アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS:DARTH VADER vol3 THE SHU-TORUN WAR

ルーク・スカイウォーカーとの邂逅を描いたベイダーダウンは、ルークに逃げられた上に腹心のドクターアフラまで捕えられ、結果的にはベイダー卿の敗北で幕を閉じました。しかしベイダー卿自身の勢いは留まるどころか増すばかり。ベイダーダウンでも大立ち回りを演じたベイダー卿ですが、今作では「悪役」として敵を薙ぎ払う姿が描かれます。ベイダー卿が鬼将たる所以をとことん味わいましょう。
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日本語版コミック

 

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〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

鉱山惑星シュー=トランは、貴族主義文化の果てに王族同士での政争に発展するほど不安定な政府を抱えていた。希少資源を求める帝国は、ベイダー卿にこの政争を鎮圧するよう命じる。

家族が殺し合う地獄をベイダー卿の助けで制したのは、最も若いトライオ王女だった。しかししばらく後、女王となったトライオに反乱の試練がふりかかる。

気高く強い良心的な王を目指すトライオの前に、再び現れたダース・ベイダー。この銀河内戦時代に星を統治できるのは、良き王だけでは不可能なのだ……

 

〈帝国の鬼将〉

鉱山惑星シュー=トラン。非常に希少な鉱物が産出されることで財をなした惑星で、貴族主義の色濃い文化が特徴的です。産出されるレアメタルは帝国軍も重宝しており、これがなくては帝国軍を維持出来ないと皇帝にさえ言わせるほど。そんなシュー=トランで反乱が起こったとなれば、すぐにでも鎮圧せねばなりません。元々貴族主義が跋扈したのもあってか王族同士の政争が絶えず、以前にも内乱を鎮圧したばかり。ベイダー卿が選出した者を玉座に据えましたが、今度はルビックス男爵が反旗を翻したのです。ならば再び鎮圧するまで。皇帝直々の命令で、ベイダー卿がシュー=トランに派遣されることが決定しました。
f:id:ELEKINGPIT:20230427223338j:image溶岩と白煙に包まれたシュー=トラン。それがどんな理由であろうとも、反乱の目は潰さなくてはならない。

 

ベイダー卿の作戦は至極単純でした。正面からブラスターの雨を浴びせ、前進あるのみです。猪武者のような戦法ですが、最前線を突っ切る猪武者本人は万殺の将。少ない損害で作戦を維持し続けるのは、無双のフォースユーザーが敵の前線を崩し続けているからでしょう。しかし地の利や特性を活かした敵が1歩上回っていました。ベイダー卿の作戦はやがて手詰まりとなり、膠着状態が続きます。敵の要塞を粉砕しながらもあと1歩が及ばない帝国軍。一方ルビックス男爵は惑星の聖地さえ容赦なく攻撃します。ここまでやられてはこの星の王としてトライオも許す訳には行きません。ベイダー卿同様最前線に立つトライオは、帝国軍の巨大兵器仕様を見守ることに。ベイダー卿の乗るこの巨大兵器は地中から敵の基地を攻撃するドリルで、上手くいけば戦局は一気にこちらへ傾くでしょう。トライオも期待を向ける中、発進からしばらくすると、なんと巨大兵器がコントロール不能になったではありませんか。どうにか緊急停止させると、そこは敵の大軍が包囲していました。何者かの罠にかかったのです。更に悪いことに、通信が何者かに妨害されておりベイダー卿は孤立無援となってしまいました。
f:id:ELEKINGPIT:20230427233026j:image四面楚歌の知らせを受けるベイダー卿。それでも包囲した敵を全滅させる覇気が放たれていた。

 

ベイダー卿はルビックス男爵が仕掛けた罠と考えていました。しかしあまりにも手際の良すぎる罠、綿密な敵軍の動き、電波ジャック……内通者がいることは間違いないでしょう。その正体は? 最初にベイダー卿へ刃を向けたのは、ライトセイバーを扱うサイボーグで双子の暗殺者でした。2人はベイダー卿が孤立したタイミングで奇襲を仕掛けますが、本物のフォースユーザーの圧倒的な実力を前に敗北。内通者の名前を聞き出します。裏切り者の正体は、サイロ-5でした。サイロ-5は皇帝が生み出したサイボーグで、ベイダー卿に強い不満を抱いていた人物です。今回の戦争では事実上帝国軍の副官として従事していましたが、その立場を利用してルビックス男爵へ情報を流していたのです。ベイダー卿と音信不通になったため行軍中止を命じ、帝国軍を無抵抗同然にさせたサイロ-5。あとはベイダー卿が倒されるのを待つのみです。ところがサイロ-5の作戦は、ベイダー卿の桁違いな実力により破綻。なんとベイダー卿は四面楚歌の状況から逆に敵を圧倒し、脱出に成功したのです。本来ならあの場面でベイダー卿が倒されるはずでしたが、一騎当千暗黒卿には1万の軍勢さえいないようなものなのですから。徐々に崩壊していく敵軍をかき分け、ベイダー卿は一直線にサイロ-5やルビックス男爵の元へ向かいます。
f:id:ELEKINGPIT:20230428005041j:image敵の対象へライトセイバーを差し向けるベイダー卿。最後まで戦局を離さなかった。

 

〈悪に堕ちる〉

ベイダー卿の圧倒的な強さと残忍さをたっぷりと描いた今作。しかしそれだけではありません。強さと残酷さを兼ね備えるベイダー卿が主役ならば、それ以外の機微はほかのキャラクターが担えばいい。今作のもう1人の主人公、トライオ女王は繊細かつ捉えがたい感情を見せた人物です。今作はそんなトライオ女王がいわゆる「闇堕ち」する過程を描くストーリーでもあります。最初は気高くて強く、そして優しさを持つ王になろうとしていました。しかしベイダー卿と共に戦場を経験するにつれ、それだけでは足りないことに気付きます。やがてトライオは王としての冷酷さを獲得。裏切り者を粛清するなど、その姿はとても以前とは違いました。こうして氷のような女王が誕生したのです。

さて、今作の特徴は残忍さ、冷酷さなどの「悪」として描かれる部分が一切作品によって否定されないことです。トライオ女王の様子を見るとむしろ肯定的にさえ思えてしまいます。誰も「悪」を止める存在がいないのです。この物語の主人公が悪役であることを思い出させてくれる構成でしょう。そんな今作が描いた、トライオ女王が強き王として立つ過程はまさに闇堕ちと言っていいでしょう。帝国に不満を抱きながら仕方なく従っていたのですが、最終的には強く結ばれた関係になるのです。誰にも止められない悪。その渦の中心が今作のダース・ベイダーだったのです。