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MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS:DARTH VADAR vol2 SHADOW AND SECRETS【2022年10月私的ベストアメコミ】

スターウォーズEP4とEP5を繋ぐシリーズも2巻目に突入。キーロン・ギレン氏による語り口は多くのファンの心を掴み、日本でも本シリーズは全巻が邦訳化されました。第2巻では、前回出会ったドクター・アフラの活躍もより多く見られました。しかしそれ以上にベイダー卿が執着を見せたのが、実の子だと判明したデス・スター破壊犯。銀河の暴君たるベイダー卿の謀略。EP5に繋がる大きな陰謀が進み始めます。
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〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

アナキン・スカイウォーカーには子どもがいた。驚愕すべき事実に、恐怖の黒騎士ベイダー卿が遂に動き出す。

極秘のビジネスパートナーとしてベイダー卿に雇われた考古学者のドクター・アフラは、真相を確かめるべくナブーへ飛ぶ。しかしそこへ迫るのは、帝国の見えざる脅威だった。

帝国輸送船の事故を調査すべく新たにベイダー卿へ派遣されたタノス捜査官。タノスは事故に見せかけた事件だと確信するが、そこには黒衣のベールに包まれた逆襲の陰謀が隠されていた……

 

〈古き日の希望〉

スカイウォーカー。ボバ・フェットの報告で聞かされた名は、ベイダー卿を駆り立てるに充分すぎるものでした。ドクターアフラ達とともにタトゥイーンへ向かったベイダー卿。スカイウォーカーが住んでいた古巣や怨敵オビワンの隠れ家を訪ねます。フォースで読み取ったのは、生々しい戦いの傷跡。ボバ・フェットとスカイウォーカーの間で起きた戦闘でしょう。訓練を受けていないか、日が浅いか。ほとんど素人に近いながらも強大なフォースを残したスカイウォーカーの戦いを忠実に読み取るベイダー卿。圧倒的な経験不足を感じさせますが、訓練すればあるいは……? ベイダー卿はタトゥイーンの古巣とオビワンの隠れ家を爆破。熱砂を踏みにじりながらその場を後にし、ドクターアフラへ極秘の任務を与えます。
f:id:ELEKINGPIT:20221022064620j:image分子爆弾で粉々にされた「スカイウォーカー」の古巣。それは自傷か、何度目かの決別か。

 

それはある日のことでした。小惑星帯を航行する帝国輸送船が墜落し、大量の帝国クレジットが紛失する事故が発生しました。紛失したクレジットはあまりに莫大な金額ですが、この事故はどうも「出来すぎ」ている。ある捜査官の拭えない違和感はやがてベイダー卿の上司でもあるタギー将軍の耳にまで届きます。将軍は今回の事故の調査をベイダー卿に任せ、デス・スターを破壊したパイロットの追跡や反乱軍に触発されたレジスタンスの鎮圧を双子の暗殺者へ託します。デス・スター破壊犯の正体を隠しながら行方を追うベイダー卿にとってはまずい状況です。万が一自分よりも早くスカイウォーカーへ辿り着くことがあれば? 自らの野望を実現する希望の芽が潰されるかもしれない。とはいえタギー将軍にしてみればデス・スター破壊犯の捜索を勝手に始めた上、ろくな成果を報告しないベイダー卿に引き続き任せる義理はありません。そもそも輸送船の責任者はベイダー卿です。不服を申し立てるベイダー卿の意見を却下し、事故の違和感に気付いたタノス捜査官を部下につけさせ調査するよう命じます。f:id:ELEKINGPIT:20221022070427j:image卓越した推理力を持つタノス捜査官。一瞥しただけでベイダー卿が事故現場近くの衛星に滞在していたことを見抜く。

 

タノス捜査官は、まず輸送船の残骸を徹底的に調べました。船底にポッカリ空いた穴やあちこちで発生したであろう電子機器が無力化された跡。船底に小惑星がぶつかり、その影響で電子機器が不能に。その後は為す術なく墜落した事故。多くの人はこの残骸を見てそう推理することでしょう。しかしあまりにも「出来すぎ」ている。小惑星帯を航行する現金輸送船が偶然小惑星にぶつかり、偶然穴が空いた衝撃で偶然電子機器が使えなくなり、その穴から偶然現金が溢れ出る。そんなこと有り得るのでしょうか? 調査の結果、違和感は確信へと変わります。船底の穴に爆破の痕跡が見られたのです。もちろんこれを小惑星にぶつかった際に起きた爆発の跡と片付けることは出来るでしょう。しかしタノス捜査官の違和感を裏付ける証拠でもあります。さらに爆破の痕跡から爆弾の特定に成功。ベイダー卿へ報告する頃には、爆弾の製造業者にまでたどり着いていました。ただの事故として処理されるはずだった事件を暴き、その上犯人に繋がる糸まで手繰り寄せたタノス捜査官。卓越した推理力と捜査力で、犯人特定までそう時間がかからないであろうことは容易に想像出来ますが、どうも上官のベイダー卿は事件の調査に乗り気ではない様子。何とか爆弾の製造業者へ強制捜査ベイダー卿を同行させますが、いつものような覇気を感じられません。
f:id:ELEKINGPIT:20221022072924j:image爆弾製造業者へ「ガサ入れ」するベイダー卿。しかしこの戦闘で製造業者の責任者を死なせ、結果捜査が長引くことに。

 

同刻、ドクターアフラはナブーへと向かっていました。ベイダー卿が独自にたどり着いたデス・スター破壊犯の正体が、本当にスカイウォーカーなのかを確かめるためです。どこから分かったのか、なんとスカイウォーカーがホンモノならば母はナブーの元女王で、旧共和国元老院議員をも務めたパドメ・アミダラだというのです。情報屋に大金を掴ませ宮廷使用人の居場所を特定したアフラは、本人の拘束にまで成功。拷問の結果宮廷使用人は死亡したと思われますが、必要な情報は引き出しました。使用人や国民から多大な支持を集めていたであろうパドメ・アミダラ。自分のイメージする国王とは全く違う姿にアフラは自らの過去へ思いを馳せ、ナブーを発ちます。ベイダー卿へ報告したのは、確かにパドメ・アミダラには子どもがいたこと。そしてその子に「ルーク」と名付けていたことでした。無機質なマスクから漏れる呼吸音。その奥にどのような感情が蠢いていたかは想像するしかありません。ベイダー卿ルーク・スカイウォーカーの居場所を突き止める命じます。
f:id:ELEKINGPIT:20221022074424j:imageアフラの容赦ない拷問を受ける宮廷使用人。亡きパドメへ涙を流しながら「息子」の存在を明かしたことを詫び、死んでいった。

 

一方タノス捜査官の尽力により、帝国輸送船襲撃事件もいよいよ大詰めに。紛失した帝国クレジットを特定し、その痕跡を辿ります。そしてついにある情報屋にまで迫りました。輸送船を襲った犯人は、恐らくその情報屋から情報を買った人物でしょう。ベイダー卿と大部隊を連れて情報屋の元へ強制捜査を行います。どうやら情報屋はついさっきも何らかの情報を売ったようで、懐には大量の帝国クレジットが。銃口を向けられると、情報屋はあっという間にこの帝国クレジットを使った「顧客」を売りました。犯人は、考古学者で密輸業も営むドクターアフラ。この事件は全てベイダー卿が仕組んだものだったのです。独自の極秘部隊を持とうと考えていたベイダー卿は、ドロイド工場建設資金を横流しするためにアフラへ輸送船を事故に見せかけ襲撃するよう命じていたのです。流石のタノス捜査官もそこまでは気付いていないようですが、ドクターアフラのバックに何者かがいること、その何者かがパトロンをしていることまでは勘づいている様子。ならばここでアフラを始末した方が都合がいいのでは……? いち早くアフラへたどり着いたベイダー卿は、ライトセイバーを起動します。
f:id:ELEKINGPIT:20221022080230j:imageドクターアフラの首を絞めるベイダー卿。未だ秘密の部下の価値をベイダー卿自身も測りかねている。

 

〈仮面の下のスカイウォーカー〉

ベイダー卿が監視の目を逃れ、秘密裏に動くために迎えたドクターアフラ。本編には無い本シリーズ独自の要素として後にまで高い人気を誇るようになったキャラクターです。本作では輸送船の襲撃やパドメ、ルークの名を知ることとなるなど重要な役割を果たしました。しかしこれらはベイダー卿の「出自」すら分かりかねないもの。ルークやパドメから「アナキン・スカイウォーカー」という存在が浮かび上がり、そうなればベイダー卿=アナキンと結びつけることも可能なはず。では何故ドクターアフラは生かされているのでしょうか?

その理由を考えるにはベイダー卿アナキン・スカイウォーカーをどのように捉えているかを考える必要があります。ベイダー卿にとってアナキン・スカイウォーカーとは? ベイダー卿はEP4で自らの正体を知るオビワンを殺し、一方EP5ではあっさりとルークへその正体を明かしていました。一見矛盾しているようにも思える両シーンですが、ベイダー卿にとってどのような意味を持つのでしょうか? EP4でベイダー卿は、オビワンに向かって「かつてお前の弟子だった俺が」と発言しています。そしてEP5でも、「お前の父はワシだ」と正体を明かしました。両者とも、ダースベイダーではなくアナキン・スカイウォーカーとして接していたのです。このことから分かるのは、ベイダー卿は決して自身の正体を隠してはいないということでしょう。ドクターアフラにもバレたところで、ベイダー卿にとっては大した問題ではないのです。ならばベイダー卿アナキン・スカイウォーカーをどのように捉えているのでしょうか? オビワンはダース・ベイダーがアナキンを殺したと考えているように、ベイダーとアナキンを違う人物であるかのように扱う人は多いでしょう。しかしベイダー卿本人にとってそれが本当なら、より徹底的にアナキンの痕跡を消すはず。上記のセリフは自分からアナキンの話題を出しており、少なくとも当時のベイダー卿はアナキンとベイダーを分けずに考えているようです。あえて分けて考えるとしても、アナキン・スカイウォーカーを過去の人物、ダース・ベイダーに劣る人物と捉えていることでしょう。ベイダー卿にとってアナキン・スカイウォーカーとは、決して別人ではなくむしろダース・ベイダーに比べ劣っていた過去として考えているのでしょう。