アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON MAN #29

CAPTAIN AMERICA/IRON MAN THE ARMOR AND THE SHIELDで約半世紀ぶりに日の目を浴びたキャラクターがいます。オーバーシーアーとミュルミドーンです。ロボットによる人類救済を唱えたオーバーシーアー、キャップとトニーすら苦戦させたミュルミドーン。なんと初登場にしてそれ以外唯一の登場回が今回紹介するIRON MAN #29のみという超マイナーヴィランだったのです。ならばこのヴィランを知るためにも読まない手はないでしょう。短いながらスピーディな展開の連続で、ページをめくる手が離せません。
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〈あらすじ〉

カリブ海への船旅で日頃の疲れを癒そうとしていたトニー。しかし道中、遭難した小型船を発見する。なんと船員はとある小国から命からがら脱出してきたというのだ。人間を奴隷の如く扱うその国は、機械が支配しているらしく……

 

〈機械帝国〉

カリブ海をのんびり船旅するトニーは、ある日波に揺られるボートを発見します。しかも乗組員は全員気を失っているではありませんか。仲間と共に急いで自分の船へ乗せると、全員まもなく目を覚ましました。なんとどこかの国へ亡命するためにボートで逃げてきたと言うのです。船員らの話はにわかには信じられないようなものでした。元々故郷は穏やかな小国だったのですが、ある日突然現れた謎のスーパーコンピューターによって全て支配されてしまったのです。以来国民は奴隷同然に扱われ、軍隊も屈服、国民を監視する存在と成り果ててしまいました。この生活に限界を感じた船員らは、命懸けでここまで辿り着いたと言います。リーダーのマリアは、トニーへアメリカまで連れて行くよう懇願しました。
f:id:ELEKINGPIT:20220525144902j:imageボートの上でぐったり倒れていた難民たち。トニーの助けで命の危機は脱した。

 

マリアらをアメリカへ送ると、トニーはパワードスーツを纏っていました。マリア達の故郷を取り戻すため、戦うことを決意したのです。しかしそれには大きな覚悟が必要でした。相手は国家をも支配した強敵中の強敵。これまでの敵と比べ、より強くより恐ろしいでしょう。それでもトニーがアイアンマンである限り、自らの正義を貫くのに躊躇う理由はありません。これはアイアンマンとしての力と、勇気を試す機会なのです。トニーはそう言い聞かせ、単身機械帝国へと踏み出します。マリアの話によると、謎のスーパーコンピューターことオーバーシーアーは中央管制塔にいるとの事。恐怖に強ばった市民の表情からトニーの決意はより固くなります。軍隊のセキュリティを強引に突破しながらオーバーシーアーの元に辿り着いたトニー。厄介な戦術で翻弄され、ついぞ決定打を放てないうちに、警護用のロボットミュルミドーンまで現れます。ミュルミドーンはアイアンマンと互角かそれ以上の超パワーを持つ強敵。このままではジリ貧でやられてしまうことは必至でしょう。オーバーシーアーを倒すには、力と勇気だけでは足りないようです。ならば奇策に転じるまで。トニーはオーバーシーアーの回路を咄嗟にいじり、オーバーシーアーとミュルミドーンを互いに破壊しつくし合うよう仕組みます。中央管制塔全体が揺れ始め、爆発が起こったのはそれからまもなくのことでした。
f:id:ELEKINGPIT:20220525233437j:image互いに攻撃しあうオーバーシーアーとミュルミドーン。機械帝国はトニーの奇策で崩壊した。

 

〈科学の行方〉

オーバーシーアーによる国家の独裁。全ては無名の科学者が国家を支配するために、オーバーシーアーを作り上げたことが原因だったと作中で判明します。そもそもオーバーシーアーは、「監督」を意味する言葉です。科学者の目論見はあくまでオーバーシーアーに国民を監督させ、自らが国を支配することだったのでしょう。では何故科学者ではなくオーバーシーアーが国を支配していたのでしょうか?

科学に罪はなく、ただ使う人間に罪がある、というのはよく聞く話です。我々が使うGPSは元々兵器に使われていた技術で、アインシュタインが発見した相対性理論は後に原爆を生み出します。科学は使い手次第で人々の生活を助け、また多くの人を殺すのです。ならば科学を使う我々は、その使い道を慎重に検討するべきでしょう。オーバーシーアーを作り出した科学者は、まさにその使い道を誤ってしまったのです。似たような技術ならトニーも後に完成させています。AIです。流暢な会話が可能なほどの技術、恐らく当時のトニーでも到達するのは難しかったはず。しかし肝心なのはその使い道です。トニーは人格を持つAIで世界平和に貢献し、一方で今作の無名の科学者は小国ひとつを支配してみせます。たった1つのテクノロジーで大きく2人の人生を左右したのです。そして道を踏み外した科学者に訪れる末路……それこそがオーバーシーアーによる国家の支配であり、アイアンマンの登場による失脚ではないでしょうか? この物語は、無名の科学者がトニーから、科学を悪用したことに対する「アベンジを」受けた物語なのかもしれません。