アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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AVENGERS LIVE KREE OR DIE!

まるで物語のような激しい人生を送っているスーパーヒーロー。常に死を覚悟して戦い続けなければならず、それにより大いなる栄光を得ることも、また失意の人生を送ることもあります。さて、今作AVENGERS LIVE KREE OR DIE! は今やキャプテン・マーベルの称号を受け継ぎ、大人気ヒーローとなったキャロルを主人公とする物語です。ドラマで話題を呼んだカマラ・カーン憧れのヒーローであり、ヒーローチームのリーダーとして獅子奮迅の活躍を見せる姿が印象的なキャロル。しかしそんなキャロルも悩み苦しんできたのです。
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〈あらすじ〉

月面、青の地では恐るべき陰謀が進められていた。失われたスプリーム・インテリジェンスを復活させ、クリー帝国を再興させるのだ。鍵を握るのはキャロル・ダンバース。地球を新クリー帝国に染めるため、大いなる陰謀が動き出す!

 

〈それでもアベンジャーズに〉

それはある昼下がりのこと。トニーはキャロルの実家を訪ねていました。アベンジャーズとして共に活動する中、どうも本調子ではなさそうなキャロルを心配していたのです。トニーを迎えたキャロルは憔悴しきっている様子でした。これまでの人生はまさにスーパーパワーに振り回されたようなもの。栄華の絶頂と奈落の底を繰り返してきたキャロルは、これまでの人生をため息混じりに語りだします。そして今は奈落の底なのだと。キャロルは、ホワイトホールのパワーを持つバイナリーの力を失っていたのです。それまでに比べ大幅に弱体化したキャロルは、自らの弱さに焦っていました。いや、違う。トニーは憔悴したキャロルの姿に覚えがありました。そして「予想通り」酒瓶を見つけ出します。キャロルは自らの弱さに悩んだ結果、アルコール依存症となってしまったようです。まるでそれを証明するようにキャロルは激怒。トニーは追い出されてしまいました。事件はその後発生します。取引先の企業と交渉するトニーに、なんとキャロルが襲いかかったのです。さらにそれを追ってかクリー軍の兵士まで登場しました。
f:id:ELEKINGPIT:20220620170616j:imageトニーを襲撃するキャロル。トニーはアルコールの匂いを感じ取っていた。

 

トニーの呼びかけにより正気に戻ったキャロル。しかし休む間もなくクリー軍の攻撃を受けます。ルナティック・レギオンを名乗るこの部隊は、どうやらキャロルを狙っている様子。クリーセントリーまで登場させ、アイアンマンを倒した上でキャロルを誘拐しようとしました。クリーセントリーの攻撃は瞬く間に2人へ大ダメージを負わせます。更に今回の事件、トニーの信頼すべき仕事仲間の裏切りが判明。地球の遺伝子工学が狙われていたことが分かります。キャロルはこの世界でただ1人、クリー人と地球人のハイブリッドです。敵の企みは完全には分かりませんが、キャロルが敵に捕まっては想像以上に良からぬ事態が待っていることでしょう。
f:id:ELEKINGPIT:20220621104510j:imageクリーセントリーの攻撃を受けるキャロルとトニー。辛くも敵を退けたが、その企みは未だ不明。

 

数日後、強盗を捕まえていたキャプテン・アメリカに救難信号が送られます。発信元はケープカナベラル空軍基地。助けを求めているのはキャロルのようです。クリー軍の部隊、ルナティック・レギオンに襲撃されたとのこと。キャップは何故他のアベンジャーズも呼ばないのか疑問に思いながら現場へ急行します。そこに広がっていたのは、目も背けたくなるような凄惨すぎる光景でした。山積みになった死体の数々に、キャップはギュッと拳を握り、悔しさを滲ませます。敵に捕まっていたキャロルを救出したキャップは、正義の怒りを込めてクリー軍相手に烈火の如く攻撃をあびせました。一方、キャップに認めてもらおうと焦るキャロルは、キャップの警告を無視して突撃。敵に隙を突かれ、なんとそのまま月まで連れ去られてしまいます。
f:id:ELEKINGPIT:20220621113015j:image目を覆いたくなるような死体の山々。この残虐非道なる行いをした敵を許しておくわけにはいかない。

 

キャロルを救出するため、キャップはすぐさまアベンジャーズを緊急招集。クイックシルバー、スカーレット・ウィッチ、ホークアイの3人が敵を追跡します。月面、青の地でアベンジャーズを出迎えたのは、なんとスプリーム・インテリジェンスでした。スプリーム・インテリジェンスとは、クリー帝国が誇る最高の人工頭脳です。かつて破壊されたはずの人工頭脳は、ルナティック・レギオンによって蘇っていたのでした。未来予知に近い精度を誇る高度な計算式がもたらした戦況予測はただ一つ、勝利でした。スプリーム・インテリジェンスはこうしてルナティック・レギオンの計画を話し始めます。ルナティック・レギオンの狙いはクリー帝国の再興でした。そのために、遺伝子工学を用いて地球人の遺伝子を研究、そしてクリーと人間のハイブリッドであるキャロルを利用しようとしていたのです。ケープカナベラルの死屍累々は、遺伝子工学実験に失敗した結果でした。そこでルナティック・レギオンは、テリジェン・ミストに目をつけました。テリジェンは100万年前にクリー帝国が使ったもので、ミストを浴びたものは遺伝子に何らかの変容が生じます。100万年前、テリジェン・ミストを浴びた人類は後にインヒューマンと呼ばれる亜人種となりました。これとキャロルの遺伝子配列を利用すれば、遺伝子上地球人をたちまちクリー人に出来るはず。少し細工すれば地球産クリー人は帝国に忠誠を誓うことでしょう。先行実験は既に成功しており、ルナティック・レギオンはこうして徐々に数を増やしていました。しかしなるほど、クイックシルバーは超スピードで基地を駆け抜けます。敵の計画は、もはやテリジェン・ミストを散布すれば成就する。しかしその前に散布装置を叩けば……計画は一気に頓挫することでしょう。ここで誰もが予想外の事態が発生します。クイックシルバーに助け出されていたキャロルが、偶然見つけた酒で泥酔、暴走してしまったのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220621232213j:image泥酔し暴走するキャロル。散布装置の破壊には成功したが、仲間をも巻き込む無差別攻撃に、アベンジャーズの堪忍袋の緒がついに切れた。

 

事態を重く見たアベンジャーズは緊急会議を開きました。これまでのキャロルの失態から、アベンジャーズを除名するか全員で投票しようとしたのです。アイアンマン、キャプテン・アメリカクイックシルバーの申告により、キャロルの除名が決定的となったその瞬間、今度はアベンジャーズへ緊急警報が鳴り響きます。なんとルナティック・レギオンは予備の散布装置を用意しており、今まさに月面で起動しようとしているというではありませんか。アベンジャーズは、予備メンバーだったジャスティスとファイアースターを正式メンバーとして迎え、急ぎ月面へと出発します。一方キャップの厳命でキャロルはアベンジャーズを除名、1人マンションを去りました。こうしてアベンジャーズは新体制を、キャロルは孤独の道をスタートさせたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220621235127j:image新メンバーの能力で敵の装置を破壊したアベンジャーズ。このチームにキャロルの力は必要ない……?

 

〈魔の手〉

今作(とそれ以前)からアルコール依存症を患ってしまったキャロル。アルコール依存症といえば、かつてトニーも苦しみ、1度は自殺寸前まで追い詰められた病です。当時のトニーもアベンジャーズを脱退し、孤独の道を歩みました。アルコール依存症であり、それが原因となってアベンジャーズを除名された2人。共通点は多いですが、しかしアルコール依存症の姿を見ても2人は違うタイプのようにも思えます。今回はそんな2人の違いを考えたいと思います。

2人の違いが大きく現れているエピソードに、キャロルがトニーの実家を訪ねたシーンが挙げられるでしょう。キャロルは心を開くようにバイナリーの力が失われたことを話しますが、部屋に転がる酒瓶を指摘された途端激怒してしまいました。一方かつてのトニーは、キャップの訪問に戸惑い恐れ、最後には涙を流して許しを乞いました。酒を飲むのが止められない時、2人は常に助けを求めている時でした。しかし、求めていた助けが違っているように思えます。当時トニーは、どんどん落ちぶれていく自分にすら罪悪感を抱いていました。キャップの前で涙を流したのは、そんな自分でも受け入れてほしいというもの。しかし結果的にトニーは自ら答えを見つけ出し、見事復活を果たすのでした。一方キャロルは、誰かに悩みを聞いてほしかったのだと思います。トニーが酒瓶を取り出す前後で別人のように態度が変わったのはこのためでしょう。でなければ、自分の半生を話し始めるとは思えません。しかしトニーは酒瓶を指摘してしまいます。悩みを聞くどころか激怒されてしまいました。ここにもトニーとキャロルの違いが現れています。酒瓶がキッカケで、まるでお説教モードに入るトニーの姿は、キャップにも近いものを感じていました。トニーがキャロルを叱ろうとしたのは、自らの体験に照らし合わせてのことでしょう。しかし実際は違いました。ヒーローを大きく悩ませるアルコール依存症。その対応は、1人1人寄り添うように進めなければならないようです。