アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

SPIDER WOMAN AGENT OF SWORD

ベンティス氏が手がけたニューアベンジャーズシリーズにて様々な活躍を見せ、その後もMARVELの人気キャラの1人となったスパイダーウーマン(ジェシカ・ドリュー)。SHIELDとハイドラの二重スパイであり、両親は共にハイドラ工作員という異色の経歴を持つヒーローです。スクラル大侵略時にはそんな経歴を利用され、女王ヴェランケと入れ替えられてしまいました。00年代を代表する悲劇のヒーローの1人といっても過言ではないでしょう。今回紹介するSPIDER WOMAN AGENT OF SWORDは、そんなスクラル大侵略の直後、オズボーンがヒーロー社会を支配したダークレイン期に当たる物語です。ニューアベンジャーズシリーズ同様ライターはベンティス氏が担当、邦訳コミックと共に楽しめるストーリーです。そしてアレックス・マリーヴ氏の、まるで絵画のようなアートも本作の大きな特徴でしょう。
f:id:ELEKINGPIT:20220521193648j:imageSPIDER WOMAN AGENT OF SWORD

 

日本語版関連コミック

 

〈あらすじ〉

スクラルによる侵略が終わり、地球へ帰還したジェシカ・ドリュー。しかしそれはもう1つの悪夢の始まりだった。世界中から容赦なく浴びせられるバッシング、何より誘拐された記憶がトラウマとなり、仲間すら信用出来ないのだ。そんな眠れぬ日々を過ごすジェシカへある依頼が舞い込む。スクラル残党狩りだ。

 

〈スパイダーウーマンの復讐〉

ジェシカは自殺しようとしていました。拳をこめかみに向け、あとは光線技ヴェノム・ブラストを放てば一瞬で……ところが、今のジェシカにはそんな気力すら湧きません。眠れぬ夜、思い出すのはそれまでの人生。ハイドラ工作員の両親から産まれ、実験台としてクモのDNAを埋め込まれスパイダーウーマンとなった。目の前で父親が殺された。多くのヴィランと戦いながら失われていくスーパーパワーに焦りを覚え、ハイドラと禁断の取引をした。目が覚めたらスクラルの女王に、名前も地位も名声も、居場所も奪われていた。ようやく戻ってきたと思えば、誰もが敵に見える地獄に変わっていた。ユニバース史上最も哀れな人物を更新した、と自虐気味に笑みを浮かべます。秘密組織からの依頼状が届いたのはそんな時です。その名はSWORD。異星人の脅威から地球を守るために誕生した、SHIELDの姉妹組織です。長官のアビゲイル・ブランドは直々にスクラルの残党狩りを行うよう要請されたのでした。緑髪……スクラルの肌と同じ色にすらジェシカは怯えるほどでした。しかしそれでも、人生の全てを奪ったスクラルへ復讐する権利が自分にはあるはず。戸惑いながらもジェシカはスクラル探知機を受け取ります。
f:id:ELEKINGPIT:20220521221707j:imageSWORDのエージェントとしてスクラル残党狩りを決めたジェシカ。今の自分にはそうするしかなかった。

 

SWORDのアビゲイル長官は、最優先ターゲットとしてコル・カヴィティを倒すよう指示します。スクラル侵略部隊のNo.4で、上層部唯一の生き残りです。そこでジェシカはコル・カヴィティが潜伏していると思われるマドリプーアへ向かいます。しかし潜伏先のホテルに着いた途端、スパイダーマンの姿をしたスクラルの襲撃が。恐怖と混乱に苛まれながら戦うと、今度はハイドラの女王ことマダム・ハイドラが現れます。急な展開に戸惑ったのはジェシカの方。マダム・ハイドラはジェシカへ甘い言葉をかけ、再びハイドラのスパイとして働くよう誘惑します。ハイドラ工作員の両親を持つ純血のハイドラ。誰が歓迎しないでしょうか? さらにマダム・ハイドラは、スクラル大侵略発覚以前に捕らえたスクラルの元へジェシカを連れて行きます。ありのまま復讐するのだ、その権利があるはずだ、と。どうやらそのスクラルは侵略部隊が敗北したことすら知らない様子。ジェシカをヴェランケ女王だと思い込んですらいました。最初は尋問してコル・カヴィティの居場所を聞き出すつもりでしたが、期待していた情報は何も知らないようです。ジェシカは吐き捨てるように、スクラルへ女王の死を伝えます。
f:id:ELEKINGPIT:20220521223531j:image女王でないならば殺すまで。巨大化したスクラルは、衰弱しながらも圧倒的なパワーを振るう。

 

スクラルを殺した後もジェシカの心が晴れることはありませんでした。勢いそのままハイドラから逃亡、コスチュームを受け取って調査を再開しようとします。途中オズボーンが送り込んだサンダーボルツの妨害を受けますが、どうにかこれを退けることに成功。ようやく邪魔する者がいなくなり、任務を再開します。結果、コル・カヴィティはマドリプーアのとある酒場にいるという情報が。地球人に化けて活動しているでしょうが、相手はスーパースクラルの1人。複数のスーパーパワーを掛け合わせた超強力な能力を有します。スクラル探知機のメーターがMAXまで振り切れた途端、スーパースクラルとスパイダーウーマンの戦いが始まりました。ヴェノム・ブラストすらものともしないタフさ、1発1発がとてつもなく重い攻撃、恐らくはジェシカの能力を大幅に上回る敵。このままでは死ぬのはジェシカの方でしょう。その時です。上空から予想外のチームが登場します。
f:id:ELEKINGPIT:20220521230405j:imageジェシカを助けるために駆けつけたシークレット・アベンジャーズ。スクラルだと疑うジェシカだが、探知機のメーターは微動だにしなかった。

 

〈復讐の意味〉

人生の全てを奪われたスパイダーウーマンがスクラルへ復讐しようとした。一言で本作のあらすじを語るならそんなところでしょうか。実際ジェシカは劇中で3人のスクラルを殺しています。しかしジェシカの心は決して晴れはしません。あれほど心の底で復讐を望んでいたというのに。つまりジェシカにとって、スクラルを殺すこと自体は復讐ではなかったのです。これには本人も気付いている様子。ではジェシカにとって、スクラルへ向けた復讐とは何だったのでしょうか? 物語の結末を見ると、どうやら「取り戻す」ことにあったように思えます。スクラルの目の前で、奪われたものを全て取り戻すのです。様々な苦難を乗り越え、アベンジャーズを信頼出来るチームだとして最後には頼ったジェシカ。地獄のような日常から、まるで光のようにアベンジャーズは登場しました。そしてその中には親友のキャロルの姿も。ホッとしたのか、ジェシカはキャロルへいつものような軽口を言っていました。ジェシカにとっての日常が帰ってきたのです。この時からジェシカのモノローグは、それもマイナス思考のものは一切なくなりました。晴れなかった心がついに晴れた瞬間です。これこそが、ジェシカが物語当初から望んでいたことだったはず。ジェシカがしたかったことは、かつてのように仲間を頼り頼られること。今や女王を失い、地球で全てを失ったスクラル。そんなスクラルの目の前で日常を取り戻したことこそがスパイダーウーマンにとって、復讐の先に求めていたことかもしれません。

CAPTAIN AMERICA/IRON MAN THE ARMOR AND THE SHIELD

MARVELが誇る黄金コンビといえば、キャップとトニーを思い浮かべる人が多いでしょう。時に協力し、時に対決し、共に多くの苦難を乗り越えたからこそ育まれた特別な絆に結ばれています。今回紹介するCAPTAIN AMERICA/IRON MAN THE ARMOR AND THE SHIELDは、そんな2人を主役にした最新のミニシリーズです。過去作品からの引用も多く2人の歴史の長さを感じさせられた本作。栄光のヒーローとして正義を貫く姿は何度見ても美しいものです。
f:id:ELEKINGPIT:20220519104221j:imageCAPTAIN AMERICA/IRON MAN THE ARMOR AND THE SHIELD

 

日本語版関連コミック

 

シビル・ウォー (MARVEL)

シビル・ウォー (MARVEL)

Amazon

 

 

〈あらすじ〉

ヴェロニカ・エデンが脱獄した。ファルコンとバッキーの活躍で逮捕されたハイドラの若きリーダーを監視していたキャップとアイアンマンはすぐさま逮捕に動き出す。ところがヴェロニカを助け出したのはかつてヒーローを志した若者で……?

 

失われた時を求めて

ヴェロニカ・エデン脱獄の報せは、すぐにキャップとトニーを動かしました。かつてハイドラを率いたこの若者は、危険人物として2人にマークされていたのです。護送車に部下を紛れ込ませた見事な脱出劇。しかしすんでのところで2大ヒーローが駆けつけます。鮮やかな戦いぶりでヴェロニカを捕まえる寸前、今度はさらなる妨害が。トニーにはその姿に見覚えがありました。上空から現れたのは「フィフティ・ワン」。SHIELD長官時代にトニーが推し進めた「50ステート・イニシアチブ」計画でヒーローとなった異星人です。50ステート・イニシアチブとは、将来有望な能力者に適切な教育を施し、アメリカ全州に1チーム以上ヒーローを配置するというもの。直接ではないにしろ、トニーが育てた後輩といっても過言ではない人物。そんなフィフティ・ワンが悪の道へ? 疑問を抱えながら、キャップ達は2人を取り逃がしてしまいます。
f:id:ELEKINGPIT:20220520121613j:imageヴェロニカの逮捕を目的に結束する2人。だがこの事件には何か裏が……?

 

ヴェロニカらを追うキャップとトニー。突き止めた隠れ家には既に先客がヴェロニカ達と戦っているようです。パラディンズ。50ステート・イニシアチブでフィフティ・ワンが所属していたヒーローチームです。どうやらその後もヒーロー活動を継続していたようですが、仲間が悪の道へ進むのを阻止するためにヴェロニカへ戦いを挑んだようです。個々の能力を活かした戦い方は荒削りながら中々の実力。キャップらの心配を他所に、ハイドラの戦闘員を次々と倒していきます。逃走を続けるヴェロニカとフィフティ・ワン。しかしキャップとアイアンマンにパラディンズの追跡は振り切れず、遂にヴェロニカの逮捕に成功します。かろうじて逃れたフィフティ・ワンの行方やその目的も、ヴェロニカへ尋問すれば行き先は分かるでしょう。この事件はゴールへ近づきつつあるようです。
f:id:ELEKINGPIT:20220521002327j:imageかつてトニーが主導した計画でヒーローとなった若者たち、パラディンズ。現在もヒーロー活動を続けているが……

 

ヴェロニカへ尋問した結果、恐るべき計画が判明しました。ヴェロニカはオーバーシーアーと呼ばれるスーパーコンピュータを操作し、ミュルミドーンなる凶悪アンドロイドを解き放とうとしているとしているというのです。現在オーバーシーアーはSHIELDのヘリキャリアに保管されているとのこと。ミュルミドーンを解き放つ目的は未だ不明ですが、良からぬことを企んでいるならすぐにでも阻止する必要があります。経験不足な若者のチームに任せる規模ではありません。キャップらはパラディンズに待機を命じ、ヘリキャリアへ向かうことに。高度なステルス技術を突破しヘリキャリアへ乗り込むと、どうやらミュルミドーンは既に起動していたようです。いきなりキャップとアイアンマンへ襲いかかってきました。強靭な装甲に苦戦する2人。徐々に追い込まれる2人を助けたのは、なんとフィフティ・ワンでした。ここでようやくフィフティ・ワンの目的が判明します。そもそもオーバーシーアーを操りミュルミドーンを解き放とうとしていたのはヴェロニカの方。フィフティ・ワンはそれを阻止しようとしていたのです。ヴェロニカの目的は、言わば超人全滅計画。ヴィランとヒーローの戦いで人々が大きな被害を被るならば、両方をなくすことで世界はより良くなると考えたのです。誤算があるとすれば、オーバーシーアーも独自の計画で動いていたことでしょう。
f:id:ELEKINGPIT:20220521010716j:imageヴェロニカへ自らの野望を明かすオーバーシーアー。全てはロボットによる人類救済計画のため、ヴェロニカをも踏み台にする。

 

ミュルミドーンの大軍にキャップとアイアンマンは大苦戦。フィフティ・ワンも重傷を負ってしまいます。意識を失ったままヘリキャリアへ置いておくわけにはいきません。トニーはフィフティ・ワンをパラディンズの本部まで送り届け、ヴェロニカ脱獄の頃から手を貸していたと思われる上院議員の元へ向かいます。一方キャップはヴェロニカと共にミュルミドーンの大軍を相手します。しかしヘリキャリアの中からあるはずのないものを発見。そしてトニーも予想外の真相を上院議員から聞かされることに。この事件には更なる黒幕が存在していたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220521012916j:image全てはただ、居場所を求めてのこと。かつての仲間と引き換えに得られるものは、若者らにとって全てだった。

 

〈得られるはずだった居場所〉

今作のテーマに、「居場所」というものが挙げられるでしょう。100年先を行くフューチャリストにして、未来を進めるが故に孤独の道を歩むトニー。死ぬはずだった瞬間に死ねず、現代という見知らぬ世界へ取り残されたキャップ。より良い世界を築こうと信じる道へ進むも、悪への歩みを止められないヴェロニカ。今作の登場人物は全員「居場所」を失っているといっても過言ではないのです。しかし同時に、別の居場所を築くことにも成功しています。キャップとトニーはアベンジャーズを通して2人にしかない絆を深め、今やMARVELユニバース屈指の黄金コンビとなっています。ヴェロニカは悪へと振り切ることで確固たる自信を築き上げ、居場所を作り上げることが出来ました。しかしパラディンズは違います。決して悪の道には進まず、しかし正義を貫いてもどこにも居場所はありません。そもそも50ステート・イニシアチブで州を代表するヒーローチームとなってから、スクラルの大侵略でその地位も名声も全て奪われたまま。キャップやトニーのように取り戻したものはなく、日の目を浴びないまま数年の時を過ごしていたのです。ではトニー達はこの若本たちへ何をすべきだったのでしょうか? 劇中でキャップはスパイダーマンを例に挙げていました。パラディンズよりも若い頃からずっと親愛なる隣人として人々を助け続けていたスパイダーマン。その根底には決して地位も名声も求めてはいません。力を振るう以上、誰もが「大いなる力には大いなる責任が伴う」のです。キャップもトニーも、決してヒーローを始めてから全てが順風満帆とは行かなかったのは多くの人が知るところでしょう。キャプテン・アメリカの名を捨ててしまったことも、アーマーの牢獄から逃れようとアルコールに溺れて自殺を図ったこともありました。また超人登録法をめぐってヒーロー同士の凄絶な内戦が勃発したこともありました。それでもキャップとトニーは現役のトップヒーローとして活躍し続けています。居場所が奪われることは1度もなかったのです。キャップは言います。足りなければ何度も精進すればいいのだと。泥臭く時間もかかる方法ですが、ヒーローとして活躍するにはそうするしかありません。不退転の覚悟こそが鍵なのです。居場所は作るものではありません。いつの間にか出来ているものなのです。

STAR WARS DARTH VADER AND THE NINTH ASSASSIN

逆らう者を容赦なく殺し、帝国の恐怖の象徴となったダース・ベイダー。そんなベイダー卿は当然多くの恨みも買っており、暗殺計画が企てられるのはカノンもレジェンズも同様です。さて、今回紹介するSTAR WARS DARTH VADER AND THE NINTH ASSASSINベイダー卿暗殺計画を描いたレジェンズのミニシリーズです。単にベイダー卿暗殺を描くだけでなく、古代文明まで登場する本作。ノンストップな展開にページをめくる手が止まりません。
f:id:ELEKINGPIT:20220516121127j:imageSTAR WARS DARTH VADER AND THE NINTH ASSASSIN

 

 

 

〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

恐るべきダース・ベイダーの首を狙う8人の暗殺者が殺された。しかし未だ諦めない依頼者は最恐の暗黒卿を殺すため、9人目の暗殺者を送り込む。

同刻、忘れ去られた古代文明が帝国滅亡企み動き出す。銀河を次に支配するのは混沌なのだ。

帝国存続には暗殺者と古代文明2つの勢力を相手にせねばならない。ダース・ベイダーが失敗すれば、銀河に待つ未来は破滅か、混乱か……

 

〈予言された混沌〉

とある辺境の惑星、胸に怒りを宿した人物が深い雪を掻き分けて道無き道を進んでいました。大勢の護衛が反対する中辿り着いたのは、何やら物騒な地下基地。そこで堂々と腰を据える人物へ突如頭を下げ始めました。暗殺の依頼です。ターゲットは、銀河帝国恐怖の象徴、ダース・ベイダー。我が子を目の前で殺された恨みを晴らして欲しいと訴えます。既に依頼を出した8人の暗殺者は全員連絡が取れなくなっていました。これが最後の頼みの綱なのです。ならばその依頼、受けない手はないでしょう。少なくとも9人目の暗殺者はそう考えたようです。自信たっぷりな様子でその場を去りました。
f:id:ELEKINGPIT:20220518114131j:image「再び会うことは無いだろう。ベイダーの首が送り込まれた時が仕事完了の合図だ」9人目の暗殺者はベイダー卿を暗殺できるのか?

 

一方、帝国軍内では不穏な空気が流れていました。スターデストロイヤーは自爆テロで破壊され、皇帝の玉座にも爆弾が仕掛けられていたのです。帝国の破滅を企む何者か、それも反乱軍以外の存在に違いありません。自爆犯が死の直前、胸の印象的なタトゥーを掲げていたのです。渦巻き模様、それも頭のないヘビのよう。皇帝はある存在に勘づき、ベイダー卿へ調査に向かわせます。皇帝の予感は的中していました。それは1000年前に滅亡したとされていた古代文明、「ヘッドレス・スネーク」だったのです。銀河の辺境に位置する惑星でヘッドレス・スネークは密かに活動していました。
f:id:ELEKINGPIT:20220518123931j:image辺境の惑星に立つピラミッドには、ヘッドレス・スネークの刻印が。帝国滅亡を目論む謎の存在が遂に白日の元に晒される。

 

ピラミッドの内部を訪れたベイダー卿は驚くべき光景を目にします。なんと人々が、まるで最初から知っていたかのようにベイダー卿の訪問を歓迎したのです。司祭の話ではベイダー卿の訪問は既に予言されていた事だったと言います。それは1000年前、この惑星の先住民が残した壁画に記されていました。そして銀河のその後も。壁画によれば、ジェダイを滅ぼしたベイダー卿は次に帝国を滅ぼし、銀河へ混沌をもたらすというのです。ヘッドレス・スネークはそんな混沌に包まれる銀河を支配しようと目論んでいました。新たなる希望、ダース・ベイダーを据えて。しかしベイダー卿は帝国へ忠誠を誓っています。それが帝国滅亡などもってのほかでしょう。ベイダー卿はこの惑星そのものを支える、膨大なエネルギーを持つクリスタルを強奪。自らを帝国の裏切り者と侮蔑した罪を、一族の全滅で償わせようとします。これに驚いたのは暗殺者の方です。ヘッドレス・スネークを調査している頃からずっとベイダー卿を尾行していた暗殺者は、突如溢れ出すマグマと鳴り止まない落雷で星の滅亡を予感します。ならばやるべき事は? ベイダー卿より先に宇宙船へ辿り着き、飛び立たないよう細工した上でここから脱出することでしょう。問題があるとすれば、自らに向けられた殺気に気付かない暗黒卿などいるのか、ということです。f:id:ELEKINGPIT:20220518164739j:image己の刃でベイダー卿の首を狙う暗殺者。腕は良いと迎え撃つベイダー卿が、両手で構えることは無かった。

 

〈運命の奴隷〉

ヘッドレス・スネークの予言に激怒し、惑星ごと滅亡に追い込んだベイダー卿。しかし「帝国を滅ぼす」という予言にピンと来た方も多いのではないでしょうか? そう、ベイダー卿はEP6ジェダイの帰還にて、皇帝と自らの死で事実上帝国に終止符を打つのです。ヘッドレス・スネークの予言はある意味で正しかったと言えるでしょう。またフォースの予言でも、ベイダー卿はフォースにバランスをもたらす存在だとされていました。結果はジェダイもシスも全滅させることでバランスをもたらしたことになります。アナキンの後の運命は全て予言されていた、つまりその運命全ては定められていたこととなります。誰よりも自由を求めたアナキンは、結局運命の奴隷でしかなかったのです。

しかしそれだけではあまりに悲しすぎます。ヘッドレス・スネークの予言では、帝国を滅ぼした後ベイダー卿が銀河を支配することとなっていました。またレジェンズではアナキンの死後、ジェダイ騎士団シス卿団共に復活を遂げています。アナキンの予言も最後には崩されたのです。アナキンを運命から解放したのは、パドメの遺した双子の存在があるでしょう。暗黒面と光明面両方の瀬戸際にたちながら、なおもジェダイとして戦い続けたルーク。フォースの予言ではアナキンの死でフォースにバランスがもたらされると考えられていました。しかし実際はルークがフォースのバランスを司る存在となります。銀河を次に支配するのは、帝国でも混沌でもなくレイアらが築いた新共和国です。アナキンを運命の奴隷から解放したのは、パドメとアナキンの愛の結晶と言えるでしょう。

GUARDIANS OF THE GALAXY vol5 THROUGH THE LOOKING GALASS

キャロルが地球へ帰還したことで、またメンバー構成が変化したガーディアンズ。ブラック・ヴォルテックス争奪戦を経て新たな局面に入ると思いきや……ここに来てマーベルナウの最終章を迎えることとなりました。メタ的な事情では、当時のマーベルは全ユニバースを巻き込んだ超大型クロスオーバーであるシークレット・ウォーズの開始にあたり、ほとんどの連載を一旦ストップさせたのです。今シリーズもその影響を受け、今回で最終回となってしまいました。しかしそこは名ライターであるベンティス氏の腕の見せどころ。今後に続くシリーズへの布石と、これまでの展開の整理を短い話数で見事にやってのけました。マーベルナウの果て、ガーディアンズの旅はどこへ向かうのでしょうか?
f:id:ELEKINGPIT:20220513223124j:imageGUARDIANS OF THE GALAXY vol5 THROUGH THE LOOKING GALASS

 

前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

関連記事elekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

ブラック・ヴォルテックス争奪戦を経て、再び気ままに宇宙を旅するガーディアンズ。しかしスターロードの元に届いたのは、驚くべき報せだった。なんとスターロードは故郷スパルタックスで王に選ばれたというのだ。スクラル帝国もクリー帝国も虫の息となった今、銀河を守る必要はあるのか?

 

ガーディアンズ解散?〉

ブラック・ヴォルテックス編にて、キティへプロポーズを行ったクィル。銀河の辺境にある酒場でもいい雰囲気になったりと、二人の仲は大きく発展しているようでした。銀河を駆けるニュースが届いたのはそんな時です。なんとピーター・クィルが行方不明になったというではありませんか。クィル自身そんなつもりは毛頭なく、逃げも隠れもした覚えはありません。そこへ現れたのはスパルタックスの王に仕える近衛兵達。近衛兵の話によれば、クィルはスパルタックスの国民投票で新たな王に選出されたのだとか。戸惑うクィルを、近衛兵達はやや強引にスパルタックスへ連れ帰りました。今やスパルタックスはジェイ・ソンが宇宙海賊へ身を落としたことで誰も王がいない状態。そんなジェイ・ソンの横暴な振る舞いを暴露したクィルこそが新たな王に相応しいと国民は信じていたのです。スパルタックスへ到着したクィルを待っていたのは、新たな王を歓迎する国民たちの姿でした。
f:id:ELEKINGPIT:20220514000423j:imageクィルの到着を総出で歓迎する国民たち。自らが選んだ国王へ寄せる機体は大きく膨らんでいた。

 

ガーディアンズのメンバーも最高の待遇を受け、大臣から王として君臨すべきと迫られ、クィルの心も傾きつつありました。その時です。突如地鳴りのような轟音が鳴り響いたのは。現れたのは、生きた惑星キンドゥンとそれに協力するチタウリの大軍でした。キンドゥンの目的は、サノスの娘であるガモーラのようです。ガモーラ曰くキンドゥンは過去の経験から酷くサノスを憎むようになっていました。しかし当時サノスは別次元で活動中。ならばその怒りはサノスの娘であるガモーラの命を持って償わせよう。ガーディアンズでもカーバーしきれないほどのチタウリの大軍が襲い来る中、ガモーラは単身キンドゥンへ急行します。ブラック・ヴォルテックスの力を未だ保持来ていたガモーラを前に、キンドゥンも冷や汗をかいて降参せざるを得ませんでした。この戦いでスパルタックスには大きなダメージが入った上、キンドゥン自身ガモーラを前にして死を悟ったからです。退却するキンドゥンとチタウリらを見送り、再びスパルタックスへ足を向けようとするクィル。しかしガモーラは深刻な顔をしたまま動こうとしません。なんとガモーラは、ガーディアンズを抜けると言い出したのです。今回の騒動を巻き起こしたそもそもの原因は自分。また腐ってもサノスと親子の関係にあるため、もし万が一こんな事件が続いたら? キンドゥンのように素直に言うことを聞くだけの敵ばかりでは無いでしょう。これ以上誰にも危害を加えないため、ガモーラは孤独の道を選んだのでした。
f:id:ELEKINGPIT:20220514012054j:image1人孤独の道を歩もうとするガモーラ。クィルが王となる事で、ガーディアンズは解散してしまうのか?

 

ガーディアンズはもういらない?〉

王になるか躊躇うクィルへ、大臣の1人が気になるセリフを吐いていました。「クリー帝国もスクラル帝国もいない今、何から銀河を守るのです?」というセリフです。確かに大きな力を失ってしまった両帝国。当時の銀河の状況は大規模な戦争の予感もなく、正に平和を謳歌している時でした。しかし後の出来事を思えばそれは嵐の前の静けさに過ぎなかったと考えるべきでしょう。平行世界同士がぶつかるインカージョンの起点が地球にあると判明し、シーアー帝国中心の銀河連合軍が地球へ全面戦争をしかけたのです。世界が終わる直前まで戦争があったと考えれば、大臣のセリフはあまりにも楽観的と言えるでしょう。一方でガーディアンズは銀河を守るアベンジャーズ。敵は戦争だけではありません。ガーディアンズは「何から」人々を守っているのでしょうか?

それは今シリーズだけでも結論が出ているのかもしれません。私はガーディアンズが守っているものは「自由」であり、敵は正にそれを脅かそうとする者だと考えます。シーアーに攫われたジーンを助けたり、ジェイ・ソンの圧政からスパルタックスを解放したり……それまでの敵を概念化すると、「抑圧」「強制」のような言葉ばかり思い浮かびます。ガーディアンズが戦い続けてきたのは、正に権力を持った強者による抑圧であり、守り続けてきたのは弱者の自由なのです。では、そんなガーディアンズのリーダーが強者たる王になれば? それはシークレット・ウォーズを超えた全く違う全く新しいマーベル、オールニューオールディファレントマーベルでのシリーズまでのお楽しみです。

SUPERIOR IRON MAN vol2 STARK CONTRAST

「完璧な理想郷」を目指してサンフランシスコに君臨した衝撃のシリーズ、SUPERIOR IRON MANもいよいよクライマックスへ。デアデビルを下し、いよいよ完璧な世界が近づくかと思いきや……抵抗の炎はまだ消えていません。次なる敵はかつての仲間だったペッパーと、トニー・スタークです。
f:id:ELEKINGPIT:20220509165922j:imageSUPERIOR IRON MAN vol2 STARK CONTRAST

 

日本語版関連コミック

 

前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

※なお今回は紙の書籍から画像を引用させていただきます。見えにくい等ございましたらコメントでご指摘くださると嬉しいです。

 

〈あらすじ〉

悪性に反転してしまったトニーはサンフランシスコを意のままに操り、「完璧な理想郷」を築こうとしていた。抵抗するデアデビルを倒したトニーの次なる敵は、8年前の記憶を持つアイアンマンだ。遂に明かされるスーペリアなトニーの目的。遂に始まるトニー・スターク抹消計画。人類の未来はどこへ向かうのか?

 

〈2人のエゴ〉

サンフランシスコをほとんど乗っ取ったトニーの次なる目標は、マスコミの掌握でした。なんと有名な新聞社やSNS運営の重役を呼び出し、目の前で買収を宣言するのでした。メディアの影響力をも利用すれば、ますますトニーの帝国は盤石なものとなるでしょう。ところがトニーの買収宣言に待ったをかける者が。現れたのは、かつての秘書であり信頼する仲間であったペッパーでした。当時トニーはスターク・レジリエント社をペッパーに譲り、自身は新たなスターク・インダストリーズ社を設立していました。その後ペッパーはスタークの名をとりレジリエント社改名して経営していたようです。なんとトニーがマスコミを買収する直前に各社の株の半分以上を買い上げることで事実上経営権を獲得、トニーの買収劇を阻止してみせるのでした。トニーの一手先を読んだ見事な手腕、背後に何者かの存在を感じざるを得ません。ペッパーに連れられて訪れたレジリエント社の秘密地下、トニーは驚くべき敵と対峙します。8年前の記憶を持つアイアンマンです。
f:id:ELEKINGPIT:20220510012956j:imageトニーの8年前までの記憶をインストールしたアイアンマン。もう1人のトニー・スタークとして立ちはだかる。

 

スーペリアなトニーは、自らの敵となったアーマーへ自身の計画を語ります。トニーの最終目標は人類救済。しかし全員を救うほどの猶予も余裕も残されていません。ならば救済者たる自らが人類の選別を行うべきなのは明白ではないだろうか? ペッパーとの計画ではトニーを拘束し、説得することが最優先とされていました。しかしスーペリアなトニーの人類救済計画を知ったアーマートニーは、スーペリアなトニーの人格に自らの人格を上書き保存することで抹消しようと考えます。奇策で1度はアーマートニーを倒したスーペリアトニーですが、簡単に諦める相手ではないことは自らが1番理解しています。そこでスーペリアトニーは更なる策で迎え撃とうと動き始めました。
f:id:ELEKINGPIT:20220510015346j:image
f:id:ELEKINGPIT:20220510015354j:image迫り来る歴代アーマー軍団(画像上)に、サンフランシスコ市民の肉壁で対抗するスーペリアトニー(画像下)。神すら恐れる愚行を躊躇しないのは、スーペリア(より優れた)故か?

 

今作SUPERIOR IRON MANは、長さの関係で当ブログでは紹介しきれなかったエピソードが沢山あります。それらはぜひ本編で読んで頂くとして、最後にこの物語の行方を紹介していきたいと思います。咄嗟の機転と予め用意した策でアーマートニーを再起不能にしたスーペリアトニー。ペッパーの制止も振り切り、1人拠点へ帰ろうとしていました。しかしペッパーは経営権を実質的に掌握したマスコミ各社へエクストリミス3.0の情報を公開させます。こうしてスーペリアトニーの人類救済計画は破綻し、傲慢な天才は孤独の道を突き進むこととなったのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220510023613j:image怒号、罵声を浴びせられながら街中を飛び去るスーペリアトニー。信頼する味方をも失い、孤独に人類救済の道を探し続けることとなった。

 

〈アイアンマンの負債〉

儚くも呆気なく崩れ去ったスーペリアトニーの「完璧な理想郷」。世界を守るには金が必要だと高額な課金を要求し、一方で自身は救う対象を選別するなど傲慢な様が何度も見受けられました。しかしこれらをただ「傲慢なやつだ」と片付けてしまっていいのでしょうか? 

反転してしまったトニーとその前では、全く逆の行動を取っていたと考えていいでしょう。普段のトニーとスーペリアトニーは鏡合わせの存在なのです。時代を進めるには様々な代償が伴います。日本だけでも歴史の転換点を振り返れば、時代の節目節目には大きな犠牲が伴っていました。ではフューチャリストたるトニーの進める「未来」に、今まで大きな犠牲が伴っていたでしょうか? 答えはYESでありNOです。マーベル市民の多くはスターク社が提供した様々な最先端科学によって生活の質が向上したと言っていいでしょう。強いて代償を数えるなら、新たな機械などに慣れてもらう程度。しかしそのために市民が払うべき犠牲は全てトニーに向けられていました。技術を取り込もうとすれば反対され、何かあれば全てトニーの責任にされる。常人では耐えられないほどのプレッシャーに晒されていたことは想像に固くないでしょう。エクストリミス3.0とは、これらトニーが背負ってきた負担を肩代わりしてもらったに過ぎないのです。おそらくスーペリアトニーの行動はこのようにトニーが背負ってきた負担の裏返しと取れるものが多くあります。それだけ市民はトニーへ多くの負担をかけ、またこのような事態がないとトニーは一生背負い続けることもなるのです。スーペリアトニーの行動を非難する前に、1度我々も胸に手を当てるべきかもしれません。

SUPERIOR IRON MAN vol1 INFAMOUS

長い歴史を持つMARVELユニバースでも特別珍しいことといえば、ヒーローのヴィラン転向、闇堕ちでしょう。洗脳などで一時的にヴィラン化するヒーローはいても、数話で元に戻るなんて場合も。さて、今作SUPERIOR IRON MANは世にも珍しいヒーローがヴィランとして活躍する異色のシリーズです。レッドオンスロートとの戦いを描いたAXISにて、人格が「反転」する魔術の影響を受けたトニー。多くのヒーローがAXIS終盤で元に戻る中、トニーは反転したままになってしまいました。ゴールデンアベンジャーとして多くの人々を救い続けた億万長者は、悪性に転向したことでどうなってしまったのでしょうか?
f:id:ELEKINGPIT:20220506200855j:imageSUPERIOR IRON MAN vol1 INFAMOUS

 

※なお今回は紙の書籍から画像を引用させていただきます。見えにくい等ございましたらコメントでご指摘くださると嬉しいです

 

日本語版関連コミック

 

〈あらすじ〉

レッドオンスロートとの戦いで善悪が「反転」してしまったトニーは、サンフランシスコを新たな拠点として活動していた。トニーが町中に配布したエクストリミス3.0の影響であらゆる容姿の欠点を改善した人々は、トニーをメシアとして讃え始める。一方その裏ではデアデビルやペッパーが、トニーを阻止しようと動き始めていた……!

 

〈人間をも超越した?〉

エクストリミス3.0とは、トニーが新たに開発したエクストリミスシリーズです。なんとアプリをダウンロードするだけであらゆる人々が理想の姿に変身できるという、まさに夢のような発明品。トニーはサンフランシスコの人々へ無償で提供したことで、市民は英雄、救世主と大歓迎で迎え入れます。ところがアプリをダウンロードしてからしばらく後、なんと高額な課金を要求されてしまいます。もしお金を払わなければダウンロードする以前よりもより醜い姿に変貌してしまうではありませんか。卑劣な商売だと激昴する方も現れそうですが、トニーは決してそうではないと首を振ります。確かに高額な請求だが、決して法外な金額ではない。むしろ素晴らしいユートピアのために必要な対価だというのです。逆に言えば、誰もが夢見た理想の姿になるための対価としては安すぎるくらい。人々は理想郷の到来に歓喜の声を上げ続けていました。
f:id:ELEKINGPIT:20220506221909j:image新たなアーマー、エンドシムアーマーと共にサンフランシスコに君臨する「スーペリア」トニー・スターク。金門橋の麓に広がる世界は理想郷か、新たな地獄か。

 

トニーによって作られた「理想郷」ですが、一方でこれに異を唱える者も。最初に動き始めたのは、同じくサンフランシスコを拠点とするヴィジランテ、デアデビルでした。エクストリミス3.0がもたらされて以来、対価を払えない者、そもそもスマホを持っていない者に対する差別が大きく広がっていました。また路地裏では強盗も起きるなど、著しい治安悪化が。「恐れ知らず」のヒーローが向こう見ずな戦いを挑むのは、この理想郷の歪みを強く感じ取っていたからでした。デアデビルは薬でトニーを眠らせた後に、あらゆる電波や電子機器の操作が出来ない地下シェルターへ隔離させます。そしてエクストリミス3.0の呪縛から人々が逃れるまで、ここへ閉じ込めると宣言。そもそもアプリをダウンロードするだけで劇的に容姿を変身させるなどいくらなんでも不可能なはず。デアデビルは、エクストリミス3.0がトニーの制御が必要と推理したのです。しかしスーペリアなトニーの力は、デアデビルの想像をも超えていました。トニーの新型アーマーであるエンドシムアーマーは、シンビオートを参考に作られた、言わば生体金属。電波などなくとも脳波でコントロールが可能なのです。身体能力はあくまで常人なデアデビルが戦うにはあまりにも無謀でした。強烈な痛みの後、デアデビルが目覚めると、そこにはトニーの姿が見えました。盲人であるはずのデアデビルが、トニーの姿を見たのです。なんとトニーはデアデビルへエクストリミス3.0を摂取させ、デアデビルの「欠点」である盲目を取り払って見せたのです。恐れを知らないヒーローは、眼前に広がる景色に戦慄していました。そのあまりにも美しすぎる光景に。
f:id:ELEKINGPIT:20220506230945j:imageトニーに置き去りにされたデアデビルが見た、世界の輝き。強靭な意思を持って挑んだにも関わらず、その意思が揺らいでしまうほどだった。

 

厚顔無恥

悪辣なヒーローとしてサンフランシスコに君臨した「スーペリア」トニー・スターク。エクストリミス3.0がもたらしたのは、対価さえ払えば誰もが理想を実現できるユートピアでした。ではそんなトニーが作り上げた理想郷とはどのようなものだったのでしょうか? 

皆さんは理想郷という言葉を聞いてどのような光景を思い浮かべますか? 煌びやかな世界、人々の笑い声、どれをとっても「理想」の姿が広がっていることでしょう。一見するとトニーが作り上げた世界はまさにこの理想郷そのもの。しかしその裏では差別が広がっていました。対価を払えば得られる理想は、払えない者を強く排除しようとしてしまったのです。金さえあれば手に入り、逆に金がなければ手に入らない。極端ではありますが、旧来から続く資本主義社会そのものの姿です。トニーが作り上げた理想郷は、世界の未来の姿ではなく、旧来の世界の延長線に過ぎなかったのです。

そんなことを見抜けないトニーではないはず。トニーは理想郷を作り上げてどうしたかったのでしょうか? 最も考えられるのはやはり資金集めでしょう。エクストリミス3.0は無料期間が終わると1日約1万円が請求されるようになります。これをサンフランシスコ市民のほとんどに請求するのですから、想像もできないほど大金が短期間で集まることは間違いありません。ではトニーはこの資金で何をしようとしていたのか? さて、ここで注目したいのは、飲酒を解禁したトニーが浴びるように酒を飲んでいることです。トニーが大量に酒を飲む時は、決まって誰にも相談できないような悩み事を抱えている時だというのは過去のエピソードからも明白。自らを神の如く振る舞うスーペリアなトニーにも、大きな悩み事があったと考えていいでしょう。ここで考えられるのがインカージョンの存在です。当時のMARVELユニバースは並行世界同士がぶつかり互いに消滅する、インカージョンと呼ばれる現象が多発していました。早急に打つ手を考えねば世界が滅亡しかねないのです。またインカージョンの中心は各並行世界の地球にあるとされ、どちらかの世界の地球を破壊すればインカージョンは防げると考えられています。そのためこの宇宙のあらゆる勢力が地球を破壊しようとするに違いありません。トニーはエクストリミス3.0で集めた資金を使い、この両方に対処しようとしていたのではないでしょうか? 悪辣なヒーローとして卑劣かつ傲慢な姿が描かれたトニー。しかしその裏では、世界を救おうと思い悩んでいた姿があったのかもしれません。

STAR WARS VADER DARK VISIONS #1 SAVOR

世界的に有名な悪役、ダース・ベイダー。冷酷無比なシスの暗黒卿であり、容赦なく人を殺すさまに恐怖した方も多いでしょう。さて、今回紹介するSTAR WARS VADER DARK VISIONSは、そんなベイダー卿に関するシリーズです。あらゆる角度からベイダー卿を描き直した本作、そこには「傍若無人な敵」だけでない新たな姿がありました。
f:id:ELEKINGPIT:20220502141224j:imageSTAR WARS VADER DARK VISIONS SAVOR

 

〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

シアナップの人々は絶望に暮れていた。たった1匹の怪物が惑星全てを支配してしまったのだ。

ある時、上空から突如現れたのは1人の人間だった。そよ風に揺られる黒いマント、光を嘲笑うかのように真っ暗な装甲服を着た人間が。

赤い刃を振るうあの人間は神か悪魔か? シアナップの運命はあの刃に託された!

 

〈黒い騎士〉

銀河の中でも穏やかな星、シアナップ。地球によく似た環境を持つその星は、小麦色の大地を撫でるように風が吹き、蔦にまみれた木々が生い茂る美しい世界が広がっています。しかし1歩外に出てみれば、割れっぱなしの窓ガラスに今にも崩れそうなビル群、荒廃したかつての都市の姿も。シアナップはかつて高度な文明を持ち栄えていた惑星でした。しかしある日突然現れた「エルダー」と呼ばれる怪物に全てを破壊され、今や地下で原始的な生活をせざるを得ないほど追い込まれてしまいました。かつての黄金時代を知らない少年は、木々もビル群もまるで庭のように駆け回っていました。お気に入りの昼寝スポットはポッカリ空いた窓ガラスの向こう側。上空から爆炎が見えたのはその時でした。実はシアナップの遥か空、真空の宇宙では帝国軍と反乱軍の激しい戦闘が行われていたのです。爆発とともに墜落する戦闘機が、シアナップの村々からも見えました。人々は興奮気味に戦闘機が墜落した場所へ急ぎます。少年が着くとまもなく、戦闘機から人影がぬぅっと現れました。黒いマントに黒い装甲服、どこか人間味を感じないながらも強い力を感じさせる人物です。しかしこの人物に興味を持ったのは、シアナップ人だけではありませんでした。エルダーが目覚めたのです。f:id:ELEKINGPIT:20220503013230j:image惑星の文明を衰退させた巨大生物エルダー。黒い装甲服の人物に、睨むような強い視線を送る。

 

エルダーも黒い人物の戦闘はすぐさま始まりました。黒い人物は手元から突然赤い光の刃を伸ばし、焼き切るように攻撃を繰り出します。その様子はまるで騎士。少年は戦いで全てが変わることを予感し、急いで両者が戦う場所へ向かいます。黒い騎士とエルダーの戦いは、まるで天変地異のような迫力でした。波をも利用し、互いの力を利用し、巻き込まれたかつての都市は瓦礫の山になりつつあります。それでも両者は戦いをやめようとはしません。どちらかが倒れるまで終わらない、正しく生存競争ともいえる光景に、少年はじっと圧巻されていました。この星に災厄をもたらしたエルダーを討伐する「黒い騎士」。その姿は正しく「英雄」そのものです。こうしてシアナップの歴史は大きく変わることとなりました。
f:id:ELEKINGPIT:20220504223333j:image「フォースとともにあったのだろうな」助けた少年へ一言残したダース・ベイダー。その姿はまるで……

 

〈シスの騎士〉

惑星1つを救い、少年に英雄のような姿を刻みつけたベイダー卿。その姿にアナキン・スカイウォーカーを重ねた方も多いのではないでしょうか? しかしベイダー卿が戦いを始めた理由は決して惑星を救うためでも英雄になるためでもなかったのは明白。両者が戦いを始めた理由は、言うなれば「邪魔だから」以上にほかなりません。では何故ベイダー卿は少年を助けたのでしょうか?

昔の自分と重ねた、というのはもちろんあるでしょう。向上心が強いかつての奴隷と。しかしそれだけとは思えません。ベイダー卿の「フォースとともにあったのだろうな」というセリフは、紐解けば「フォースの運命に導かれたのだろう」と解釈できるでしょう。かなり受動的なセリフです。またシスの暗黒卿ならば、フォースの運命により惑星1つを救うようになるのでしょうか? ここにベイダー卿の「シスの暗黒卿」としての異質さが現れていると考えます。ベイダー卿は、パドメの命を救うために暗黒面に身を落としたかつてのアナキンです。その後の会話からもわかる通り、アナキンは平和をもたらすための強大な力を身につけようとしていました。アナキンはあくまで善の力として暗黒面を利用しようとしていたのです。つまり、ベイダー卿は完全に暗黒面に落ちることはなかったのではないでしょうか? ダークサイドに溺れながらもライトサイドの心が残っていたからこそ、少年を助けるというフォースの運命に導かれたのかもしれません。