アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ULTIMATE COMICS ARMOR WARS

アイアンマンの弱点とはなんでしょうか? 無敵の装甲と常人とは思えない天才的な頭脳を持つトニー・スタークの弱点とは? 私はテクノロジーだと考えています。超天才のトニーが生み出した無敵のテクノロジーは、誰かの手に渡れば誰よりも恐るべき敵となるのです。今作ULTIMATE COMICS ARMOR WARSは正にそれを象徴する話でしょう。アルティメット・ユニバースのトニーが、自らの技術を盗まれてしまうという筋書き。トニーは自らの技術にどう向き合うのでしょうか?
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〈あらすじ〉

マグニートーによる終末戦争は多くの犠牲者を出しながら終わりを迎えた。数多の骸が横たわるニューヨークで、トニーは地下の秘密施設に隠したアーマーを回収しようとする。そこに現れた謎の人物と恐るべき計画。盗まれたのはアーマーだけではなかった。

 

〈技術と人と〉

今作の時系列は、アルティメットユニバースを激震させた大事件「アルティメイタム」から数日後の出来事。簡単に言えば、マグニートーが人類へ仕掛けた終末戦争で、名のある多くのヒーローが死亡してしまいました。トニーもマグニートーに操られ、両手の血に塗れた感覚が未だ残っています。それでもヒーローとして、酒と装甲だけは手放さず戦い続けることを誓ったのです。そして現在。トニーは死屍累々の町となったニューヨークでスターク社の地下施設を訪れていました。何があっても壊れないことをコンセプトに作られた本社ビルの地下は想定通り無傷のようです。当初の目的通り、地下施設に収めていたアーマーと「ある物」を回収しようとします。途中現れたのは、ジャスティン・ハマーの子で、親とおなじ名を持つハマーでした。ジャスティン・ハマー(親)といえば人体実験を繰り返して超人を生み出した科学者です。どうやら自らの子にすら人体実験を施していた様子。その結果ハマー(親)は殺され、超人となった人々も死んだか安定しない能力に悩まされてしまいました。ハマー(子)もその1人。そこで能力を安定させるため、ナノテクの第一人者であるトニーを頼ろうとしていたのです。いまいち信用できないトニーですが、事態は急変します。地下施設の最深部から警報が鳴り響いたのです。それはトニーのステルスアーマーとトニーが秘匿していた「ある物」を盗もうとしていたヴィラン、ゴーストの仕業でした。
f:id:ELEKINGPIT:20220706013622j:image地下施設へ盗みに入ったゴースト。トニーの秘匿する最も重要な「ある物」すら、目の前でまんまと盗んで見せた。

 

ゴーストの性格的に、狙いはスタークテックを裏社会へ売り込むことでしょう。アーマーの技術を喉から手が出るほど欲しがるヴィランは多いはず。ゴーストと戦ったハマー(子)をとりあえず信用することにしたトニーは行動を共にし、敵を追い詰める算段を立てます。裏社会の金の動きを敏感に察知したハマーのおかげで、ゴーストがスタークテックを持ち込んだ最初の相手はドクター・ファウスタスだと判明します。早速ファウスタスの元へ向かい、尋問するトニー。一悶着はありながらも、ファウスタスはあくまで仲介業者、スタークテックを買ったのは別の人物だと語られました。幸い取引したのは1人だけのようです。その名はブラム・ヴェルジング。ドイツの武器商人として知られる人物です。ヴェルジングは当初スタークテックを利用して大金を稼ごうとしていましたが、その誘惑に勝てなかったのか改造アーマーを着用。ドイツへ赴いたトニーに勝負を挑みます。
f:id:ELEKINGPIT:20220706015348j:image禁断のアーマー対決、トニーvsヴェルジング。互いの誇りにかけて全力でぶつかった。

トニーはこれまでの戦いにゴーストが現れていないことに不安を覚えていました。元はと言えばスタークテックを盗んだのはゴースト。そして「ある物」も……。ゴースト本人を捕まえなければこの戦いに終わりはないでしょう。事実、驚くべきことにスタークテックはロンドン警視庁機動隊にすら使用されていました。ついに政府相手にも取引を始めたようです。1秒でも早く流出を止めねば、御することもできない輩がスタークテックを暴走させてしまう可能性すらあるでしょう。トニーは改めてハマーとの共闘を誓います。その瞬間、搭乗していたプライベートジェットが激しい揺れに包まれます。急ぎアーマーを着用しますが、先のヴェルジングとの戦闘でボロボロの状態。背後からミサイルを何発も叩き込まれてはひとたまりもありません。トニーはそのまま気を失い、敵に捕われてしまいました。そして目を覚ますと、目の前に立っていたのは禍々しくも異形の姿となった、祖父の姿がありました。
f:id:ELEKINGPIT:20220706020923j:image目の前にいたのは異形の姿となった祖父。その体に刻まれていたのはスタークテックだった。

 

トニーの祖父、ハワードSrはトニーが幼い頃自らの死を偽装して禁忌の技術に手を出していました。人間と機械を融合させ、サイボーグとすることで永遠の命を得ようとしていたのです。しかし最後の最後で必要なピースが足りていませんでした。ハワードSrはその穴を埋める技術こそがトニーの開発したアーマーと確信。裏からゴーストを雇い、スタークテックを盗ませたのです。トニーがいかにも重要そうに秘匿していた「ある物」もついでに。「ある物」に隠されているのがスタークテックの根幹ならば、実験は完遂したも同然。ボディに刻んだスタークテックとナノテクを併せれば正真正銘不老不死を得られることでしょう。ハワードSrの尋問に、トニーは一言「ある物」のパスワードを呟きます。黒いだけの正方体は応えるようにその正体を顕にします。ある日のことでした。若き天才リード・リチャーズと共にマルチバースの研究をしている時、トニーは「それ」を拾いました。使われているのは、この世界とはまるで違うスタークテック。何よりも驚くべきはナノテクノロジーに作用する効果を持っていることでしょう。この世界のスタークテックそのものを支えるナノテクを無効化しうる影響を及ぼすのです。トニーが「ある物」を顕にした時点で勝負は決まりました。
f:id:ELEKINGPIT:20220706022751j:image箱の中に収まっているのは、トニーが秘匿し続けたアース242の「トニー・スターク」。そこにはスタークテックの根幹をも揺るがすテクノロジーが眠っていた。

 

〈人か技術か〉

冒頭で述べた通り、トニーの弱点の1つには極められた技術があると私は考えています。敵の手に渡れば、そして誰かに利用されればそれほど恐ろしいことはないのです。しかし最後にトニーを救ったのもまた「トニー・スタークの技術」でした。トニーの技術は弱点であると同時に最強の武器にもなりうるのです。ではそんな技術を、トニーはどのように捉えているのでしょうか?

当たり前ですが、技術とは生き物ではありません。人間が生み出した道具です。何かと何かを利用するためにあります。それを踏まえた上で、まずはハワードSrから考えてみましょう。ハワードSrは人と技術が融合することで不老不死を得ようとしていました。人と技術の融合。文字面だけならまるでアイアンマンのようにも思えます。しかしその意味はまるで反対と言えるでしょう。不老不死とは停滞、それ以上の進化を辞めることの裏返しなのです。実際科学者として天才の領域にいたハワードSrは自らの技術を進化させることなくトニーの技術を盗むことで最後のピースを埋めようとしていました。自身の技術力では進化がないことを自白しているようなものです。しかしトニーは違います。アイアンマンとしての技術は、不老不死と違い完成することは永久にありません。絶えず変化し、常に進化し続けなければならないのです。トニーにとって技術とはなんでしょうか? それは未来へ向かって進化するためのものでしょう。決して完成することのない技術とは、永久に進歩し続ける技術なのですから。ヴェルジングの改造アーマーや、ハワードSrのボディと違う点はそこだと言えます。「完成した」からこそ進歩を終え、進歩し続けるトニーに敗北したのです。