アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

MENU

TALES OF SUSPENSE #56

自分こそがアイアンマンだ、という確固たるアイデンティティを確立する以前、トニーは何度も「アイアンマン」の存在に悩まされ続けていました。アイアンマンとトニーの二重生活、卑劣で凶悪な敵の数々、終わることの無い死と隣り合わせの戦い……超人ではないトニーが過ごすには地獄の日常だったのでしょう。さて今作では、そんな耐えきれない重荷から、トニーがアイアンマンを辞めようとしたお話です。最初期の作品である今作、「アイアンマン」との向き合い方を、後年の作品と比較しながら読み進めるのもまた面白いかもしれません。
f:id:ELEKINGPIT:20220423211646j:imageTALES OF SUSPENSE #56

 

関連記事elekingpit.hatenablog.com

elekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

ある日、アベンジャーズからアイアンマンへ緊急連絡が入った。凶悪なヴィランであるユニコーンの捜索を依頼しようというのだ。しかしトニーはこれを拒否。なんとボディーガードのアイアンマンは長期休暇に出ているらしく……!?

 

〈脅威のパワーホーン〉

スターク社は騒然としていました。社長室の付近から落雷のような轟音が何度も響き渡っているのです。正体はアイアンマンでした。トニーはアイアンマンとして生きることへの抱えきれない悩みに耐えきれず、アーマーを着たまま辺りを殴りまくっていたのです。ペッパーから心配の電話を貰いようやく落ち着きますが、とてもヒーローとの二重生活を続けれる精神状態ではありません。限界を感じたトニーは、アイアンマンを「長期休暇中」ということにし、しばらくの間アイアンマンを辞めることにしました。こうすれば仕事もプライベートも充実。アイアンマンになる以前の生活に近い日々を過ごし、一抹の違和感を覚えながらも楽しげな表情を見せていました。アベンジャーズから緊急連絡が入ったのはその時です。なんでも凶悪なヴィランユニコーンを捜索して欲しいのだとか。当然トニーは拒否、長期休暇中のアイアンマンはまだ帰ってきそうにありません。
f:id:ELEKINGPIT:20220423220749j:imageアベンジャーズすら警戒するほどのヴィランユニコーンを噂によるとアイアンマンを執拗に狙っているらしいが……?

 

数日後、幸か不幸かユニコーンはスターク社の工場に姿を現します。なんとユニコーンはアイアンマンを倒そうと、まるで道場破りのように名乗り出ました。しかしトニーは不在。これ以上工場の設備を破壊されないため、果敢にもハッピーが飛びかかります。元プロのボクサーであり、現在でも街のゴロツキ程度なら一瞬でK.Oできる腕前を持つハッピー。しかしユニコーンは街のゴロツキとは比べ物にならないほどの強さでした。ハッピーが手も足も出せないほど殴られ、最後にはユニコーンの必殺光線、パワーホーンをまともに浴びせられてしまいます。更にユニコーンはペッパーを誘拐、アイアンマンを誘い出すための人質としました。トニーがスターク社襲撃の連絡を受けたのは、ハッピーが瀕死の重傷で病院に運び込まれた時です。
f:id:ELEKINGPIT:20220423222643j:image必殺のパワーホーンを直撃させられるハッピー。アイアンマンさえいれば起こらなかったはずの悲劇だ。

 

ハッピーが担ぎ込まれた病院へ急行するトニー。医師へ最高の設備と最高の治療を懇願しますが、現状では奇跡を待つ以外方法はありません。もしあの場にアイアンマンがいたら。ハッピーが瀕死になることも、ペッパーが連れ去られることもなかったはず。アーマーを着用する覚悟は既に決まっていました。一方ユニコーンは、拉致したペッパーに何故自分がアイアンマンを追いかけるのか、その理由を語っていました。ユニコーンのパワードスーツは元々、「かの国」で初代クリムゾン・ダイナモであるヴァンコ教授と共同開発したものです。必殺光線のパワーホーンは砲弾もミサイルも撃ち落とし、光線を応用したエネルギーフィールドを形成すれば1000トンもの爆薬から身を守ることすら可能。この最強の装備を使ってアイアンマンを倒すことで、資本主義の愚かさを証明しようというのです。アイアンマンが襲いかかってきた時も恐ろしげな自信に満ち溢れるユニコーン。2人のアーマーが命懸けの激突を始めます。
f:id:ELEKINGPIT:20220423224208j:image怒りに震えるアイアンマンと戦うユニコーン。アイアンマン必勝の策を仕込んだと豪語するが……?

 

〈守れないもの〉

誰もが羨む大金持ちであり、稀代の天才でもあるトニー。一見するとこの世のあらゆるもの全てを手にしているかのような完璧人間です。しかし今作でのトニーは、それをなんの意味もないものだと一蹴していました。そんなものはアイアンマンとして生きていくのに何の役にも立たないと言うのです。ならばアイアンマンを捨ててしまえ、と考えたのが今作。トニーの気持ちを思えばこの決断に至るのは仕方の無いことでしょう。しかしそれでは愛する2人の親友すら守れないと気付かされます。トニー・スタークではハッピーもペッパーも守ることが出来ないのです。ならば捨てるべきはトニー・スタークだったのでしょうか? それも違うことが今作では示されています。トニーは大企業の社長です。従業員全ての生活を守るという責任があるのです。これはアイアンマンには決してできる仕事ではありません。問題はトニーがこれに気付いていないということ。アイアンマンでなければ誰も守れない。アイアンマンならば皆を守れる。トニー自身が確立したアイデンティティは薄氷のように危うげなものです。