アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON MAN #178〜#181

新たなアイアンマンとして選ばれて以来、順調にヒーローとして活躍し続けるローディ。しかしその裏では路上生活者として失墜し続けるトニーの物語が続きます。そして今作(正確には前回からですが)では、二人三脚で進み続ける「アイアンマン」に転機が訪れます。ここからが新たな章の始まりです。
f:id:ELEKINGPIT:20220302212944j:imageIRON MAN #179

 

前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

ローディをサポートするアーウィン博士の案により、新たな会社を設立することとなった。まずはその資金集めのためにボディーガードの仕事を始めるアイアンマンだが、ある日奇妙な依頼が舞い込む。なんとフィルムの警護をして欲しいというのだ。

 

〈2人のアイアンマン〉

オバディアに会社を乗っ取られた時、ローディとアーウィン博士は抗議の意を示すため退職していました。しかし無収入のままではとても生活が続きません。そこでアーウィン博士は妹で同じく天才科学者のクライ博士を頼り、持ち前の技術力を活かして会社を立ち上げることに。しかしそのためには莫大な資金が必要です。アーウィン博士とクライ博士は、ローディを新会社に雇うことを約束する代わりに、アイアンマンとしてボディーガード業で資金を稼ぐ約束をします。ローディは様々な仕事をこなしますが、ある日香港から依頼が舞い込みました。ある映画監督のフィルム守って欲しいとの事です。フィルムを乗せた船を見守るアイアンマン。驚くべきことにそこへ現れたのは、生きる放射線ことラジオアクティブマンでした。ラジオアクティブマンに苦戦しつつもどうにか撃破しますが、この事件に裏があるのは間違いなさそうです。
f:id:ELEKINGPIT:20220302232200j:imageラジオアクティブマンと戦うアイアンマン。何故凶悪なヴィランがここに?

 

数日後、ラジオアクティブマンとの戦闘以来異常がなかったからと油断していたローディの前に驚くべき光景が現れました。なんと巨大なアイアンマンが街を覆うように姿を見せたのです。ローディがすぐにアイアンマンとして現れたため巨大なアイアンマンが街に危害を加えることはありませんでしたが、何か悪事が行われているに違いないでしょう。ローディはすぐさまその行方を追います。辿り着いたのは、マンダリンの秘密基地です。マンダリンといえばトニーと何度も激闘を繰り広げた強敵中の強敵。初めて戦うローディに勝ち目はあるのでしょうか? 秘密基地に潜入したローディは早速マンダリンと対峙します。なんとマンダリン曰くラジオアクティブマンを従えていたのは自分だというのです。さらに巨大なアイアンマンはアイアンマンをおびき寄せるための罠だったと。動揺しながらも戦うローディですが、10の指輪を操る天才には大苦戦。激しい攻防の末、ローディは敗れてしまいました。そして洗脳を司る指輪で命令します。自分の首を斬れと。
f:id:ELEKINGPIT:20220302234649j:image洗脳され自分の首を斬ろうとするローディ。窮地を脱したのは予想外の出来事だった。

 

その頃トニーは、グレトルという人物と知り合っていました。グレトルは大の酒好きでホームレスです。大抵の事は酒を飲んで明るく吹き飛ばすその人柄をトニーも気に入っていましたが、驚くべきことにグレトルは妊娠していたことを明かします。さらに40年に1度の吹雪が近づいているとの予報が。もし外で産めば赤ん坊共々凍死してしまうでしょう。病院は無理でも、せめて暖かい屋内へ移動しなくてはなりません。トニーはマンハッタンに所有していたアパートを訪ねますが、所有権は全てオバディアに移ったか放棄されており、入ることすらできません。これに激昴したグレトルはどこかへ姿を消してしまいました。強い風が体中に雪を叩きつける中、トニーはグレトルを探すため吹雪をさまようこととなります。
f:id:ELEKINGPIT:20220303005250j:imageグレトルを探すトニー。自分に出来ることがどれほど少なくなったか思い知らされる。

 

〈アイアンマンの明暗〉

今作で描かれたのは、2人のアイアンマンの「兆し」です。まるで後の展開を占うような描写が多く、正直不安が募ってしまいますが、今回は2人に現れた「兆し」の意味を考えたいと思います。

ローディは新たな会社の設立に携わり、新生活に向けて順調に準備を進めています。しかしアイアンマンの活動を続けるうちに原因不明の頭痛に悩まされるようになります。曰く「脳みそを釣り針で引っ掻いたよう」な激痛に襲われることもしばしばで、一時的に痛みを和らげる以外対策すらできません。一方トニーは相変わらず安酒を傍らに路上生活を続けており、哀れみの目で向けられることも。かつて部下と上司という関係ながら尊敬しあっていた仲間たちからも愛想をつかれる始末です。しかし徐々に自分のアルコール依存症という問題と向き合いつつあり、僅かではありますが自分で立ち上がる意志を見せています。

今作は見事にトニーとローディを対比していると言えるでしょう。ローディに現れた頭痛、トニーに現れた再起の意志。この物語に「アイアンマン」は登場しないという考えを以前綴らせていただきました。それは今作も同じです。この物語はローディとトニー2人でアイアンマンなのです。しかし今作ではそのバランスが徐々に崩れつつあるようにも見えます。「もう」アイアンマンではないトニーに再起の意志が見え、「まだ」アイアンマンではないローディに代償が表れたのです。トニーが挫折したからこそ、ローディが立ち上がったからこそ絶妙なバランスで成り立っている「アイアンマン」の物語は、再び再構築の時を迎えているのでしょう。