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MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ORIGINAL SIN THOR&LOKI THE TENTH REALM

今回もオリジナル・シンのタイイン(サイドストーリー)を紹介したいと思います。オリジナル・シン本編と同じJason Aaron氏がライターを担当しており、GOD OF THUNDER誌などとの繋がりも。アベンジャーとして地球に残り戦い続けたソーが見た真実とは? 日本語版も発売されている本編もあわせてお楽しみください。
f:id:ELEKINGPIT:20211116192003j:imageORIGINAL SIN THOR&LOKI THE TENTH REALM

 

日本語版関連コミック

 

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〈あらすじ〉

全知全能の観測者ウォッチャーが殺され、あらゆる秘密が白日の元へ晒された。ソーが目撃した真実。それは第10の世界が存在していたこと、自身に妹がいたことだ。真実の全貌を知るため第10の世界へ向かうソーは、知られざるアスガルドの歴史と向き合うこととなる。

 

アスガルド秘史〉

北欧神話では9つの世界が世界樹ユグドラシルの根で繋がっていると言われています。人間達の住むミッドガルド、ミッドガルドの中心に位置する神の黄金宮アスガルド、巨人ユミルが生きた世界ヨトゥンヘイム、ダークエルフの住むスヴァルトアルフヘイムetc。ところがソーの見た真実のヴィジョンには、第10の世界が広がっていました。そして自分の妹が存在していたことも。真実を目の当たりにしたソーはすぐさま母フレイジャへ問い詰めます。自分には妹がいるのか? もし妹がいるならば何故今まで隠していたのか? そして第10の世界とは? フレイジャは答えます。太古よりも遠い昔、まだソーが赤ん坊だった時代、アスガルドの神々は第10の世界に住む天使の一族と戦争をしていました。主神オーディンらの奮戦もあって敗北を悟った天使の女王は、なんと黄金宮から赤ん坊を強奪。オーディン達の目の前で殺してみせます。それがオーディンとフレイジャの娘であり、ソーの妹アルドリフだったのです。オーディンは怒りの余り第10の世界を世界樹ユグドラシルから切り離し、永遠に封印させます。以来第10の世界と天使族は誰にも知られない世界となりました。
f:id:ELEKINGPIT:20211116195445j:image第10の世界を9つの世界から永久に切り離すオーディン。こうして第10の世界は現在まで誰も知らない世界となった。

 

しかしソーは妹のヴィジョンを確かに見たと言います。恐らく妹は今も生きているはずだと。もし妹が生きているならば、第10の世界へ連れ去られたに違いない。ソーはロキの助けを借り、ユグドラシルから切り離された第10の世界へ行くことにしました。辿り着いた世界に広がるのは、ひたすら澄んだ美しい景色でした。雲1つない空、上品に構える黄金の建物たち、色鮮やかな動物。想像していた世界とはまるで違う、ユートピアのような光景です。天使達は久しぶりの訪問者に驚きますが、決して敵意は向けません。この様子ならきっと妹探しも順調に進むだろう。ソーは自らの名を名乗り、アスガルド来たと伝えます。ところがその瞬間、天使達は一斉にソーとロキへ刃を向けました。その実力は数々の武勇を誇るソーすら驚かせるほど。次々と敵の戦艦を落とされながら、しかし雷神に一瞬たりとも隙を与えないパワーで徐々に追い詰めます。一方ロキは天使を率いる女王を奇襲。女王の首に刃を突き立てます。
f:id:ELEKINGPIT:20211116201402j:imageトリックスターの神らしい戦いで敵を追い詰めるロキ。女王と交渉することに成功する。

 

その頃宇宙では、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーが宇宙人の猛攻にあっていました。何とか反撃してはいるものの、活路を見出すのはまだ先のよう。しかしメンバーのアンジェラは脳内に響く雷のヴィジョンが頭から離れず、突然戦線を離脱。故郷の世界へ1人急いでいました。そこではソーが数々の敵を相手取り、大乱闘を繰り広げています。アスガルド人が故郷を脅かしている。アンジェラは迷わずソーと戦うことを選択しました。アンジェラはガモーラをも凌駕するほどの戦士としてガーディアンズで活躍していましたが、なんと今回はソーすら圧倒する超スピードで猛攻撃を仕掛けます。あまりの超スピードに対抗できず、ソーは瞬く間に倒され磔にされました。かつて天使族から全てを奪ったアスガルド人を拷問することで復讐を果たそうというのです。絶望的な状況でなおも不屈の闘志を燃やすソー。しかし目の前に現れたのは、女王からある「真実」を聞かされたロキの姿でした。
f:id:ELEKINGPIT:20211117010826j:image真実を知り、兄を裏切ったソー。一体ロキは何を知ったのか?

 

そもそもアスガルドと天使は何故戦争をしていたのでしょうか? 人類が生まれてまもない頃、アスガルド人が地球へやってきました。ところがその中にはまだ言葉も喋れない人類を見下す者も多く、スポーツ感覚で人類を殺すなんて事件も。当時の天使達の仕事はそんな傲慢に溺れたアスガルド人を処刑することでした。依頼主はオーディン。堕落したアスガルド人を処刑し、人類の信仰を保とうとしていたのです。天使とアスガルドはこうして1000年もの間栄えました。そんなある日、天使の女王に呼び出されたオーディンアスガルドの敵対勢力が同盟を結び、天使に協力するよう大金を求めたと告げられます。このままでは天使は裏切るが、もし同盟より多くの報酬金を支払うならばアスガルドの味方をしよう。この提案に、オーディンは「名誉はないのか」と激怒。2人の王の諍いから天使とアスガルドは戦争状態に入ったのです。 そして現在、女王はロキの協力を得て再びアスガルドを侵攻します。ロキの指示で全軍をアスガルドへ突っ込ませますが、なんとアスガルド1歩手前で戦艦が大爆発。オーディンの残したバリアで天使は大半の戦艦を失いました。
f:id:ELEKINGPIT:20211117082915j:image大爆発する天使軍の戦艦達。全てはロキの計略通り。

 

その頃ソーもまた脱出、天使達と再び戦闘していました。第10の世界は雲1つない世界。ならば天使達は雲も雷も知らないはず。神の雷は天使を大きく動揺させ、再びアンジェラとの一騎打ちに持ち込みます。やはりスピードで劣るソー。雷撃を含めても苦戦しますが、そこへ駆けつけたのはオーディンでした。天使軍を騙し討ちしたロキはその足で別次元にいたオーディンを連れ出していました。そのオーディンはソーと戦っているアンジェラを見て驚きます。アンジェラこそ天使の女王に殺されたはずの娘でありソーの妹、アルドリフその人だったのです。親子という魂の繋がりを持つオーディンだからこそ分かった真実でした。
f:id:ELEKINGPIT:20211117091057j:imageアンジェラにも見えたオーディンとの魂の繋がり。唯一羽を持たない天使はアスガルド人だった。

 

〈清らかさと穢れ〉

さて今作の最大の特徴は、潔癖と汚れという2つの観点でしょう。アスガルド人のほとんどは名誉を第1とし、武勇を奮ってきました。何よりも名誉を重んじ、そこに金を絡めるなど言語道断です。名誉に関してはまるで潔癖症と言えます。一方天使は戦闘において何よりも報酬を重んじていました。どれだけ誉れ高い武勇伝を多く持っていても、それで生活はできません。オーディンには欲に塗れた汚らわしいものと一蹴しますが、天使はそれらを使って美しい都市をつくりあげました。確かに金に目がくらんだ状態は決して清潔とは言えません。しかし天使は報酬で自らの生活を支えていたという事実があります。逆に言えばアスガルド人は信仰されていた地域からの貢ぎ物で生活をしていたと考えられます。当然アスガルドには巨大な宝物庫と莫大な貯えがありました。しかし同時に信仰地域から貢ぎ物を要求していたのも事実。報酬を得ることで自ら生活する天使と、名誉を重んじる一方でその生活は他人からの搾取で成り立っていた神々。果たして神々は清廉潔白なのか? 天使は汚れに塗れているのか? どちらが正しい、正しくないでは判断しきれない問題でしょう。しかし1つだけ言えるのは、弱者からの搾取だけではその社会は長続きせず、報酬を至上としても実力者だけが多く機会を得られ、決して平等とはいえません。どちらも弱者を無視した社会。決してそれは「白河の如き清らかさ」では無いでしょう。