アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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THOR vol2 WHO HOLDS THE HAMMER?

オリジナル・シン以来ハンマーを持てなくなったオーディンソンに代わり、謎の人物がムジョルニアを持ち上げ、新たな雷神となった前回。今やその正体は誰もが知るところとなり、隠されていたことに驚く方もいるかもしれません。しかし謎の人物の正体が発表された時点の衝撃は想像以上のものなのだったのでしょう。さて、今回はそんな謎の人物の正体が発覚します。オーディンソンに代わり新たな雷神として君臨する謎の人物。しかしその君臨に不満を持つ神もまた同様に存在しました。
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前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

新たなるソーが降臨した。しかしそれは、かつての雷神を子に持つオーディンにとって屈辱に等しかった。やがて静かな怒りは爆発し、恐怖の神サーペントと共に恐るべき企みを実行する。全ては子にハンマーを返すため。持つべき者へ神の力を与えんがため……

 

〈誰がハンマーを持つべきなのか?〉

ハンマーを失い、雷神の資格を失ったかつてのソーは、オーディンソンを名乗って活動を再開していました。昔馴染みのヤンビョンを振るうオーディンソンの実力は、かつての雷神には劣るかも知れませんが、それでも十二分に超人をも超えていると言えるでしょう。そんなオーディンソンは、オーディンソンに代わりハンマーを持ち上げた新たなソーの正体に関心を持っていました。それも候補者リストを作って独自の調査まで行うほど。オーディンソンはある日、全てを見渡す千里の目を持つヘイムダルに新ソーの正体を訊ねます。しかしなんとヘイムダルは「見ていなかった」と言うではありませんか。それもそのはず。今ヘイムダルが注目しているのは、世界をも崩壊させかねない「危機」だったのです。いくら千里眼持ちでもこの世の全てを完璧に見続けているわけではないのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220625000954j:imageヘイムダルが挙げた3つの恐るべき未来。千里をも見通す目は、確実に迫る危機を敏感に感じとっていた。

 

その頃、新ソーはブロクストン上空にあるロキソン社を訪れていました。今やロキソン社CEOのダリオ・アガーは、ダークエルフの王マレキスと同盟関係にあります。ロキソン社が所有していたロウフェイの頭蓋骨をマレキスに譲渡する代わりに、「仕事」を依頼するという契約を結んでいたのです。新ソーでなくてもこれは見逃せるはずがありません。違法な石油施設諸共、ここで全てを終わらせるべきでしょう。警備員を次々となぎ倒していく新ソー。しかしここで、予想外の脅威が現れました。デストロイヤーが現れたのです。神殺しの生きる鎧、デストロイヤーはアスガルドに秘匿されていたはず。同刻、フレイジャはオーディンへあることを問いただすために玉座へ姿を現します。オーディンが恐怖神サーペントへデストロイヤーを譲渡したと言うのです。オーディンはサーペントは完璧に忠誠を誓っている、デストロイヤーも制御下にある、と安全性をアピール。ならば新ソーの目の前にいるデストロイヤーは? 実はオーディンがサーペントに命じ、新ソーへデストロイヤーを送り込んでいたのです。新ソーを打ち負かし、ハンマーを取り返し、あわよくばその正体を暴けば……全てはオーディンソンへハンマーを渡すため。顔も名も知らぬ人物へ神槌ムジョルニアを託すなど、到底オーディンには出来なかったのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220625010511j:imageオーディンの密命で現れた神殺しのデストロイヤー。そのパワーは新ソーが全く太刀打ち出来ないほど。

 

戦いに巻き込んで石油施設を破壊できたはよかったものの、新ソーはデストロイヤー相手に大苦戦。更にとうとうムジョルニアを奪われ、時間切れによる変身解除まであと1歩のところまで追い詰められてしまいます。どうにかムジョルニアを取り返しても、戦況は悪くなる一方。もはやこれまでなのでしょうか? その時です。虹の橋ビフロストをくぐり抜け、オーディンソンをはじめとする多くのヒーローが駆けつけました。オーディンの暴挙に激怒したフレイジャが、オーディンソンや地球の盟友に援助を求めたのです。神にも匹敵するパワーと、何よりも潔癖の正義。これらを併せ持つ数多くの同士が一堂に会すれば、神殺しの鎧にも対抗出来るでしょう。
f:id:ELEKINGPIT:20220625011419j:image名も知らぬ顔も知らぬ雷神のために、多くのヒーローが集まった。正義の名のもとに。

 

〈「神」の姿〉

新たなる雷神ソーとしての君臨を描いた前回。そして今回は、雷神ソーが神として認知される様を描いた作品と言えるでしょう。神とは力だけでは成り立ちません。同時に信仰を集める必要があるのです。顔も知らぬ神のために多くのヒーローが命懸けで戦ったことこそが信仰でしょう。しかしそうして神の力と信仰を手に入れた新ソーの正体は、ガンに苦しむジェーン・フォスターだと発覚しました。弱りきった病人が神を演じていたのです。まるでこの世界に神はいないとでも言い放つような勢い。確かに全能神オーディンの振る舞いは褒められたものではなく、また千里眼を持つヘイムダルも新ソーの正体を見抜けずにいました。この世界に真の意味で「神」はいないのでしょうか?

この物語に即すならば、神もまた超自然的な能力を持つ人間。万物を導き人々を救済する「神」ではありません。この世界に神は生きていません。しかし神は存在します。正確には、神は「宿る」のです。人々を救済し、正義を貫き悪へ鉄槌を下す……新ソーや、新ソーを助けに来たヒーロー達の姿がそのものではないでしょうか? ヒーローは神ではありません。祈りに応えることも願いを叶えることもできません。しかし人々の祈りの根源である、救済に応えることは出来るのです。この瞬間こそヒーローは神を宿していると言っていいでしょう。人々を絶望から救い、感謝の眼差しを向けられるのですから。他の動物と比べ、人間は互いを助け合う知恵を身につけています。たとえ超自然的な能力を持たずとも、誰かが誰かを助ける瞬間こそ、人々が創造した神の姿そのものなのです。