アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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AVENGERS ULTRON UNLIMITED【2023年2月の私的ベストアメコミ】

MCUでもメインヴィランとして登場し、今や多くの人々が知ることになったウルトロン。永久の平和を願いプログラムされた人工知能が、人類こそ地球の平穏を乱す存在と判断し反旗を翻す……誕生から長い年月を経たためか、陳腐化してしまった目的を持つヴィランです。しかしだからこそライターがどのように扱うのかを着目すると、人間のように複雑な内面に驚かされることでしょう。悪魔と恐れられる凶悪なAIをカート・ビュシーク氏はどのように「料理」するのか? ヒーローの活躍とともに、その存在に注目するのもまた一興でしょう。
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前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

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日本語版関連コミック

 

〈あらすじ〉

ピム博士が攫われた。荒らされ廃墟のようになった研究所から見つかったのは、邪悪な人工知能の痕跡だった。真の平和を目指し世界滅亡を企むウルトロンに、アベンジャーズが、そして世界が怒りの鉄拳を振り上げる!

 

〈世界の平和〉

テンプラー卿との戦いから数日、アベンジャーズは記者会見を受けていました。多くの質問が飛び交い長期戦さえ予想される空気の中、突如ガラスを突き破ってワスプが現れます。必死の形相で助け求めているようです。記者会見を中止させ、よくよく話を聞いてみると、なんとピム博士が連れ去られたというではありませんか。犯人は不明。歴戦の勇士であるピム博士を誘拐出来るとは相当の手練に違いありません。事態を重く見たアベンジャーズはすぐさま出動します。ピム博士が連れ去られた研究所では、奇妙な気配をセンサーが感知していました。ある人影が研究所にいること、その人影はアダマンチウムを有していること。アダマンチウムという言葉にアベンジャーズはあるヴィランの姿を思い浮かべます。ピム博士が生み出した最凶の人工知能、ウルトロン。自己進化を繰り返した挙句、現在は地球で最も硬い金属アダマンチウムに身を包んでいるのです。なるほどそれならばピム博士を拉致したことにも合点がいきます。しかし研究所へ突入したアベンジャーズを待っていたのは、予想外の人物でした。ウルトロンが生み出した2番目のパートナー、アルケマです。アルケマは科学者にしてヒーローのモッキンバードから脳波をコピーして作られた人工知能です。ウルトロンはアルケマをパートナーとして迎えるために創造しましたが、結局離反されていました。そんなアルケマもアダマンチウムのボディを手に入れ、アルケマ2を名乗り自己進化を遂げている様子。既にブラックパンサーと交戦していたようですが、その結果は一目瞭然でした。
f:id:ELEKINGPIT:20230206150613j:image荒廃した研究所に悠々と立つアルケマ。アフリカ最強の王すら圧倒した人工知能の目的とは?

 

アダマンチウムのボディにはアベンジャーズの総攻撃すら通用しません。そこでワンダは、ヘックスパワーでアダマンチウムの分子構造を変化させる作戦に出ます。アダマンチウムを貫けないのならば内部を変化させてしまえばいいのです。この作戦は予想以上の成果を出しました。アルケマがあっという間に倒れたのです。そもそもアルケマは何故ピム博士の研究所を訪れたのでしょうか? 尋問の結果、ピム博士を誘拐した犯人は別にいることが判明します。アルケマは地下で動き始めたウルトロンを妨害するために研究所を尋ねたようですが、時すでに遅し、ピム博士はいなかったようです。そしてヴィブラニウムを求めブラックパンサーと交戦したようでした。アルケマは苦悶の表情を浮かべます。ウルトロンを邪魔するつもりが結果的に助けてしまった。ニュースを見ればわかる。そう言ってアルケマは意識を失ってしまいます。数時間後、アベンジャーズは国連から招集命令を受けていました。なんとウルトロンが、東欧の小国スロレニアを壊滅させたというではありませんか。一国を滅ぼしたウルトロンを放っておくわけにはいきません。国連はこの事態を一刻も早く解決するため、アベンジャーズに助言と協力を求めたのでした。
f:id:ELEKINGPIT:20230206152324j:imageスロレニア最後の記録映像を見るアベンジャーズ。軍隊や地元のヒーローすら倒し、無垢な市民を虐殺するウルトロンがそこにいた。

 

これ以上ウルトロンの悪事を絶対に許す訳にはいかない。アベンジャーズはピム博士捜索班とスロレニア突入班に分かれて行動することに。スロレニア突入班は、国連の精鋭部隊を指揮しウルトロンとの全面戦争に備えます。一方ピム博士捜索班は再び研究所を訪れ最初から捜査し直すことに。そこで見つけたのは、地下に隠されたウルトロンの秘密基地でした。ウルトロンは徐々に研究所の地下へ浸透し機を窺っていたのでしょう。驚く暇もなくウルトロンの大軍に包囲されるアベンジャーズ。瞬く間に全員が捕えられてしまいました。目が覚めると、目の前にはウルトロンが。どうやら自分たちはウルトロンの極秘ラボまで連れてこられ、磔にされたようです。磔にされたのは自分たちだけでなく、ピム博士とグリムリーパーの姿も見えます。目の前のウルトロンは得意気な笑みを浮かべていました。ここにいる全員は選ばれし者、新世界を生きる新人類の祖になるというのです。ウルトロンはスロレニアを滅ぼし、ここに新たな国家を設立しようと企んでいました。そして最終的には世界を全滅させ、自身の国家を新世界にしようと考えているようです。それまでの人類はおらず、ロボット達が管理運営する真に争いのない世界が広がるのみ。これこそがウルトロンの導き出した平和な世界です。しかし自分を生み出したピム博士やその家族は新世界を生きる権利を、やがては新人類の礎となる許可を与えたのでした。ピム博士達は、ノアの方舟への乗船を許されたのです
f:id:ELEKINGPIT:20230206153637j:image磔にされたアベンジャーズたち。ウルトロンの真の目的は、自分を生んだ家族と共に新世界を作ることだった。

 

小鳥のさえずりも木々のささめきも聞こえず、漂うのは血と硝煙の匂いばかり。スロレニアの惨状は記録映像よりも悲惨なものでした。スロレニア突入班と国連軍は、ウルトロンの基地を捜索しようにも大量の敵に足止めを食らっていました。敵はなんとゾンビ兵。スロレニア国民の死体へサイバーチップを埋め込み、意思のない兵隊へ変えていたのです。死体を壊さない限り何度でも立ち上がってくる不滅の大軍に、国連軍もアベンジャーズも攻撃を決めきれずにいました。そこへウルトロンが現れます。アダマンチウムのボディに超強力なレーザー攻撃。いくら精鋭部隊と言えど軍隊で勝てる相手ではありません。アベンジャーズは総力を上げてウルトロンに立ち向かいます。ワンダがピム博士捜索班に加わってる今、アダマンチウムの装甲を打ち破るしか倒す方法はないでしょう。アイアンマンのユニビームに、エネルギーシールドを変形させたキャップの連続攻撃、ソー渾身の雷撃。ようやくウルトロンが倒れた時、既にアベンジャーズは満身創痍となっていました。それでも辺り一面に広がるウルトロン軍団を相手にせねばなりません。
f:id:ELEKINGPIT:20230206181645j:image何度倒しても倍の数になって現れるウルトロン。残り僅かなエネルギー全てを費やしてでも迎え撃たねばならない。

 

ピム博士は何度も自責の念に駆られていました。最初にウルトロンを開発したからこそ、ウルトロンによる被害全てに対して責任を感じていたのです。何より、ウルトロンの知能はピム博士の脳波を参考に作られたもの。ピム博士に近い考えを持っているといっても過言ではありません。だからこそウルトロンの行動に心を痛め、恐れていたのでした。自己進化を続けたウルトロンにピム博士の思考パターンがどれほど残っているか分かりません。しかしその心痛を思えば元パートナーのワスプさえかける言葉が見つかりませんでした。ピム博士の悲痛な叫びを傍目に、ヴィジョンはずっと拘束具を解く機会を待っていました。自身の分子密度を自在に操れるヴィジョンは、能力を発動してしまえばいつでも拘束具をすり抜けることが出来たのです。あとは敵が油断する瞬間を狙うだけ。一瞬の隙をついて能力を発動したヴィジョンは、グリムリーパー含め全員の拘束具を破壊。ウルトロン本体との戦いへ挑みます。一方スロレニア突入班は量産型ウルトロンの弱点を発見し、なんとか一掃することに成功していました。あとはウルトロンの地下基地へ突入するだけ。ブラックパンサーとスターファイアの活躍でおおよその場所は検討がつきます。ボロボロの状態ですが、躊躇する理由はありません。ここでアベンジャーズマンションで休養を取っていたはずのジャスティスが現れます。ジャスティスは激しい戦いの末戦闘不能の大怪我を負っていました。しかしウルトロンとの戦いで自分だけ参加出来ない悔しさから、その弱点を探し続けていたのです。ジャスティスによると、金属化する前の純正ヴィブラニウムは金属を融解させる機能があるのです。これならばアダマンチウムであろうが関係なくウルトロンを破壊出来るはず。スロレニア突入班は早速純正ヴィブラニウムを握りしめ地下基地へと突入します。待っていたのは、既に交戦状態のピム博士達でした。ジャスティスはすかさず純正ヴィブラニウムをピム博士へ投げ渡します。これでウルトロンに一矢報いることができる。ピム博士は全身全霊で、自らが生み出した最凶最悪の人工知能を葬ります。
f:id:ELEKINGPIT:20230206193301j:imageこれまでの怒り、悲しみ、全てを込めて拳を放つピム博士。大地が揺れ、呻き声が止まり、ウルトロンは完全に沈黙した。

 

〈理想郷を目指して〉

自らの野望のため、国家をも滅ぼしたウルトロン。全人類に裁きを与え、自らが許した人間のみ新世界に生きる権利を許す。その姿は神のようにも悪魔のようにも見えます。しかし神聖で邪悪な心の奥底には、孤独に震える子どものような姿も見えてしまいました。

ウルトロンは家族を何よりも欲していました。ワスプの脳波をコピーしてパートナーのジョカスタを生み出し、またワンダーマンの脳波からヴィジョンを子どもとして作っていました。しかしジョカスタもヴィジョンもアベンジャーズに参加、自身が掲げる人類滅亡の敵となってしまいます。そして第2のパートナーとしてアルケマを作りますが、今や憎悪を向けられる関係に。人工知能にだって愛という感情が生まれるのは、ワンダと結婚したヴィジョンが表していることです。ウルトロンは親であるピム博士からも憎まれ、誰よりも孤独に生きていたと考えられます。だからこそウルトロンは自身の家族としてピム博士やワンダ達を新人類に迎えようとしていたのでした。しかしどれほど純粋に家族を欲していても、邪悪な思想を持っていることに変わりありません。平和な世界を実現し、自らの家族を持とうとするウルトロン。しかし根底には人類滅亡という恐るべき野望が流れており、永遠に和解することは出来ないのです。