アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS DARTH VADER vol1 VADER

2015年からスタートしたマーベルによるコミック版スターウォーズ。その第1弾となったSKYWALKER STRIKEは全米で100万部を超える話題作となりました。そして今回紹介するDARTH VADERシリーズは第2弾にあたります。SKYWALKER STRIKEの内容とリンクする部分も多く、アメコミならではのクロスオーバー形式で展開された本作、時系列はEP4新たなる希望〜EP5帝国の逆襲の間に当たるストーリーです。第1弾では語られなかったストーリーを補完する部分もあり、そちらのシリーズと併せて楽しむことをオススメします。そして何より映画では描ききれなかったダース・ベイダーの心情やアナキン・スカイウォーカーの部分を垣間見ることも……ファン必見の名作であることは間違いありません。
f:id:ELEKINGPIT:20220330141331j:imageSTAR WARS DARTH VADER vol1 VADER

 

日本語版コミック

 

 

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〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

若き青年パイロットの活躍で、帝国最強の兵器デス・スターは破壊された。銀河を恐怖政治で支配する象徴の破壊に、皇帝の怒りは頂点に達する。

強力なフォースを有していた青年とサイムーン1で再び対峙したベイダーは、驚くべき事実を知る。青年はかつて自分が作ったライトセイバーを振るっていたのだ。

皇帝の怒りを受けて帝国軍の指揮権を失ったベイダーは、自らの私設部隊を率いるため極秘で動き出す。そこで待っていたのは奇妙な運命だった……

 

〈もう1人のスカイウォーカー〉

デス・スターの破壊に続き、サイムーン1爆破と立て続けに大規模施設が攻撃される帝国軍。皇帝の怒りは両方の防衛に関わっていたダース・ベイダーへと向けられました。同じくデス・スターから生き残ったタギー将軍の部下へ降格させたのです。さらに監視係まで付けられ、指揮権も失い、これまで以上に自由がない状態。またベイダーにとってタギー将軍は無能でしかない将校で、その部下として働くとは大いにプライドが傷つけられてしまいます。その仕事も海賊退治ばかり。不満ばかり募るベイダーは、極秘の私設部隊を率いようと考えます。まずは自身の監視係に宇宙海賊との癒着の証拠をでっちあげ殺害、これである程度自由に行動できるようになりました。そして宇宙海賊として名を上げていた考古学者のドクターアフラと接触、その知識を活かしてドロイド部隊を奪取しようと画策します。
f:id:ELEKINGPIT:20220330221517j:imageベイダーが接触した考古学者兼宇宙海賊のドクターアフラ。軽いノリだが確かな腕と冷酷な判断力を持つ。

 

ドクターアフラは最も近いドロイド保管庫がジオノーシスにあると言います。ジオノーシスはEP2クローンの攻撃で登場した、クローン戦争開戦のきっかけとなった惑星。そしてアナキンにとって、パドメと婚約を交わした思い出の地でもあります。クローン戦争終結後は壊滅的な被害を受けていましたが、「女王」の統治で辛うじて生命線を繋いでいる状態でした。その女王を倒せばジオノーシアンの持つドロイド軍を我が物と出来るでしょう。ベイダーの戦闘力はドクターアフラの想像以上です。あっという間に女王を倒し、ベイダーはついに皇帝すら知らない私設部隊を手に入れました。そうして満足気に宇宙船へ帰ると、ある連絡が入っていました。予め雇っていた2人の賞金稼ぎのうちの1人です。ベイダーはデス・スターを破壊した青年を生け捕りにするようボバ・フェットに依頼した時、もう1人の賞金稼ぎへ皇帝が最近召し抱えた側近を調査するよう依頼していたのです。その賞金稼ぎが側近を生け捕りにしたという報せでした。拷問の結果、側近はサイロ-4という名であったこと、そしてサイロ-4の拠点の場所が判明。早速サイロ-4の拠点へと向かうことにします。そこで待っていたのは、数々のサイボーグ軍団です。サイロ-4の意識をクラウドからインストールしたサイロ-5は語ります。このサイボーグ軍団は皇帝が用意した、ベイダーに代わる新たな右腕であることを。
f:id:ELEKINGPIT:20220330233755j:image皇帝の右腕を巡る半身半械同士の戦い。自らのアイデンティティをかけて、ベイダーの怒りが迸る。

 

戦いはベイダーの勝利に終わりました。20年近く守り続けてきた皇帝の右腕という立場すら揺らいだことに驚きを隠せないベイダーですが、なんとサイボーグ軍団はベイダーが皇帝に仕えるようになった時点で既に訓練を受けていたというのです。皇帝は「サイボーグ軍団に負けたならそれまで、勝てば自らの実力を証明できよう」と言ったきりで、ベイダーの内心は晴れません。依頼を終えたボバ・フェットが現れたのはそんな時でした。任務の結果はSKYWALKER STRIKEの展開であった通り、失敗に終わります。ボバが手に入れたのは青年の名前だけでした。スカイウォーカー。それが青年の名です。ここでベイダーは初めて知りました。パドメが最後に遺した子どもが生きていたことを。
f:id:ELEKINGPIT:20220331000145j:image約20年前から癒えない怒りの傷を抱えるベイダー。愛する人が遺した子とともに皇帝に立ち向かえば……

 

〈怒りの傷〉

EP4〜EP5の間を描いた本作。ベイダーファンとして注目すべき点がいくつもありましたが、中でも気になったのは、「何故ダース・ベイダーは未だダース・ベイダーなのか?」という部分です。アナキンがベイダーになった経緯や心情はこれまで数多くの作品で描かれてきました。しかしそれ以降、何故ベイダーはライトサイドに帰還しなかったのか? 何故ベイダーは暗黒面にいるままなのか? という問いに突き詰めた作品は多くないでしょう。本作ではその理由が描かれていたように思います。

何故ベイダーは暗黒面に落ちたままなのか? それは、未だEP3シスの復讐で湧き上がった怒りが静まらないからでした。スカイウォーカーの名を聞いた途端怒りのフォースを解放し、パドメの訃報を知った時と同じように周囲へ被害を与えたベイダー。パドメの訃報を聞いた時、ベイダーは守るべき人を守れなかった自分への怒りからアナキン・スカイウォーカーをも殺してしまいました。アナキンにとっての全てとも言えるパドメの死は、以来ベイダーにあらゆる感情を失わせてしまったという私の考えは、以前述べさせていただきました。しかし本作の描写を見ると、ベイダーには怒りという感情のみ残っていたようです。それもあの時から微塵も変わらず。冷酷なる黒衣の怪物を動かしていたのは、あの時と変わらない怒りだったのです。しかし同時に、それ以外の感情を失ったからこそ皇帝に仕える以外なかったのです。そんな時に知ったルークの生存。それは1人では敵わなかった打倒皇帝という目的に現実味が増し、ベイダーに新たなる生きる目的を与えたのです。