アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ULTIMATE MYSTERY

アルティメットユニバース最大の敵を描く、ドゥームズデイ3部作も今作で2作目へ突入しました。謎の敵、謎の「塊」によって襲撃されたアルティメットユニバース。今作でそれらを操っていた全ての黒幕が判明します。究極の敵の正体とは? 究極の謎を解く鍵は既に前作で登場していました。
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〈あらすじ〉

SHIELDのプロジェクトペガサスは、この地球に現れた様々な「特異物質」を収拾、調査と保管を行ってきた。しかしそこに流れるのは不穏な空気。空の彼方、激しく閃光が燃え上がる時、観測者ウォッチャーの遣いが現れる。死と破壊のメッセージを伝えるために。

 

〈正義の呪い〉

メイおばさんが事件に巻き込まれた。自らの無力さを痛感したピーターは、せめて事件が解決するまでの間家から離れることを決意します。そこで偶然であったのは、スパイダーウーマンでした。スパイダーウーマンはピーターのクローンとして生まれ、2人は「同一人物であり別人」という奇妙な友情を築いています。そんなスパイダーウーマンは、スパイダーマンへ協力を求めます。先日起きた謎の「塊」によるニューヨークの襲撃は、ロキソン社の被害から始まったこと、そしてロキソン社が何らかの鍵を握っている可能性があることを。ロキソン社は以前より倫理的に大きな問題がある会社、今回の事件に1枚噛んでいる可能性は確かに否めません。スパイダーウーマンは科学者としてロキソン社へ潜入することになりました。一方元ファンタスティック・フォーの3人は、再びバクスタービルを訪れていました。現場100回とはよく言ったもので、3人はあの「塊」が何なのか改めてを調査しに来たのです。そこで分かったことが2つだけあります。1つはこの「塊」が別次元や宇宙からやってきたものではなく、地球のテクノロジーの系譜にあること。つまりこの「塊」は人間が生み出したものなのです。そしてもう1つ、この「塊」は生物であり、条件を満たすと膨れ上がるように増殖すること。ウイルスのような性質を持っているようです。これらから、あの有機体を生み出し世に放った黒幕がいるということでしょう。更なる推理をしようとする直前、バクスタービルが激しく揺れ始めます。現れたのは、キャプテン・マーベルとリック・ジョーンズでした。キャプテン・マーベルアメリカが保管する特異物質などの警護、プロジェクトペガサスを任されていました。そしてリック・ジョーンズはウォッチャーからのメッセージを伝えに来た使者です。ウォッチャーは超自然の力をリックへ与え、抽象的なメッセージを託していました。死と破壊です。リックはそのメッセージをキャプテン・マーベルへ伝えようとしますが、なんとキャプテン・マーベルの能力が突如暴走、2人は望まぬ戦いが始まってしまいます。巻き込まれるバクスタービル。既に大きなダメージを負っていたビルは、この戦いで崩れようとさえしていました。
f:id:ELEKINGPIT:20230814075526j:image暴走するキャプテン・マーベル。突如制御を失った真相とは?

 

崩れ落ちる瓦礫から人々を守るために全力を尽くすスーザン。しかしそこでリックの能力が無意識のうちに発動します。リックとスーザンは瓦礫が落ちる寸前、プロジェクトペガサス跡地へワープしてしまいました。残されたベンやジョニー、SHIELDの隊員達はキャプテン・マーベルを何とか拘束して尋問を開始。しかしキャプテン・マーベルは何も知らないようです。あまりにタイミングの良い暴走、黒幕がキャプテン・マーベルを操って貶めた可能性は十分有り得るでしょう。また、これまでの敵の攻撃地点を振り返ると、①ロキソン社②リードの実家③バクスタービル④ピーターの実家⑤プロジェクトペガサスの順になります。考えられるのは、敵が化学物質や設備を盗み出していること。リードやピーターの実家を狙ったのは、その頭脳を欲したのでしょう。やはり敵は科学に精通している人物だと考えられます。しかしこれほどの規模の被害を生み出せる人物とは何者なのでしょうか? アルティメットユニバースには何人もの優秀な科学者がいます。しかしその全員がこの大事件を引き起こしたとは考えにくいでしょう。では誰が? 行き詰まる面々。そこへ現れたのは、スーザンとリックでした。特にスーザンはボロボロで今にも倒れそうな勢い。それでも吐息のように漏れ出る微かな声で、必死に何かを伝えようとしていました。スーザンは見たのです。黒幕の正体を。そしてその野望を。この事件はまだ終わっていない。それどころかこのままだとまだ被害は拡大する。瀕死の重傷を負いながら、スーザンは黒幕の姿を思い起こします。それはこの世界で最も賢い人物、そしてかつて自らが愛したあの人、リード・リチャーズでした。この事件は全てリード・リチャーズの仕業だったのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230814184106j:imageスーザンへ語りかけるリード。その野望は果てしなく、その眼はどす黒くなっていた。

 

〈究極の世界は〉

リードの闇堕ちというあまりにも衝撃すぎる事実を明かして終わった本作。本作はその断片も共に描写されていました。リードは2年前まで友人からイジメを受け、父親からは理解を得られず虐待を受けていました。そして1年前、Ultimate Powerでは平行世界へ壊滅的な被害を与えたとしてスコードロン・スプリームに逮捕され、今年に入ってはUltimatumで多くの悲劇を目の当たりにし、スーザンへのプロポーズは失敗してしまいました。この全てを合わせたのが豹変した要因……と言うには少し結論を急ぎすぎでしょう。

リードの人生をこうして振り返ると不幸と不運の連続です。誰からも理解されず真に孤独だったと受け止めることもできるでしょう。ではそれが真実ならば、何故リードはヒーローだったのでしょうか? 何故リードは最初からヴィランではなかったのでしょうか? 可能性の1つとして、「世界の見え方が変わった」と考えられます。なぜならリードは孤独ではなく、ファンタスティック・フォーという最高の絆に結ばれた家族がいたのですから。確かにリードはイジメを受けていました。しかし親友のベンはそんなリードを助けてくれました。確かにリードは父親から虐待を受けていました。しかし母親はリードへ理解を示していました。Ultimate Powerでもリードを助けるため多くのヒーローが駆けつけ、Ultimatumでもリードを気遣う様子が見られました。確かに辛い記憶は消せません。しかしリードは決して孤独ではなかったし、辛い目に遭っても助けてくれる仲間がいたのは確実です。不幸と不運であると同時に、仲間の存在はかけがえのない幸運だとも言えます。ファンタスティック・フォーの解散がそんなリードにとってどれほどの不幸か、想像するだけでゾッとしてしまいます。しかしこれでは「嫌なことがあったから闇堕ちした」ようにも見えてしまいます。ではリードが豹変した原因とは?

ここまで不幸と不運が連続し、ファンタスティック・フォーを失ったリード。ここで私は、リードの忍耐が限界を超えたのだと感じました。リードはUltimate Powerのように自責が強い傾向にあるように思えます。しかし自責の念はいつか心の糸をプツリと切ってしまうもの。正史世界のトニーは結果2度のアルコール中毒期を迎え、以降も心の糸が切れたことで多くの苦難を味わいました。それと同じように、自責の強いリードは心の糸が切れてしまったのではないでしょうか? その結果リードは自分ではなく世界そのものを責めるようになったのではないでしょうか? 誰も悪くは無い、ただこの究極の世界は不幸と悲劇に塗れすぎている。少なくともリードはそう感じたはず。リードはそうして世界を粛清しようとしているのではないかと思いました。