アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ULTIMATE DOOM

偉大なヒーローの闇堕ちという、マーベル・コミックでも前代未聞の衝撃的な展開を描いたドゥームズデイ3部作もいよいよ今作で最終章となりました。究極の謎が明かされ、究極の敵の正体はかつて栄光のヒーローだったリード・リチャーズだと判明します。前作ではそんなリードが闇堕ちした心情へ読者を寄り添わせる描写もありました。しかしどんな心情を持っていようと、人を殺すことだけは絶対に許されることではありません。この世界をより良いものへと作り替えるため奔走するリード。それを阻止しようと動くヒーロー達。究極の運命が導いた結末とは?
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〈あらすじ〉

事件の黒幕はリードだった。豹変したリードに出会い、覚悟を決めるスーザンはその行方を並外れた頭脳で突き止める。一方リードは世界を作り替えるための計画をさらに進めていた。2人を引き裂いたのは究極の運命か? 振り上げた拳がぶつかる時、究極の審判が下される

 

〈こんな世界だからこそ〉

SHIELDの本部トライスケリオンには、コードブルーが発令されていました。豹変したリードに倒され、瀕死の重傷を負ったスーザンが集中治療室へ運ばれます。ベンもジョニーも、もしスーザンの怪我がなければ信じることは出来なかったでしょう。幼い頃からずっと仲の良かったリードが、まさか一連の事件の黒幕だなんて。スーザンの怪我もあり、特にジョニーは半ばパニック状態でした。一方生死の境をさまようスーザンは夢を見ていました。それは何年前の記憶でしょうか。快晴、風が心地よく肌を撫でたあの日の出来事でした。傍らにはリードが座っています。こんな日にはピクニックが丁度いい。そう語るスーザンに、リードはピクニックをしたことが無いと言います。家族はそういうことが好きではなかった。見上げると太陽が、周りには雲が、摩天楼の頂上の景色は心地の良いものです。リードは語ります。この世界が好きではなかったと。だからもっと良い世界へ作り替えるんだと。しかしそれが、自分だけの力では足りない。スーザンはクスリと笑います。1人じゃない、私たちはファンタスティック・フォーだ。あぁ、そうか。夢は現実へ引き戻されます。そうか、そうだったんだ。リードの言う「世界を作り変える」という言葉が、スーザンに実感を伴って襲いかかってきます。あの人なら本当にやりかねない。いや、既に実行している最中かもしれない。スーザンは飛び起きます。まるでさっきまでの怪我なんてなかったかのように動き始めます。一刻も早く、リード・リチャーズを止めねばならない。リードの影に隠れることもありましたが。スーザンは世界で最も賢い人物に負けない程卓越した頭脳の持ち主でした。これまでのリードが発見した多元世界のデータを収集、更に恐らくリードが原因で暴走したと思われるキャプテン・マーベルの血液と尿を採取し、今回の事件の痕跡を確実に辿ります。そしてあっという間に突き止めました。今回の事件の手口、そしてリード・リチャーズの居場所を。
f:id:ELEKINGPIT:20230816075856j:imageニック・フューリーの持つデータから黒幕の行方を突き止めようとするスーザン。覚悟を決めたその頭脳は誰よりも強く聡かった。

 

いくら探しても見つからず、また姿を現してもその後の痕跡が分からないならば、リードは恐らく別次元の世界にいる。Nゾーンを発見した天才ならば決してありえない話ではありません。そしてもう1つ、Nゾーンは人間の居住に向かない次元世界です。またこれまでリードの発見した別次元にも痕跡がなかったことから、新たな次元世界を発見したか作ったかのどちらか。スーザンの導き出した答えは、リードは自らが作り出したポケット・ディメンションなる世界から転送装置を使い「塊」を射出していたことです。転送装置は恐らく既存の技術の発展系で、居場所を特定することも可能でしょう。アルティメッツにも協力を要請し、全員でリードのポケット・ディメンションへ乗り込むことになります。いの一番に乗り込んだのは、ベン・グリムでした。幼少の頃からずっと仲の良かったベンは、その目で見るまで敵の変装かもしれないという僅かな希望さえ抱いていました。しかし小さな世界で1人佇む姿を見て、同じ記憶を共有していることを知って、希望は打ち砕かれます。この人はリード・リチャーズだ。ベンは後方に待機していた全員へ合図を送ります。そこにはアルティメッツが、元ファンタスティック・フォーが、SHIELDが、全員がリードへ向かって攻撃を行おうとしています。リードは自らの私兵を使い攻撃を阻止しようとします。こうして最終決戦が始まりました。世界の命運はこの勝敗にかかっています。
f:id:ELEKINGPIT:20230816084928j:imageリードと相対するヒーローたち。アルティメットユニバースがリードへ牙を向いた瞬間だった。

 

〈自己犠牲の〉

この世界を守るために。正義の行き違いを描いた本作は、アルティメットユニバースとリードの対決で幕を下ろしました。最後は孤独になってしまったリードの姿は悲劇そのものでしょう。ところでこの悲劇は何が原因なのでしょうか? リード豹変の原因はultimate mysteryの記事で自分なりの意見を述べさせていただきましたが、今回はこの事件を引き起こしたリードの心情をこんが得たいと思います。今作でリードはずっと1人の姿が描写されていました。その言動は全て自分中心で、しかし世界のためと唱え続けていました。独り善がりになってしまったのです。一方でその心情はかつてと変わらず、恐らくヒーロー活動をしていた頃と同じ正義の心でこの事件を起こしたのでしょう。世界を変える。そのためには自分が動かねばならない。ファンタスティック・フォーの解散で孤立したリードは、「自分がやらなければならない」という強迫観念にも似た感覚に襲われたように思います。アルティメイタムで(リードの見える)世界は1度崩壊しました。しかし再建された世界は以前と変わらず、また唯一の拠り所だったファンタスティック・フォーは解散し、リードは世界をより嫌悪したでしょう。以前より世界を変えたいと願っていたリードが動かないはずがありません。自分がやらねばならない。その決意は自分のためではなく、むしろ世界のためなのでしょう。リードは自己犠牲の精神で世界を変えようとしていたのです。そしてその結果は、本作で描かれた通り失敗に終わりました。リードが1人で世界を変えようとした結末です。ではどうすれば世界を変えることが出来たのでしょうか? 生死の境をさまよったスーザンは、リードと語らった過去を見ていました。その時もリードは1人で世界を変えようと考え、しかし今の自分では力不足だと悔しげな表情を見せていました。スーザンはクスリと笑います。1人じゃない。私たちはファンタスティック・フォーだと。世界でも有数の天才が2人、絆のためなら危険さえものともしない勇敢な戦士が2人、この4人で出来ないことなどきっとないはず。もしファンタスティック・フォー全員が協力して世界を変えようとしたら? それは恐らく、正史世界で何度も描かれたことでしょう。どんな天才でも、どれほど強く覚悟しても、人は1人で人生を過ごすわけではありません。ましてやファンタスティック・フォーが結束すれば、不可能なことなどないのです。