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MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS DARTH VADER AND THE LOST COMMAND

今回はEP3シスの復讐直後を描いたSTAR WARS PURGEシリーズの続きにあたるミニシリーズ、STAR WARS DARTH VADER AND THE LOST COMMANDを紹介したいと思います。STAR WARS PURGEシリーズとの繋がりは薄い代わりに、本作はより深くベイダーの内面に切り込んでいます。同時期のカノンコミックと同様に注目すべき、ダース・ベイダーファン必見の1作です。
f:id:ELEKINGPIT:20220226214413j:imageSTAR WARS DARTH VADER AND THE LOST COMMAND

 

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〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

銀河帝国が君臨した。皇帝パルパティーンの情け容赦ない圧政に、銀河各地では反乱の声が上がり始めていた。

恐るべき死の暗黒卿ダース・ベイダーは、ゴースト星系の制圧を命令される。そこはグランドモフ・ターキンの子どもとその部隊が行方不明になった場所だった。

自らが殺した未来の幻影を見るベイダーは動揺していた。アナキン・スカイウォーカーパドメ・アミダラも死んだというのに……

 

〈亡霊の住処で〉

ダース・ベイダーは、ある日突然皇帝に呼び出されます。ゴースト星系のアトアンで起きた反乱の制圧を命じるためです。そしてもう1つ重要な任務が、ある帝国将校の行方を探し出すこと。しかしそこは少しワケありです。銀河系の中でも外縁部に位置するその星系は、ほとんどの惑星が未探索。恐らく帝国の将校もそれが原因で行方不明となったのでしょう。しかもその将校は、銀河帝国ナンバー2の権力者ターキンの息子、ガロッシュだというのです。もしガロッシュを失えばターキンの忠誠心にも関わる問題。ベイダーを完全には信用出来ないターキンは、息子とアカデミー時代学友だったシェールを同行するよう命じました。ベイダーはシェールと共に早速部隊を編成、アトアンへ向かいます。アトアンの反乱勢力はベイダーの敵ではありませんでした。しかし肝心のガロッシュは影も形もありません。ベイダーがアトアン反乱軍に拷問しますが、思うような答えは得られず。そんな手詰まりの暗黒卿の前に、ゴースト星系のシャーマンを名乗る人物が現れました。名をサロ。忠誠の言葉を述べながら、ガロッシュの行方を教えようというのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220227004355j:imageベイダーとシェールの前に姿を現したサロ。帝国相手にも物怖じしない度胸の持ち主。

 

スターデストロイヤーに迎え入れられたサロは、一通りの身分検査を受けた後に改めてベイダーの尋問を受けることに。しかしそこでサロは交換条件を申し出ます。帝国に忠誠を誓いガロッシュの居場所を教えるかわりに、自分をゴースト星系の女王として正式に任命しろというのです。ベイダーは激怒しますがシェールはこれに合意。サロはまず「ガロッシュらと共にアトアンを攻撃していた帝国軍はどうなったのか?」という問いに答えます。ベイダーらが案内されたのはガロッシュらの母艦がデブリとして漂う宙域でした。最悪の結果ではありますが、予想外ではありません。一方ガロッシュはパルチザンの人質に囚われていると言います。なるほどパルチザンは命懸けの交渉を帝国に持ちかけたいようです。この情報にベイダーはある策を思いつきました。もしガロッシュがパルチザンによって殺されたなら……? 子どもの死がターキンをより強くするかもしれない。なんとベイダーの提案に皇帝も賛成。ベイダーはガロッシュを見つけ次第殺し、パルチザンの仕業に見せかけるという極秘の任務を命じられました。
f:id:ELEKINGPIT:20220228021353j:imageベイダーの提案にほくそ笑む皇帝。喪失こそ人を強くするのか?

 

ガロッシュを殺すためにはやはりガロッシュを見つけねばなりません。ガロッシュが匿われているであろうパルチザンを激しい砲火が襲います。しかし敵軍を全滅させて捜索を始めますが、ガロッシュの姿は影も形もありません。別の星へ逃げたのか? 瞑想しながら次の策を考えるベイダー。しかし目覚めると、シェール直属のトルーパーたちに囲まれていました。何があったのか考える間もなく激しい戦闘が始まります。その中には帝国軍の軍服を脱いだシェールの姿も。暗殺者の巧みな連携と、不意を突いた攻撃にベイダーは苦戦。なんとそのまま囚われてしまいました。目が覚めると、ベイダーの目の前にはガロッシュの姿が。ガロッシュは兵士として誇りを持って帝国に仕えていたが、奴隷のように扱う帝国軍に反発。裏切ったのだと言います。シェールも同様でした。それでも帝国に忠誠を誓っていたシェールですが、ガロッシュ暗殺を直感し今に至ったのです。さらにベイダーはガロッシュの心をフォースで読みニヤリとしました。ガロッシュはサロに好意を抱いている。この事件にサロも一役買っていることは間違いありません。帝国を裏切ればどうなるか身をもって教えねばならないでしょう。ベイダーの元を去る2人と入れ替わるように、今度はある人物がベイダーを訪ねました。パドメ・アミダラです。
f:id:ELEKINGPIT:20220228023945j:image扉の光から姿を現したパドメ。これは夢か? 現実か?

 

ダース・ベイダーとパドメ〉

今作で頻繁に描かれたのは、パドメと幸せな未来を送るアナキンの夢でした。それはフォースが見せるもう1つの現実だったのでしょうか? アナキンは産まれてきた子にジンと名付け、親子揃って偉大なジェダイに。そしてパドメは元老院最高議長に就任していました。これ以上ないほど順風満帆な、しかしダース・ベイダーによって破壊された「可能性」です。この幸せ溢れる夢に、いつもベイダーは唸り声を上げて目覚めていました。まるで悪夢を見たかのように。さらにパドメの夢は現実にも干渉します。そもそもベイダーへ暗殺者らの襲来を教えたのは、夢の中に出てくるパドメなのです。

EP3では暗黒面に落ちたアナキンを見て涙を流し、「死にたい」とまで言い放ったパドメ。それはダース・ベイダーに対する最も強烈な「拒絶」でもあるのでしょう。しかしそれは同時に、アナキンへの強く誠実な愛情を感じさせます。誰よりも強く誰よりも優しいアナキン・スカイウォーカーを、誰よりも愛していたという証拠です。それはアナキンが闇に堕ちた後も同様だったはず。フォース感応者ではないパドメは霊体になって現れることが出来ませんが、それでも深い愛情を今作では感じることができます。暗殺者の襲撃を教え、また囚われたベイダーの前に現れたのが正にそれでしょう。例えそれがベイダーにとって都合のいい幻覚だったとしても、パドメはベイダーをずっと見守っている、とアナキンだって感じずにはいられなかったでしょう。後に息子のルークと引き合い、ライトサイドへ帰還したことが、単なるフォースの導きだけではないと考えさせられる内容です。深い愛情によって暗黒面へ落ちたアナキン。最後に光明面へ戻ってこれたのは、パドメの存在も一因だったのかもしれません。