アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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RUNAWAYS vol1 PRIDE & JOY

大戦時代から戦い続ける大ベテランも少なくないMARVELユニバース。しかしそれだけ「新人」には厳しい世界でもあります。一方チャンピオンズやヤングアベンジャーズなど、時代の節目にはティーンヒーローの活躍が多く描かれました。ランナウェイズもそんなヒーローチームの1つです。同時期に登場したヤングアベンジャーズはいわば「王道」ですが、ランナウェイズはそれに比べると少し「異色」と言えるでしょう。現在でも根強い人気を誇るこのチームは、スーパーヴィランである両親から逃げるために結成されました。今作はそんな若者たちのオリジンが描かれます。ごく普通のティーンエイジャーが逞しく成長する姿を見守りましょう。
f:id:ELEKINGPIT:20220209170710j:imageRUNAWAYS vol1 PRIDE & JOY

 

〈あらすじ〉

年に1度、アレックスの家では秘密のパーティが行われていた。5組の両親が子を連れて訪れ、親達だけで「何か」をしているのだ。子ども達はいつも蚊帳の外。パーティで何をしようか突き止めようじゃないか。そんなアレックスの無邪気な提案が6人の若者の運命を大きく変えることとなる……!

 

〈両親の秘密〉

アレックスにとって、年に1度行われる秘密のパーティは面倒なものでしかありませんでした。幼い頃から顔を合わせる友人達のために着替えるのも面倒だし、オンラインゲームを止めるなんて! しかし両親はこの世界で豊かな生活を送るための大事な仕事と準備を始めます。全員が始まったのはそれからおよそ1時間後のことでした。例年通り秘密の部屋に籠る両親らを見て、みんなはつまらなそうにソファに座ります。そんな様子を見たアレックスは、両親らの部屋をこっそり覗き見しないかと提案。好奇心には勝てず全員が早速隠し通路を通ってパーティを覗こうとします。
f:id:ELEKINGPIT:20220209225034j:image左からカロリーナ、ガートルード、チェイス、ニコ、モーリー、アレックス。小さな好奇心が運命を狂わせた。

 

6人が見たのは意外な光景でした。両親は見慣れない服装に着替えており、粛々とした雰囲気で何やら話し合いを進めています。その格好はまるで……そう、コスチュームのようです。実はヒーローチームだったのか? アレックスは期待で胸を踊らせます。しかしよく聞き耳を立てると、物騒な言葉が次々と出てくるではありませんか。まるでヒーローの会議とは思えません。自分たちのチームを「プライド」と呼んだ両親らは、ある儀式を始めようとします。どこからから不安げな若者を連れてくると、突然大きなナイフで刺し殺したのです。呆然としながらもアレックスらは確信します。自分たちの両親はヴィランだと。
f:id:ELEKINGPIT:20220209230326j:image自分たちと同じ年代であろう若者を無慈悲に殺す「プライド」。ヒーローの行いではない。

 

親が人を殺した。両親の正体はヴィランだった。この事実に戦々恐々としながらも、6人はまず警察へ通報します。ところがこれを子どもの冗談と一蹴され信じてもらえません。ならばやることは1つ。目の前で見た殺人と両親がヴィランであるという証拠を探すだけです。しかし大きな危険が伴うことでしょう。幼いモーリーには知らせず5人で証拠探しをすることにします。ガートルードは、自分の家には骨董品を集めた地下室があると言いました。もしかしたらそこに手がかりがあるかも。早速5人はガートルードの家へ向かいます。地下室には東洋の骨董品に隠れるようにキーパッドが設置されていました。勘でパスワードを入力すると見事大当たり。隠しドアから飛び出したのは、恐竜とホログラム映像でした。突然襲いかかる恐竜に全員パニック状態でしたが、ガートルードの「止めろ!」という叫び声に反応します。
f:id:ELEKINGPIT:20220210015114j:imageガートルードの命令で跪く恐竜。その正体は?

 

続いて現れた両親のホログラム映像曰く、この恐竜は87世紀で遺伝子操作により生まれた恐竜であることが明かされます。そしてガートルードが18歳になった暁にはプライドの地位と恐竜を継がせようとしていたことも。どうやらガートルードは両親によってその恐竜とサイキックリンクさせられているようです。決定的ではないものの、プライドの裏を探ることに成功した5人。恐らく他の家も探れば何かが出てくるに違いありません。そこで今度はカロリーナの家へ。カロリーナの家では、秘密の文書からカロリーナのパワーが判明します。体を虹色に発光させ、飛行や攻撃ができる能力です。そして次に訪れたチェイスの家では、プライドが利用していたであろう超科学の品々が。次々と能力を獲得し、どこか戦勝ムードが漂う5人。しかしこれほど大胆に動き回れば、プライドにその動きを感知されないはずがありませんでした。
f:id:ELEKINGPIT:20220210020901j:image5人を追い詰めるプライド。自分の子どもを傷つけたくないと口にするが……

 

プライドのパワーは圧倒的でした。一瞬でチェイスを気絶させると、魔術でカロリーナに攻撃、アレックスを拘束します。ガートルードが恐竜を使ってプライドを襲撃しますが、それでもピンチは続きます。ニコが無意識のうちに魔術を覚醒させますが、それでもアレックスの機転がなければここで全員が拘束されていたことでしょう。どうにか敵の手から逃れた5人ですが、親が自分たちを本気で殺しかかったことに大きなショックを感じます。もしかしたら悪夢を見ていたのかもしれない。そんな淡い希望が失われた瞬間でした。アレックスの父親から電話がかかってきたのはまさにそんな時です。なんとプライドはモーリーの命と引き換えに降伏を要求してきたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220210022750j:imageモーリーに刃を向けるプライド。必要とあらば自分の子どもを犠牲にすることすらも厭わない。

 

〈逃走と暴走〉

今作のタイトルにもなっているランナウェイズ。ヴィランの両親から逃げるために結成されたチームだからこそRUNAWAYS(逃走)という名が与えられたのでしょう。しかしRUNAWAYSという単語には「逃走」以外にも意味があります。それが「暴走」です。単に逃げるという意味の語を与えたければESCAPE(逃亡、脱出)でも良かったはず。何故この物語にRUNAWAYSというタイトルが与えられたのでしょうか?

ランナウェイズのメンバーの視点で展開された今作。しかし見方を変えてプライドの視点からこの物語を見ると、子どもたちの行動はまるで唐突なように思えたでしょう。実際両親の行動にランナウェイズがショックを受けている頃、プライドもまた子どもたちに秘密を知られたことへ驚き戸惑い、攻撃することを躊躇っていました。何不自由無く生活させていた子どもたちが突然自分たちの秘密を握りしめて反抗する。プライドにはその様子が「暴走」のように見えたはずです。

一方ランナウェイズもプライドの倫理から大きく外れた行動には計り知れないショックを受けていました。そして同時に、そのプライドから自分たちが生まれたということも。ヴィランの子どもはヴィランになんて考えられませんが、ランナウェイズら本人にはそれが感じられたのかもしれません。両親の逸脱した行動は「暴走」のようにも見えたはず。

今作には2つの「暴走」が隠されていました。では次に、ランナウェイズは誰から「逃走」していたのでしょうか? 当然両親らプライドからです。しかしもう1つ、ランナウェイズが逃げねばならないものがあります。自分たちの暴走です。それまで何の変哲もない若者だったランナウェイズは、一晩にして強力なパワーを手に入れました。今は両親から逃げるのに必死ですが、もしパワーにより傲慢になってしまったら? 正しい方向にパワーを使えるのか? ランナウェイズは両親の暴走、そして自分たちの暴走から逃走せねばなりません。そしていつか、立ち向かわねばならないでしょう。