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MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS DARTH MAUL【2022年6月私的ベストアメコミ】

広大な銀河を巡るスターウォーズには様々なキャラクターが登場します。中でもダース・モールの登場に衝撃を受けた方は多いのではないでしょうか? 文字通り鬼のような形相、ダブルブレードと圧倒的な戦闘力、底の知れない恐ろしさ。映画ではEP1のみの登場ながら 根強い人気を誇り、外伝作品にも取り上げられるほど。今作はそんなダース・モールを主役にしたカノンのミニシリーズです。得体の知れない凶戦士はEP1以前どのような活動を行っていたのでしょうか? ファン必見の快作です。
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〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

1000年前の戦争により、シスは滅びた。はずだった。現代に生きるシスの暗黒卿ダース・モールは、激しい怒り、憎悪をジェダイへ向ける。

修羅の如くジェダイを殺す機会をうかがうモールにある情報が入った。ジェダイ・パダワンが競売にかけられたというのだ。

モールは賞金稼ぎの一味と共にパダワン誘拐を画策する。全てはシスの復讐を成し遂げるために……

 

〈ダークサイドの修羅〉

怒り、憎しみ。ダース・モールを支配する感情は噴き上がる激情ばかりでした。特にジェダイへ向けられた憎悪は凄まじく、シディアス卿の厳命を無視してでもジェダイに関わろうとするほど。酷く忍耐を強いられる日々を過ごすモールにある日、シディアス卿から命令が下されました。通商連合が有する鉱脈が宇宙海賊によって襲撃されたので、その撃退をしろというのです。鉱脈は違法に手に入れたものであり、共和国に知られるわけにはいきません。共和国やジェダイに頼れないならシスに頼ろうということでしょう。暴れ足りないモールにとっては退屈しのぎにちょうどいい任務。モールは手早く宇宙海賊を斬り殺します。しかしそんな時、命乞いをする海賊一味の1人が驚くべき情報を語り始めました。なんとジェダイ・パダワンが有名なオークショニアに誘拐、競売にかけられるというのです。これはシディアス卿に知られずジェダイと関わる、増してや殺す良い機会では? モールは独断専行でパダワンを追うことにします。
f:id:ELEKINGPIT:20220607125110j:image紅いライトセイバーで海賊を襲うダース・モール。一切躊躇いのない無慈悲な刃は、海賊どころか乗組員らも全員斬り殺した。

 

実力派の賞金稼ぎ、キャド・ベイン一味を雇い、囚われたパダワンの行方を追うダース・モール。オークション会場では「アンダーグラウンドな大富豪」が大勢いました。そんな大富豪のお目当ては当然パダワン。超高額な取引となるのは明らかでしょう。そんな大金はモールの手元にありません。そこでモールは、パダワンを競り落とした人物を強襲することで船ごとパダワンを奪い去る計画を立てました。計画は順調に進み、まんまとオークション会場のある惑星から逃げ出した瞬間、モールにとっての誤算が起きます。なんとオークショニアはパダワンを競り落とした人物の船に時限爆弾を仕掛けており、手近な惑星に墜落させようとしていたのです。こうして墜落した惑星には参加費を払ってパダワンを「ハント」しようとする者がうじゃうじゃといました。オークショニアがさらに一儲けしようと画策した「余興」なのです。スポーツハンターの大軍に、モールはパダワンと一時共闘してこの場を凌ぐことに。赤と青の光刃が共に立つこととなりました。
f:id:ELEKINGPIT:20220608004334j:imageパダワンのエルドラ・ケイティスと共闘するダース・モール。シスとジェダイが数千年ぶりに手を取った瞬間だった。

 

パダワンのエルドラ・ケイティスはダース・モールに問います。何故この機会に乗じて私を殺さないのか? モールにとってそれは愚問でしかありません。ジェダイとの決闘は、モールの流れる怒り、憎悪に対する儀式のようなもの。それをスポーツハンターなんぞに邪魔されては溜まったものではありません。逆に言えば、ハンター達が全滅した時が決闘開始の合図なのです。2人のフォースユーザーにかかればスポーツハンターの相手などそう時間はかからないでしょう。ハンター全滅の時はすぐにやってきました。パダワンと侮っていたモールですが、エルドラの実力は想像以上でした。一人前のジェダイに相応しいフォースと剣腕の持ち主と認めざるを得ないほど。それでも、ダース・モールの敵ではありませんでした。
f:id:ELEKINGPIT:20220608124807j:image赤い刃に倒れるエルドラ。1000年ぶりに勃発したシスとジェダイによる「運命の決闘」は静かに幕を下ろした。

 

〈傲慢〉

1000年ぶりに争ったシスとジェダイ。しかしその2人はどちらも「アプレンティス」と「パダワン」、師を持つ弟子なのです。ライトセイバーの剣腕はどちらも相当なものがありますが、それでもまだ未熟な部分があると言わざるを得ないのでしょう。そしてこの決闘、より秀でたものがあったからこそモールに軍配が上がったとは思えません。何故モールは勝ち、エルドラは敗北したのでしょうか?

ダース・モールの剣腕は、ジェダイマスターの称号を持つクワイ=ガンをも倒すほどでした。しかしEP1で敗北したのは、そのパダワンであるオビ=ワンです。エルドラとEP1で描かれたクワイ=ガンらの戦闘を併せて考えると、ダース・モールは意外にも感情的に戦っているように感じました。1太刀1太刀に暗黒面の感情が乗せられているのです。感情を引き出して戦うフォースユーザーとは、他に思い浮かぶのはアナキン・スカイウォーカーでしょう。アナキンもまた凄まじい剣腕を持ちながら、オビ=ワンに敗れた過去を持ちます。その時の2人の共通点、それは傲慢さが上げられます。感情を引き出して戦うからこそ「負けるはずがない」という根底の考えがぐっと出てきてしまったのでしょう。「選ばれし者」として着実に実力をつけた天才のアナキンと違い、ダース・モールはどのようにその傲慢さを身につけたのか? それが今作の決闘と、クワイ=ガンの撃破でしょう。「ジェダイに勝てる」という確かな自信の確立が敗北に繋がったのです。

では何故エルドラはダース・モールに敗北したのでしょうか? それもモールがオビ=ワンに負けた理由と同様だと考えます。傲慢さが表れてしまったのです。それこそがダース・モールとの共通点であり、エルドラがパダワンたる所以のように思いました。エルドラは剣腕と戦闘IQの高さから、ダース・モールを一時追い詰めるほどの活躍を見せました。しかしその瞬間、エルドラは傲慢、油断してしまったのです。傲慢さは失敗の元。2人にあったのは、この傲慢さだったのです。