アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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AVENGERS WORLD #15〜#16

数々の強敵を倒し、この世界はアベンジャーズが守る世界だと知らしめ幕を閉じた前回。以降のアベンジャーズワールド誌はタイイン(大型クロスオーバ作品のサイドストーリー)誌という傾向が強く、マーベルユニバースの奥行きを感じさせる作品となっています。今回は多くの超人の善悪が反転したイベント、AXISのタイインです。反転したスカーレット・ウィッチの強襲に立ち上がったのは、同じく反転したドゥーム率いる新たなアベンジャーズ? 密度の濃い2話をお楽しみください。

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〈あらすじ〉

反転したヒーローの攻撃は、アメリカだけにとどまらずラトベリアにまで届き始めた。スカーレット・ウィッチの攻撃が始まったのだ。臣民を守るため、同じく反転し正義を志すDr.ドゥームは、独自のアベンジャーズを設立し迎撃することに。リーダーは我が子のように愛するヴァレリア。ドゥームの名のもとに……アベンジャーズ、アッセンブル!

 

〈ドゥーム・アベンジャーズ

アクシスで起きたヒーローとヴィランの反転。強いパワーを正義のために使っていたヒーローが街を襲い、私利私欲にパワーを使っていたヴィランが市民を守る様子がニューヨークで頻発していました。その波はやがてドゥームの住むラトベリアまで及びます。ドゥームはスカーレット・ウィッチが強襲してくると予想。迎撃のために秘密兵器を作る一方で、ある人物に助けを求めていました。ヴァレリアです。スカーレット・ウィッチ同様に反転していたドゥームは、まずラトベリア臣民の安全を最優先に最も信頼できるヴァレリアを頼ったのでした。ドゥームが秘密兵器の最終調整を行う間、ヴァレリアが反転魔法の影響を受けていないヒーロー達を集め、スカーレット・ウィッチを迎撃する作戦です。絶対に戦わないことをヴァレリアへ厳命し、予め作戦を言伝しておいたコールソンへ預けます。コールソンとSHIELDの協力もあってチームを組めるほどの人数が集まりました。しかしそのメンツは第一線から退いた者や、そもそも悪人との戦闘が専門外か経験不足な者ばかり。不安の声がチーム内から集まる程でした。しかしここは天才ヴァレリアの出番。メンバーを招集したのはドゥームだが、その目的は崇高なものだと説きます。そしてヒーロー達が暴れてしまっている現状、我々こそがアベンジャーズなのだと。栄光への登竜門であり、一流チームの代名詞であるアベンジャーズの称号。それが仮初のものだとしても、奮起するには十分でした。さらにヴァレリアはドゥームの城からこっそりアーマーを持ち出しており、自分用に改良したものを着用。万全の体制でスカーレット・ウィッチへ挑みます。
f:id:ELEKINGPIT:20221207103206j:image反転したスカーレット・ウィッチへ挑む、その名もドゥーム・アベンジャーズ。容赦ない超攻撃に打つ手はあるのか?

 

ドゥーム・アベンジャーズと名付けられたチームの作戦はこうでした。スカーレット・ウィッチをラトベリアの中心街からドゥーム城まで引き付け、ドゥームが開発した秘密兵器へ閉じ込める。ドゥームの秘密兵器とは、スカーレット・ウィッチの力を吸収する装置です。閉じ込めてさえしまえばヘックスパワーも意味をなさないはず。あのスカーレット・ウィッチに勝てはしなくとも、それくらいならば出来るはず。いや、やらねばならぬ。ドゥーム・アベンジャーズの士気は最高潮です。ところがやる気に満ち溢れていたとしても昨日今日で結成された、経験不足が目立つチーム。連携プレイもチームワークも未熟なままで、味方の攻撃を妨害してしまうことことすらありました。味方を怒鳴りつけて先行する者、下手な連携をしようとして失敗する者。ベテランヒーローも混ざっているはずがうまく行きません。このままではドゥーム城まで引きつけるどころか中心街から離れることすらできません。業を煮やしたヴァレリアは単身スカーレット・ウィッチへ戦いを挑みます。しかし幼いヴァレリアには一矢報いることすら厳しい相手です。結果は誰もが予想していた悲劇でした。
f:id:ELEKINGPIT:20221207104411j:imageスカーレット・ウィッチの手でアーマーを引き剥がされノックアウトしたヴァレリア。しかしこの犠牲がドゥーム・アベンジャーズの結束を飛躍的に高めた。

 

〈世界の端のアベンジャーズ

今作はドゥーム・アベンジャーズという、一時的ながらも新たなアベンジャーズの結成が見られました。まさにタイトルの通り「アベンジャーズ・ワールド」を実感させる構成です。おそらくアクシスのような大規模なクロスオーバーイベントの裏側では、描写されていない場所でもこのような出来事が起こっていたのでは? と想像すら広がります。世界の端まで広がる「アベンジャーズ」。その称号の意味を今一度考えたいと思います。

今作でも「アベンジャーズ」という称号に奮起するヒーロー達の姿が描かれていました。また私たちの住む世界でも、特定の分野の優秀な人材を結集した状態を比喩的にアベンジャーズと呼ぶことがあります。アベンジャーズの称号とは、栄光の一流チームという意味が一般的となりつつあるのです。しかしそれだけではヴァレリアのドゥーム・アベンジャーズは、メンバーの士気を高めるための方便のようにすら解釈できてしまいます(実際そのような側面があったことは否めませんが……)。ドゥーム・アベンジャーズもまたラトベリアを危機から救った、間違いなく「アベンジャーズ」であると今作の読者は確信することでしょう。これほどチグハグなチームですら「アベンジャーズ」たる資格を持つのだと多くの人が納得するはずです。それは何故か? 一流ヒーローに成ったというのもまた1つですが、それ以上の意味が「アベンジャーズ」には込められているのです。在り来りな解釈とはなってしまいますが、私はこれを希望と捉えました。私は間違いなくドゥーム・アベンジャーズへ、ラトベリア救国の希望を見出していました。今作の読者は恐らく同じ感を覚えたはず。その称号に奮起し、各地で使われたであろうチーム名。それは自分たちが希望となる、というオリジナルのチームの意図すら超えた意味があったのかもしれません。