アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON MAN #189〜#192

アルコール依存症から脱したトニーが帰ってきて以来広がりつつあった、ローディとの確執。新会社マキシマムサーキットの立ち上げも無事に済む中、この2人の関係が当面の課題となっていました。それもついに今回で決着がつきます。壊れかけた絆は、どのように再生されるのでしょうか?
f:id:ELEKINGPIT:20220404205741j:imageIRON MAN #191

 

前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

今やトニーを見るだけでも苛立ちを募らせてしまうローディ。かつての親友はもはや憎き相手となった。アルコール依存症から脱したトニーが自分からアーマーを奪えば、今までの努力はなんだったのか? かつてないローディの怒りは思わぬ方向へと転がる。

 

〈トニー・スタークvsアイアンマン〉

トニー達が立ち上げた新会社マキシマムサーキットは、順調に仕事を受注していました。そんなある日、営業先の施設倉庫の床が穴だらけになったという事件が発生。どう考えても自然発生する現象ではありません。信じられませんが、恐らく誰かが何らかの目的で行った凶悪犯罪。好機と見たマキシマムサーキットは、アイアンマンに警備の仕事をさせます。誰もが寝静まるような深夜に「それ」は現れました。現れたのは、自らをターマイトと名乗るスーパーヴィランです。全身をアーマーで包んだこの敵に、ローディは違和感を覚えます。まるでトニーの技術が使われているようだと。とはいえ戦闘能力は低いようで、軽く捕らえることに成功しました。しかし振り返ると、なんとターマイトの姿が消えていたではありませんか。悔しさの滲む表情を見せるローディへ、トニーは「姿が見えなかったからと言ってどこかへ行ったとは限らないだろう。例えば地下に潜んでいたり……」と推測。これにローディは激怒してしまいます。
f:id:ELEKINGPIT:20220405234522j:image「俺に命令する気か?」もはや隠すことも無くなったトニーへの怒り。その様はアーウィン博士にまるでヴィランだと言わせるほど。

 

さらにローディは、トニーの仕事場である物を見つけました。アーマーです。トニーはアーマーを作っていたのです。それもローディに隠れて。これにローディは煮えたぎるような怒りを覚えます。自分がアルコール依存症の間はアイアンマンを押し付け、いざ復活すればお払い箱なのか。数々の死線をくぐり抜けた苦労は全て無駄になるのか。ローディはトニーへ尋問します。トニーはアイアンマンになるつもりは無いと答えますが、アーマーを見た以上信用できません。怒りと混乱に包まれながら、ローディはターマイトと再び戦うこととなります。しかし精神を大きく乱したローディでは周りに被害が出るばかり。さらに激昴のあまりターマイトを殺そうとしており、まさに暴走状態でしょう。駆けつけたトニーがターマイトを無力化しなければ、アイアンマンによる悲劇が起きていたことは必至だったに違いありません。
f:id:ELEKINGPIT:20220406004220j:imageX-Menの力を借りてターマイトを無力化したトニー。しかしローディにとっては屈辱でしか無かった。

 

それから数日後、荒れるばかりのローディは意味もなくアイアンマンとしてフラフラと出かけてばかりでした。ヴァイブロ脱獄の報せが届いたのはそんな時です。震動波を操り、あらゆる物体に「地震」を発生させるヴァイブロ。その能力を応用して飛行能力まで獲得しており、前回ローディが戦った以上に強くなっていることは確かでしょう。アベンジャーズの助けを呼んでは手遅れになるだけ。ヴァイブロを止められるのは自分だけだとアイアンマンは風を切ります。しかし今ヴァイブロが潜入しているのは航空ショーが行われている場所です。怒りでほとんど暴走状態のローディとヴァイブロが戦えば、多くの犠牲が出ることは間違いありません。誰かがローディを止めなければならないのです。トニーはこの時のためにアーマーを用意したのだと語ります。アイアンマンに戻るつもりは無い。願わくば2度とアーマーを着たくはない。アーマーを着ればアルコール依存症ともう1度向き合わねばならない。多くの葛藤がありました。しかし今のローディには助けがいります。いつか来るであろうこの日を予測していたトニーは、ほとんど旧式に近い新アーマーを着用しました。
f:id:ELEKINGPIT:20220406012947j:image自分がやるしかない。アイアンマンを辞めたトニーが、もう1度だけ鉄の意思を燃やす。

 

前回の戦いでヴァイブロの弱点を熟知していたトニーは、的確に対処、あっという間にヴァイブロの撃破に成功します。しかしその姿を見たローディの激しい憤りは頂点に達します。アイアンマンが帰ってきた。読者の私すらそう思ったのですから、ローディにはそれがより強く感じられたでしょう。もはやローディはトニーを敵と見なしていました。声をかけようとするトニーへ、迷いなく拳で返したのです。地上で、上空で、激しい金属のぶつかる音が響き渡ります。設備と材料不足からローディのアーマーに比べて半分以下の性能しかないトニーのアーマーに勝ち目はあるのでしょうか? 誰よりもアイアンマンを知るトニーの、捨て身の秘策が始まります。
f:id:ELEKINGPIT:20220406013848j:image「元」親友の声すら届かず、あるのはただ暴力のみ。誰も望まない戦いが始まった。

 

〈鉄の意思〉

この物語に「アイアンマン」は登場しない、という話は今までも何度かさせていただきました。それは今作でも同様です。しかしそのバランスがもう1度崩壊したのが今作では無いでしょうか? 今回は、トニーとローディの対決を経て再構築されたこの物語の構図をいま1度見直したいと思います。

以前、この物語にはもうアイアンマンではないトニーと、まだアイアンマンではないローディの2人によって成り立っているという話をさせていただきました。ヒーローになることを恐れ、ヒーローになることを拒み続けるトニー。ヒーローとしては未熟で、ヒーローとしては経験不足の目立つローディ。しかし今作まで積み上げた戦いは、ローディを未熟で経験不足なヒーローではないと証明し続けました。戦歴だけなら一流のヒーローと何ら遜色ないレベルとなったのです。一方トニーも、ヒーローになることを拒みながらもアーマーを受け入れました。2人はただ「アイアンマンではない者」となったのです。では2人は何故アイアンマンでは無いのでしょうか? アイアンマンとは鎧を着るだけでなれるヒーローではありません。鎧を自分の手先と勘違いし、的外れの万能感に囚われてしまったローディ。過度に鎧を拒み、その恐怖に囚われてしまったトニー。しかしどれほど高性能なアーマーであっても、所詮はただの鎧です。自分の一部ではありません。ローディがアイアンマンに欠けているもの、それは誰かを守るという心です。そしてトニーは立ち上がるための勇気です。2人が欠けているものを思い出せば、きっと2人のアイアンマンが生まれることでしょう。そして今作を見る限り、恐らくは近いうちに。