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MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ULTIMATE COMICS NEW ULTIMATES THOR REBORN【2023年11月私的ベストアメコミ】

アルティメイタム以来徐々に復興しつつあるアルティメットユニバース。アベンジャーズの結成など再び立ち上がる兆しは見えていましたが、遂に栄光のアルティメッツが復活します。新たなアルティメッツを迎える本作は、予想を裏切る展開とキャラクターの奥底を垣間見るストーリーです。こんな世界だからこそ王道を背負うヒーローたちの活躍に期待しましょう。
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Ultimatum (English Edition)

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〈あらすじ〉

磁界王の災厄から8ヶ月の時が経った。未だ傷の癒えない世界で再びアルティメッツが立ち上がる。しかし心の奥底から見え隠れするのは、8ヶ月程度では隠せない傷跡だった。幾重にも傷ついた世界へ希望をもたらす力はあるのか? 偽りの神の問いかけに雷鳴が轟いた。

 

〈怒りの鉄槌!〉

アルティメイタムから8ヶ月経ちました。ニューヨークは仮組みの足場に囲まれたビルが目立ち、波に飲まれた自由の女神も支えられながらも地に足をつけていました。夜の明るささえ取り戻しつつあるニューヨークを見下ろしながら、ホークアイとアイアンマンは8ヶ月前の悲劇の傷を確かめていました。今日で子どもは3歳になるはずだったと呟くホークアイ。飲むしかないと嘯くアイアンマン。8ヶ月前に出来た心の傷は、まるで時が止まったままのようでした。それでも世界は進み続けます。ニューヨークに現れたのは、多数の化け物とそれを率いる神々でした。ロキ、そしてエンチャントレスです。アルティメッツが迎え撃ちますが、あまりの敵の多さに苦戦。アルティメイタムで亡くなったソーがいればと嘆く者もいる程でした。ロキと言えば、かつてアメリカ中のヒーローが手を取り合い戦った強敵中の強敵です。ロキと戦うにはせめてヴァルキリー、パワープリンセスの到着を待ち全員で挑むべきでしょう。到着したヴァルキリーらに号令をかけるキャップ。しかしヴァルキリーが刃を向けたのは、ロキではなくキャプテン・アメリカでした。ヴァルキリーだけではありません。パワープリンセス、そしてSHIELD長官であるキャロル・ダンバースもアルティメッツへ反旗を翻したのでした。
f:id:ELEKINGPIT:20231109075447j:imageアルティメッツへ勝利を宣言するヴァルキリーたち。偽りを司る神がほくそ笑んでいた。

 

磔にされたアルティメッツ。しかしそれを、なんとキャロルが救い出します。裏切ったと思われたキャロルですが、そのフリをして場をやり過ごしていたのです。救出されたアルティメッツは、キャロルから裏切った者は全員ロキとエンチャントレスの手で洗脳された事実を知ります。キャロルはコンタクトレンズ型の暗視レンズを付けていたので洗脳を逃れたのです。2人の神の狙いは分かりませんが、仲間を取り戻しニューヨークを救うため戦う必要があるでしょう。洗脳を維持できないだけのダメージを与えれば解除されるはず。アルティメッツ全員で一斉攻撃を行えばチャンスは必ずあります。出動準備はあっという間に完了しました。キャップの号令で第2ラウンドが始まります。空からの奇襲、着地と共に始まる攻防、どれもアルティメッツには慣れたものです。ロキたちが連れたモンスターを倒し進むヒーローたち。しかし目的はあくまでロキとエンチャントレスの打倒と仲間たちの洗脳解除。ここでSHIELDとアルティメッツの秘策が炸裂します。アルティメッツの作戦は空中からの奇襲攻撃だけではありませんでした。隙を作り、切り札のホークアイが登場。百発百中の一撃がエンチャントレスの胸を射ます。洗脳が解除されました。アルティメッツの作品は成功です。正気を取り戻すヴァルキリーとパワープリンセス。2人が味方ならばこれ以上ない戦力でしょう。勝利への流れは確実にアルティメッツへ傾いています。エンチャントレスはダウン、残るロキさえ倒せばこの戦いは終わるのです。ところがこの勝利への流れが再び神へと引き戻されてしまいました。ヴァルキリーがロキの手で殺されたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20231110074037j:image大剣で貫かれるヴァルキリー。神の一手がヒーローたちを絶望させる。

 

赤い空が覆う薄暗い世界で、ソーと死神ヘラは幾度となく戦いを繰り広げていました。アルティメイタムで命を落としたソーは現世へ帰るためにあらゆる手を使っていたのです。時にヘラへ刃を向け、時にヘラへ尽くし、それでも一向に現世へ戻る気配もない事実へ焦っていました。ヘラは言います。現世へ帰るには、同等の魂が冥界へ来るしかないと。諦めるしかないのか? そう思われた瞬間でした。目が覚めると、ソーはビルの上に立っていました。間違いありません。ここは現世です。そしてソー復活のため生贄になったのは、最愛のヴァルキリーに違いありません。ヴァルキリーと再会するために現世へ戻ろうと足掻いたソーは、ヴァルキリーの死によって蘇ったのです。愛する者が殺された。雷神の怒りはこれまでにないほど膨れ上がっていました。その力はアルティメッツでも、神でも止められるものではありません。これこそがロキの計画でした。ヴァルキリーを殺しソーを復活させ、怒りで暴走する雷神の力を利用するのです。仮にロキが何もしなかったとしても地球が壊滅することは必至。アルティメッツは命懸けでソーを説得しようと試みます。近づくことさえままならない神にアルティメッツの声は届くのでしょうか?
f:id:ELEKINGPIT:20231110075631j:image怒りに任せ鉄槌を振るうソー。神の怒りが世界を破滅へと追い詰める。

 

〈8ヶ月後〉

悲劇から8ヶ月を軸に、本作は様々な登場人物の視点から物語が描かれていました。そして同時に、その心情を垣間見ることも。今回はトニースタークの心情からその傷を紐解いていきましょう。

アルティメットユニバースのトニーといえば、脳に抱えた切除不能の腫瘍です。脳に癌があると考えてもいいでしょう。医者にさえ「何故今日生きているのか」と首を傾げるほど状態は悪化しています。ありったけの富と名誉を手に入れても、俗物的な欲は思いつく限り全て満たせても、明日生きているかも分からない毎日を過ごしているのです。そんなトニーの心根は、ほとんどが怯えに満たされているように思えました。正史世界のトニーと比べ、酒を大量に飲むことも特徴なのがアルティメッツのトニーです。しかしそれも、今作でホークアイから逃げだと指摘されていました。Ultimatesでは「酒でも飲まないと(パワードスーツに対して)こんなもの着てられない」と言い放っていましたが、ほとんど常に飲酒している姿から正気を保つと現実を直視してしまい、とても正気ではいられないのかもしれません。その状況でアルティメイタムが起きたのです。

アルティメイタムで起きたトニーの悲劇は、ウルヴァリン殺害でした。マグニートーにパワードスーツを操られたトニー。自分の制御外とはいえ高出力のリパルサーブラストをウルヴァリンへ放ち命を奪ったのです。トニーが殺したとは誰も責めない状況。しかし8ヶ月経っても消えない血塗られた両手が更にトニーを蝕んでいました。アルティメイタムで起きた悲劇以来、トニーはずっと自分を責め続けていたのです。ギリギリの均衡を保トニーの精神。読者にできることはほとんどありませんが、せめて脳の腫瘍が取れるなど少しでも好転することを祈るばかりです。