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MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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CAPTAIN AMERICA/IRON MAN THE ARMOR AND THE SHIELD【2022年5月私的ベストアメコミ】

MARVELが誇る黄金コンビといえば、キャップとトニーを思い浮かべる人が多いでしょう。時に協力し、時に対決し、共に多くの苦難を乗り越えたからこそ育まれた特別な絆に結ばれています。今回紹介するCAPTAIN AMERICA/IRON MAN THE ARMOR AND THE SHIELDは、そんな2人を主役にした最新のミニシリーズです。過去作品からの引用も多く2人の歴史の長さを感じさせられた本作。栄光のヒーローとして正義を貫く姿は何度見ても美しいものです。
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日本語版関連コミック

 

シビル・ウォー (MARVEL)

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〈あらすじ〉

ヴェロニカ・エデンが脱獄した。ファルコンとバッキーの活躍で逮捕されたハイドラの若きリーダーを監視していたキャップとアイアンマンはすぐさま逮捕に動き出す。ところがヴェロニカを助け出したのはかつてヒーローを志した若者で……?

 

失われた時を求めて

ヴェロニカ・エデン脱獄の報せは、すぐにキャップとトニーを動かしました。かつてハイドラを率いたこの若者は、危険人物として2人にマークされていたのです。護送車に部下を紛れ込ませた見事な脱出劇。しかしすんでのところで2大ヒーローが駆けつけます。鮮やかな戦いぶりでヴェロニカを捕まえる寸前、今度はさらなる妨害が。トニーにはその姿に見覚えがありました。上空から現れたのは「フィフティ・ワン」。SHIELD長官時代にトニーが推し進めた「50ステート・イニシアチブ」計画でヒーローとなった異星人です。50ステート・イニシアチブとは、将来有望な能力者に適切な教育を施し、アメリカ全州に1チーム以上ヒーローを配置するというもの。直接ではないにしろ、トニーが育てた後輩といっても過言ではない人物。そんなフィフティ・ワンが悪の道へ? 疑問を抱えながら、キャップ達は2人を取り逃がしてしまいます。
f:id:ELEKINGPIT:20220520121613j:imageヴェロニカの逮捕を目的に結束する2人。だがこの事件には何か裏が……?

 

ヴェロニカらを追うキャップとトニー。突き止めた隠れ家には既に先客がヴェロニカ達と戦っているようです。パラディンズ。50ステート・イニシアチブでフィフティ・ワンが所属していたヒーローチームです。どうやらその後もヒーロー活動を継続していたようですが、仲間が悪の道へ進むのを阻止するためにヴェロニカへ戦いを挑んだようです。個々の能力を活かした戦い方は荒削りながら中々の実力。キャップらの心配を他所に、ハイドラの戦闘員を次々と倒していきます。逃走を続けるヴェロニカとフィフティ・ワン。しかしキャップとアイアンマンにパラディンズの追跡は振り切れず、遂にヴェロニカの逮捕に成功します。かろうじて逃れたフィフティ・ワンの行方やその目的も、ヴェロニカへ尋問すれば行き先は分かるでしょう。この事件はゴールへ近づきつつあるようです。
f:id:ELEKINGPIT:20220521002327j:imageかつてトニーが主導した計画でヒーローとなった若者たち、パラディンズ。現在もヒーロー活動を続けているが……

 

ヴェロニカへ尋問した結果、恐るべき計画が判明しました。ヴェロニカはオーバーシーアーと呼ばれるスーパーコンピュータを操作し、ミュルミドーンなる凶悪アンドロイドを解き放とうとしているとしているというのです。現在オーバーシーアーはSHIELDのヘリキャリアに保管されているとのこと。ミュルミドーンを解き放つ目的は未だ不明ですが、良からぬことを企んでいるならすぐにでも阻止する必要があります。経験不足な若者のチームに任せる規模ではありません。キャップらはパラディンズに待機を命じ、ヘリキャリアへ向かうことに。高度なステルス技術を突破しヘリキャリアへ乗り込むと、どうやらミュルミドーンは既に起動していたようです。いきなりキャップとアイアンマンへ襲いかかってきました。強靭な装甲に苦戦する2人。徐々に追い込まれる2人を助けたのは、なんとフィフティ・ワンでした。ここでようやくフィフティ・ワンの目的が判明します。そもそもオーバーシーアーを操りミュルミドーンを解き放とうとしていたのはヴェロニカの方。フィフティ・ワンはそれを阻止しようとしていたのです。ヴェロニカの目的は、言わば超人全滅計画。ヴィランとヒーローの戦いで人々が大きな被害を被るならば、両方をなくすことで世界はより良くなると考えたのです。誤算があるとすれば、オーバーシーアーも独自の計画で動いていたことでしょう。
f:id:ELEKINGPIT:20220521010716j:imageヴェロニカへ自らの野望を明かすオーバーシーアー。全てはロボットによる人類救済計画のため、ヴェロニカをも踏み台にする。

 

ミュルミドーンの大軍にキャップとアイアンマンは大苦戦。フィフティ・ワンも重傷を負ってしまいます。意識を失ったままヘリキャリアへ置いておくわけにはいきません。トニーはフィフティ・ワンをパラディンズの本部まで送り届け、ヴェロニカ脱獄の頃から手を貸していたと思われる上院議員の元へ向かいます。一方キャップはヴェロニカと共にミュルミドーンの大軍を相手します。しかしヘリキャリアの中からあるはずのないものを発見。そしてトニーも予想外の真相を上院議員から聞かされることに。この事件には更なる黒幕が存在していたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220521012916j:image全てはただ、居場所を求めてのこと。かつての仲間と引き換えに得られるものは、若者らにとって全てだった。

 

〈得られるはずだった居場所〉

今作のテーマに、「居場所」というものが挙げられるでしょう。100年先を行くフューチャリストにして、未来を進めるが故に孤独の道を歩むトニー。死ぬはずだった瞬間に死ねず、現代という見知らぬ世界へ取り残されたキャップ。より良い世界を築こうと信じる道へ進むも、悪への歩みを止められないヴェロニカ。今作の登場人物は全員「居場所」を失っているといっても過言ではないのです。しかし同時に、別の居場所を築くことにも成功しています。キャップとトニーはアベンジャーズを通して2人にしかない絆を深め、今やMARVELユニバース屈指の黄金コンビとなっています。ヴェロニカは悪へと振り切ることで確固たる自信を築き上げ、居場所を作り上げることが出来ました。しかしパラディンズは違います。決して悪の道には進まず、しかし正義を貫いてもどこにも居場所はありません。そもそも50ステート・イニシアチブで州を代表するヒーローチームとなってから、スクラルの大侵略でその地位も名声も全て奪われたまま。キャップやトニーのように取り戻したものはなく、日の目を浴びないまま数年の時を過ごしていたのです。ではトニー達はこの若本たちへ何をすべきだったのでしょうか? 劇中でキャップはスパイダーマンを例に挙げていました。パラディンズよりも若い頃からずっと親愛なる隣人として人々を助け続けていたスパイダーマン。その根底には決して地位も名声も求めてはいません。力を振るう以上、誰もが「大いなる力には大いなる責任が伴う」のです。キャップもトニーも、決してヒーローを始めてから全てが順風満帆とは行かなかったのは多くの人が知るところでしょう。キャプテン・アメリカの名を捨ててしまったことも、アーマーの牢獄から逃れようとアルコールに溺れて自殺を図ったこともありました。また超人登録法をめぐってヒーロー同士の凄絶な内戦が勃発したこともありました。それでもキャップとトニーは現役のトップヒーローとして活躍し続けています。居場所が奪われることは1度もなかったのです。キャップは言います。足りなければ何度も精進すればいいのだと。泥臭く時間もかかる方法ですが、ヒーローとして活躍するにはそうするしかありません。不退転の覚悟こそが鍵なのです。居場所は作るものではありません。いつの間にか出来ているものなのです。