アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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AVENGERS(1998)#1〜#4【2022年4月の私的ベストアメコミ】

1963年からスタートしたアベンジャーズシリーズ。常にマーベルユニバースの最前線を駆け抜けてきたこのシリーズは、後に名作として語り継がれる作品がいくつもあります。今回紹介するシリーズもその1つ。今作のライターを務めたカート・ビュシーク氏の出世作の1つとなったほど、今シリーズは高い人気を誇ります。時系列としては、オンスロートとの戦いで全滅したと思われたヒーロー達がマーベルユニバースに帰ってくるヒーローズリボーンを経た後に当たる、ヒーローズリターンから始まります。とはいえそういった事前知識いらずで読めるため、初心者の方にも勧められるでしょう。今や歴史的名作の1つと数えられるカート・ビュシーク氏のアベンジャーズ。その始まりを見ていきたいと思います。
f:id:ELEKINGPIT:20220402232108j:imageAVENGERS(1998)#1

 

〈あらすじ〉

アベンジャーズが帰ってきた! しかしそれは同時に、大事件の始まりを予感させた。ボロボロの状態で帰還したソーは語る。世界が滅びる時が迫っていると。

 

〈何度でもアベンジャーズに〉

世界中でヒーローが襲撃される事件が発生。犯人はトロールやゴブリンなど、様々な異世界の住人でした。しかし謎の光に包まれた途端、トロールは一瞬にして姿を消してしまいます。多数のヒーローが襲撃されながら、幸い誰一人として犠牲者は出なかったこの事件。帰還したばかりのアベンジャーズは何かしらの事件の前兆として注意深く動向を見守っていました。そんな中、豪雨の日にボロボロの状態で行方不明だったソーが帰還します。長い間手入れされていなかったのか、髭も髪もすっかり伸びた様子。しかも驚くべきことに今にも死にそうなほどの飢餓状態ではありませんか。急ぎソーを休ませ、アベンジャーズは何があったのか話を聞きます。重い口を開いた雷神は、世界滅亡レベルの事件が迫っていると語り始めます。アベンジャーズですら敵わない可能性も大いにあり得るのだとか。しかし例え勝てる可能性が1%しかないとしても立ち向かうのがアベンジャーズです。キャップは急ぎ集められるだけのヒーローを集め、事態に備えます。
f:id:ELEKINGPIT:20220402233800j:imageキャップにより招集されたヒーロー達。全員が何度も死線をくぐり抜けた猛者だ。

 

こうして招集されたヒーロー達へ、ソーは改めて何があったのかを語ります。それはある日、ソーがアスガルドを訪れていた時の話でした。普段ならオーディンの息子として歓迎される雷神ですが、その日は様子が違います。なんとアスガルドはあちこちが破壊され、廃墟の都市となっていたのです。今や寂しく風が吹くだけで、そこに住んでいたはずのアスガルド人も犯人の痕跡も見つかりません。そして現世とアスガルドを繋ぐ虹の架け橋すら粉々にされていました。驚いたソーはあらゆる世界へ犯人を探します。しかしどこを探してもヒント1つすら得られません。とうとう飲まず食わずのまま数日、ソーは北欧神話の冥界ヴァルハラにて犯人探しを行います。そこでソーが見たのは驚くべき光景でした。なんとトワイライトソードが無くなっていたのです。トワイライトソードは、炎の魔人スルトの鍛え上げた伝説の剣です。その力は絶大で、世界を創ることも絶滅させることも出来るのだとか。アスガルドを廃墟にできるほどの実力者がトワイライトソードを手に入れたのであれば、それだけで世界滅亡レベルの危機でしょう。アベンジャーズはキャップの手で5つのチームに分けられ、早速トワイライトソード捜索に向かいます。
f:id:ELEKINGPIT:20220402234952j:image5つのチームでトワイライトソードを探すアベンジャーズ。世界滅亡へのカウントダウンは近い。

 

トワイライトソードを発見したのはキャップのチームでした。突如クインジェットを襲った突風を抜けた先、城跡に刺さる巨大な剣を見つけます。しかしそこにはモーガン・ル・フェイの姿が。円卓の騎士アーサー王の妹でありながら黒魔術の天才であり、最凶のヴィランの1人として名を連ねています。キャップらが立ち向かおうとしたその瞬間、ツタのように動く岩々にスカーレット・ウィッチが捕らわれてしまいます。モーガン・ル・フェイの高笑いが辺り一面響きます。これこそがモーガンの策だっのです。世界中でヒーローを襲撃し、アベンジャーズを集結せざるを得ない状況をつくりだす。そしてワンダを捕まえ、ヘックスパワー(現実に僅かながら干渉できる)を無理矢理引き出させた上でトワイライトソードを使えば……恐らくモーガンの夢見た理想郷が実現できるでしょう。高笑いとともにモーガンはトワイライトソードのパワーを解放、世界白い光が襲いかかります。そして世界が目を覚ますと、そこにモーガンの理想郷が広がっていました。
f:id:ELEKINGPIT:20220403001658j:image宇宙を駆けるモーガン女王の騎士団たち。ここはもう、モーガンの世界だ。

 

この世界においてアベンジャーズを「クイーン・オブ・ヴェンジェンス」というチームに変え、モーガンに忠誠を誓っていました。しかしキャップは違いました。元の世界の記憶を有するキャップは、どうにか遭遇したホークアイの記憶を呼び覚ますことに成功。その調子で次々とヒーロー達へ「真実」を告げ、仲間を増やしていきました。一方同じく元の世界の記憶を有するスカーレット・ウィッチは、モーガンの城の地下牢で監禁されていました。この世界の源であるワンダは、残った僅かな力で牢を脱しようと試みますが、堅牢な牢屋はビクともしません。しかし少しずつ漏れでるワンダ自身のヘックスパワーは、徐々に世界を変えつつありました。
f:id:ELEKINGPIT:20220403003102j:imageヘックスパワーを振り絞るワンダ。捕らわれながら、変えられた世界をほんの僅かに元へ戻しつつある。

 

必死の声掛けで記憶を取り戻す者もいれば、そうでない者もいました。キャップの元に集まったアベンジャーズは多くありません。しかしゆっくりと時間をかけてはいられません。キャップは僅かなアベンジャーズを率いてモーガンに立ち向かいます。しかしクイーンオブヴェンジェンスの足止めと、怒り狂ったフルパワーのモーガンには大苦戦。敗色濃厚となってしまいました。その時です。ワンダが戦闘に加わったのは。地下牢から脱出したワンダは、フルパワーのヘックスパワーでモーガンへ立ち向かいます。トワイライトソードの力を使って対抗しようとしますが、そこでモーガンは驚くべき光景を目にします。なんとワンダ開放の影響で多くのヒーローが記憶を取り戻したのです。トワイライトソードを持つモーガンに単独で立ち向かうワンダへ、アベンジャーズ達は1人、また1人も手を貸します。無敵の力を持ちながら背後には誰もいないモーガン。決して無敵ではないが、仲間との絆で何千倍ものパワーを発揮するワンダ。勝負が着いたのは一瞬でした。
f:id:ELEKINGPIT:20220403004101j:image全てのエネルギーを使ってモーガンに立ち向かうワンダ。全アベンジャーズの力が結集した瞬間だ。

 

〈2つの復讐〉

王道中の王道といったストーリーで始まった本シリーズ。ヒーローのカタルシスをキッチリと描きながら、ここぞという部分で胸が熱くなるシーンが多く、読んでいて非常に楽しい作品でした。さてそんな本作では、クイーンオブヴェンジェンスというチームが存在します。直訳すれば女王の復讐者という意味です。そう、アベンジャーズと同じ「復讐」を意味するチームなのです。そしてその世界にとってヒーローチームであるということも共通しています。ではクイーンオブヴェンジェンスアベンジャーズでは何が違うのでしょうか?

最大の違いは世界の構造そのものと言えるでしょう。どちらも正義を執行するために存在するチームですが、クイーンオブヴェンジェンスモーガン・ル・フェイがすべての中心に立つ世界。正義とはモーガン・ル・フェイそのものであり、悪とはそれに反抗する者なのです。そのため命令を下されることは少ないものの、モーガンを守るために動くこともありました。クイーンオブヴェンジェンスの復讐は、即ちモーガンの私的な復讐とほぼ同義なのです。一方アベンジャーズの復讐は、悪を働いたものに報いを与えるという意味。言葉だけならクイーンオブヴェンジェンスと全く同じですが、悪の意味が全く異なります。悪には多くの意味が含まれますが、平たく言ってしまえば無垢なる人々を傷つける行為でしょう。モーガンのためなら無垢なる人々を傷つけることも厭わないクイーンオブヴェンジェンスと、誰も傷つけないために戦うアベンジャーズ。全く違うチームとして描かれた両チームの違いは、ほんの僅かな、しかし決定的なものだったのです。