アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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WONDER WOMAN New52 vol1 BLOOD

ヒーローの活躍が実際の人々に勇気を与えるという例は、我々ファンも含めると枚挙に遑がないでしょう。中でも大きな影響を与えた1人がワンダーウーマンです。第1次女性解放運動以来、女性の社会進出と共に活躍し続けてきました。今回はそんなワンダーウーマンの個人誌を読んでいきたいと思います。ジャスティス・リーグでも勇ましい姿を見せたワンダーウーマン。個人誌でも勇猛な戦士の活躍を期待したいです。
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〈あらすじ〉

平和な日々を過ごしていたゾラは、ある日ケンタウロスに襲われた。ワンダーウーマンに助けを求めると、さらなる衝撃の事実が発覚する。神々の戦いに巻き込まれたゾラの運命とは?

 

〈神の子〉

のどかな農地で暮らすゾラ。その静寂を破るように、青い肌を持つ人物が訪れます。この青い肌の人物、なんと「これからあなたと子どもを狙って暗殺者が来る」と言うではありませんか。当然理解が追いつかないゾラ。しかし次の瞬間、青い肌の人物が矢で射抜かれます。ドアを蹴破って現れたのは、2人のケンタウロス。頭も体も動かないまま、青い肌の人物が投げた鍵をなんとか受け取ると、次の瞬間にはどこかの寝室にいました。ベッドの上には誰かが寝転がっています。この人こそダイアナ、ワンダーウーマンと呼ばれるヒーローです。ダイアナはゾラから事情を聞くと、ゾラがワープした時と同じようにゾラの家まで戻ってきました。瞬く間にケンタウロスを蹴散らすダイアナ。しかし一足遅かったようです。青い肌の人物が立てないほど重傷を負っているではありませんか。この人物は、ダイアナ曰くヘルメスという名前なのだとか。ヘルメスは弱った体でなおゾラへ逃げるよう言います。このままではゾラと子どもに危険が迫る。しかしおかしな話です。ゾラには子どもがいないのですから。ヘルメスは続けます。ゾラは子どもを妊娠していると言うのです。それもゼウスの子を。
f:id:ELEKINGPIT:20230430115349j:imageゾラの話を聞き、すぐさま準備を始めるダイアナ。この戦いがゾラだけでなくダイアナさえ巻き込むものになるとも知らずに……

 

ダイアナはゾラを故郷であるパラダイスへ保護することにします。しかしダイアナの母にしてパラダイスの女王、ヒッポリュテはこれがどれほど危険で困難なことか忠告。ゼウスのパートナーであるヘラは嫉妬深いことで有名で、自分以外と関係を持った人物を酷く憎むのです。恐らくここもヘラかその子どもが襲撃してくるでしょう。一方ゾラは、ヘルメスにダイアナとはそもそも何者なのかを尋ねます。ダイアナは男女の交わりなく生まれた存在だとヘルメスは答えました。それは随分昔の話、ヒッポリュテが不妊に悩まされていた時代の話です。ヒッポリュテは涙を流しながら子どもを欲していましたが、その望みはずっと叶わずにいました。そしてその願いを込めながら、神に祈りながら、土で赤ん坊を象った人形を作ります。疲れ果てたヒッポリュテはその場で倒れるように眠ってしまいますが、祈りは神に届いていました。翌朝、ヒッポリュテの傍らには赤ん坊がいたのです。それが現在のダイアナなのだとか。まるで信じられない話ですが、ダイアナはそんな伝説が作られる人物ということでしょう。そんなダイアナの帰郷にパラダイスは夜通し宴会状態です。一気に進んだ時計がまた止まったかのような平和。しかし1度ヘラに目をつけられては安寧など幻にすぎません。パラダイスを襲撃したのは、ヘラの忠実なる子どもストライフでした。ストライフは体の大きさを自在に変化させる能力の持ち主。また幻惑を見せ同士討ちをさせ、仮に幻惑を破っても巨体で蹂躙する戦法で強靭な戦士たちをあっという間に蹴散らしました。ダイアナは真実の投げ縄でストライフの目的を聞き出そうとします。ストライフは妹にハグをしに来たと言いました。やはりゾラとその子を狙ったのしょうか? いいえ、ストライフはダイアナに向けて妹と言ったのです。ストライフが会いに来たのはゾラやその子ではなく、ダイアナだったのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230430205239j:imageストライフに告げられた真実。ダイアナはゼウスの子だった?

 

ダイアナはすぐさまヒッポリュテに話を聞きに行きます。自分は泥人形から生まれたのか? それともゼウスと交わって生まれたのか? ヒッポリュテは諦めたように真実を話し始めました。それはかつてヒッポリュテがゼウスと戦っていた時代。地球上での命を懸けた戦いはやがて舞踊のようになり、やがて2人は一晩を共にすごしたのです。しかしヒッポリュテの子どもがゼウスと交わって生まれた子どもだと知られれば、生まれる前にヘラに殺されるかもしれない。生まれたとしても、その子が平和を知る日は来ないかもしれない。ヒッポリュテは確かにダイアナへ嘘をついていました。しかしそれはヘラからその存在を隠すためであり、守るためであり、誰よりも愛していたからだとヒッポリュテは言います。しかしダイアナは裏切られたような気持ちが溢れ出してしまいました。ダイアナは2度と帰ってこないことを宣言。自らをダイアナではなくワンダーウーマンと名乗り、パラダイスを去ります。イギリスへ戻ったワンダーウーマンは、ゾラ曰く何かコミュニティを求めているよう。ゾラを守ると決めたものの、心が荒んでいるのは確かなようです。しかしストライフが真実を知っていたということは、ヘラもまた同様に真実を知っていたということ。ワンダーウーマンがそれに気づいた時にはもう手遅れでした。パラダイスはヘラの襲撃にあい、ワンダーウーマンが到着した時ヒッポリュテは石化していたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230430211211j:image石化した母にとめどなく溢れる謝罪の言葉。誰よりも愛されてることを分かっていたはずなのに。

 

ワンダーウーマン、ゾラ、ヘルメスはイギリスのとあるカフェで作戦会議を行っていました。このままではヒッポリュテ同様ゾラやその子が襲われるのは時間の問題です。しかし決定的な作戦は思いつかないまま、時間ばかりが過ぎてしまいました。そんな時、大柄の人物が突如会話に加わろうと現れます。その名はレノックス。ダイアナと同じくゼウスの子で半身半神のデミゴッドです。レノックスはワンダーウーマンへある作戦を提案します。6時に面白いものが見れるからロンドン橋へ来いと。ワンダーウーマンとゾラは約束通りの時間にロンドン橋を訪れました。しばらくすると、現れたのは巨大な怪魚。ワンダーウーマン曰くポセイドンです。一方レノックスはロンドンの地下下水道から同じく神を訪ねていました。死を司る冥界の王ハデスです。レノックスはハデスとポセイドンを引き合わせ、取引を持ちかけようとしていたのです。ヘラは天も地も海も冥界も全てを支配しようとしていました。それを阻止しようと呼びかける作戦を考えていたのでした。しかし2人の神が結論を出す直前、ついにヘラがその姿を表します。
f:id:ELEKINGPIT:20230501011614j:image稲妻と共に現れたヘラ。しかし事件はこれだけでは終わらない。

 

〈繋がり〉

人は数々の繋がりを持って生活する生き物です。趣味や仕事などがそれです。しかし最も強固とされているのが血の繋がり、家族でしょう。今作はそんな血の繋がりと家族の繋がりが強調されているような作品でした。母の愛によって生まれたワンダーウーマン。しかしそこには確実にゼウスの血が混ざっており、数え切れないほどの異母兄弟姉妹がいることが判明します。血の繋がりを辿るだけならばストライフもレノックスも、ポセイドンも家族ということになります。しかしゾラはそんな家族の感覚が分からないと言いました。ゾラは幼くして両親を亡くしており、家族という繋がりがいまいち実感できないでいたのです。ゾラと両親を繋ぐものは、今や血の繋がりという事実だけ。これはワンダーウーマンと同じ状況でしょう。ならばワンダーウーマンの本当の家族は? 答えはわかりきっていること。ワンダーウーマンにとって家族とはヒッポリュテであり、パラダイスの戦士全員なのです。今作は家族のあり方、血の繋がり以上に強固な絆の繋がりを思い出させてくれる1作でした。ジャスティスリーグの中でも1人現代社会より神話よりな世界観を持つワンダーウーマン。しかしその根幹は我々と同じように繋がりを大切にし、誰かと誰よりも大切な絆を持つ人物だったのです。ただ勇猛な戦士というだけでなく、親近感を持つような人間性を見せてくれたのが本作でした。