アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON MAN #170

オバディア・ステインの巧妙な罠にハマり、再び酒瓶を手にすることとなったトニー。最大の挫折を味わった今のトニーにアーマーを着用する力も失われています。アイアンマンに復讐を誓う敵が襲い来る中、鉄人は再び大地に立てるのでしょうか? 歴史に名を刻んだ衝撃作、その新章がスタートします。
f:id:ELEKINGPIT:20220223233822j:imageIRON MAN#170

 

前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

トニーはオバディア・ステインの策略により、大きな心の傷を負ってしまった。今や禁じていたはずの酒で自分を慰め、日に日にやつれていくばかり。もはや戦う力のないトニーに代わり、アーマーに手を伸ばしたのは……?

 

〈新生アイアンマン誕生!〉

かつてトニーとスパイダーマンのコンビに倒されたマグマは、執念でスターク社に復讐しようと現れました。当初はトニーがアイアンマンとしと挑みますが、泥酔状態ではまともに戦えるはずもなく、あえなく敗走してしまいます。ローディに正体を明かした後、酒の飲み過ぎか倒れるように眠ってしまいました。外では会社を襲い続けるマグマ。今戦えるものはただ1人。ローディは覚悟を決めながら、しかし戸惑いながらアーマーを手に取ります。トニーが人生をかけて守ってきた正義の魂を借りるために。
f:id:ELEKINGPIT:20220224001310j:imageトニーのアーマーを着用するローディ。立ち上がる者が自分しかいないならば、選択肢は1つしかない。

 

アーマーの高性能っぷり驚きながら、使い方が把握出来ず困惑しながら、ローディはマグマに向かって突撃します。とはいえかつてアイアンマンに敗れたマグマはその対策もバッチリ。専用の戦車は、アイアンマンの装甲すら溶かすレーザー砲や超パワーを誇る複数のアームを備えています。泥酔状態だったとはいえトニーすら勝てなかった相手にローディも大苦戦。またトニーはアーマーの装備が旧式化していると直感しており、敵兵器との性能差も徐々に追い抜かれつつありました。多忙故新型アーマーへのアップデートが終わらないまま現在に至っていましたが、それまではトニーの明晰な頭脳と柔軟な思考でどうにか敵を倒していたほど。慣れないアーマーでローディが手玉に取られるのは必然とも言える結果でした。しかしローディもただ闇雲に戦うばかりではありません。何百万回もトニーの戦いを傍で見続けてきたと自負するローディは、液化ガスタンクに敵を突っ込ませることで大爆発を起こすことで決着をつけようとします。
f:id:ELEKINGPIT:20220224004220j:image即死級の爆発を起こしたローディ。トニーの戦いを誰よりも知るローディだからこそ思い付いた戦法だ。

 

しかしこれで戦いは終わりません。数瞬の差で戦車から脱出していたマグマは、トニーの眠る秘密ラボへ向かっていました。一方トニーはローディとマグマが戦っている最中に目を覚まします。裏切り者がアイアンマンになりすましていると勘違いしたトニーは、半狂乱になりながら旧式のアーマーで戦おうとしました。しかし錯乱状態に陥っている今のトニーにセキュリティコードを入力する余裕すらなく、ただ酒を飲むことしかできません。そんな弱りきったトニーの前に、爆発から脱出したマグマが迫ります。フラフラの体でどうにか攻撃を避けていると、今度はアイアンマンが助けに現れました。朦朧とする意識の中、トニーの助言を得たアイアンマンは必殺のリパルサーブラストでついにマグマを撃破。戦いの一部始終を見たトニーは翌日、ローディを自室に呼び寄せます。どこか儚げな笑みを浮かべるその姿は、少しの切なさと寂しさ、そして大きく安堵したようにも見えました。それから一言、トニーはローディへアイアンマンを託すと告げます。「ヒーローに疲れたのさ。少しの楽しみと休みが欲しいんだよ……」と言い残して。
f:id:ELEKINGPIT:20220224010305j:imageやつれ果てた表情でアイアンマンを継承するよう告げるトニー。世界平和に尽くし続けた世界最高の天才に、立ち上がる精神は残っていない。

 

〈鉄人の行方〉

これまで当ブログでは「トニーでなければアイアンマンではない」というテーマに挑戦した作品を紹介し、また私なりの持論も述べさせていただきました。では今作でアーマーを継承したローディはアイアンマンでは無いのでしょうか?

今作で描かれたのは、アーマーの性能に適応していくローディとアーマーを着用することも出来ず、戦えなくなったトニーの対比でした。ローディはアイアンマンへ、トニーはその逆へ近づいているということをクリエイターは描きたかったのでしょう。つまりこの物語は「アイアンマンになろうとする者」「アイアンマンを諦めた者」によって紡がれているのです。この物語に「アイアンマン」はいないという証拠でもあります。またローディはアイアンマンの継承を本心では拒否しているようで、トニーのいないところでヘルメットを投げる描写も存在するほど。ローディは「アイアンマンになろうとする者」と同時に「アイアンマンを拒む者」なのでしょう。物語を牽引するヒーローであったはずのアイアンマンが、今や崩壊しきっていることが分かります。

ならば「アイアンマン」は死んでしまったのでしょうか? それは違います。自傷行為のように酒を飲み続けるトニーですが、初代アベンジャーズであり、長年戦い続けてきた正義の志は、瓶の中の悪魔にかき消されるほどヤワなものではありません。アイアンマンを拒むローディも平和と正義を望む確固たる精神があります。2人がたどり着く「アイアンマン」は違うものでしょうが、それでも2人が正義の魂を宿す限り「アイアンマン」は不滅なのです。