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MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS PRINCESS LEIA

旧三部作では主要な人物の1人として大きく活躍したレイア姫。その勇気ある姿に多くの方が惹き付けられたことでしょう。今作はそんなレイア姫を主人公にしたミニシリーズです。EP4の直後を舞台にした今作は、破壊されたデス・スターに喜ぶ一方で故郷を失ったオルデラン人の悲しみが描かれました。反乱軍として、オルデランの姫としてレイアが出来ることは? レイア姫の強さをたっぷりと味わいましょう。
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日本語版コミック

 

関連作品

 

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〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

反乱軍に希望が生まれた。ルーク・スカイウォーカー達の活躍で、銀河を脅かすデス・スターが破壊されたのだ。

しかし悪逆非道な帝国軍が黙っているはずがなかった。オルデランへ過酷な運命を強いた帝国は、ついにオルデラン人の皆殺しを命じたのだ。

この恐るべき命令からオルデラン人を守るため、命知らずの姫が立ち上がる。オルデランの魂を守るために……

 

〈決して死なないもの〉

デス・スターの死。ルーク・スカイウォーカーらの活躍で宇宙に爆炎が広がる中、反乱軍は歓喜の渦に包まれていました。銀河を支配していた恐怖の象徴が破壊されたのです。絶望の暗雲が晴れ、新たなる希望が生まれたのですから、これを喜ばずにはいられません。しかし反乱軍の中で唯一苦々しい表情をしている人物が。エヴァアンは、オルデラン出身のパイロットでした。確かにデス・スターは破壊され、喜ばしい気持ちはあるでしょう。しかしその最後の被害者は、美しい自然と文化を持つ惑星オルデランです。故郷を失い、尊敬する人も友人も家族も皆死体さえ跡形もなく木っ端微塵になった。それでもオルデランの姫であるレイアはその事に触れもせず、笑顔で手を振っている。それが苦々しく許せなかったのでした。一方レイア姫も、エヴァアンに接近。言葉に言い表せないような悔しさを滲ませた表情を見逃さなかったのでした。オルデランは滅んでも、オルデランの魂まで死なせる訳にはいかない。そんなエヴァアンの提案にレイア姫の心が動かされます。帝国軍が生き残ったオルデラン人を全滅させる前に全員を救出、保護しその魂を後世まで伝える。エヴァアンは未だレイア姫に複雑な感情を抱いていますが、このオルデラン人にしかできない任務を共に成し遂げる決意を固めます。こうして、たった2人の極秘任務が始まりました。
f:id:ELEKINGPIT:20230412020427j:image極秘任務を遂行するレイア姫エヴァアン。オルデランの魂まで帝国に殺させないと誓った。

 

2人はまずナブーへと向かい、目論見通りオルデラン人の生き残りを1人保護します。そして次なる目的地を惑星サラストへと定めました。サラストはオルデランの文化や教育を布教するために、多くのオルデラン人が派遣された過去があります。しかしあの悲劇の後、サラストの一部は事実上オルデランの飛び地のようになっていました。以来帝国の進撃を恐れ外界との接触を一切絶っていました。そのため警戒心が強く、少しの刺激で銃撃戦になりかねないほど。飛び地の指導者であるジョラは当然レイアとエヴァアンに疑いの目を向けます。レイア姫は膝をつけて話し合えば必ず理解してくれると信じ、ジョラの心さえ溶かしつつありました。しかしその瞬間、サラストが激しく揺れ、ブラスター音が響き渡ります。帝国軍が襲撃してきたのです。何故この場所がバレたのか? そしてこのタイミング、やはりレイア姫はオルデランの裏切り者では? かつてレイア姫が帝国軍の捕虜となっていた過去を考えても、帝国軍のスパイとなった可能性は有り得ない話ではないはず。ジョラの銃口レイア姫に向けられます。しかし今度はエヴァアンがジョラの心を溶かします。地下に住むクリーチャーを解き放ち、帝国軍と戦わせたのです。クリーチャーはストームトルーパーが着用する鎧の成分が好物。そのため的確に敵軍のみを狙い、この危機を脱します。この行動で帝国軍が共通の敵だと改めて理解したジョラは、レイア姫の呼びかけに賛同。こうしてオルデラン救出隊は大所帯となり宇宙へ出発します。
f:id:ELEKINGPIT:20230412095551j:imageレイア姫に跪くジョラ達。レイアは同郷の士としてこの任務の重要性を説く。

 

サラストへの的確かつピンポイントな襲撃は、レイア姫さえ仲間の中に帝国軍のスパイがいることを予感させました。問題はそれが誰か、ということです。しかしスパイの目を恐れてオルデラン人の救出が滞れば、それこそ何人もの命が奪われかねません。レイア姫はスパイの調査と並行してオルデラン人の保護を続けます。次なる目的地は、オルデラン人を保護する場所を見つけること。候補地は最初から決まっていました。惑星エスピリオンです。エスピリオンはエスピリオン人とオルデラン人の混血が人種として確率しており、そこならばオルデランの文化や芸術の継承もできると考えたのです。施設団長としてジョラを送り、早速エスピリオンとの交渉に当たらせます。一方帝国との内通者も見つかりました。ナブーで保護したオルデラン人のテイスです。テイスは姉のトゥーラと何度も交信していましたが、トゥーラは帝国士官。テイスの交信からレイア姫らの動向を探り、報告していたのでした。そんなトゥーラも本心では故郷を破壊した帝国軍を憎んでおり、テイスやレイア姫達と合流したいと考えていました。しかしオルデランが粉砕された一件以来帝国軍に忠誠心を疑われており、粛清を恐れやむなくスパイ行為を続けていたのです。これを知ったレイア姫は、テイスもトゥーラも責めることなく、そして迷いもなく命懸けの作戦を思いつきます。事実上人質を取った帝国軍からトゥーラを取り返すため、人質交換を申し出たのです。トゥーラを引き渡す代わりにレイア姫を捕縛させること。エヴァアンさえ猛反対する作戦でしたが、トゥーラを助けるためには手段がないことも事実。この手しかないのなら、せめて最善を尽くすまで。人質交換作戦は、オルデラン追撃隊の将官との間で行われました。
f:id:ELEKINGPIT:20230412140646j:imageたった1人のオルデラン人を助けるため、迷いなく命を投げ出すレイア姫。その不屈の信念に、オルデラン人の誰もが心を動かされた。

 

初めはレイア姫へ複雑な感情を抱いていたエヴァアンでした。オルデランのために涙さえ流さない、自分が尊敬する王族のために弔意を表すことさえない、氷の王女と罵っていた程でした。しかしそれは全て他人を思いやっての行動だとエヴァアンは理解します。強いリーダー像を示し希望が訪れた反乱軍を鼓舞していたのです。一方でレイア姫はこっそりと亡き故郷のため涙を流す場面も、その信念が何度も折れかけたことをエヴァアンだけは見ていました。打算なき友情を一兵卒である自分と築こうとする場面も数え切れないほどありました。剛柔備わった屈託のない包容力と、何者にも優る芯の太い勇気。王室を失ったレイアの求心力、カリスマ性をエヴァアンは幾度となく目の当たりにしていました。これこそが王の器なのでしょう。一兵卒としてこれまでの任務に同行していたエヴァアンでしたが、今度は友として命を賭ける覚悟を決めます。レイアが人質交換作戦を申し出たのも、きっと我々が助けてくれると信じたからでしょう。ならばそれに応えない友がどこにいるでしょうか? レイアが引き渡される直前、エヴァアンは輸送船に偽装したホバークラフトで襲撃。ブラスターガトリングを駆使して将校らをあっという間に一掃し、レイアの救出に成功します。同刻、人質交換が行われていた惑星の宙域には驚くべき光景が広がっていました。なんとレイア姫らの活動を耳にしたオルデラン人が船団となって現れたのです。救出されたレイアもこの光景には息を飲みます。しかし危機が去っていないのもまた確か。将校の死を受けた帝国軍のオルデラン追撃隊が、スターデストロイヤーをもってオルデラン人を全滅させようと強硬手段に出たのです。もしここで失敗すれば、それこそオルデラン人が全滅しかねない勢い。ここでレイアは、全オルデラン人へ自らの胸中、そして目先に迫る危機を伝えます。我らがオルデラン人であれば、怒りには知恵で、恐怖には想像力で、戦争には希望で応えようではないか。オルデラン人全員が奮い立った熱意が、絶対零度の宇宙空間を通して伝わってきます。この演説にエスピリオンの人々まで心を動かされます。帝国軍の暴挙に、文字通り全員オルデラン人が立ち上がった瞬間です。
f:id:ELEKINGPIT:20230412151330j:image立ち上がるオルデラン人たち。レイア姫の演説がオルデランの魂に火をつけた。

 

〈失われた優しさ〉

オルデラン人保護のため、本作ではレイア姫らがナブーへ訪れるシーンがありました。ナブーと言えば、レイアの母であるパドメの母星。映画本編もナブー危機からスタートしており、豊かな文化以上にファンの印象が強い惑星でしょう。そんなナブーで、本作はあるシーンが描かれました。パドメを表した壁画が一瞬振り返ったように見えたのです。ところがこれはレイア姫しか見えておらず、幻覚か勘違いか、それともフォースの導きかさえわかりませんでした。もしこの現象がフォースの導きだった場合、パドメは何を訴えようとしていたのでしょうか? 今回は本作のワンシーンからパドメの遺志を考えたいと思います。

秘密裏に結婚し、しかし闇へと堕ちたアナキンに大きなショックを受け絶望の果てに亡くなったパドメ。その死の直前に生まれたのが後のルークとレイアです。この時のパドメは既に生きる意思さえ残っておらず、全てを振り絞って生まれた子どもを見届け衰弱死してしまいました。涙を流しながら双子を見つめるパドメが、どれほどアナキンへ子を見守って欲しかったか、この場に立ち会って欲しかったか、今でも愛する気持ちが分かってしまうシーンです。そんなパドメにとって、双子は暗黒面に堕ちたアナキンが残した最後の愛の形とも言えるでしょう。双子とは、パドメにとってアナキンに残された優しさの具現化なのです。パドメの信じる優しさは、やがて父と対立したルークが最後に情けをかけてダース・ベイダーを闇から救い、銀河内戦において決定的な瞬間となりました。そしてレイアも同様に、理性的な君主として優しさと知恵と勇気で味方を鼓舞し続けます。父と対立してしまった双子。しかし双子には、パドメが信じたアナキンの優しさが受け継がれていました。壁画のパドメは、そんな2人を見守るという意思表示に思えました。過去を亡きものにしようとするダース・ベイダー。約20年前の悲劇を知らない双子。パドメとの繋がりは確かに薄れていく一方です。それでも2人を見守ることが今パドメに出来る精一杯。最期までアナキンの優しさを信じたパドメは、遠くから双子の行く末を見守り続けているのかもしれません。