ダークセイドとの壮絶な戦いを経て誕生の狼煙を上げたジャスティスリーグ。王道ストーリーを経て描かれたジャスティスリーグの産声に、物語内外で大きな歓声が上がったことでしょう。そして今作はさらなる成長に向け必要な要素が詰め込まれています。
邦訳版
〈あらすじ〉
ジャスティスリーグの誕生から5年の月日が流れた。今やアメリカ国民はジャスティスリーグに全面的な信頼を寄せ、ジャスティスリーグもその期待に答え続けていた。現人神の如く賞賛されるヒーローを疑う人物などこの世界にはいないだろう。ただ1人を除いては……。
〈神か人か〉
ダークセイドとの戦いから5年。ジャスティスリーグは多くの人々を救い、誰もが本物の英雄の姿に歓喜していました。中にはアメリカ政府の機関に組み込むべきでは? なんて声も。完璧な英雄が政治を担えば未来は更に明るくなるでしょう。その扱いはまるで現人神のよう。これほどまで神秘性を持ったのは、ジャスティスリーグが政府のエージェント、スティーブン・トレヴァーとしかコンタクトを取らないことも拍車をかけているのでしょう。そんなトレヴァーはワンダーウーマンとのロマンスも噂されており、アメリカ中でジャスティスリーグの話題を聞かない日はないのでしょう。それほどジャスティスリーグは信頼を得ていたのです。しかしそれを快く思わない人物も。
凶悪なヴィランと戦うジャスティスリーグ。アメリカ国民は派手なコスチュームを纏う英雄を称え、全面的な信頼を寄せていた。
いつもの様に敵を倒すジャスティスリーグ。しかしその裏でジャスティスリーグを虎視眈々と狙う影の存在に気付きます。どうやらジャスティスリーグの弱点を探っている人物がいるのです。ヴィランの1人を尋問した結果、その人物はグレイブスという名前だと判明しました。敵が我々の弱点を探っているなら対策を立てるまで。ジャスティスリーグは拠点にしている衛星に集まり、対抗策を考えます。ところがジャスティスリーグはメンバー同士の干渉を避けていたため互いのことをほとんど知らなかったようです。今までは個々の力が卓越していたからこそ敵を倒せていたに過ぎず、結束力や絆は決して深いものとは言えませんでした。だからこそ、今回のようにメンバー同士が協力せねば倒せないような敵には苦戦してしまいます。ジャスティスリーグの会議中、なんとグレイブスが現れたではありませんか。グレイブスの能力な死霊の力を操ること。全員がそれぞれ過去に傷を負っているジャスティスリーグは、あっという間に屈服。アメリカが英雄と称えたチームは瞬く間に倒されてしまいました。
グレイブスの手で全滅するジャスティスリーグ。死霊の力を前に手も足も出なかった。
更に悪いことに、グレイブスがトレヴァーを誘拐していることが判明。すぐにでも取り返さねば殺されるかもしれません。これを知ったワンダーウーマンは特に怒りに燃えます。冷静さを失ったままグレイブスを殺すと宣言したのです。ジャスティスリーグ全員が勝てなかった相手にどうしてワンダーウーマン1人で勝てるでしょうか。しかし諌めようとしたグリーンランタンを、ワンダーウーマンは怒りのまま攻撃。周囲をも巻き込む戦いは全世界へと報道されます。一方バットマンは、グレイブスの強さの秘密に着目しました。そもそもグレイブスは、5年前のダークセイドとの戦いでジャスティスリーグに救われた1人。以来ジャスティスリーグの物語を描き、その名が世界へ知れ渡るきっかけを作った人物です。そんなグレイブスのファイルによると、ダークセイドとの戦いから数年以内に家族全員が謎の病で亡くなったことが判明します。そしてグレイブス自身の体も病が蝕みつつありました。最早医者も匙を投げるほど進行した病状に絶望したグレイブス。家族を失い自身も死にかけ、これほど苦しんでいるのに、ジャスティスリーグは助けてくれないではないか。それからしばらく後、グレイブスは重い体を引きずってスメル山へとたどり着いていました。アシュラへと助けを求めたのです。そうしてグレイブスは、死霊を操る力を得たのでした。
命からがら助けを求めたのは、聖なる山に住むアシュラ。そこで授かった力がグレイブスを憎悪へと駆り立てる。
全てを知ったジャスティスリーグは、スメル山へ向かいます。グレイブスの力の根源となった場所で決着をつけるのです。しかしスメル山にいたグレイブスの力は未だジャスティスリーグを上回っていました。死霊を前に心の傷を鋭く抉られ、膝を着くしかないジャスティスリーグ。追い打ちをかけるように現れたのは、トレヴァーの死霊でした。自分たちの戦いに巻き込まれ、トレヴァーが殺された。愕然とするジャスティスリーグ。トレヴァーを守るために駆け回った戦いは完敗に終わったことを意味していました。初めての敗北に表し難いほどの絶望感をジャスティスリーグは味わっていました。しかし形勢は再度逆転します。なんと「本物」のトレヴァーが現れたのです。誘拐され拷問を受けていたトレヴァーですが、機転を利かし脱出していたのでした。ならば目の前にいる「死霊」のトレヴァーは? グレイブスが操っている死霊は? 生きたトレヴァーが証明してみせました。全て偽物だと。死霊と思われていたものは、特殊な寄生虫によるものだったのです。偽物の死霊ならば、心の傷を抉るような声も聞く必要はありません。ジャスティスリーグは100%以上の力を発揮する時が来ました。
逆転の一撃を決めるワンダーウーマン。畳み掛けるようにジャスティスリーグの全力がグレイブスを直撃する。
〈悪への道筋〉
ジャスティスリーグのファンだったグレイブスがヴィランになるという衝撃的な展開だった本作。立ち上げから僅かな話数でジャスティスリーグの不完全性を炙り出すという筋書きは驚きです。ジャスティスリーグのファンに過ぎなかったグレイブスがジャスティスリーグを打ち負かす力を得、一方当のヒーロー達は市民を巻き添えにした身内争いを起こしてしまう。自分の力だけではどうにも理不尽に周囲へと当たってしまう姿はヴィランもヒーローも変わらないものでした。「villan's journey」魔性への旅路は誰もがアメリカ国民が称えるヒーローさえ抱えていたのです。では何故グレイブスはヴィランに、ジャスティスリーグはヒーローになれたのでしょうか? それはひとえに「目を覚ますことが出来たか」ということではないでしょうか? グレイブスは家族を失い自身も病に苛まれ、助けに来なかったジャスティスリーグを激しく恨みました。確かに神のように扱われるジャスティスリーグを見ればそういう思いも湧いてしまうかもしれません。しかしヒーローはそれほど万能な存在ではありません。グレイブスは恨む道理のない相手を恨み続けたに過ぎないのです。しかし怨念に取り憑かれ、打ち負かされるまで決して恨みを捨てることなく、言うなれば目を覚ますことが出来ませんでした。一方怒りに任せ暴走したワンダーウーマンは、仲間の存在があったらからこそ冷静さを取り戻すことが出来ました。逆に言えば、その場に仲間がいなければワンダーウーマンは止まることがなかったのです。誰もが陥る可能性のある魔性への旅路。しかしそれは、共に支え合う仲間がいれば抜け出せるのです。