アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON MAN #166〜#169

謎の人物によって送り込まれた「ナイト」達を次々と倒したトニー。しかしこれは大いなる陰謀の一部に過ぎませんでした。背後に潜む「キング」、そして「クイーン」の正体とは? アイアンマンの歴史に衝撃を与えた物語は、まだ始まったばかりです。
f:id:ELEKINGPIT:20220222191411j:imageIRON MAN #169

 

前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

正体不明の敵により、スコットランドの地で激戦を繰り広げたトニー。しかし城将ルークの罠にかかり毒蜘蛛に晒されたローディは、命の危機に瀕していた。それでも敵は待ってくれない。史上最大の作戦がトニーを悪魔の元へと導く……!

 

チェックメイト

敵の魔の手から救われましたが、ローディの様態は未だピンチを脱していません。最高の医療設備でも回復できるかは神に祈るしかないのです。自分のせいでローディが瀕死になった。トニーは何度も自分を責め続けます。丸々三日間眠ることも出来なかったトニー。何度自分を責めたとして、いい事なんてない。それはトニー自身が最も理解していることでしょう。「この思考を止めたい」と何度もお酒に誘惑されます。それでも禁酒の誓いを破らなかったのは、今や唯一心を許せるパートナーのインドリーズ、そして守るべき社員たちの存在でした。傷心のトニーが帰国すると、待っていたのは2つの報せでした。1つは「キング」の正体が判明したこと、もう1つはローディが行方不明になったことです。
f:id:ELEKINGPIT:20220222212340j:image病院で眠っていたはずのローディ。動けないはずの体でどこへ消えた?

 

ローディ失踪の手がかりが掴めない今、トニーにできることはキングと戦うことだけです。オバディア・ステイン。それがキングの名でした。ユタ州に本社を置くオバディア・エンタープライズの社長で、チェスの達人でもあります。オバディア・エンタープライズはスターク社のライバル会社として高度な技術を有しています。ナイトらの装備もその技術が使われていたのでしょう。早速ユタ州へ向かったアイアンマンは、堅牢な防衛設備を突破してオバディアの元へ。しかし勝利を確信しているオバディアは、スターク社に買収工作を仕掛けていることを明かします。自分を支え続けていた会社さえも失ってしまうのか? まるで頭がクラクラするトニーは、逃げるようにその場を去っていきました。
f:id:ELEKINGPIT:20220222215746j:imageアイアンマンと対峙するオバディア。悠々と自らの野望を語り、チェックメイトへのカウントダウンを開始する。

 

この頃のトニーはやつれ果てており、力なくフラフラと歩く、まるで病人のようでした。心配する社員を叱責するなど、必要以上に自分一人で抱え込んでしまっているのです。そんな時に襲ってくるオバディアの工作の数々。ジリジリとスターク社が追い詰められ、トニーが酒瓶を眺める時間も徐々に増えてきました。酔ってしまえば悩みも全て忘れることが出来るだろう。酔ってしまえば眠れるだろう。酔ってしまえばゆっくり休めるだろう……いやダメだ、そんなものは解決策じゃない。ボトルを投げ捨てたトニーの、不眠不休の戦いはなおも続きます。さらにオバディアの策略により、重要な海外契約がほとんど打ち切られてしまいます。それどころか他のライバル会社のほとんどが乗っ取られ、強大な買収工作が始まりました。もはや1人で抱え込むことも出来なくなったトニーは、パートナーのインドリーズの元へ向かいます。しかしインドリーズは冷たく突き放してしまいました。そして嘲笑うかのようにその正体を明かします。自分こそがオバディア最後の駒、「クイーン」であることを。
f:id:ELEKINGPIT:20220222221716j:image冷徹な眼差しで嘲笑するインドリーズ。トニーの精神にチェックメイトの一撃が放たれる。

涙は流れませんでした。何かを語ることもありませんでした。今トニーにできることは、ただ酒を飲むことだけでした。それから数日後、酒を飲み、仕事をサボり、信頼を失ったトニーに会社が存続の危機を迎えているという報せがやってきます。優秀な弁護士を雇ってもどうにかできる状況ではありません。やつれ果てたトニーに正常な判断が出来るはずもなく、「ステインのせいだ!」と叫ぶばかり。そこへ現れたのは、なんとローディでした。オバディアの手下によって誘拐されかけたローディは命からがら脱出、死にものぐるいでトニーの元へと帰ってきたのです。再開を喜ぶのもつかの間、今度はマグマと呼ばれるヴィランがスターク社へ向かっていることが知らされます。早速トニーはマグマと戦いますが、泥酔状態ではまともに相手もできません。一方的に打ちのめされ敗走するしかありませんでした。突然思いついたようにローディを秘密のラボへ招くと、トニーは自分こそがアイアンマンだと明かします。マグマがスターク社を破壊している間、とうとうトニーは酔い潰れた末に眠りこけたではありませんか。もはやスターク社が再起不能な損害を与えられるのは時間の問題。今アーマーを着用して戦えるのはトニーではなく、自分だけ。ローディは何度も自分に問いかけます。
f:id:ELEKINGPIT:20220222224345j:image敵を目の前に酔い潰れたトニー。今戦えるのはただ1人……

 

〈トニーの心根〉

Demon in a bottle編ではジャービスを叱責し、辞表を提出されるほど怒りを買ったトニー。その姿は今作で精神が弱りきった時と似通った部分がありました。人は弱った時や泥酔した時に本来の姿が出ているというのはよく言われる話です。では部下を叱責し、暴れるのがトニー本来の姿なのでしょうか?

2つのシチュエーションに共通しているのは、トニーが精神的に酷く弱りきっていたということです。人は自分が弱いことを感じ取ると、少しでも自分を強く見せようと虚飾に走ることがあります。怒りっぽい人をよく見ると、実は傷つきやすい人だったなんてことはよくある話でしょう。トニーを知れば知るほど「誇大なナルシストでプレイボーイ」という自分を演じているのではないか? と思うことが多々あります。もしそれが本当なら、無理に「トニー・スターク」を演じようとしてしまった結果ではないか? と考えることが出来るでしょう。

しかし一切本性を出していないとは思えません。ローディと再会した時は大声を上げてハグをしたり、またローディに酒を飲むのを咎められた時は用ができた途端にくるっと背を向けて去ったり、普段より感情表現が豊かな印象を受けます。また泥酔状態でニューヨークを飛行した時は、目に付いた酒の広告全てを突き破るなんてことも。潜在的に酒を回避しようとしている心理が垣間見えます。トニーは決して怒りっぽい人物ではなく、泥酔するほど飲んだ時は常に余裕が無い時です。また、それ以外の部分は普段より感情豊かなになっており、酒への忌避感が表れたりと、普段どれほど友人を大切に思い、また酒を警戒しているのかが垣間見えていました。