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MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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MARVEL ACTION CAPTAIN MARVEL vol1 CAT-TASTROPHE

今回紹介するのは、MARVEL ACTION CAPTAIN MARVEL vol1 CAT-TASTROPHEです。MARVEL ACTIONシリーズといえば子ども向けに作られているシリーズ(通常のシリーズは対象年齢が12歳以上に設定されています)。普段のシリーズに比べより簡単な英文でセリフが綴られ、画風もカートゥーン色が強くなっているのが特徴でしょう。しかし子ども向けだからと侮ることなかれ。コミカル色の強い本作ですが、胸躍らせる展開がテンポよく繰り広げられ、誰でも楽しめる物語となっています。むしろキャラクターの個性をより強調するように描かれているので、「癒し」を求めて読んでみるのも面白いでしょう。
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〈あらすじ〉

いつも通り親友ジェシカと過ごすキャロル。しかし何気なく見ていたTVに映されたのは、驚くべきニュースだった。ニューヨーク中を野良猫の大群が駆け回っている!? 猫好きのキャロルが事件解決のために奔走するが、その裏には恐るべき全宇宙征服計画が隠されていた……!

 

〈猫に罪は無い〉

ポップコーンを貪りながらテレビを見るジェシカとキャロル。2人にとってはこんな光景が日常なようで、何気ない会話からふと盛り上がってはまた落ち着き……を繰り返していました。しかし今日はそんないつも通りの日とは行きません。なんとニューヨーク中を野良猫の大群が駆け回っているというのです。既に多くの食料品店が被害を受けており、この混乱に乗じて強盗を企む悪人も……笑って見過ごしている場合ではありません。原因を突き止め、すぐさま事態を収拾させなければならないでしょう。大群とはいえ猫が相手ならば、自他ともに認める最強のアベンジャー、キャプテンマーベル1人でも解決出来るはず。ジェシカに家を預けたキャロルは単独でニューヨークへ向かいます。ニューヨークは通りを埋め尽くすほどの猫たちが駆け回っていました。一体誰がこんなことを? そもそもこの野良猫達は? 野良猫達の正体は、最悪の形で露見しました。キャロルの目の前で。
f:id:ELEKINGPIT:20221004122617j:imageこちらがうっとりするような笑顔を見せたのは、巨大な「触手」で人間を捕食した野良猫。信じられない光景にキャロルは見覚えがあった。

 

猫の顔と思われていた部分から弾丸のように伸びた触手が、瞬きする間もなく人間を捕らえ吸い込まれていった。キャロルは確信します。この猫は、宇宙に存在した危険生物フラーケンだと。フラーケンは、無害な見た目と裏腹にあらゆる生命を捕食するエイリアンです。未だ駆除するための組織が宇宙を駆け回り、未だ恐れる人がいるほど悪名高きクリーチャー。しかしフラーケンはキャロルの飼い猫チューバッカとその子ども達以外全滅していたはず。それが何故大群となりニューヨークを襲っているのか? 考えれば考えるほど混乱するばかりの事態に、キャロルはまず行動することを優先しました。考えている間に誰かが捕食されるかもしれませんし、何よりこの事態を沈めることが最優先なのです。あの手この手でフラーケンを一所に集め、一旦落ち着かせようと企てます。しかしフラーケンは優れた知能を持つ種族。罠に嵌められたのはキャロルの方でした。
f:id:ELEKINGPIT:20221004124436j:image背後から奇襲され、捕食されてしまったキャロル。自分の情けなさと臭すぎる口臭で思わず顔をしかめた。

 

触手に捕らえられフラーケンに飲み込まれたキャロル。口内に漂っていたのは、恐らくそれまで捕食されてきた様々な物たちでした。その不気味な光景に、キャロルは「ここはポケットディメンションなのでは?」という推理を立てます。ポケットディメンションとは、簡単に言えばドラえもんの四次元ポケットのようなもの。口の中に入ったものは一時的に小さく収容されているのです。ならば口の中で暴れ回れば吐き出してくれるはず。力の限り攻撃を行った結果、予想通りキャロルはフラーケンの体外へ吐き出されました。予想外だったのは、そこが元いた場所ではないことです。無機質な壁、大人1人が通れる程度の狭い通路、皆一様に同じ服を着た猫たち……ここは絶滅したはずのフラーケンの基地なのではないでしょうか? キャロルは慎重に歩を進めます。辿り着いたのは、開けた場所にポツンと浮かび上がる球状のレーダー。どうやらここは司令室のようです。高い知能を持つフラーケンならば機械操作など造作もないよう。しかし何故フラーケンは地球を狙ったのでしょうか? 今や様々な宇宙人が地球を脅威と考えていますが、侵略や征服ではなく捕食を目的に行動するフラーケンが地球を襲う理由は思い当たりません。答えは司令室のさらに奥に隠された部屋にいました。クリー人です。
f:id:ELEKINGPIT:20221006212018j:imageキャロルと対峙するクリー人。キャプテン・マーベルとの因縁が深い敵が企んでいたのは、恐るべき計画だった。

 

クリー人は、この基地がフラーケンではなくクリー人のものだと言います。部屋を覆い始めるフラーケン達。仮に自分が負けても覆せる状況ではないと、完全勝利を確信したクリー人は堂々と計画の全容を語り出します。確かにフラーケンはほぼ絶滅しました。しかし遺された僅かな生態情報を入手したクリー人は、クリー帝国の長スプリーム・インテリジェンスに報告。遺伝子を培養し、フラーケンの復活に成功します。フラーケンの大群があれば弱小銀河なぞそれだけで壊滅するでしょう。スプリーム・インテリジェンスは言いました。フラーケンを洗脳し、天の川銀河を征服せよと。ならばまずは地球を襲撃する必要があるでしょう。銀河列強やその他血の気の多い宇宙帝国は、皆地球のヒーローチームと戦い、痛い目を見ているのです。戦略上最も高い壁と言えるでしょう。真っ先に潰すのは妥当な判断なのです。恐るべき計画の全貌。ここで止めなければ更に被害は拡大することでしょう。キャロルはたった1人で決死の戦いを挑みます。それが負け戦と分かっていても。
f:id:ELEKINGPIT:20221006234607j:imageフラーケンの大軍に敗れたキャロルの前に現れたのは、ガーディアンズとスパイダーウーマン。反撃の狼煙は上がったばかりだ。

 

〈持つべきもの〉

子ども向け作品ということもあり、筋書きだけなら王道なストーリーに終始していた本作。それでも2転3転する鮮やかなプロット力は流石と言わざるを得ません。さて、そんな本作には分かりやすくキャロルの強みと弱みがハッキリと描かれていました。Ms.マーベル時代を思えば精神的に飛躍的な成長を遂げたキャロル。しかし弱点を克服したからこそ生まれた新たな弱点が存在していたのです。

まずはキャロルの強みから見ていきましょう。キャロルは自他ともに認める「最強」のアベンジャー。名実共にBIG3と並び立つ程のヒーローは、自分に出来ることを精一杯するという教訓を胸に日々戦い続けます。その強みは、圧倒的なパワーとそれに伴う揺るぎない精神でしょう。自分の役割を理解しているからこそ行動に迷いがなく、信頼されるのです。ではそんなキャロルの弱点とは? 今作で示されたのは、「自信」でした。何度も述べているようにキャロルは最強のアベンジャー。その誇りと共に戦い続けているのです。そのため時に「自分1人で出来る」と勇み足を踏んでしまうことも。ニューヨークを覆う野良猫がフラーケンと分かった時も1人で対処しようとしていました。かつてキャロルは、自分に自信が持てないがために強がり、失敗した経験を持ちます。その頃に比べ大きく成長したのは明らかですが、自信のなさを克服したがために自己を過信してしまうのです。ならばその弱点はどのように乗り越えていくのでしょうか? 今作で示されたのは、他人を頼るということでした。言ってしまえばありきたりな結論。しかし周りを頼るなら自分が犠牲に……という考えのヒーローが多い今、他人を頼るとはどれほど困難なことか想像してみてください。1人でできないなら2人で、3人で、4人で。フラーケンの大群に負けたキャロルがガーディアンズを頼るのは、そんな精神性があったからなのでしょう。キャロルは自らの弱点を、仲間とともに克服しているのです。