アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

MENU

DEATH OF CAPTAIN AMERICA vol2 THE BURDEN OF DREAMS

キャプテン・アメリカの死。それは1つの時代が終わったことを告げる象徴であり、変わってしまった現代への皮肉とも言える出来事でした。しかしそれだけで終わらせてはいけません。時代が進めばキャプテン・アメリカは即不要なんて残酷な話はないでしょう。時代が変われば形を変えて、アメリカンドリームは絶えず受け継がれていくのです。
f:id:ELEKINGPIT:20240202111306j:image

 

日本語版関連作

シビル・ウォー (MARVEL)

シビル・ウォー (MARVEL)

Amazon

 

関連記事elekingpit.hatenablog.comelekingpit.hatenablog.comelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

キャプテン・アメリカが死んだ。しかしその遺志は、シビルウォーで敵対していたトニーへと託される。一方トニーは、キャプテン・アメリカの死の真相へと辿り着いていた。

 

〈新キャプテン・アメリカ

バッキーはレッドスカルの策により捕らえられていました。そして洗脳の専門家であるドクターファウスタスの手で拷問洗脳を受けることに。ドクターファウスタスは、SHIELDの精神科医に化けて多くのエージェントを洗脳していました。これによりシャロンさえも洗脳、キャップを殺害させることに成功していたのです。真実に気付いたシャロンは罪悪感に苛まれ、精神が屈服してしまいました。今やシャロンはドクターファウスタスの手駒となってしまいます。これ程の洗脳の達人ならばバッキーさえも操れるだろう。レッドスカルはそう考えていました。しかしバッキーはウィンターソルジャーとして長く操られていたためか、強靭な精神で何とか耐え続けます。耐えかねたのはファウスタスの方でした。洗脳処置を中断し、アダマンチウムの拘束着を着せてひとまず移動することに。レッドスカルが作戦を次の段階へ移そうとしているのです。一方シャロンは、罪悪感で自らを責める声に苛まれていました。ファウスタスはシャロンを完璧に洗脳したと考えているようですが、シャロンもまたわずかながら抵抗しているのです。シャロンを苛める声はファウスタスに従うよう叫びますが、それとは裏腹に正反対の行動に出たのです。飛行機で移動中、なんとバッキーを落として逃がしたのです。シャロンの勇気ある抵抗は、やがてこの事件を大きく左右する火種となるのでした。
f:id:ELEKINGPIT:20240204203103j:imageバッキーを突き落とすシャロン。今後を左右するきっかけは、果てしない勇気が生んだ行動だった。

 

バッキーはブラック・ウィドウとファルコンの手で保護、超人登録法違反で逮捕されます。ところがバッキーの身柄はSHIELDのヘリキャリアへと移されました。何か意図があるのかも。バッキー自身そう感じていましたが、脳裏によぎる小さな疑問を捨てて本来の目的を果たそうと動き出します。バッキーの標的は2人いました。レッドスカル、そしてトニー・スタークです。バッキーはキャップの死がトニーにも大きな責任があると考えていたのです。なにはともあれ標的が自身の手で懐に招き入れたのですから、このチャンスを逃さない手はないでしょう。バッキーはすぐに行動に移ります。手錠を破壊し牢から脱出、アイアンマンを探しに出たのです。一方バッキー脱獄の報せはすぐにトニーにも伝わりました。ウィドウ曰くバッキーがトニーを殺そうとしているのは明白。ならば迎え撃たないわけにはいきません。トニーはアーマーを着用し、今にも襲いかかってくるバッキーへ挑みます。戦いは全くの互角でした。しかしこれがキャップの望む戦いでないことは、誰よりもトニーが理解しています。お互いに実力が拮抗していることがわかったところで、トニーはバッキーへそう伝えます。何故それがわかるのか? トニーは唯一、キャップからの遺言を託されたのです。遺言の内容を一言で表すとこうです。アメリカンドリームを絶やしてはならない。キャップはシビルウォー中に自身が死亡することを想定していたようです。その上でもし自分が死んでも、「キャプテン・アメリカ」をふさわしい人物が受け継ぐべきだという願いが記されていました。トニーはこのふさわしい人物こそバッキーだと考えているようです。トニーは新たなキャプテン・アメリカを受け継がせるためにバッキーをヘリキャリアへと呼び寄せたのでした。一方バッキーは葛藤します。自分がキャプテンアメリカを受け継ぐことが、スティーブの本心かどうか迷っていたのです。それでも。バッキーは盾を構えコスチュームを着ます。やがて新たなキャプテン・アメリカの姿はマスコミを通してアメリカ国民に伝えられました。
f:id:ELEKINGPIT:20240204235201j:imageバッキーの受け継いだキャプテン・アメリカ。その姿はかつてのスティーブの模倣ではなく、オリジナルだった。

 

〈それでも世界は〉

バッキーがキャプテン・アメリカを受け継いだ本作。その後はキャプテン・アメリカという重荷をバッキーが実感することとなり、タイトルも合わせてそれが本作の主たるテーマなのでしょう。しかし本作にはもう1つテーマがあります。前作から引き続いて、アメリカンドリームが根幹にあるのです。本作は新たなキャプテン・アメリカの登場で移りゆくアメリカンドリームの姿を描きました。死にゆくかつてのアメリカンドリームと、生まれ変わる新たなアメリカンドリーム。その正体とは何なのでしょうか?

古きアメリカンドリームとは、前作の記事で語った通り1920年代〜1930年代辺りにアメリカ国民が抱いた自由と未来への希望だと思われます。人々は世界恐慌、人類最悪の戦争を経てもなおアメリカンドリームを抱き続けていたのでしょう。ところが9.11の衝撃や複雑に移りゆく現代社会にアメリカンドリームはついていけなくなりました。アメリカンドリームとは、もっと抽象的な言い方をすればアメリカ国民にとっての神話なのでしょう。遡ればスティーブが生まれるより以前のゴールドラッシュや独立戦争からも垣間見ることができるに違いありません。未来への躍進、その第1歩なのですから。神話を持たない大国にとって、神の登場しない神話こそがアメリカンドリームなのかもしれません。しかしニーチェは言いました。神は死んだと。世界一の発展を遂げたアメリカは、やがて自らがばら撒いた憎悪の種により絶望を思い知ります。アメリカンドリームが見せてくれた、「我々はどこへ行き何者になるのか」という問いへの答えを人々は信じられなくなってしまったのです。キャプテンアメリカの死はその象徴でしょう。ではバッキーのキャプテン・アメリカはなんの象徴なのでしょうか?

「我々はどこへ行き何者になるのか」という問いの答えを、かつての人々はそれを宗教や神話に求めました。アメリカンドリームも同様です。しかし現代人はほとんどがこの問いに答えられないでしょう。ニヒリズム的な価値観を形成しつつある現代社会では、宗教の持つ答えさえ虚構へ閉じ込めてしまいます。それでも人々は答えを求めます。私達がどこへ行くのか、何者になるのかに興味がない人はいません。その応えがあるだけで人生の指針となり、目指すべき未来の方向性がわかるのですから。つまり、アメリカ神話であるアメリカンドリームは神話の体系を持たない故に時代とともに変遷して求められるのです。さて、劇中のバッキーキャップはスティーブ同様に星条旗がデザインされたコスチュームヲ着用します。しかしそれは上半身のみ。コスチュームの半分以上は真っ暗なものです。これは何を表しているのでしょうか? 9.11を経たアメリカは、アメリカ自身が撒いた黒い種を目の当たりにしました。アメリカには黒い部分もある。わかっていたことではありますが、同時に直面したくない事実です。この事実を受け入れた上で改めて自由を標榜する。これこそが9.11を経たアメリカンドリームなのでしょう。バッキーキャップのコスチュームは黒い影と自由を表しているのです。