターの称号を有する実力者でした。マスターともなれば心とフォースの平穏を保つ術も心得ているはず。しかし、今作で描かれたのはシスへの復讐心、憎悪を宿しつつある姿でした。またベイダーとの戦闘では不意打ちも多く行っており、これまでのジェダイとはまるで違うように思えました。なによりスワンの「ライトセイバーを無力化する」作戦は、言い換えれば「相手の抵抗力を削いだ上で無抵抗の相手を殺す」というもの。無抵抗の相手を殺すことは明確にジェダイの掟で禁止されています。つまり、メンバーのほとんどがまるでジェダイの道を外れているかのような行動を取っていたのです。

ダークサイドのフォースが「心の激情」を求めるならば、ライトサイドのフォースは「心の平穏」を保つものでしょう。しかしジェダイとて全員が聖人君子ではありません。当時はオーダー66執行直後。親しかった仲間や師、信頼していたトルーパーからの裏切りetc……そしてクローン戦争での混乱から立ち直る暇もなくこのような虐殺を目撃すれば誰もが平静さを保てるはずがありません。生き残ったジェダイ達が暗黒面に魅入られつつあったという流れはごく自然なものだったと言っていいでしょう。それは本作に登場するジェダイも同じ。ついには「必要とあらばダークサイドに堕ちてでもベイダーを倒す」と意気込むジェダイまで現れたほどです。

ではそんなジェダイ達とシス、騎士と暗黒卿を隔てるものとは何でしょうか? それはその力を誰のために使うか、だと思います。これはアナキンとベイダーの違いに表れているでしょう。クローン戦争では戦争終結のためにライトセイバーを振るっていたアナキンですが、それはやがてパドメを死から救うため、そして愛する人と銀河を支配するためと変化していきました。特にEP3終盤のアナキンは、パドメのためと言いながらその実「パドメと共に暮らす自分」を守るために力を使っているようにも見えます。そしてムスタファーの戦いではもはやアナキンに大義も正義もなく、「自分の障害となる」オビワンを殺すために刃を向けます。アナキンはダークサイドへ堕ちるにつれてフォースの在り方が「誰かのための力から自分のための力」へと変化して行ったのです。誰かを守るために刃を振るってこそ初めてジェダイなのです。