アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON MAN MANHUNT

市民の味方としてあらゆる危機からマーベルユニバースを守ってきたヒーロー達。しかしマーベル市民は時にその力を恐れ、疑いの目を向けてくることも。特にアイアンマンのように正体を公表したヒーローは様々な事情で陰謀説に仕立てあげられたりするなど、理不尽とも言えるような仕打ちを受けることもしばしばあるほど。今作「MANHUNT」はそのいい例とも言える事件でしょう。守るはずの市民に攻撃され、疑われ、それでも泥臭く自らの正義を固く貫き続ける姿に魅力を感じる人も多いはず。常人として、鉄人として戦い続けるトニーの姿に注目です。
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〈あらすじ〉

ワシントンにある中国大使館が何者かに攻撃された。死者63名に及ぶこのテロは、スターク社極秘の技術が使われていたことが判明する。あのトニー・スタークがテロリストに技術を売ったのか? 誰もがトニーを疑う中、密かにある陰謀が進んでいた。

 

〈トニー・スタークの命をもって〉

それはある日のことでした。突如空を駆け抜ける閃光と共に、中国大使館が破壊されたのです。死者63名行方不明者100名以上の大事件はテロと断定され、すぐさま捜査を開始。一方生存者の救助作業を行っていたトニーは、建物の断片などからある武器が使われたのではないかと推測、SHIELDのフューリー長官の元へ向かいます。それはかつて政府から依頼され、トニーが設計を行った光線魚雷の技術だったのです。本来光線魚雷は極秘中の極秘、スターク社でも存在を知っている人間すらほとんどいないはずのものです。どこから流出したのか? フューリー長官のツテを辿り、犯人を特定しようとトニーは考えていました。しかしここで予想外の展開が。なんと今回の事件の特別捜査官、ニールはトニーが北朝鮮に極秘の技術を売ったのではないかと言い始めたのです。この疑惑は翌日の新聞の一面を飾り、トニー及びスターク社はFBIの捜査対象となってしまいました。
f:id:ELEKINGPIT:20220604215221j:image新聞の一面全てが報じるトニーの「容疑」。政府が公式見解としてトニーの名をあげるほど疑惑が追求されていく。

 

途方に暮れるトニーにさらなる悲劇が襲います。夜道をハッピーと共に夜道を歩いていると突然狙撃されたのです。狙撃手を倒すことには成功したものの、ハッピーは意識不明の重体、トニーもしばらく入院せざるを得ないほどの大怪我を負ってしまいました。その次の夜には病室に暗殺者が襲撃。命懸けで返り討ちにはしますが、この事件にトニーの命を狙う人物が隠れていることは間違いありません。じっと入院していては命がいくつあっても足りないでしょう。トニーはパワードスーツを着てボロボロの体で調査を始めます。一方ニール特別捜査官は北朝鮮でのスターク社の取引を発見したとトニーに詰め寄ります。しかしそれは、原子力発電の代わりとなる太陽光発電システムとソーラーパネルの売買契約。ニール捜査官の言う400万ドルの大規模な取引でもありません。それでも疑いの目を離そうとしないニール捜査官。どうやらトニーが事件の調査を行うには、この捜査官の目を掻い潜らねばならないようです。
f:id:ELEKINGPIT:20220605223053j:image入院中のトニーを狙う暗殺者。このままではトニーの命がいくつあっても足りない。

 

調査を始めるにあたり、これまでの事件を1度整理しましょう。①国際社会を恐れぬテロを行える。②スナイパーや暗殺者を雇う組織力を持つ。③東アジアにコネクションがあると思われる。ここからトニーはマンダリン一味の残党の仕業であると推理しました。現在マンダリンは死んでいるはず。ならば首魁は恐らくその子どもテムジンでしょう。あとはテムジンらの居場所を突き止めるのみ。さらに調査を進めると、ある衝撃の事実を知ります。この事件の鍵を握るもう1人の正体、ニール特別捜査官です。ニール捜査官は実はテムジン一味とFBIの二重スパイをしており、証拠をでっちあげて世間の目をトニーに向けさせていたのです。そして極秘の光線魚雷の技術も国防省から盗み出したものをテムジン一味に流したものでした。ニール捜査官は諦めたように笑みを浮かべ、テムジンのいるビルをトニーに告げるのでした。
f:id:ELEKINGPIT:20220605235116j:image観念し、全てを明かすニール特別捜査官。一連の事件に深い繋がりを持つ黒幕はすぐそばにいた。

それはニューヨークのとあるビル。トニー・スターク到着の報せを受け、復讐の炎を燃やす人物がいました。テムジンです。マンダリンをトニーに殺されたと考えるテムジンは、あくまで正々堂々とアイアンマンに勝とうとこの日のために修行を重ねてきました。「チ」を操る術に達人級のカンフー、受け継いだ10の指輪。これで負けるはずがあろうか。テムジンの思惑通り、「チ」とカンフーのコンビネーションにアイアンマンは為す術もありません。トドメを刺そうとしたその瞬間、アイアンマンが驚くべきことを口にしました。なんとアイアンマンは中国大使館のテロを指揮したのは自分だと言うのです。テムジンには全く身に覚えのないこと。なんと一連の事件はテムジンの部下が暴走して行ったことだったのです。テムジンとその部下では、目的が微妙に異なっていました。テムジンを第2のマンダリンとして仕立てあげたい部下、あくまで正々堂々と戦い勝利することにのみ尽力するテムジン。この違いが徹底的な軋轢を生んだのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220606010825j:image逆上した部下に背中を刺されるテムジン。それでもその姿はどこか誇り高い。

 

〈マーベルを生きる市民〉

アインシュタインは大罪人か? と聞かれると、ほとんどの人は違うと答えるでしょう。しかしアインシュタインは原爆の基礎理論を作った人物。アインシュタインさえいなければ多くの人々がしなずに済んだかもしれません。……なんて話はバカバカしいことこの上ないもの。しかしマーベル市民が今作でトニーに行ったことはこれとほとんど同様だったと言えるでしょう。決してマーベル市民がバカなのではありません。それほどアイアンマン、そしてヒーロー達を恐れている証拠なのです。ヒーローを信じたい。でも自分たちよりはるかに強いヒーローが悪事を働いていたら……? そんな不安が猜疑心へと繋がっていったのでしょう。一方MARVEL SNAPSHOT AVENGERSではヒーローを信頼して避難する人々の様子も。人は信じたい時にのみヒーローを信じるのかもしれません。