アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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WONDER WOMAN New52 vol2 GUTS

アマゾンの戦士として強く逞しい姿を見せたワンダーウーマン。自身のアイデンティティもゼウスの子どもという事実に揺り動かされましたが、母の愛に気付き立ち上がるという熱い展開がなされました。一方で戦士という面が強調されており、ヒーローたる所以は何なのかは今後の展開に託したようでした。本作ではそんなワンダーウーマンのヒーロー性を描いています。話の規模も大きくなり、今作以降も大きく期待が持てるシリーズでしょう。
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前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

ゼウスの子を妊娠したゾラは、ゼウスのパートナーであるヘラに命を狙われる身となった。ワンダーウーマンやヘルメスらの助けを借りて幾度となく窮地を乗り越えたが、思わぬ刺客が背後を襲った。冥界の神ハデスがゾラを誘拐したのだ。

 

〈神と人〉

ヘラ、ポセイドン、ハデスの3人を遭遇させることで一時的に場を収めることに成功したワンダーウーマンたち。しかしここで予想外の出来事が起きます。なんとゾラが死の神ハデスに攫われたのです。ゾラが連れ去られた先は恐らく冥界。このまま突入しても返り討ちにあうでしょう。そこでヘルメスとダイアナは、エロスに案内されへパイストスの鍛冶場へと赴きます。ヘパイストスとは、ゼウスの子どもで炎と鍛冶を司る神です。ヘパイストスの手にかければあらゆる武器が使用者に最適な状態で生み出されます。ここでワンダーウーマン専用の装備を整え、十分な準備を終えた上で冥界へ挑むのです。現世との境界から、冥界アンダーワールドへ侵入したワンダーウーマンたち。ゾラは誰にも捕えられておらず、怪我もなく見つかりました。唯一変わったところといえばお腹の大きさでしょう。アンダーワールドでは時間の進みが現世と異なるようで、再会した時には既に臨月を迎えていました。尚更これ以上ここにいるわけにはいきません。ゾラを逃がそうとしたその時でした。冥界を司るハデスが現れたのです。ハデスはゾラを引き渡す代わりにエロスの銃を渡すよう要求。ゾラとその子に興味を示さない様にダイアナは戸惑いますが、その程度でゾラの無事が保証されるなら安い条件です。銃をハデスに渡しゾラは無事に帰ってきました。ホッと一安心する一同。その時でした。一瞬の隙を狙い、ハデスは渡された銃でワンダーウーマンを撃ち抜きます。混乱するゾラとヘルメスたち。ワンダーウーマンは残る力で2人を現世にワープさせ。気絶しました。
f:id:ELEKINGPIT:20230507004506j:imageハデスに撃たれるワンダーウーマン。血を流しても案ずるのは仲間だった。

 

エロスの拳銃にはとある能力が付与されていました。撃ち抜かれた者は最初に見た人間を愛するようになるのです。ハデスの狙いは最初からこのためでした。ハデスはワンダーウーマンを自身に惚れさせ、結婚しようと企んでいるのです。アンダーワールドで着々と進む挙式の準備。ハデスの所有する魂全てを参列させ、いつでもスタートできるまでになりました。ハデスは挙式を始める前に、ダイアナの愛を確かめようと提案。ダイアナの首を真実の投げ縄で締め付け、愛の告白をさせようというのです。戸惑うダイアナですが、抵抗しても無駄でしょう。ダイアナは自らの首を投げ縄で絞めます。ダイアナの言葉を固唾を飲んで見守る一同。次の瞬間、ダイアナは愛していると答えました。ダイアナはハデスを愛していたのです。しかしそれに続いた言葉がアンダーワールドの住民全員を驚愕させます。愛しているが、結婚はできない。ダイアナは言うが早く乗っていた馬を駆け、群衆を走り抜けて逃げ出そうとしたではありませんか。ハデス含む全員が事態を把握するのに数秒のフリーズを挟む中、ダイアナは助けに来た仲間の元まで追いつきました。ようやく事態を理解したハデスが血の海から作り上げた赤い巨人となって襲い掛かります。真実の投げ縄の力をどうやって逃れた? ハデスの問いにダイアナはこう答えます。投げ縄の力を逃れることは出来なかった。だからハデスを愛していたことも真実。でもハデスと同じくらい全てを愛していると。膝から崩れ落ちたハデス。自分を愛した事の無いハデスにとって、それは理解できない領域だったのです。諦めたハデスは、ダイアナ達を現世へと戻すしかありませんでした。
f:id:ELEKINGPIT:20230508010634j:imageダイアナとの結婚を諦めるハデス。初めて目にする愛の形に困惑していた。

 

そうして現世に戻ったダイアナたち。しかしゆっくりしている暇はありません。臨月を迎えたゾラを早速かかりつけの産婦人科医に見せ、出産に向けた準備をしなければなりません。ゼウスの子を妊娠していたとしても、まずはゾラをリラックスさせベストな状態で出産出来るようダイアナ達は出来るだけ干渉し過ぎないよう注意を払います。その時でした。不思議なことが起こります。空に浮かぶ太陽に重なるように月が現れたのです。ただの月食でないことは確かでしょう。太陽の神アポロ、月の神アルテミスが顕現した合図です。2人はもうすぐ産まれるであろう新たなゼウスの子を求めて強襲したようです。迎撃するワンダーウーマンたち。しかしその力は圧倒的でした。岩石の如く頑丈な肌を持つレノックスの胸元が抉られ、ヘルメスもワンダーウーマンも一太刀も入れられず泥を被ります。そして助けに来たゾラを誘拐、オリンポス山に閉じ込めました。猛追するワンダーウーマンたち。何とか赤ん坊が生まれる前に追いつきましたが、そこでは既にアポロの真の目的が成されつつありました。アポロはゼウスが座るはずだった空の玉座を狙っていたのです。ゼウスの子として王位継承権を握るアポロ。破水するゾラを気にもとめず、2人はヘラをも騙してその目的を成就させました。オリンポスの王となったアポロ最初の命令は、アポロにとって都合の悪い人物を現世へと送り返すことでした。こうしてアルテミス以外の全員が現世へとワープさせられます。追い返された形になりますが、敗北の味を噛み締めている場合ではありません。既に破水したゾラ。すぐにでも出産の準備をしなければなりません。小さな病室に響き渡るゾラの声。ダイアナ達は赤ん坊の泣き声を静かに待ちます。しばらくして待ちわびた赤ん坊の声が聞こえた直後です。今度はゾラの悲鳴が上がったではありませんか。ゾラはヘルメスに赤ん坊が盗まれたと言うのです。ここでダイアナは思い出します。ヘルメスは単なる使者ではないことを。ヘルメスは盗みを司る神であることを。
f:id:ELEKINGPIT:20230508082326j:image疲労とパニックに陥るゾラ。ダイアナは生涯をかけて子どもを取り戻すと誓った。

 

〈愛を司る〉

本作ではハデスとの結婚式、そしてワンダーウーマンが博愛主義者であることが明かされました。特定の誰かを愛するのではなく、全てを分け隔てなく愛しているのだと。これこそがワンダーウーマンをヒーローにしている根幹のように思えます。そもそも愛とは何なのか? 何世紀にも渡り議論されていることですが、一般論として「自身が不利益を被っても相手を幸せにしようという気持ち」であると言えるでしょう。例えば相手のためにプレゼントを渡すようなもの。ワンダーウーマンはそれを全てに行おうとする人物なのです。偶然知り合ったゾラとまだ見ぬ子どもを全力で守ろうとするのは、他の全てと同様に2人を心から愛しているからなのでしょう。ワンダーウーマンがヒーローなのは、言わば愛を司る戦士だからなのです。