アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

SPIDER WOMAN AGENT OF SWORD

ベンティス氏が手がけたニューアベンジャーズシリーズにて様々な活躍を見せ、その後もMARVELの人気キャラの1人となったスパイダーウーマン(ジェシカ・ドリュー)。SHIELDとハイドラの二重スパイであり、両親は共にハイドラ工作員という異色の経歴を持つヒーローです。スクラル大侵略時にはそんな経歴を利用され、女王ヴェランケと入れ替えられてしまいました。00年代を代表する悲劇のヒーローの1人といっても過言ではないでしょう。今回紹介するSPIDER WOMAN AGENT OF SWORDは、そんなスクラル大侵略の直後、オズボーンがヒーロー社会を支配したダークレイン期に当たる物語です。ニューアベンジャーズシリーズ同様ライターはベンティス氏が担当、邦訳コミックと共に楽しめるストーリーです。そしてアレックス・マリーヴ氏の、まるで絵画のようなアートも本作の大きな特徴でしょう。
f:id:ELEKINGPIT:20220521193648j:imageSPIDER WOMAN AGENT OF SWORD

 

日本語版関連コミック

 

〈あらすじ〉

スクラルによる侵略が終わり、地球へ帰還したジェシカ・ドリュー。しかしそれはもう1つの悪夢の始まりだった。世界中から容赦なく浴びせられるバッシング、何より誘拐された記憶がトラウマとなり、仲間すら信用出来ないのだ。そんな眠れぬ日々を過ごすジェシカへある依頼が舞い込む。スクラル残党狩りだ。

 

〈スパイダーウーマンの復讐〉

ジェシカは自殺しようとしていました。拳をこめかみに向け、あとは光線技ヴェノム・ブラストを放てば一瞬で……ところが、今のジェシカにはそんな気力すら湧きません。眠れぬ夜、思い出すのはそれまでの人生。ハイドラ工作員の両親から産まれ、実験台としてクモのDNAを埋め込まれスパイダーウーマンとなった。目の前で父親が殺された。多くのヴィランと戦いながら失われていくスーパーパワーに焦りを覚え、ハイドラと禁断の取引をした。目が覚めたらスクラルの女王に、名前も地位も名声も、居場所も奪われていた。ようやく戻ってきたと思えば、誰もが敵に見える地獄に変わっていた。ユニバース史上最も哀れな人物を更新した、と自虐気味に笑みを浮かべます。秘密組織からの依頼状が届いたのはそんな時です。その名はSWORD。異星人の脅威から地球を守るために誕生した、SHIELDの姉妹組織です。長官のアビゲイル・ブランドは直々にスクラルの残党狩りを行うよう要請されたのでした。緑髪……スクラルの肌と同じ色にすらジェシカは怯えるほどでした。しかしそれでも、人生の全てを奪ったスクラルへ復讐する権利が自分にはあるはず。戸惑いながらもジェシカはスクラル探知機を受け取ります。
f:id:ELEKINGPIT:20220521221707j:imageSWORDのエージェントとしてスクラル残党狩りを決めたジェシカ。今の自分にはそうするしかなかった。

 

SWORDのアビゲイル長官は、最優先ターゲットとしてコル・カヴィティを倒すよう指示します。スクラル侵略部隊のNo.4で、上層部唯一の生き残りです。そこでジェシカはコル・カヴィティが潜伏していると思われるマドリプーアへ向かいます。しかし潜伏先のホテルに着いた途端、スパイダーマンの姿をしたスクラルの襲撃が。恐怖と混乱に苛まれながら戦うと、今度はハイドラの女王ことマダム・ハイドラが現れます。急な展開に戸惑ったのはジェシカの方。マダム・ハイドラはジェシカへ甘い言葉をかけ、再びハイドラのスパイとして働くよう誘惑します。ハイドラ工作員の両親を持つ純血のハイドラ。誰が歓迎しないでしょうか? さらにマダム・ハイドラは、スクラル大侵略発覚以前に捕らえたスクラルの元へジェシカを連れて行きます。ありのまま復讐するのだ、その権利があるはずだ、と。どうやらそのスクラルは侵略部隊が敗北したことすら知らない様子。ジェシカをヴェランケ女王だと思い込んですらいました。最初は尋問してコル・カヴィティの居場所を聞き出すつもりでしたが、期待していた情報は何も知らないようです。ジェシカは吐き捨てるように、スクラルへ女王の死を伝えます。
f:id:ELEKINGPIT:20220521223531j:image女王でないならば殺すまで。巨大化したスクラルは、衰弱しながらも圧倒的なパワーを振るう。

 

スクラルを殺した後もジェシカの心が晴れることはありませんでした。勢いそのままハイドラから逃亡、コスチュームを受け取って調査を再開しようとします。途中オズボーンが送り込んだサンダーボルツの妨害を受けますが、どうにかこれを退けることに成功。ようやく邪魔する者がいなくなり、任務を再開します。結果、コル・カヴィティはマドリプーアのとある酒場にいるという情報が。地球人に化けて活動しているでしょうが、相手はスーパースクラルの1人。複数のスーパーパワーを掛け合わせた超強力な能力を有します。スクラル探知機のメーターがMAXまで振り切れた途端、スーパースクラルとスパイダーウーマンの戦いが始まりました。ヴェノム・ブラストすらものともしないタフさ、1発1発がとてつもなく重い攻撃、恐らくはジェシカの能力を大幅に上回る敵。このままでは死ぬのはジェシカの方でしょう。その時です。上空から予想外のチームが登場します。
f:id:ELEKINGPIT:20220521230405j:imageジェシカを助けるために駆けつけたシークレット・アベンジャーズ。スクラルだと疑うジェシカだが、探知機のメーターは微動だにしなかった。

 

〈復讐の意味〉

人生の全てを奪われたスパイダーウーマンがスクラルへ復讐しようとした。一言で本作のあらすじを語るならそんなところでしょうか。実際ジェシカは劇中で3人のスクラルを殺しています。しかしジェシカの心は決して晴れはしません。あれほど心の底で復讐を望んでいたというのに。つまりジェシカにとって、スクラルを殺すこと自体は復讐ではなかったのです。これには本人も気付いている様子。ではジェシカにとって、スクラルへ向けた復讐とは何だったのでしょうか? 物語の結末を見ると、どうやら「取り戻す」ことにあったように思えます。スクラルの目の前で、奪われたものを全て取り戻すのです。様々な苦難を乗り越え、アベンジャーズを信頼出来るチームだとして最後には頼ったジェシカ。地獄のような日常から、まるで光のようにアベンジャーズは登場しました。そしてその中には親友のキャロルの姿も。ホッとしたのか、ジェシカはキャロルへいつものような軽口を言っていました。ジェシカにとっての日常が帰ってきたのです。この時からジェシカのモノローグは、それもマイナス思考のものは一切なくなりました。晴れなかった心がついに晴れた瞬間です。これこそが、ジェシカが物語当初から望んでいたことだったはず。ジェシカがしたかったことは、かつてのように仲間を頼り頼られること。今や女王を失い、地球で全てを失ったスクラル。そんなスクラルの目の前で日常を取り戻したことこそがスパイダーウーマンにとって、復讐の先に求めていたことかもしれません。