アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

RUNAWAYS vol3 THE GOOD DIE YOUNG

両親がヴィランだったという衝撃的なストーリーから始まったランナウェイズも、いよいよ今作が第1シリーズ最終回となりました。以降は第2シリーズが連載されますが、物語としてはこれにて一区切り。家出した若者たちはどこへ向かっていくのでしょうか?
f:id:ELEKINGPIT:20221112214022j:image

 

関連記事elekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

両親が悪の秘密結社プライドであると知ったランナウェイズ。しかし公権力をも味方につけたプライドから逃れる術はなかった。このまま逃げ続けるには限界がある。そう感じたランナウェイズは遂にプライドと戦う覚悟を決める。裏切り者がいるとも知らずに……

 

〈逃亡から家出へ〉

隠れ家での生活もすっかり慣れたランナウェイズ。突然アレックスの声が響き渡ります。なんとアレックスは、プライドから盗み出したある本の解読に成功したというのです。本は暗号化されており、今まで解読に時間がかかっていました。現在も完全には読めませんが、大まかな内容がわかったのです。その本に記されていたのは、プライドの結成秘話でした。時はアレックス達が産まれる数年前に遡ります。各々の人生を歩んでいた両親らは、ある日突然謎の水中施設へテレポートさせられます。待っていたのはギボリムを名乗る巨大な生物。卓越した人間達を選び、ある計画のために呼び寄せたというのです。その計画とは、全人類を滅ぼし地球をより良い楽園へ作り替えるというものでした。しかし全人類を滅ぼすにはエネルギーが足りない。そこでエネルギーを補給するために協力しろというのです。協力した暁には新たなる楽園で永遠の命を保証する。誇りに思うがいい、これはこの仕事に選ばれたことを。ギボリムはプライドというチーム名を与えます。信じられないような話ですが、ギボリムの言葉には不思議と説得力があります。人類を滅ぼすというのも嘘偽りはないのでしょう。半信半疑だったプライドですが、ギボリムの言う通りに仕事をこなすようになります。そして数年後。プライドのメンバーの1人が子どもを授かりました。予定外の出来事ですが、メンバーは全員ある考えを思いつきます。ギボリムの仕事を子どもたちに受け継がせ、新楽園での暮らしと永遠の命を子どもたちに与えさせる。プライドの結束は固まります。私欲のために行っていた仕事が、子どもたちへの愛へと変わったのです。アレックス達が最初に目撃した悪事も、全ては子どもたちのためを思ってのことでした。
f:id:ELEKINGPIT:20221112232426j:image神の擬人化を名乗るギボリム。その言葉には不思議な真実味が含まれていた。

 

ここまで読み進めた時、隠れ家の入り口から騒がしい物音が。なんと隠れ家が警察に見つかったのです。既に警察はプライドに買収されており、手先も同然。ここで捕まれば今まで逃げ続けた意味が無くなってしまいます。ランナウェイズは隠れ家を倒壊させることでどうにか難を逃れました。しかしそれは帰る場所を失ったということ。このまま逃げ続けるわけにはいきません。この旅に終止符を打つため、ランナウェイズはプライドとの決戦を決めます。いくら自分たちのためとはいえ、その行いは倫理から大きく外れたもの。たとえ両親でも許される道理などないのです。ランナウェイズは解読した本からプライドの次なる行動を予測、そこを不意打ちで襲うことにします。本によれば、毎年2つの儀式を行うことでギボリムから与えられた仕事を果たしていたようです。1つ目が血の儀式。アレックス達が目撃した若者殺しがそれに当たります。そしてもう1つが、例年通りなら今日行われるはずの雷の儀式です。雷の儀式は殺した人間の魂をギボリムに捧げるための儀式。1日でも遅れた場合、ギボリムは裏切りと捉え厳しい制裁を与えるようです。ならば今日そこにプライドが現れるのは間違いないとみていいでしょう。早速本に記された場所へ向かうと、そこに居たのはギボリムの1人でした。
f:id:ELEKINGPIT:20221112233558j:imageランナウェイズを待ち構えていたかのように襲いかかるギボリム。圧倒的な強さを前に手も足も出ない。

 

メンバーのチェイスが重傷を負いながら辛くもギボリムの1体を止めることに成功したランナウェイズ。残るはこの奥にいるプライドです。突然、それも最悪のタイミングで現れた我が子達に驚きを隠せないプライド。動揺と「一刻も早く倒さねば」という焦りが付け入る隙を与えたようでした。既に死闘をも経験したランナウェイズ相手に優勢を保ちますが、それでも僅かな差で逆転されかねないほど追い詰められてしまいます。そんな「僅かな差」は意外な展開で訪れます。何者かの不意打ちでカロリーナがノックアウトされたのです。その場に居た敵味方の誰もが凍りつきました。カロリーナを倒したのは、ランナウェイズの実質的たリーダーだったアレックスなのですから。チェイスの装備品を託されていたアレックスですが、その力を味方であるはずのランナウェイズに向け始めます。そしてプライドへも。両親とパートナーのニコ以外をあっという間に倒してしまったアレックス。残されたニコへはあの時と変わらない笑みで全ての真相を語り始めました。
f:id:ELEKINGPIT:20221117100512j:imageニコの叫びに表情1つ変えないアレックス。誰よりもランナウェイズを支え続けた、事実上のリーダーが何故?

 

今から1年ほど前。アレックスは偶然「血の儀式」を目撃していました。他の友人らに言うことも出来ず、アレックスは両親が人を殺した理由を探ることに。数日後には家の隠し本棚を見つけ、両親が寝ている隙に秘密の文書を読み漁っていました。しかしその場にアレックスの両親以外のプライドが集まり始めていました。咄嗟に机の下に隠れたアレックスですが、そこで驚くべき会話を耳にします。プライドの中で唯一何のパワーを持たないアレックスの両親。そんな2人がプライドを実質率いていることに不満を持つメンバーは少なからずいたようでした。そんな一部のメンバーは、プライドの目的が達成される直前にクーデターを計画。リーダーの座を乗っ取ろうと画策していたのです。プライドの目的を知っていたアレックスは静かに激怒していました。自らを犠牲にしてでも子どもたちを楽園へ導こうとする両親こそが真のヒーローであるというのに。アレックスはクーデターを阻止するために1人計画をねっていました。その結果こそが現在であり、そうなるために様々な嘘と作戦を立てていたのです。ランナウェイズもそんな嘘と作戦の一部でした。信じられないと絶句するニコ。それでもアレックスの話が本当だというのは、誰よりも信頼していたはずのパートナーだからこそ分かってしまいます。信頼も、絆も、友情も、恋心も、たとえそのうち1つでも偽物だとしたら……やるべき事は決まっています。
f:id:ELEKINGPIT:20221118021943j:image言葉にならない声で、魔法ではなく拳でアレックスの言葉に応えるニコ。仇で返された信頼に応えるにはこれしかない。

 

〈子どもからの逃避行〉

ランナウェイズの実質的なリーダーとしてチームを率いていたアレックス。的確な指示と土壇場での度胸で多くの信頼を寄せていましたが、本作で実は最初から利用するためにランナウェイズを操っていたというストーリーはかなりの衝撃でした。しかし他のランナウェイズのキャラクターと比較すると、アレックスだけが「自律」出来ていないことが分かります。ランナウェイズとアレックスの違いとはなんなのでしょうか?

最も大きな差が現れているのが、ランナウェイズを操っていた理由でしょう。血の儀式を目撃したことがきっかけで両親の行動を英雄的だと尊敬していたアレックス。その後の行動は全て両親をサポートするためのもので、ニコをパートナーに選んだ理由も、プライドのメンバーの中でニコの両親はクーデターに否定的だったからということが含まれている程でした。あくまでアレックスは両親が敷いたレールの上を走るために行動していたことがわかります。一方両親の真の目的を知ったランナウェイズは違いました。両親の敷いたレールを走ろうとしなかったのです。血の儀式というレールの敷き方に問題があったのは当然ですが、そうでなくともこの時のランナウェイズならば両親の申し出を断っていたことでしょう。チーム発足時にはギクシャクとした場面も見られましたが、既に自分の道を何度でも見直せるほどアイデンティティを確立しているのです。それぞれが考えそれぞれが行動していることは今作の節々から多く読み取ることが出来るでしょう。恐らくバラバラになっても1人で立ち上がることが出来る力強さを感じました。「親に導いてもらうため」に行動していたアレックスとの最大の違いです。ランナウェイズとアレックスの違いとは? 一言でいうならば、大人か子どもかということでしょう。

ULTIMATES vol1 SUPER-HUMAN

マーベルユニバースのスタートから半世紀以上の時が経ち、積み上がった物語の山は大海の如き量となってしまいました。そこでマーベルは、新たな読者を獲得する窓口として世界観を一新したアルティメット・ユニバースのシリーズを開始。当ブログでもアルティメット・ユニバースのアイアンマンを紹介させていただきました。今回紹介するアルティメッツシリーズは、そんなアルティメット・ユニバースにおける言わばアベンジャーズのような存在です。リアリティを追求した世界観では、ややもすれば凄惨なコマばかりになってしまいがちですが、そこは今作のライターであるマーク・ミラー氏の腕の見せどころ。人によって好みの別れるシリーズとなりましたが、1度ハマったら抜け出せない底なし沼のような魅力に溢れています。邦訳版や原書で実際に読むと、あなたもアルティメッツに魅了されるかも?

f:id:ELEKINGPIT:20221104174540j:image

 

日本語版コミック

 

関連記事elekingpit.hatenablog.comelekingpit.hatenablog.comelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

2002年。ミュータントの増加やファンタスティック・フォーの登場など、各地で超人が増えつつあった。そこでSHIELDは対超人用のチーム「アルティメッツ」の結成を決める。新たな時代の歯車が動き出そうとしていた。

 

〈人の域を超えて〉

第二次世界大戦から半世紀以上の時が過ぎた2002年。増え続ける超人の存在に、アメリカ政府はSHIELDを設立し懸念される超人犯罪に備えていました。一方で自らの手で人の域を超えるため、大戦時代以来失われた超人血清の再現に着手。ブルース・バナー博士やピム夫妻が独自の研究を進めていました。またスターク社CEOのトニー・スタークは、パワードスーツの開発に成功。まだまだ改良の余地は残していますが、人の手で擬似的な超人を生み出したことは大きな影響を与えたことでしょう。バナー博士の生み出したハルクも、極めて危険な存在ながらハイパワーな超人です。そしてハンク・ピム博士はパートナーのジャネットとの共同研究で、遂に約18mに巨大化するジャイアントマン血清を完成させます。人工的な超人の再現が続く中、SHIELDはアルティメッツの結成を決意。超犯罪に対抗する最強のチームを作ろうと奔走していました。
f:id:ELEKINGPIT:20221108124417j:image研究を成功させ、ジャイアントマンとなったピム博士。次々と上がる人工的な超人の産声は、新時代の幕開けを象徴する音色となった。

 

北大西洋で漂流する伝説の英雄キャプテン・アメリカが見つかったのは、正しくそんな時でした。混乱するキャプテン・アメリカに、シールドのフューリー長官はアルティメッツのリーダーという地位を与え歓迎します。キャップの歓迎ムードはアメリカ中に広がり、大統領との会合まで用意されるほど。アメリカ全体が超人の復活に沸き立っていました。ところが1人これを快く思っていない人物が。バナー博士です。元々の計画では、アルティメッツのリーダーはバナー博士が担当していました。ハルク抑制に成功していたバナー博士は、アルティメッツを後方から指揮支援する予定だったのです。しかしキャップが復活した今、リーダーの座を奪われた形となってしまいました。失敗作と揶揄される超人ハルクに、事実上アルティメッツの仕事を失ったバナー博士。そんな悩みもパーティ気分なメンバーに打ち明けることすらできません。抱え込んだ形容し難いフラストレーションがグツグツと胸の中で煮込まれていきます。爆発したのは些細なきっかけでした。好意を寄せていた人物、ベティが自分以外の異性とプライベートで食事をしていた。そんな出来事すら耐えきれないほどバナー博士は追い詰められていたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20221111124203j:image荒々しい雄叫びで現れた怪力の超人ハルク。バナー博士の奥に隠された悲鳴が呼び起こしたのだった。

 

アルティメッツに出動要請が出るまでそう時間はかかりませんでした。ニューヨークは既に何百人という犠牲者が出ています。アルティメッツの初仕事はメンバーの暴走というやや不名誉なスタートながら、大規模な被害が出ている以上容赦するわけには行きません。まずはジャイアントマンが巨体を活かした攻撃を繰り出します。約18mの体から放たれるパワーは並の怪物程度なら捻り潰すことさえ出来るでしょう。しかしハルクのパワーは並大抵のそれではありません。あっという間にジャイアントマンの顎を砕き倒してしまいます。救援に向かったのはアイアンマンでした。しかしアーマーのエネルギーの大部分を費やしても出来たのは時間稼ぎ程度。続いてワスプ、キャップがハルクへ挑みますが、あと一歩まで追い詰めながらキャップの左手が砕かれ敗北してしまいました。アルティメッツの力ではハルクに敵わないのでしょうか? そんな恐怖と不安に、空から轟く雷鳴が答えます。雷神ソーの登場です。北欧で雷を操る超人として知られているソーは、何度もSHIELDからアルティメッツ参加を打診されていました。ヒッピーのような風貌にオーディンの息子を自称するなど意味不明な言動は、どう見ても胡散臭い人物。ですが実際に雷を操る技を見せられれば誰だって信じざるを得ません。轟雷と共に振り下ろされた鉄槌は紛れもなく神そのものでした。
f:id:ELEKINGPIT:20221111214226j:image空を切り裂く稲妻がハルクを地に落とした。それでも怪力の超人を止めるには至らない。

 

〈人を超えるということ〉

今作では多くの人物が人間という枠を超えようとしていました。巨大化血清で身体の大きさを変えたジャイアントマン、人の力を超えた新たなキャプテン・アメリカを目指したハルク、鎧を纏うことで人間の力の拡大を図ったアイアンマンetc……それぞれが様々な角度で超人になろうとしています。そして結果はアルティメッツというチームが象徴している通り。しかしだからこそ強調されたのは「内面」でした。生物的なヒトの力は超えられても人の子である以上アルティメッツは人間なのです。キャップ復活からフラストレーションを貯め続け暴走に至ったバナー博士をはじめ、ピム博士とジャネットの熾烈な夫婦喧嘩も小さなイヤミがきっかけでした。まるで現実の私たち、いや、それ以上に悪い面が強く出ているよう。人を超えた力を持つということは大きな自信へと繋がり、無自覚な傲慢さをも生んでしまった。それが今作で示されたようでした。大いなる力には大いなる責任が伴う。人を超えるということは、それだけ力の振る舞いを考えねばなりません。まだ超人が当たり前のように存在しない世界で、アルティメッツが力の振る舞い方に気付いた時こそ「超人」となる瞬間なのでしょう。

STARWARS VADER DOWN

EP4とEP5の間を繋ぐ2つのスターウォーズシリーズ。それぞれが互いに影響を与えながら、しかし本筋には関わらないストーリーが進行されてきました。そんな両シリーズが本格的なクロスオーバーをしたのが本作、ベイダーダウンです。ジェダイ寺院へ向かい修行を始めようとするルーク、我がものにしようと執拗に追いかけるベイダー卿の物語がついに交差するのです。それだけでも一見の価値ありな本作ですが、その見せ所はなんと言っても圧倒的な力を持つベイダー卿の戦闘でしょう。赤子の手をひねるように反乱軍を虐殺するその姿は正しく一騎当千の鬼神です。最強の敵として立ちはだかるベイダー卿に、ルーク達が逃れる術はあるのでしょうか?
f:id:ELEKINGPIT:20221103120735j:image

 

日本語版関連コミック

 

関連記事elekingpit.hatenablog.comelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

銀河中が震えていた。皇帝の拳として帝国に仕えるシスの暗黒卿ダース・ベイダーは、ついにデス・スターを破壊した人物が自分の子どもだと知り、暗黒面に引きずり込もうと動き始める。

オビワンの手記を手掛かりにジェダイ寺院のある惑星ヴロガス・ヴァスを訪れたルーク・スカイウォーカー。かつてのジェダイ騎士団のようにフォースの使い方を学ぼうとする最中、黒衣の悪魔が現れたことを知るのだった。

裏社会を通じてルーク・スカイウォーカーの居場所を知ったダース・ベイダーは、ドクター・アフラ達を引き連れ極秘でヴロガス・ヴァスを訪れる。3度目の対決に、銀河中のフォースが震えていた……!

 

ベイダー卿、堕ちる!〉

ヴロガス・ヴァスにあるジェダイ寺院をルークが訪れていると知ったベイダー卿。同じくデス・スター破壊犯を捜索する帝国将官が見つける前にルークを捕え暗黒面に引き込むため、単騎で目的の惑星まで飛び立ちます。しかしそこには予想外の光景が。なんとヴロガス・ヴァスの上空は反乱軍の訓練中だったのです。Xウィング3個中隊がベイダー卿のTIEインターセプターをあっという間に囲みます。これにはドクター・アフラも驚きを隠せません。しかし超天才的なパイロットの腕を持つベイダー卿の敵ではありませんでした。2個中退を一瞬で壊滅させると、まるで視界にも入っていないのか真っ直ぐルークの元を目指します。一方ダース・ベイダーの飛来をフォースで感知したルークはXウィングで宇宙を目指します。反乱軍にとって、ベイダー卿を捕らえる一世一代の大チャンスです。フォースで相手の動きを予測できる2人のパイロットの勝負は一瞬でした。なんとルークは、ベイダー卿の戦闘機に特攻を仕掛けたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20221103161111j:image正面からぶつかるXウィングとTIEインターセプター。空中で起きた親子対決は一瞬で終わった。

 

墜落する両者。反乱軍はすぐさまベイダー卿の戦闘機を捕捉し、地面に激突した瞬間には大部隊が包囲していました。しかしベイダー卿はそれすら全く気にも止めていない様子。1000人以上の大軍相手に、フォースとライトセイバーのみで虐殺を始めます。一方ベイダー卿との通信が切れたドクター・アフラは、ベイダー卿救出のためヴロガス・ヴァスの地へ降り立っていました。しかしそこで遭遇したのは、なんとルーク・スカイウォーカーではありませんか。ここでルークを捕えベイダー卿に引き渡せばより強固な信頼関係と莫大な報酬が期待できるのでしょう。拷問用ドロイドのトリプルゼロを使い、背後から強烈な電撃を浴びせることで気絶させることに成功。あとは倒れたルークを母艦へ運べばいいだけです。ところがその瞬間、ベイダー卿捕獲のためにやって来たハン・ソロの妨害が。元密輸業者同士の激しい撃ち合いが始まります。
f:id:ELEKINGPIT:20221104091811j:imageブラスターを撃ち合うドクター・アフラとハン・ソロ。ルークを巡る戦いはフォースユーザーだけでは留まらない。

 

同刻、ベイダー卿は反乱軍の増援までも全滅させ、わずかな時間で数千人規模の被害を与えていました。残る前線の反乱軍はレイア姫のみ。そこでベイダー卿は、わざとレイア姫を逃し尾行することでルークを探そうと画策します。ところがその瞬間、予想外の人物が現れます。カービン司令官です。カービン司令官は帝国からデス・スター破壊犯を捜索する任務を与えられていた人物。カービンが来たということは、帝国もルークを発見したという事にほかなりません。しかしここで帝国にルークを捕えられては今までの努力が水の泡。逃げるレイア姫をよそに、カービン司令官とベイダー卿の戦いが始まります。カービンはかつてクローン大戦で活躍したグリーヴァス将軍を彷彿とさせる改造ボディを有しており、4つのライトセイバーを用いた連続攻撃でベイダー卿に猛攻を仕掛けます。しかしライトセイバーを最も上手く扱えるのはフォースユーザーのみ。ブラスターキャノンすら簡単に弾くベイダー卿ライトセイバーの数は驚異ではありません。ジェダイ寺院の近くでいくつもの光刃が交わる激しい戦いが続きました。
f:id:ELEKINGPIT:20221104095151j:image怒涛の連撃をさばく鈍重な一閃。ルーク争奪戦は帝国軍同士の戦いまで発展する。

 

〈帝国の拳〉

ベイダー卿一騎当千な活躍が終始続いた本作。それまでのダース・ベイダーシリーズがルークの行方を巡り暗躍するストーリーが中心だったのに対し、今作は多くの戦闘シーンが描かれていました。中でも印象的なのがカービン司令官との対決でしょう。帝国の命令を無視してでもルークを探していたベイダー卿と、正規任務でルーク捜索を任されたカービン司令。カービン司令官が刃を向けたのは、言わば帝国の意思を無視して動くベイダー卿へ差し出された「帝国の拳」なのです。思えば今までダース・ベイダーシリーズは皇帝の姿も多く描かれておらず、皇帝の忠臣という側面はあまり見られません。ベイダー卿は帝国の代名詞ではなく、個人として動いているのです。帝国の代名詞、拳として現れたカービン司令官へ刃向かったのはそんなベイダー卿の立場の表れでしょう。しかし後のEP5やEP6では帝国に仕え続け、時に皇帝の代理人として働く姿もありました。ベイダー卿にとって、帝国とはなんなのでしょうか? それまでのベイダーシリーズと今作を合わせて考えるなら、帝国は言わば「枷」でした。自由にルークの捜索もできず、それどころかデス・スター破壊の責任を背負って降格までさせられていたベイダー卿。自らの行動を大きく制限されていたのです。しかしベイダーダウンではそんな枷が外され、カービン司令官に刃を向けてでもルークを捕らえようと動いていました。反乱軍に対し無双の活躍を見せるベイダー卿はEP4と比べても活き活きしてるように見えます。しかし同時に、帝国の強大な力も理解しているはずです。自らを縛る枷が嫌なら外せばいいだけ。しかしそれをしないのは、出来ないからだと分かっているからです。枷とはいつだって自分より弱い立場に嵌めるもの。ベイダー卿は今の自分では皇帝に刃向かっても勝てないと理解しているのです。

STARWARS:QUI-GON & OBI-WAN AURORIENT EXPRESS

スペースオペラの代名詞的作品ともいえるスターウォーズ。今日でも世界中で高い人気を誇っており、多くの媒体でスターウォーズと名の付く作品が作られ続けています。しかし決して全ての作品がスペースオペラとは言えません。中には新たなスターウォーズを想像しようと挑戦した作品も。今作はそんな「挑戦的」な作品の1つ。SFミステリーです。アガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」を模したタイトルを与えられた本作は、EP1以前のクワイガンとオビワンが主役。スターウォーズが挑むミステリーはどのようなになるのでしょうか?

f:id:ELEKINGPIT:20221102120530j:image

 

 

〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

今は共和国の時代。銀河の大半を統治する共和国は、正義の使者ジェダイによって1000年もの平和を謳歌していた。しかし平穏な時はやがて共和国の根を腐らせるのに十分すぎる時間だった。

中央政府が利権絡みの賄賂や汚職に塗れているのはもはや誰もが知る事実だ。そしてそれを狙い近づく者が多いことも。

2人のジェダイに与えられたオーロリアン特急船救出任務。そこに張り巡らされたのは、大金を巡る様々な思惑と陰謀だった……

 

〈ミステリー宇宙船〉

ファントム・メナスより数年前。クワイ=ガン・ジンとそのパダワンのオビ=ワン・ケノービは、クルーズ船オーロリエント号の救出任務を遂行しようとしていました。高級クルーズ船として知られるオーロリエント号は、多くの富豪が乗る富の象徴のような宇宙船です。そんなオーロリエント号に届いたのは、船のコントロールを奪い沈没させるという恐るべき予告です。残された時間は約90分。それまでに犯人を見つけだし、阻止せねばならないのです。クルーズ船を守る違法ドロイドたちが、この予告が嘘やイタズラ目的のものでは無いと知らせているようでした。本来クルーズ船如きに違法なバトルドロイドの大群が常駐しているはずがないのです。ドロイド群を倒し、早速調査を開始した2人。まずは違法なバトルドロイドから犯人を探ることにします。メカニック担当から話を聞くと、警備ドロイドはウェイバートンと呼ばれる人物が管轄しているとのこと。そしてウェイバートンは、2人がバトルドロイドに遭遇した区画のドロイドを配備したのがポッドロングと呼ばれる人物と言います。今度はポッドロングへ話を聞こうとすると、なんとジェダイに恐れをなしたのか一目散に逃げだしたではありませんか。どうやらプレッシャー海賊団と呼ばれる海賊と手を組み、クルーズ船の財産を強奪するつもりのようです。逆にこちらが怖くなるような順調っぷり。あとはポッドロングを捕まえれば事件は解決なのですから。ところが追い詰められたポッドロングは、コア爆弾と呼ばれる爆弾の起爆装置をチラつかせます。コア爆弾が起爆すればこんな船なんて一瞬で沈んでしまうでしょう。慎重に対処しようとするクワイガン。ところが後からついてきたウェイバートンの手で、無慈悲にもポッドロングは射殺されてしまいます。
f:id:ELEKINGPIT:20221103013952j:image撃ち抜かれるポッドロング。これで事件は終わりかと思われたが……?

 

犯人の死で終わりを迎えるかと思われたこの事件ですが、まだ重大な問題が残されています。コア爆弾のありかです。ポッドロングが起爆装置をチラつかせたということは、既にコア爆弾は船内に設置されているということ。もしポッドロング以外に犯人がいてもいなくても危険極まりないのです。しかし船内を隈無く捜索している時間はありません。そこでクワイガンは、ポッドロング以外にも犯人がいると考え、関係者の極秘捜査を行うことに。怪しい人物はすぐに見つかりました。ウェイバートンです。オビワンがプレッシャー海賊団とウェイバートンの通信を盗み聞きしたのです。確かにポッドロングの上司に当たるウェイバートンなら爆弾の隠蔽など簡単なはず。しかしウェイバートンをどれだけ尋問しても爆弾の設置場所「知らない」の一点張り。このままでな埒があきません。そこでコア爆弾によく使われる材質の痕跡を追うことに。足跡のように小さく、しかし確実に残っていたコア爆弾の痕跡。それは環境保護活動家のバックと呼ばれる人物の部屋に続いていました。エコテロリストとして名を上げているバック。確かにオーロリエント号のスポンサーは鉱山開拓で資金を得た人物であり、それに対して何らかの主張をしようと悪事に手を染めたとするならば筋は通ります。クワイガンとオビワンがバックの部屋を改めると、予想外のものを発見します。空のブリーフケースです。
f:id:ELEKINGPIT:20221103022954j:image空になった、コア爆弾を隠していたはずのブリーフケース。この事件は幾重にも張り巡らされた陰謀で包まれていた。

 

〈崩壊の序章〉

財宝の強奪、エコテロリストによる強引な訴え……様々な陰謀が絡み合い引き金となった本作の事件。それぞれに命をかけるような事情があり、それらが絡まるように複雑化してしまいました。1つ1つの原因を取り除いたとしてもオーロリエント号は似た運命を辿ったことでしょう。正にライトセイバーでは解決できない問題なのです。本作はライトセイバーを使わずに挑むジェダイ、つまり外交官としてのジェダイの側面が見えました。

時に惑星間で問題が起こった時や共和国が領土を広げようとした時、その交渉役としてジェダイが派遣されることがありました。EP1で描かれたナブー危機も、本来はジェダイと通商連合、ナブーの3者による交渉で問題解決を目指していたはずです。しかし本作でも、ジェダイというだけで顔をしかめる人が登場していました。オーロリエント号の船長もジェダイが来たというだけで異常事態が発生したことを察知しています。要はジェダイ=疫病神的な認識が広まっていたのです。これはとても交渉役、使者としてはイメージが悪い。ジェダイは共和国の警察的な役割も担っているため良くない印象を持つ人も多いのでしょう。実際の警察のように、呼べばすぐ来るような存在でもないため信頼もないのです。問題はこの状態を共和国もジェダイ騎士団も放置していたことにあるでしょう。交渉役として派遣された人物が、銀河中でも厄介の種として扱われ、また信頼性も低い人物なら? 各惑星の自治政府に任せているとはいえ、今回の事件や外交上の問題が起きた場合に対処するのはそんなジェダイなのです。決して小さくない不満を汲み取れなかった共和国政府と、威圧的で閉鎖的なジェダイ騎士団が崩壊した一因にはそのような面もあったのかもしれません。

CAPTAIN AMERICA MAN&WOLF

80年もの歴史を持つマーベルコミックは、時に私たちの予想を斜め上に行く物語も存在します。CAPTAIN AMERICA MAN&WOLFもその1つ。タイトルや表紙絵の通り、なんとキャプテン・アメリカ人狼に変身するというストーリーです。懐の深いアメリカンヒーローコミックならではな本作ですが、タイトルやビジュアルありきと侮ってはなりません。本作にはキャップの、そして本作だけの魅力が十二分に発揮されているのですから。
f:id:ELEKINGPIT:20221029180140j:image

 

 

〈あらすじ〉

満月の夜。森をさまよう人の耳に、恐るべき気配が迫っていた。鋭い爪と牙、突き刺すような眼光、この世のものとは思えぬ異形な姿……人狼が現れたのだ。誰にも届かない遠思われていた悲鳴はやがてキャップの元へ。しかしこの事件の裏には、人間社会をも揺るがす陰謀が隠されていた。

 

〈月明かりが照らすもの〉

ある日、いつもの様に訓練に勤しむキャップへある報せが届きます。人狼による殺人事件。被害者の傷の特徴や周囲の足跡から、人狼の起こした事件であるとしてキャップにまで伝えれたのです。確かに獰猛な人狼ならば放っておくわけにはいきません。キャップは一時的にナターシャへアベンジャーズの指揮権を譲り、事件の調査へと乗り出します。まずは元々この世界に住む人狼へ話を聞くべきでしょう。キャップは人間を人狼化させる魔石ムーン・ジェムと、それによって人狼となったジョン・ジェイムソンを訪ねます。ジョンはスパイダーマンの名物キャラJJJの子どもで、パイロットとしても活躍していました。ところがなんとどちらも行方不明だったのです。この事件には裏がある。そう確信したキャップは、オカルトの専門家に捜査協力を求めます。ドクター・ドルイドです。ドルイド教の信奉者でもあるドクター・ドルイドは、神秘的な魔術を駆使する戦士。アベンジャーズに所属していた過去もあります。ドルイドは今でもその頃を誇りに思っているようで、二言目には捜査協力が決まっていました。現場100回という言葉があるように、2人はまず殺人現場へ向かいます。新たな証拠があるか調べ直すためです。その時です。人狼がキャップらを襲撃したのは。更にその背後には多くの人狼を従える凶戦士までいるではありませんか。
f:id:ELEKINGPIT:20221030005506j:image人狼を痛みで従わせる正体不明の人物。この事件には裏がある……?

 

銃を使うことをも厭わないこの敵をキャップは猛追しますが、すんでのところで捕り逃してしまいます。殺人現場はさっきのゴタゴタで荒らされ、唯一の手がかりであろう正体不明の敵も逃し、何の成果もなかった……かに思われました。しかしドクター・ドルイドが敵の逃げ去る方向から行き先を推測していました。それによると、敵はスタークスボロと呼ばれる町へ向かったと考えられます。2人は早速寂れたスタークスボロへ向かいます。月光が照らす町を歩いていると、突如大量の人狼が襲いかかってきました。どうやらドクター・ドルイドの推測は間違っていなかったようです。とはいえ膨大な数の人狼全員と相手するわけにはいきません。これまでの人狼は暗い夜にのみ現れる。その情報を頼りに2人は夜明け身を隠し、翌朝から調査を再開することに。ドクター・ドルイドはこの町の住人のほとんどが人狼かもしれないと警戒を緩めません。その推測は、最悪の形で証明されました。キャップを凶暴化したウルヴァリンが襲いかかったのです。
f:id:ELEKINGPIT:20221031013341j:image猛獣のようにキャップへ襲いかかるウルヴァリン。そのパワーは普段よりも強化されていた。

 

実はウルヴァリンも同じく人狼による殺人事件を追っていました。そして一足先にスタークスボロまでたどり着いていたのです。しかし人狼の群れには百戦錬磨のウルヴァリンも敵わず捉えられ、敵の首魁ドレッドムンドによって洗脳されてしまいました。バーサーカー状態のウルヴァリンは平常時よりも数段強くなっており、キャップに反撃の隙をも与えません。ついにはキャップをも倒してしまいました。ナイトシェードと呼ばれる敵はこれを好機と捉えます。ウルヴァリンを大人しくさせた後、キャップを実験台へと連れていくことに。一方、ウルヴァリンに勝てないと悟ったドクター・ドルイドはナイトシェードを尾行し敵の計画を突き止めようと動きます。敵の根城に潜入したドルイドは、早速月の魔石ムーン・ジェムを発見。更に人間を人狼化させる魔術の記録もいくつか見つかりました。どうやら町の住人は敵の手で人狼にさせられたようです。より多くの手がかりを探そうとした瞬間、背後に強烈な気配を察知しました。敵の首魁ドレッドムンドです。ドクター・ドルイドと同じく魔術の心得があるドレッドムンドは思念波で攻撃を開始。たまらずドルイドも思念波を放ちますが、その差は歴然でした。
f:id:ELEKINGPIT:20221031015704j:image思念波の打ち合いに敗北するドクター・ドルイド。敵は想像を超える強さだった。

同刻、キャップを捕らえたムーンシェードはほくそ笑んでいました。元々人狼だったジャック・ラッセルを捕らえ、その遺伝子を元に作られた人狼化血清をキャップへ投与すれば……きっとドレッドムンドも喜ぶに違いない。ウルヴァリンの時は驚異的な再生能力で血清が中和されてしまったが、キャップならば人狼にし手駒にできよう。ムーンシェードの予想は2つの意味で裏切られます。元々投与されていた超人血清と人狼化血清が共鳴しあい、人狼キャップはそれまでのどの人狼よりも強い存在になっていました。しかし超人血清の影響か洗脳の影響を受けず、なんと自らの意思で動き始めたではありませんか。とはいえ人狼化しさえすれば知能は著しく低下しているはず。ムーンシェードは言葉巧みに人狼キャップを誘導し、地下牢へ連れていくことに成功します。思考が上手く回らず、言葉も発せないことに苦悩する人狼キャップ。今の状況を把握する間もなく地下牢へと入れられてしまいました。しかしそこには思わぬ味方が。人狼化する能力を持ったミュータント、ウルフスベーンです。
f:id:ELEKINGPIT:20221031021651j:image地下牢に捕えられていたXファクターのウルフスベーン。強力すぎる味方の登場に、人狼キャップも奮い立つ。

 

ウルフスベーンの教えである程度のコミュニケーションが取れるようになった人狼キャップは、地下牢の人狼達を従え脱出に成功。このままムーンシェード、ドレッドムンドへ反逆しようと進撃します。一方、ドレッドムンドは町の住人を集め「血の儀式」を行おうとしていました。磔にしたドクタードルイドの足元に置かれたムーンジェムを満足そうに眺めると、手元の短剣をスっと取り出します。キャップ達が現れたのは、ドルイドの喉元に刃を当てる直前でした。洗脳された人狼達でキャップを迎撃させたドレッドムンドは儀式の続きを始めます。キャップ達の目の前でドクター・ドルイドの喉元を切って見せたのです。ドっと溢れ出た血は川のように体を流れ、やがて足元のムーンジェムに滴り落ちます。数瞬の後、なんと血塗られたムーンジェムが突然光り輝き始めたではありませんか。ドレッドムンドは価値を確信します。人狼化した住人のパワーをジェムに集め、更に妖しく輝く魔石を体に取り込みます。獰猛な人狼の力と宇宙から来た神秘の力がドレッドムンドの体内で融合、やがて強大な力はその姿をも変えてみせます。スターウルフの誕生です。
f:id:ELEKINGPIT:20221031023930j:imageコズミックレベルの力を内包した人狼、スターウルフ。その力で地球を征服し、人類を野生化させることで地球環境を回復させるのがドレッドムンドの計画だった。

 

〈姿形が変わっても〉

月明かりが照らす夜に起きた殺人事件から、人狼町、そして血の儀式へと繋がっていった本作。ウルヴァリンやウルフスベーンなどの意外な味方や瞬く間に人狼たちを従えるキャップといった魅力に溢れんばかりのキャラクター達が生き生きとしている事が本作最大の魅力でしょう。キャップが人狼になるという少々突飛な展開を軸に進むストーリーですが、その芯は王道そのものでした。

本作では何度も「束縛」により奪われた「自由」という描写が何度もされていました。森に現れた人狼を襲撃者が捕獲し、ウルヴァリンを洗脳し、人狼化したキャップは最初話すことも出来ませんでした。本作はそんな束縛から自由を取り戻す戦いだったのです。それはドレッドムンドとキャップの理念にも現れています。ドレッドムンドは、人類を野生化させることで退廃した環境を元に戻そうと考えていました。文明の発展に環境汚染が伴うならば、文明に囚われた人類を解放することで地球環境はいつしか元のように戻ると考えたのです。文明の元に生きる我々は、例えば時間や対人関係など様々な束縛の元に生きています。人類の野生化はそんな束縛をなくし、更に人種や国境のような境界線をも取り払います。何にも縛られることなく本能のまま生きることが出来るのです。しかしそれは自由なのでしょうか? 自由とは好き勝手することではありません。自由とは自らを律する責任を持つということです。冒頭の殺人事件がその適例でしょう。人と出会った時、私たちは究極的には2つの選択肢が現れます。その人を殺すか殺さないか。当然ほとんどの人が殺さないを選択するはずです。自らを律することで殺人が非道徳的だと理解し、殺さないという選択をするのです。これは個人の道徳観や倫理観という束縛から行動しているとも言えますが、それこそが自由なのです。一方冒頭の殺人事件は人狼によるものでした。野生化し、あらゆる束縛から解き放たれた人類は通りすがりの人をも容赦なくなんの理由もなく殺すことさえ出来るのです。つまり、道徳観や倫理観という束縛をなくすことでその都度好き勝手行動しているのです。しかしそこに自由はあるのでしょうか? 人狼(=野生化)とは、そもそも人を殺す殺さないという選択肢が存在したかすら分かりません。意志を奪い、行動を選ぶことすらできなくなっているのです。地球の環境汚染は確かに誰もが無視できない問題として捉えています。しかし人類の野生化は、そこに「律」を失くすことで意思を奪うという最大の束縛が待っているのです。

TALES OF SUSPENSE #39

今回紹介するのは、アイアンマンの初登場回にしてそのオリジンを描いたTALES OF SUSPENSE第39話です。アイアンマンを語る上で欠かせない本作。MCUのアイアンマン1やコミックで何度も描き直され、何となくあらすじは知っているという方も多いのではないでしょうか? しかしそれではもったいない。何せリメイクにはない本作だけの魅力というものがあるのですから。改めて第1話を読むことで、トニー・スタークという人間を見つめ直す機会にもなるでしょう。
f:id:ELEKINGPIT:20221028113816j:image

 

※なお、今回は紙の書籍から画像を引用させていただきます。見えにくい等ありましたらコメントで教えていただけると幸いです。

 

〈あらすじ〉

時は戦争の最中。天才発明家にして大富豪のアンソニー・スタークは、新兵器テストのためにベトナムの密林へ足を踏み入れていた。しかしそこで待っていたのは敵国のゲリラとブービートラップだった。自分たちだけの新兵器を作れと命令するゲリラに、瀕死のスタークは人生最大の賭けを行った!

 

〈鋼鉄の戦士〉

天才発明家のアンソニー・スタークは、日夜米軍の注文に答え様々な兵器を作り上げていました。また上層部すら不可能と言わしめた実験も成功させ、その天才ぶりを発揮。果ては小さな機械から超強力な磁力を発するトランジスターの開発に成功させていました。一方で大富豪としても知られ、ハンサムな顔とあわせ多くの異性にも言い寄られるほど。正にアメリカ中の憧れの的です。常に浮かべるチャーミングな笑みから、本人にとってもどれほど充実していたかがうかがえます。しかしそんな日々は一瞬にして終わりを告げました。それはある日のこと。研究施設で完成させたトランジスターをテストするためアンソニーベトナムを訪れていました。多くの兵士が護衛につき密林を進む一行。しかしそこは、ゲリラの通り道でもありました。仕掛けられたブービートラップにハマった一同は、アンソニーを残し全滅してしまいます。そして唯一の生き残りであるアンソニーもまたゲリラに捕らえられてしまいました。
f:id:ELEKINGPIT:20221028135346j:image大怪我を負い倒れ伏すアンソニーへ近寄るゲリラ。運命の針が大きく動き出した。

 

ゲリラの診断によると、アンソニーの身体はブービートラップの時に使った地雷の破片が心臓近くに突き刺さっており、1週間ほどで死んでしまうことが判明しました。ならば残りの人生全てを我々のために使わせるべきでは? リーダーのウォン・チューは、目覚めたアンソニーへ「我々のための新兵器を作れば外科手術をし開放する」と嘘をつき、兵器開発を強要します。これはアンソニーにとってチャンスです。外科手術云々の話は嘘だと思われますが、脱出用の道具を期限内に用意さえ出来ればいいのですから。2日目にして秘密の設計図を完成させたアンソニー。そんな時でした。新たに兵器開発のため1人連れてこられたのです。天才物理学者としてアンソニーも一目置くインセン教授でした。長らく行方不明となっており死亡したと思われていたインセン教授。実はゲリラに捕まり、強制労働に従事していました。しかし己の信念に反する行動に耐えきれず遂に反発。アンソニーの元へ連れ込まれたのでした。アンソニーは早速秘密の設計図を見せ、協力を取り付けます。まずは米軍の研究施設で披露したトランジスターの再現に成功し、いよいよパーツの制作へ。寿命という最大のカウントダウンが迫る中、工程は遂に最終段階へと差し掛かっていました。残るアンソニーの寿命もあとわずか。しかしここでゲリラのリーダー、ウォン・チューが兵器開発の様子を見にやって来ました。このままでは2人とも殺されかねない。インセン老人は全ての希望をアンソニーへ託し、自らの命を使って時間稼ぎを始めます。鳴り響く銃声、怒号、悲鳴。静まり返るゲリラ基地。動き出す鋼鉄の塊。そこに立っていたのは、鋼鉄の装甲に覆われた人間でした。ヘルメットの下のアンソニーはどのような表情をしていたのかは想像するしかありません。
f:id:ELEKINGPIT:20221029022020j:imageインセン教授の鼓動が止まった瞬間、起動を開始する鋼の装甲。哀しみと怒りが堅牢な鎧を動かす。

 

瞬く間に戦闘員を倒した鉄の人間に、ウォン・チューは驚きを隠せません。米軍をも翻弄するはずの兵士がまるで枝のようになぎ払われているのですから。高値の賞金を鉄人間にかけますが、それでも構成員はすっかり恐れてしまい誰も挑もうとしません。どうやら鉄人間はこちらを狙っている様子。ならば武術の達人で最強を自負するウォン・チュー自らが相手をするまでです。勇猛果敢に挑みかかりますが、鉄人間はビクともしません。一方でアンソニーも内心焦っていました。早くもバッテリーが切れてしまったのです。残り少ないエネルギーで逃げ去ろうと走るウォン・チューを倒さねばなりません。アンソニーは各部の関節に使われている潤滑油をあえて地面に垂らし始めます。そして火炎放射器で火をつけ、基地全体をあっという間に爆破させたのです。これだけの規模の攻撃、ウォン・チューにはひとたまりもなかったはず。アンソニーはついに憎きゲリラから脱出することに成功したのです。基地の残骸から上がる白煙を焼香に、アンソニーは1人インセン教授の死を悼むのでした。
f:id:ELEKINGPIT:20221029024102j:image白煙を焼香にウォンチューらを倒したとインセンへ報告するアンソニー。その代償にあまりに重すぎる十字架を背負った。

 

〈人か機械か〉

アイアンマン誕生回として現在も語り継がれる本作。後の作品との比較でその時々にあわせた作品評価が幾度となくなされてきたことでしょう。しかしそれではやはり勿体なく感じてしまいます。アイアンマンの歴史を踏まえてでは無く、本作だけでも「アイアンマン」は描かれているのですから。後の作品について一切考えず、本作だけで描かれた「アイアンマン」像とはなんなのでしょうか?

戦闘員をなぎ倒すアイアンマンを見たウォン・チューは、恐ろしさのあまり「人間ではない」と言い放ってしまいました。機械か人かも分からないと。また心臓近くに刺さった地雷の破片は、アイアンマンのチェストプレート(胸部装甲)によって無理やり話されているに過ぎず、破片を取り除かない限り一生チェストプレートが手放せない体となってしまいました。両者ともアイアンマンを、人ではないと断定したのです。敢えて言うなら「鉄人間」でしょうか? 決して悪を倒して正義を貫くヒーローとして描かれてはいませんでした。またアイアンマンはインセン教授の死と同時に完成したもの。アイアンマンはインセン教授の命という重すぎる十字架を背負った状態で誕生したのでした。2つの事実の共通点は、アンソニーがそれを望んだわけでないことでしょう。助かるために仕方なくやった事とはいえ、二度と脱げないチェストプレートやインセン教授の犠牲は望んですらいませんでした。望まずなってしまい、元に戻ることも叶わない。アイアンマンとは悲劇の象徴なのです。

AVENGERS ANNUAL 1999

アベンジャーズというチームに欠かせない人物と聞かれたら、誰と答えるでしょうか? BIG3の名を挙げる人もいれば、ワンダやホークアイなど歴戦の勇士を思い浮かべる方もいるでしょう。しかしジャービスほどアベンジャーズを支え続け、サポートし続けた人物は稀です。気品溢れる物腰柔らかな紳士のジャービスにキャップも尊敬の念を忘れません。今作の主役はそんなジャービス。長年アベンジャーズと共にいた「影のアベンジャー」が対峙する物語とは?
f:id:ELEKINGPIT:20221026112310j:image

 

関連記事elekingpit.hatenablog.comelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

ある日突然現れたのは、巨大なアベンジャーズロボ!? 保護を口にしながら無垢な市民を攻撃するロボットに、本家アベンジャーズが黙っているわけにはいかない。だがその背後には、オンスロートの瓦礫から生まれた最悪の「正義」が隠れていた。

 

オンスロートの瓦礫〉

いつものようにテロリストを撃退し、国際平和を守ったアベンジャーズ。しかし新人アベンジャーのジャスティスは、自分がチームの役に立っているのか思い悩んでいる様子でした。憧れ続けた伝説のヒーローチームの一員になったと最初は喜んでいましたが、先程のテロリストを撃退する時も自分のミスで市民を危険に晒すなど詰めの甘さが目立っていました。思い悩むジャスティスの姿にジャービスはかつてのブラック・ウィドウを重ねていました。話はオンスロートを倒した直後に遡ります。強大すぎるオンスロートを倒すため、キャップ、アイアンマン、ソーといった名だたるアベンジャーズが全滅してしまった世界。その犠牲を目の前で見届けたナターシャは、アベンジャーズ存続を決意します。ところが元メンバーや経験豊富なヒーロー達に声をかけても、思うような答えは中々得られませんでした。アベンジャーズがいなくなった今だからこそ、自分たちが守るべきものを全力で守ろうとしていたのです。結局集まったのは、デアデビルハーキュリーズのみ。新たなるアベンジャーズは3人でスタートしようとしていました。しかしここで更なる問題が発生します。元々アベンジャーズのスポンサーはトニーが設立したスターク・ファウンデーションが行っていましたが、フジカワ工業社によるスターク社買収で資金提供が打ち切られ、アベンジャーズ・マンションの所有権を奪われてしまいます。また政府がアベンジャーズは壊滅し、事実上解散したとしてアベンジャーズ憲章を一方的に白紙化。アベンジャーズの犠牲を目の当たりにしながら何も出来なかったせめてもの償いとしてアベンジャーズ存続を訴えたナターシャでしたが、わずか数日で解散せざるを得ませんでした。
f:id:ELEKINGPIT:20221027125546j:image力及ばず解散に追い込まれたナターシャのアベンジャーズ。己の無力感に苛まれ続けたナターシャの背中に、ジャービスもまた同じ感を覚えるのだった。

 

舞台は戻って現代。アベンジャーズマンションに緊急警報が鳴り響きます。なんとニューヨークにアベンジャーズを模した巨大ロボット達が現れたというのです。プロテクトレート(保護領)を名乗るそれは、やがて無垢な市民に攻撃を開始。ニューヨーク中へあっという間に悲鳴が響き渡ります。本家アベンジャーズがこれを許せるはずがありません。早速戦い始めるアベンジャーズでしたが、ロボット達の実力は想定以上。更にロボット達はミュータントを認識し、執拗に攻撃しようとします。敵はミュータントに差別的な感情か憎悪を持っている? とはいえこれだけでは敵の正体を特定するヒントにすらなりません。ひとまず目の前の敵に集中。ロボットは達見た目以上にパワフルで、またそれぞれが違う能力を持っています。このままではアベンジャーズが倒されてしまうのも時間の問題です。
f:id:ELEKINGPIT:20221027131227j:image巨大ロボット軍団の猛攻に手も足も出ないアベンジャーズ。敵の正体をも気付かないまま倒されてしまうのか?

 

戦いの様子をニュースで見届けていたジャービスは、敵のあるセリフに聞き覚えがありました。「世界には救世主が必要だ」言ってしまえばありふれた陳腐な言葉ですが、何故かジャービスの耳にこびりついて離れません。もしや犯人はあの人では……? 脳裏にある人物が浮かびながらも確信までは持てないジャービス。キャップには報告せず、友人のツテを頼って自ら捜査することにしました。再び舞台はオンスロートとの戦い直後に戻ります。ナターシャの努力も虚しく解散に追い込まれたアベンジャーズ。資金提供が打ち切られた結果、ジャービスのようにアベンジャーズをサポートし続けた人員は全員路頭へ迷うこととなってしまいました。ファビアン・スタンキーウィッツもその1人。クインジェットの整備士として雇われていたファビアンは、アベンジャーズへ深い尊敬の念をもって仕事に勤しんでいました。しかしオンスロートの1件以降職を失い、ドラッグにまで手を出すほど落ちぶれてしまいました。世界には救世主が、アベンジャーズが必要だ。SHIELDが廃棄したセンチネルの残骸からアベンジャーズを模したロボットを作り上げたファビアンは、CPUを自らの体に接続。その執念はやがてアベンジャーズを殺したオンスロート、そして全てのミュータントに向けられるようになります。
f:id:ELEKINGPIT:20221027165548j:imageジャービスが見つけたのは、変わり果てたファビアンの姿。正義を求めたかつての友は、憎悪を振りまく怪物へと変わり果ててしまった。

 

アベンジャーズたるもの〉

世界には救世主が必要だ。アベンジャーズが。オンスロートとの戦いで壊滅したチームの意思を引き継ぐため、センチネルを改造までしたファビアン。しかしその果てはミュータント差別主義者でしかありませんでした。では同じくアベンジャーズ存続を決意したナターシャや、チームを支え続けたジャービスと何が違っていたのでしょうか?

結論から言ってしまうと、私は信念の差だと思いました。正義を追求するには確固たる軸となる信念が必要です。例えばキャプテン・アメリカは自らの正義に反するならばそのコスチュームを捨て、ノーマッドやキャプテンと別のヒーローの名を名乗りその信念を貫こうとしていました。アイアンマンはその信念を貫くため、涙を流してでも尊敬する親友のキャップと戦い抜きました。各々が持つ絶対に折れない信念。これはナターシャも、そしてジャービスも持っていました。ジャービスはかつてIRON MAN Demon in a bottleにて、酩酊状態で無礼を働くトニーへ辞表を提出していました。誰の元で働くか、誰に忠を尽くすのか、ジャービスなりに軸(=信念)があるのです。そしてその信念からなる正義は、ファビアンに立ち向かう姿からも一目瞭然。しかしファビアンにそれはありませんでした。ファビアンの正義はアベンジャーズという存在。アベンジャーズを模したセンチネルを動かせば栄光のチームと同じ働きができると確信していました。ただがむしゃらに軸も信念もないだけの正義を追い求めてしまったのです。その結果、「敵を倒す」という目標へシフトしてしまいました。アベンジャーズの持つ正義の信念は(多くのヒーローに共通することですが)弱きを助けることなのに。