アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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AVENGERS ADAPT OR DIE

邦訳版も数多く出版された、ジョナサン・ヒックマン氏のアベンジャーズ。最大の特徴はなんといっても超大型クロスオーバー「シークレット・ウォーズ」へと繋がる壮大なSF譚でしょう。宇宙最強のビルダーズ軍やサノスとアベンジャーズの全面戦争を描いたインフィニティで団結を描き、空白の8ヶ月を経て分裂したアベンジャーズが三つ巴の全面対決するタイム・ランズ・アウト編と、読者を飽きさせない様々な展開がありました。さて、本作はそんなジョナサン・ヒックマン氏が描くアベンジャーズの1冊です。邦訳版が発売されなかった話ではあるのですが、本作のみで楽しめる要素も多いのが特徴。後の伏線となる部分もあり、邦訳版と併せて楽しむことができます。
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日本語版関連コミック

 

〈あらすじ〉

ビルダーズ、そしてサノスとの宇宙戦争を終え再び地球に平和を取り戻したアベンジャーズは、戦勝パーティのバーベキューを楽しんでいた。一方SHIELD長官のマリア・ヒルは驚くべきものを発見する。戦いの跡、アベンジャーズの痕跡、ハンク・ピムの死体。全ての鍵を握るのは、もう1つのアベンジャーズだった。

 

アベンジャーズvsアベンジャーズ

科学による世界征服を企む悪の組織、AIM。ここ最近頻発する「マルチバースが急速に接近し、爆発して消滅する現象」を利用し、失われたマルチバースから物を取り出す実験を行っていました。そして遂に実験は成功します。マルチバースの扉の向こうから現れたのは、なんと地球最強のヒーローチーム、アベンジャーズです。新たなAIMの戦力にしようと近づくAIMですが、当然アベンジャーズはこれを拒否。AIM島を脱出し、困惑しながらも見慣れた景色とは少し違うニューヨークへ降り立ちます。何よりもアベンジャーズが驚いたのは、住民達の反応です。まるで自分達を知らないかのように奇異の目を向けてくるニューヨーク市民。おかしい、本来ならば雷神たるソァの姿を見るだけで跪くはず。そうであるべきはず。この世界にはアベンジャーズはいないのでは? ならば今よりこの世界をアベンジャーズの世界としよう。雷神ソァが制裁の稲妻をニューヨークへ落とし、市民への虐殺が始まりました。
f:id:ELEKINGPIT:20220527171438j:imageAIMによってマルチバースからやってきた、ジェネラル・ロジャース率いるアベンジャーズ。相応しくない者として鉄槌を振るう雷神ソァ、トニー・スタークへ激しい憎悪を燃やすアイアン・モンガーなどこの世界のアベンジャーズとはまるで違う。

 

不屈の盾を持つジェネラル・ロジャースが率いるアベンジャーズは、ニューヨークの一角を灰へと変えました。これこそがアベンジャーズの世界です。この事態にAIMはかつて採取したアベンジャーズのDNAで作ったロボット、アダプトイドの軍団を投入して沈静化を図ろうとします。アダプトイドはアベンジャーズの能力を複数持つAIM史上最強の兵器です。これにはハルクもソァも、アイアン・モンガーも太刀打ち出来ませんでした。圧倒的なパワーに苦戦したアベンジャーズは、ハンク・ピムの犠牲と共に撤退、姿をくらまします。本家アベンジャーズにマリア・ヒルから報告があったのは全てが終わった後でした。
f:id:ELEKINGPIT:20220527173322j:image邪悪なアベンジャーズへ襲いかかるアダプトイド軍団。その力は本家をも超える?

 

アベンジャーズに課せられた任務は2つ。邪悪なアベンジャーズの居場所を突き止めること、そしてその逮捕です。トニーはアイアン・モンガーのパワードスーツが古いアーマーと同一であると仮定し、アーマーから発される独自の信号を辿ります。一方AIMも、アダプトイドが使えない今は邪悪なアベンジャーズを制御下に置けないと判断、別次元へと送り込む算段をつけ始めます。邪悪なアベンジャーズを巡る戦いはニューヨークでスタートしました。ソーvsソァ、キャプテン・アメリカvsジェネラル・ロジャース、アイアンマンvsアイアン・モンガーとそれぞれが平行世界の自分と衝突。そしてAIMは衛生からアベンジャーズらの動きを捕捉、誰にも気づかれることなく特殊なライフルで狙いを定めます。
f:id:ELEKINGPIT:20220528003632j:image1度両方のアベンジャーズをフォースフィールドで封印し、邪悪なアベンジャーズだけを平行世界へ送ろうとするAIM。アベンジャーズの戦いはこうして幕を閉じようとしていたが……。

 

〈適合か死か〉

平行世界のアベンジャーズとの戦いを描いた本作。これが後のタイム・ランズ・アウト編にて、ソァのハンマーやSHIELDの秘密兵器として投入されるハルクに繋がっていくのですが、それはまた別の話。さて、そんな本作のタイトルは「Adapt or Die」。日本語に訳すなら「適合か死か」となるでしょう。では何故このようなタイトルなのでしょうか? イルミナティの活躍を描いたNEW AVENGERSシリーズや今作以前に起こったイベント、インフィニティでは「EVERYTHING DIES」が強調されていたにも関わらず。

一見すると豪に入れば郷に従えということわざもある通り、この世界に最後まで適応出来なかった平行世界のアベンジャーズを指していると考えるでしょう。実際それ以上でもそれ以下でもないのかもしれません。しかし、本作はアベンジャーズの物語であると同時にイルミナティの物語でもありました。平行世界の邪悪なアベンジャーズはインカージョンがきっかけでAIMにサルベージされ、またバナー博士はイルミナティの復活を見抜き、新メンバーとして加入したのです。当時インカージョンはイルミナティによって秘匿され、世界のほとんどが存在すら知りませんでした。アベンジャーズシリーズに絡むはずのない要素だったのです。そうなれば、このタイトルは邪悪なアベンジャーズにのみ向けられたものではないと考えても間違いではないでしょう。

私は、今作のタイトルが後の展開を暗示したものになっているのではないかと考えました。適合か死か。インカージョンという究極の状況において、少しでもこの問題に適せねば待っているのは死のみだという。そして現在この世界で唯一インカージョンに対処しているイルミナティの対応は、適切ではなかったということが考えられます。なぜなら「Everything Dies」なのですから。ではアベンジャーズは? インフィニティにてこの世界はアベンジャーズの世界だ、と各銀河で旗まで建てられたアベンジャーズはこの問題にどのように向き合うのでしょうか? 応えはこの先の物語に詰まっているのでしょう。アベンジャーズワールドは適応したのか、それとも死か。全てはアベンジャーズに託されたのです。