アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON MAN #172

アーマーがローディに引き継がれ、遂にヒーロー引退を決意したトニー。続く#171では見事敵を撃退したローディと少しの罪悪感を覚えながら酒を飲み続けるトニーの姿が描かれました。そして今回紹介する#172で事態は大きく進展します。
f:id:ELEKINGPIT:20220224170306j:imageIRON MAN #172

 

前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

トニー・スタークが行方不明に? 酩酊状態の愚行がアメリカ中で報じられ、姿をくらましたトニー。しかし一方、オバディアの工作も最終段階を迎え、スターク社買収は確定的となった。買収執行まで残る時間は6時間。オバディアの陰謀は完遂されてしまうのか?

 

〈例え涙を流しても〉

アイアンマンとヴィランの激闘の結果、甚大な被害を受けたスターク社。長年の研究も頓挫し、また重要な契約も次々と打ち切りに。オバディアの陰謀でスターク社が抱えているものはとうとう借金のみとなりました。これをオバディア社が肩代わりすると提案。スターク社の実質的な買収がスタートしたのです。トニーを信じる優秀な社員達は腕の立つ弁護士を雇い、オバディアの買収を1週間引き伸ばす書類を作成しました。あとはトニーの自筆サインがあれば買収に歯止めが効きます。ところが肝心のトニーが行方不明に。あと6時間以内に提出しなければ正式にスターク社はオバディア・ステインの物となってしまいます。ここでアイアンマン(ローディ)はキャップへ捜索を依頼しました。
f:id:ELEKINGPIT:20220225010051j:imageトニーの帰りを待つ社員達。皆トニーを全面的に信頼し、共に仕事を果たしてきた。

 

目撃情報を基に捜索を開始したキャップは、呆気なくトニーを見つけます。そこはマンハッタンでも治安の悪さで有名な町に位置する簡易宿泊所です。夢中で安酒を飲みボロボロのベッドに身を投げる姿は、これまでキャップが見てきたトニーとはかけ離れたもの。キャップは思わず声を荒らげます。何故こんなことをしているのか? キャップは今のトニーを自身の父親と重ねていました。キャップの父親もまたアルコール依存症だったのです。キャップの言葉にトニーは涙を流します。飲まなきゃやってられないと。その言葉を聞き、キャップはトニーへ背を向けていました。
f:id:ELEKINGPIT:20220225011926j:image「助けて欲しいと思ったらその時は知らせてくれ」酒瓶を手に涙を流すトニーへ背を向けるキャップ。ローディにすら見せなかった涙は、酒を飲む自分に許しを乞うものだった。

 

そんな時に現れたのが炎を操るヴィラン、ファイヤーブランドです。キャップとトニーが簡易宿泊所へ入っていくところを目撃し、一網打尽にしようと攻撃を仕掛けます。しかしキャップ、そしてアイアンマン(ローディ)の連戦を経て無事な人間はそう多くないでしょう。ローディ必殺の一撃にファイヤーブランドはあえなく逮捕他なりました。事件後、トニーをアイアンマンへ引き渡そうとするキャップ。しかしどこを探してもトニーはいません。ファイヤーブランドとの戦いで隙を見つけたトニーは、1人こっそりと逃げ出していたのです。まるで全てを捨て去ったかのように、安酒の酒瓶だけを抱えながら。そしてローディは規定の時間がやってきたことを知ります。再びトニーが行方をくらましたのと同時に、スターク社は正式にオバディアの手で買収されたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220225020329j:imageスターク社に姿を見せたオバディア。全てはこの時のためにあったのだ。

 

〈2人だけの友情〉

「助けられることを望まないなら助けない。その時がきたら知らせてくれ」そう言い残してトニーの元を去ろうとしたキャップ。一見冷たく見える対応かもしれませんが、ある程度立ち直るまで放っておくというのはここでは重要なのかもしれません。必ずまた立ち上がるというトニーへの信頼が垣間見えますが、では何故トニーは最後に逃げ出してしまったのでしょうか?

初めて2人が対決したTALES OF SUSPENSE#57では、キャップと戦ってしまったという罪悪感で酷く落ち込むトニーの姿が描かれました。その後はアイアンマンとトニー・スタークという二重生活を辞めたいという悩みに取り憑かれる姿も。後年の作品でもキャップを深く尊敬しているような描写がいくつもあります。せめてキャップの前では完璧であろうと振る舞うトニーの心根が垣間見得るでしょう。一方キャップも現代に蘇った後に手厚くサポートしてくれたトニーに深く感謝しており、バッキーやファルコンらとは違った大きな信頼を置いていることがわかります。互いに互いを深く尊敬し、信頼し合っている関係なのです。ですが今作ではそれに綻びが生じてしまいました。安酒を浴びる姿を見られたトニーはその後さらに酒を飲んだのか、ファイヤーブランドのせいで危険に陥っていることすら気づかないほど。一方キャップはそんなトニーへ失望の念を覚えてしまいます。にキャップは「覚えているとは意外だよ。酔い潰れていたのに」と振り返るほど。

手から酒瓶を弾かれたトニーが、この失望の念を感じなかったはずがありません。自分はキャップの前にいるべき人間ではない、と考え逃亡した可能性は否定出来ないでしょう。当時のトニーは酷く精神を痛めており、キャップへ「君が私と同じように感じるならきっと分かるだろう。飲まなければやっていけないことを……」と語る際、自然と涙が流れるほど。自分の行いを誰よりも知っているからこそ、その愚かさを誰よりも理解しているからこそ、酒に逃げているのでしょう。しかしそれでは負のループ。それすらも自覚しているからこそ、キャップの前から姿を消したのかもしれません。