アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS DARTH VADER DARK VISIONS #4

ベイダー卿を様々な形で描いたDARK VISONSもいよいよ残り2話となりました。今回は反乱軍から見たベイダー卿。映画や外伝作品で描かれる「ダース・ベイダー」は、多くが「登場人物の乗り越えるべき試練」という立ち位置でした。しかしそれは、同時に「高く険しいが乗り越えられる壁」でもあるのです。当然圧倒的な恐怖の象徴という描かれ方も少なくありませんが、それを主題に置いた作品はわずかだったはず。映画ローグ・ワンのような絶望の代名詞ダース・ベイダーをとことん楽しみましょう。
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〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

父が殺された。下水管に逃げ込んだ子どもが見たのは、ストームトルーパーに囲まれ無慈悲に殺された父の姿だった。

帝国設立からもうすぐ20年が経とうとしていた。自由と平等の旗の元に結成された反乱軍は、圧倒的な帝国軍戦力を突破するためスターデストロイヤー製造工場を探していた。

かつて父を帝国軍に殺された子どもはやがて成長し、反乱軍パイロットを目指す。天性の才能を復讐へと捧げるために……

 

〈希望すら打ち捨てて〉

青年は、反乱軍のパイロット候補生として優秀な成績を収めていました。既にベテランパイロットすら凌駕するほどの技量とセンスに教官も期待を寄せるばかり。しかし経験不足が目立ち戦場へ立たせるには不十分。傲慢な発言も相まって訓練生から卒業出来ずにいました。実戦へ出させて貰えないことに、青年は不満をぶつけます。かつて青年は帝国軍に父親を殺されていました。その復讐のために反乱軍へと加わったのです。このまま訓練ばかりしていても意味は無い。帝国軍と戦って、父の仇を討ちたい。我慢出来なくなった青年は、整備中のXウィングで飛び出してしまいます。教官や部隊の隊長が慌てて後を追う中、青年はついに帝国軍のステーションを発見します。慌てて飛び出るTIEファイターを数々撃ち落とす姿はまさに一騎当千。実践の経験不足も感じさせない技巧で帝国軍を混乱させます。更に青年は、一機のTIEインターセプターに攻撃を当てることに成功しました。かすり傷で損傷も軽微、整備すればすぐまた飛び立てる程度のダメージですが、それでもベイダー卿の専用機であるTIEインターセプターに傷をつけたパイロットが何人いたでしょうか。青年はガッツポーズで基地へ帰還します。
f:id:ELEKINGPIT:20221214004626j:image反乱軍の基地から発進する、青年のXウィング。エースパイロット以上の活躍を見せ帰ってくる。

 

命令違反に無断出撃。しかしそれらに目を瞑ればかつてないほどの大戦果を上げたといえる青年。反乱軍の上官は、帝国ステーション襲撃作戦に改めて青年を加えることにしました。先程の襲撃で敵の警戒も高まっているはずなので、今度はフォーメーションや連携プレーを予め打ち合わせます。少数精鋭で敵戦力に大打撃を与える。反乱軍の基本的な戦略を徹底し、2度目の帝国ステーション襲撃は始まりました。帝国の警戒は予想以上で、TIEファイターと会敵するまでそう時間はかかりませんでした。先程の戦いですっかり自信をつけた青年はブラスターの隙間を縦横無尽に飛び回り、砲火を敵機へ直撃させ続けます。順調に作戦が進んでいると思ったその時です。TIEインターセプターが現れたのは。TIEファイターとは明らかに違う形状に専用カスタムを施された仕様。あそこのコックピットにダース・ベイダーがいるのは間違いありません。勇ましく機体を加速させた瞬間、インターセプターは上官のXウィングの背後へ回っていました。青年が捉えきれない速度で移動するインターセプター。赤い閃光が煌めいた瞬間、Xウィングは爆炎に包まれていました。青年が呆気に取られている間に教官も撃墜、残る機体は青年のXウィングのみ。勝てない。本能がそう告げていました。自らの操縦技術全てを逃げることに使った青年は、何とか基地へ帰還することに成功します。しかし安心感は全く得られません。先程の光景が鮮明に刻まれて離れないのです。候補生の同期らの心配をよそに味わったばかりの絶望を反芻する青年。更に悪いことに、青年のXウィングを追ってかTIEインターセプターが現れました。反乱軍基地へ襲いかかる雨のようなブラスター。青年は味方の悲鳴をもよそに逃げ場のない基地で逃げ続けていました。
f:id:ELEKINGPIT:20221214013854j:imageパニックになりながら逃げ回る青年。恐怖の暗黒卿と戦う気力も技術も自分にはない。

 

〈希望をも挫く絶望〉

親の復讐のため、確固たる決意で反乱軍へと加わった青年。その境遇はどこかルークを思い出してしまいました。EP4時点でのルークは、ベイダー卿に父親を殺されたと考えていました。また育ての親も徹底的に殺されており、この出来事がなければ反乱軍に加わっていたかさえ怪しくなってしまいます。また卓越した操縦技術を持っていることも共通点の1つでしょう。そんな共通点の多い2人。そこにどのような意味が込められているのでしょうか?

注目すべきは、今作の主人公である青年に名前が与えられていないことです。というより、今作に登場する反乱軍のメンバー全員に名前すら与えられていないことです。後の銀河の英雄として名をあげるルーク、名もなきエースパイロット達。両者の違いは本来ありません。あるとすれば「運命」でしょう。アナキン・スカイウォーカーの子どもでオビ=ワンやヨーダから指導を受けたルークは、やがてダース・ベイダーを倒すことで銀河の平和を取り戻します。これらは「Xウィングのパイロット」ではなく、フォースという運命に導かれた結果です。逆に言えばフォースの運命がなければルークもまた青年と同じ末路を辿っていたとしてもおかしくありません。今作の戦いは歴史に名を残すことも無く、また帝国軍や反乱軍にとってもさほど重要なポイントでもありません。本来飛び入りで参加したルークも同じ末路を辿っていてもおかしくはないはず。今作は、そんなルークの有り得た世界を表す物語なのかもしれません。