満を持してディズニー+で公開された「ホワットイフ…?」もしもの世界を描いた本作は、コミックでも大人気のシリーズです。そこで今回は2012年の大型クロスオーバー、AVENGERS vs X-MENのもしもの世界を描いたWHAT IF? AVENGERS vs X-MENを紹介したいと思います。
WHAT IF? AVENGERS vs X-MEN
なお正史世界のAVENGERS vs X-MENはヴィレッジブックス様より邦訳版も発売されております。
アベンジャーズvsX-Men アルファ&オメガ(本編の直前と直後を描いたサイドストーリー集。本編を踏まえて読むとより味わい深くなる)
アベンジャーズvsX-Men VS(アベンジャーズとX-Menの対決の様子に重きを置いた短編集。アメコミならではの大迫力戦闘シーンは必見)
〈あらすじ〉
かつて世界を破滅寸前まで追い込んだ強大なエネルギー生命体、フェニックスが地球へ接近している。アベンジャーズは地球の平和を守るため対処しようするが、絶滅寸前のミュータントを率いるX-Menはフェニックスに再起を見出していた。世界平和か、種の存続か。2大ヒーローチームの戦いは避けられないのか? もしも彼らが共に立てたなら?
〈もしもこの悲劇が……?〉
WHAT IF? といえば読者に語りかけるウォッチャーですが、今回はバッサリカットされています。
物語はアベンジャーズが大統領にフェニックスの危険性を説明するところからスタート。一方X-Menはフェニックスとそのホスト最有力候補、ホープの力を利用して種の勃興を目論んでいました。この世界でミュータントの指導者的役割はサイクロップスではなく、マグニートーのようです。アベンジャーズの説得に応じたのも彼でした。しかし本編同様話し合いは平行線、水掛け論のような議論が繰り広げられます。
これに業を煮やしたアベンジャーズのウルヴァリンとX-Menのネイモアは一触即発の危険な状態へ。彼らが戦えば2大ヒーローチームの戦争へ発展することは自明です。2人を止めるため間に入ったストーム。しかしそれが悲劇に繋がってしまいます。
本来の歴史では起こりえなかった悲劇。ここから物語は大きく転換していく。
目の前で同志が殺されたとあってはマグニートーも黙ってはいられません。アベンジャーズとの全面戦争を宣言した彼は手始めにヘリキャリアを爆破、ファルコンら数名のヒーローが死亡してしまいます。更に戸惑うホープとエマを連れて月面へ。フェニックスフォースを受け入れるようホープに促すのです。磁界王の怒りと共に爆発するヘリキャリア。ストームの願いとは裏腹に悲劇は加速する。
〈種のため、世界のため〉
月面に到着したマグニートーは、自らの野望をホープへ語り聞かせます。それはフェニックスフォースを使って世界を作り直すこと。そうすればミュータント絶滅問題も、そもそもの差別問題すら解決できるでしょう。そのためには今の世界に犠牲になってもらう他ないが、新たな理想の世界のためには必要なのです。最早未来のない種族のため、憎悪と偏見に満ち満ちたこの世界を救うため。正史世界でアベンジャーズとX-Menが争った問題を同時に解決する新たなアプローチと言えるでしょう。しかしそれはヒーローなら絶対に取らない選択肢でもあります。誰かに犠牲を強いた時点でどんな綺麗事を言っても正義ではないはず。もちろんエマは反対しますが、ホープは迷いながらもマグニートーの考えに同調してしまいます。そして言い争いを続ける彼らに、遂に炎の不死鳥が到来するのです。
フェニックスフォースを受け入れ、反対するエマを容赦なく木っ端微塵にするホープ。これも大義のために必要な犠牲なのか。
〈ホープとマグニートー〉
まるでマグニートーに盲目的に追従するホープ。その姿に違和感を覚えた人も多いのではないでしょうか? 正史世界のホープはミュータントの指導者的立場であったサイクロップスに何度も反発し、恐怖心からフェニックスフォースを拒んでしまいました。しかしこの世界のホープに恐怖は感じられません。むしろ美しいと声に出し、快く受け入れているようにも見えました。何故ホープは正史世界とこれ程違うのでしょうか? それは恐らく、指導者がマグニートーだからでしょう。ホープはとある事件がきっかけでサイクロップスとの関係が険悪になってしまいました。一方マグニートーは彼女に寄り添う描写が散見されました。その後彼が指導者になったのなら、次第に心を開いていったのも想像に難くありません。この時のホープは、父ケーブルと同様にマグニートーを慕っていたのでしょう。
ホープを訓練し、フェニックスフォースを宿す準備は整ったと語るマグニートー。描写は少ないながらも2人が信頼し合っていることが分かる。
〈世界の終わり〉
フェニックスフォースを宿したホープはマグニートーの言葉通り世界を作り直すため、まずは世界を焼け野原にしようとします。X-Menとアベンジャーズは共闘して阻止するために立ち上がります。一見すると2大ヒーローチームの共闘というのはあまりにもアツイ展開。しかし、これほどの犠牲と共通の敵がいなければ彼らは争うしかなかったという皮肉な証明でもあるのです。しかもあまりにも強すぎるエネルギーに太刀打ち出来るものはおらず。またマグニートーの攻撃もあって近づくことすら困難な状況へ陥ってしまいます。
世界を終わらせるため攻撃するホープ。ファンタスティックフォーもこの攻撃で全滅してしまう。
しかし強大なパワーはホープにも制御出来るものではありませんでした。力の暴走が抑えられず、やがてフェニックスはマグニートーを依り代にするのです。磁界王のパワーとフェニックスフォースが合わさり、2大ヒーローチームをあっという間に壊滅させたマグニートー。彼の野望は果たされてしまうのか? ヒーローに逆転の一手は残されているのか? それは是非本書を読んで確かめてください。
新たなフェニックスフォースの宿主となったマグニートー。彼に敵う者はこの世界に存在するのか?