アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ULTIMATE X-MEN vol4 HELLFIRE & BRIMSTONE

暴走したエグゼビア教授の子ども、デイビットに辛くも勝利したX-Men。今作は次回ultimate warや今後へ向けた展開がなされました。正史世界の要素も少しずつ取り入れながら広がるストーリーに期待値はグングンと上がるものです。
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前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

ミュータントと人類の平和的共存を夢見たエグゼビア教授率いるX-Men。しかしその前に立ち塞がるのは根深く危険な差別の数々だった。新たにキティ・プライドをメンバーに加えたX-Menに待っていたのは、ミステリアスな事件と地獄の業火、不死の怪鳥だ。

 

〈黒王の野望〉

エグゼビア教授は一刻も早い面会を求められていました。ミュータントを強く聡く育てるため設立された学園に、新たな入学希望者が現れたのです。希望者の名はキティ・プライドでした。14歳のキティは能力を発現させたばかりで、そのコントロールに苦慮していました。物資をすり抜ける能力が不意に発動し、自宅から下水道まで透過してしまうことが何度もあったのです。キティの親はX-Menに加入させないこと、危険な任務やヒーロー活動には一切関わらせないことを条件に入学を希望します。X-Manではなく、能力をコントロールして元の「普通」の生活へ戻そうと考えているようでした。一方好奇心と冒険心に満ち満ちたキティに、親の方針なんて意味はありません。サイクロプスウルヴァリンの命懸けの任務へ黙って同行するなど命知らずの向こう見ずな場面が見られます。確かに強力な能力ではあります。しかしだからといって優遇を許すわけにはいきません。この活力ある若者へエグゼビア教授は頭を抱えることとなりました。
f:id:ELEKINGPIT:20230530005915j:image能力が発現したばかりのキティ。その制御方法を習うより先にサイクロプスらの危険な任務へ同行する。

 

もう1つエグゼビア教授の頭を悩ませる事態が起こっていました。前回の戦いで重傷を負ったアイスマン。これに両親が激怒し、自宅へ連れ戻したのです。それだけならばまだしも、反X-Menを掲げる上院議員に見つかり、政治の道具として良いように使わそうになっていました。もしアイスマンの口から上院議員の考える誹謗中傷をX-Menに向けられたら、ヒーロー活動を続けるどころではなくなってしまうでしょう。事実、アイスマンの存在でエグゼビア教授へ向けられるバッシングはエスカレートしているようで、上院議員の思惑通りになりつつあるよう。トドメの一撃とばかりに、今度は怪我を完治させたアイスマンを壇上へ上げ用意した非難の声明を発表させようと画策していました。エグゼビア教授もX-Menも、アイスマンの1つ1つの動作を注意深く観察、壇上にあがってからはこれから発される言葉を固唾を呑んで見守っていました。ところがアイスマンの言葉は上院議員にとって驚くべきものでした。なんと台本を全て破り捨て、自身の言葉でX-Menの支持と復帰を表明したのです。例え親が、議員が、X-Menへどのような言葉を放ったとしても、同じ天井を見つめて眠った仲間たちを侮辱することは耐えられなかったようです。
f:id:ELEKINGPIT:20230530012451j:image壇上へ立たされるアイスマン。しかしそこで表明したのは自らの強い意思と信念だった。

 

トラブルの続くエグゼビア教授やX-Menを慰めるように、ある日パーティの招待状が届きました。送り主はヘルファイア・クラブ。世界中の富豪が出資しており、こうしたパーティで交流を図っているようです。何よりX-Menの資金提供も行っているため断る選択肢はありません。特にエグゼビア教授はこのパーティを楽しみにしていた様子。主催者のセバスチャン・ショウの紳士的な出迎えにも大変満足しているようです。ところがパーティを楽しむ時間は一瞬で終わってしまいました。なんとヘルファイア・クラブがX-Menを一斉に襲撃したではありませんか。この謀略を企んでいたセバスチャン・ショウはほくそ笑みます。不意打ちだったこともありあっという間に磔にされるX-Men。セバスチャン・ショウはそこで儀式の準備を始めました。ショウの目的は、宇宙を駆けるエネルギー体、フェニックス・フォースでした。再生と破壊を司る神に匹敵するであろう力を持つフェニックス・フォースを我がものにしてしまえば、世界を牛耳るなんて赤子の手をひねるようなもの。そのフェニックス・フォースは自らの依り代にジーン・グレイを選んだようです。その証拠にジーンはこのところ炎を身に纏う怪鳥の幻影に悩まされていました。この儀式は、フェニックス・フォースをジーンへ降臨させるために必須なのです。エグゼビア教授の妨害も虚しく儀式は成功、ジーンの体へフェニックス・フォースが宿りました。しかしショウの思惑は見当違いでした。無理やり降誕させられたフェニックス・フォースはまずショウへ敵意を向けたのです。一瞬で灰になるヘルファイア・クラブ。中でもショウは肉体から骨へと、骨から灰へとゆっくり焼かれていきます。このままでは世界がこの調子で焼かれてしまうでしょう。エグゼビア教授は持てる力全てを使い、フェニックス・フォースからジーンを呼び起こそうとします。
f:id:ELEKINGPIT:20230530020411j:imageショウの儀式で呼び起こされるフェニックス・フォース。途方もなく莫大なエネルギーに、エグゼビア教授でさえ全能力を限界まで引き出された。

 

X-Menの行方〉

個人の成長や拡大が回を追うごとに著しく感じられる本シリーズ。順風満帆とはこの事かと言いたくなるほどエグゼビア教授の夢見る針路へ真っ直ぐ進んでいるように思えます。しかし世間の態度は恐ろしいほどに変わっていません。それを象徴しているのが、今作に登場したアイスマンのエピソードでしょう。X-Menとして名誉の負傷を負ったアイスマンの話を聞きつけた上院議員が、X-Menを非難するために嘘さえ交じったスピーチをさせようとしたのです。当時15歳のアイスマンへ、仲間を侮辱しろと命じることがどれほどグロテスクな事か想像を絶します。言ってしまえば世間のミュータントに対する考え方、扱い方はまだまだ「人権」から程遠いのでしょう。またジーンもフェニックス・フォースの依り代として利用され、X-Menはまるでそのついでのように倒されてしまいました。皆ミュータントを都合よく道具として扱おうとしていました。これは現実の差別でも同じと言えるのではないでしょうか? 私達はマイノリティの方々に悲劇を演出させ、また時には利用している場面があるでしょう。私達は物語を好みます。例えば周囲の声に屈することなく愛する人と添い遂げた同性愛者と聞くと、それがどれほど勇気ある行動か、どれほど固い信念を持っていたのかなどに思いを馳せます。しかし一方で、そんな物語を都合よく利用して同性愛者のアイコンにするといったリスクもあります。そもそも物語として消費することさえ問題があると言えるでしょう。私達は気付かぬうちにマイノリティを消費している可能性が十二分にあるのです。X-Menの行動は、フィクションの世界でも現実でも物語として強い力を持ちます。しかしだからこそ、X-Menに感動して終わるのではなく現実の差別やマイノリティへ思いを馳せることも重要なのです。