アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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SUPERIOR IRON MAN vol2 STARK CONTRAST

「完璧な理想郷」を目指してサンフランシスコに君臨した衝撃のシリーズ、SUPERIOR IRON MANもいよいよクライマックスへ。デアデビルを下し、いよいよ完璧な世界が近づくかと思いきや……抵抗の炎はまだ消えていません。次なる敵はかつての仲間だったペッパーと、トニー・スタークです。
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日本語版関連コミック

 

前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

※なお今回は紙の書籍から画像を引用させていただきます。見えにくい等ございましたらコメントでご指摘くださると嬉しいです。

 

〈あらすじ〉

悪性に反転してしまったトニーはサンフランシスコを意のままに操り、「完璧な理想郷」を築こうとしていた。抵抗するデアデビルを倒したトニーの次なる敵は、8年前の記憶を持つアイアンマンだ。遂に明かされるスーペリアなトニーの目的。遂に始まるトニー・スターク抹消計画。人類の未来はどこへ向かうのか?

 

〈2人のエゴ〉

サンフランシスコをほとんど乗っ取ったトニーの次なる目標は、マスコミの掌握でした。なんと有名な新聞社やSNS運営の重役を呼び出し、目の前で買収を宣言するのでした。メディアの影響力をも利用すれば、ますますトニーの帝国は盤石なものとなるでしょう。ところがトニーの買収宣言に待ったをかける者が。現れたのは、かつての秘書であり信頼する仲間であったペッパーでした。当時トニーはスターク・レジリエント社をペッパーに譲り、自身は新たなスターク・インダストリーズ社を設立していました。その後ペッパーはスタークの名をとりレジリエント社改名して経営していたようです。なんとトニーがマスコミを買収する直前に各社の株の半分以上を買い上げることで事実上経営権を獲得、トニーの買収劇を阻止してみせるのでした。トニーの一手先を読んだ見事な手腕、背後に何者かの存在を感じざるを得ません。ペッパーに連れられて訪れたレジリエント社の秘密地下、トニーは驚くべき敵と対峙します。8年前の記憶を持つアイアンマンです。
f:id:ELEKINGPIT:20220510012956j:imageトニーの8年前までの記憶をインストールしたアイアンマン。もう1人のトニー・スタークとして立ちはだかる。

 

スーペリアなトニーは、自らの敵となったアーマーへ自身の計画を語ります。トニーの最終目標は人類救済。しかし全員を救うほどの猶予も余裕も残されていません。ならば救済者たる自らが人類の選別を行うべきなのは明白ではないだろうか? ペッパーとの計画ではトニーを拘束し、説得することが最優先とされていました。しかしスーペリアなトニーの人類救済計画を知ったアーマートニーは、スーペリアなトニーの人格に自らの人格を上書き保存することで抹消しようと考えます。奇策で1度はアーマートニーを倒したスーペリアトニーですが、簡単に諦める相手ではないことは自らが1番理解しています。そこでスーペリアトニーは更なる策で迎え撃とうと動き始めました。
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f:id:ELEKINGPIT:20220510015354j:image迫り来る歴代アーマー軍団(画像上)に、サンフランシスコ市民の肉壁で対抗するスーペリアトニー(画像下)。神すら恐れる愚行を躊躇しないのは、スーペリア(より優れた)故か?

 

今作SUPERIOR IRON MANは、長さの関係で当ブログでは紹介しきれなかったエピソードが沢山あります。それらはぜひ本編で読んで頂くとして、最後にこの物語の行方を紹介していきたいと思います。咄嗟の機転と予め用意した策でアーマートニーを再起不能にしたスーペリアトニー。ペッパーの制止も振り切り、1人拠点へ帰ろうとしていました。しかしペッパーは経営権を実質的に掌握したマスコミ各社へエクストリミス3.0の情報を公開させます。こうしてスーペリアトニーの人類救済計画は破綻し、傲慢な天才は孤独の道を突き進むこととなったのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220510023613j:image怒号、罵声を浴びせられながら街中を飛び去るスーペリアトニー。信頼する味方をも失い、孤独に人類救済の道を探し続けることとなった。

 

〈アイアンマンの負債〉

儚くも呆気なく崩れ去ったスーペリアトニーの「完璧な理想郷」。世界を守るには金が必要だと高額な課金を要求し、一方で自身は救う対象を選別するなど傲慢な様が何度も見受けられました。しかしこれらをただ「傲慢なやつだ」と片付けてしまっていいのでしょうか? 

反転してしまったトニーとその前では、全く逆の行動を取っていたと考えていいでしょう。普段のトニーとスーペリアトニーは鏡合わせの存在なのです。時代を進めるには様々な代償が伴います。日本だけでも歴史の転換点を振り返れば、時代の節目節目には大きな犠牲が伴っていました。ではフューチャリストたるトニーの進める「未来」に、今まで大きな犠牲が伴っていたでしょうか? 答えはYESでありNOです。マーベル市民の多くはスターク社が提供した様々な最先端科学によって生活の質が向上したと言っていいでしょう。強いて代償を数えるなら、新たな機械などに慣れてもらう程度。しかしそのために市民が払うべき犠牲は全てトニーに向けられていました。技術を取り込もうとすれば反対され、何かあれば全てトニーの責任にされる。常人では耐えられないほどのプレッシャーに晒されていたことは想像に固くないでしょう。エクストリミス3.0とは、これらトニーが背負ってきた負担を肩代わりしてもらったに過ぎないのです。おそらくスーペリアトニーの行動はこのようにトニーが背負ってきた負担の裏返しと取れるものが多くあります。それだけ市民はトニーへ多くの負担をかけ、またこのような事態がないとトニーは一生背負い続けることもなるのです。スーペリアトニーの行動を非難する前に、1度我々も胸に手を当てるべきかもしれません。