トニーが再びヒーローの精神を取り戻した前回。一方、ローディを襲い続けた謎の頭痛の原因は未だ不明のままストーリーが進行していました。トニーとローディの2人に残された最後の課題です。2人のアイアンマンが誕生する瞬間は見逃せないでしょう。
IRON MAN #196
前回はこちらelekingpit.hatenablog.com
〈あらすじ〉
ピム博士の助言の元、アルファ・フライトのヒーロー「シャーマン」を訪ねたローディ。シャーマン曰く、なんとローディを悩ませていた頭痛の原因は魂にあるというのだ。
〈頭痛の種〉
トニーやピム博士ですら解明できなかったローディの頭痛の原因。そこで生物学的な原因はないと考えたピム博士は、シャーマンに会いにいくよう伝えます。カナダを防衛するヒーローチーム、アルファ・フライトに所属するシャーマンは、不思議な魔術を扱う魔法使いです。なんとシャーマンはローディを見ただけで頭痛の原因を推測しました。「魂」です。と、言われても「?」となってしまうでしょう。実際ローディもピンと来ていない様子。そこでシャーマンは「名もなき別次元」へローディを連れていきます。そこは言葉では形容しがたい摩訶不思議な空間。それも雨粒が大岩に変わって降ってくるなど、無敵のアーマーがなければ到底生き残れないような世界です。自らの身を守ることで精一杯な時にシャーマンは禅問答のような会話を開始しました。頭痛も始まり、一見意味のわからない会話にイライラし始めるローディ。しかし無駄のように思える会話を続けているうちに、脳内で「声」が響いてきました。声の主はローディの魂自身。ローディの心根が語りかけたのです。どれだけ取り繕おうと相手は自身のいわば本音。とうとう根負けしたローディは、自らが抱えていた「罪悪感」の懺悔を始めます。
ローディが抱えていた「罪」の告白。それこそがローディの頭痛の種だった。
ローディの罪悪感。それは本来トニーが着るべきであろうパワードスーツを自分のものであるかのように着用していたことでした。幼い頃からヒーローに憧れていたローディが、その願いを最も充足させた瞬間がアイアンマンだったのです。だからこそトニーと戦うほど焦ってしまったのです。ローディはこの名もなき別次元にパワードスーツを脱ぎ捨てることで頭痛を消し、脱することに成功しました。パワードスーツはまたトニーが作ってくれることでしょう。ローディの表情は晴れ晴れとしていました。一方その頃。前回巨大な恐竜を暴れさせた真犯人であるドクター・デモニクスは驚くべき発見をしました。なんとトニーが脱ぎ捨てたパワードスーツを見つけたのです。初期に作ったパワードスーツと大差ない性能だとしても、並の天才では到底たどり着けない科学技術の結晶。これを使ってドクター・デモニクスはアイアンマンへ復讐しようと考えます。そして同刻、名もなき別次元では不可解な精神体「オムノス」がローディの捨てたパワードスーツへ取り付き、現世へとやってきました。2人の「アイアンマン」がトニー達の命を狙います。
激突する偽アイアンマンvs偽アイアンマン。事態を収めようと動き出したトニーの秘策とは……?
〈脱アーマー〉
それぞれの抱える問題を順調に解決し、万事復活となりつつある今回。「アイアンマン」として復活するために2人が取った行動は、偶然にも「アーマーを脱ぐこと」でした。この行動にはどのような意味があるのでしょうか?
物語の構造には、「狭い道を抜けると不思議な世界が広がっていた」というものが多く見られます。千と千尋の神隠しがまさにそれです。狭い道を通ってたどり着いた異世界での暮らしから成長した千尋は、再び狭い道を通ってこの世に戻ってきます。これを「生まれ直し」と捉えることも出来るでしょう。狭い道を経由して成長することで、以前とは違うようになるのです。さて、今回と前回の「アーマーを脱ぐこと」とは、この構造に極めて近いものだと言えます。アーマーを着用したことで逆に負の側面に囚われた2人は、アーマーを脱ぐことで開放されたのです。しかしトニーはホームレス生活を始めるにあたり、アーマーをローディへ託したはず。そしてローディもアーマーを脱いで生活することがあったはず。これは「アーマーを脱ぐこと」に該当しないのでしょうか? 2人の様子を見れば当然違います。ここでの「アーマーを脱ぐこと」とは、アーマーから解放されるということなのです。アイアンマンを引退していたトニーは、その恐怖に囚われていました。そしてローディはアーマーの万能感に魅せられ続けていました。それらを捨てることこそが「アーマーを脱ぐこと」なのです。そしてアーマーの力ではなく、自分の手足で立つことこそ、アイアンマンに求められていることなのです。