アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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AVENGERS(1998)#16〜#18

テンプラー卿とペイガン、2人の凶悪なヴィランが登場し大きな衝撃を与えた前回。強大なパワーを持ち、大半のアベンジャーズではダメージすら与えられない堅牢な防御を持つ2人に苦戦する姿が描かれました。一方でアベンジャーズの問題点もさらけ出され、新章は波乱に充ちたスタートだったと言えるでしょう。そしてそれは今作も同じ。2つのストーリーが同時並行で進む今作は、次回以降の布石を用意しつつも読者を飽きさせない仕掛けが多くありました。予想外な方向へ進み続ける物語ですが、安定した面白さが常に確保されています。ページに引き込まれる魔力をぜひ本編と併せて体感してみてください。
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前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

レッキング・クルー脱獄! かつてアベンジャーズと何度も渡り合ったヴィランチームが世に放たれた。いつもの様に銀行強盗を行うと思われていたが、その行動は謎に包まれており……

 

〈「マーベル」を巡って〉

レッキング・クルーの脱獄は、テンプラー卿の行方を追うアベンジャーズの頭を悩ませました。世界征服や人類支配といった誇大な野望を持たない代わりに、人々を傷付けることすら厭わない大悪党です。早急に対処せねば被害が拡大するどころか死人が出てもおかしくはありません。そんな時でした。ボロボロに負傷したフォトンアベンジャーズ・マンションに現れます。なんとレッキング・クルーにやられたというのです。このままでは故郷がめちゃくちゃにされる。そう訴えたフォトンは最後の力を振り絞り飛び去ります。手をこまねいている場合ではありません。アベンジャーズは早急に事件を解決するため、全員でフォトンの後を追うことにしました。しかしフォトンが到着した頃には既に大暴れ。街はおもちゃ箱をひっくり返したように荒れ放題です。アベンジャーズフォトンが応戦しますが、人間離れしたパワーに苦戦。特に弱っていたフォトンではまともに戦うことも難しいようでした。一方レッキング・クルーはただ暴れるために街へ来た訳では無いようです。フォトンを倒した途端連れ去ろうとしたではありませんか。レッキング・クルーの真の目的はフォトン誘拐にあったのです。街を襲ったのもフォトンを誘き出すためでした。敵の目的がわかったならば阻止するまで。苦戦しながらどうにか敵を追い詰めることに成功します。ところがあと1歩のところでレッキング・クルーがテレポート装置を作動させました。脱獄したばかりのヴィランが何故そんな物を? 疑問に思う暇もなく、ワンダのヘックスパワーでテレポート先を変え、負傷したジャスティスとアイアンマンを待機させ後を追います。
f:id:ELEKINGPIT:20221229121812j:image暴れ回るレッキング・クルー。何故フォトンを連れ去ったのか、真の目的は謎に包まれていた。

 

アベンジャーズ・マンションに戻ってきたアイアンマンは、西海岸にいるはずのワスプから驚くべき通信を聞きます。なんと目の前でキャロル・ダンバースが消えたというのです。アベンジャーズを脱退させられたキャロルは、その後アルコール依存症の治療に専念するため西海岸に静養しに行っていました。そこで偶然出会ったワスプと会話している途中、光に包まれ消えてしまったのです。アイアンマンはジャスティスをマンションに待機させ、キャロルのエネルギー信号から居場所を特定。ジャイアントマンとともに現地へ向かいます。なんとエネルギー信号の指し示す場所は、前回ニューウォリアーズが壊滅させたAIMの秘密基地の地下ではありませんか。この事件、テンプラー卿が裏で糸を引いている可能性すら浮上してきました。アイアンマンらが到着すると、何とか自力で脱出したキャロルとロボットの姿をした敵が既に戦闘しています。敵の名はドゥームズデイ・マン。かつてキャロルがスーパーパワーを手に入れ「サイケマグニトロンの暴走」に居合わせ、結果機械に接続しなければならない貧弱な体になってしまいました。ドゥームズデイ・マンはAIMと協力してボディスーツを戦闘用に仕上げ、キャロルを取り込めば貧弱な体も治るかもしれないと一縷の望みを託していたのでした。レッキング・クルーへ指示を出していたのもドゥームズデイ・マンでしたが、「Ms.Marvel」を連れてこいというものでした。しかし当時その名を名乗るヒーローはいません。レッキング・クルーは元キャプテンマーベルであるフォトンを勘違いで誘拐していたのでした。
f:id:ELEKINGPIT:20221231024954j:imageアベンジャーズと戦うドゥームズデイ・マン。クリーセントリーの技術さえ使われたボディスーツに、無敵のアベンジャーズも苦戦を強いられる。

 

同刻、レッキング・クルーを追うキャップ達。テレポート先をヘックスパワーで変えたものの、咄嗟の事だったのでどこへ辿り着くかわかりません。ソーが作ったゲートを抜けると、そこはポレマコスと呼ばれる異世界の王国でした。ポレマコスは科学を捨てることと科学を重視することで国内が対立しており、現在の国王は科学重視派の様子。そんな時にフォトンを引き連れたレッキング・クルーが現れます。悪王として名高い現国王がフォトンの能力を利用しないはずがありません。フォトンのエネルギーを強制的に放出させる装置を開発、そのエネルギーで更なる発展をしようと企みました。助けに来たアベンジャーズ相手に優勢に戦いを進めるレッキング・クルーを、国王は高く評価します。多くの兵士をレッキング・クルーに協力させ、結果キャプテン・アメリカを捕らえることに成功。アベンジャーズは1度撤退せざるを得ませんでした。キャップを捕えられ追い詰められたアベンジャーズは、体勢を整える中ポレマコスの反乱の機運を嗅ぎとります。現国王の悪政に我慢の限界を迎えた国民は、科学は捨てるべきと主張する者達の革命を期待するようになっていました。そこでアベンジャーズは革命に協力し悪王を倒す代わりに、フォトンとキャップの解放を手伝ってもらおうと考えます。
f:id:ELEKINGPIT:20221231030907j:imageレッキング・クルーの手で捕えられたキャップ。この状況を打破するため、アベンジャーズは手段を選ばない。

 

〈運命のいたずら〉

今作で特に異彩を放ったのは、ドゥームズデイ・マンの存在でしょう。キャロルと同じオリジンを持ちながら、正反対の結果となってしまったドゥームズデイ・マン。ほんの少しだけ何かが違えば決してその道を辿らなかったであろう悲劇のヴィランと言えます。今作はそんなドゥームズデイ・マンとキャロルの対比がなされていました。

ヒーローにおいて最も重要なものはなんでしょうか? 肉体的な強さ? 能力? 多くの方は「精神の強さ」と答えるでしょう。永遠に終わらない悪との過酷な戦いに耐え抜く精神力、己の正義を信念の槍に変えて貫き続ける精神力。これらを強く持ち続けることは並大抵の精神では出来ません。だからこそヒーローも時に挫折を味わい、失敗してしまうのです。当時のキャロルは正にそんな状況にありました。アルコール依存症となりアベンジャーズを脱退したキャロル。その原因は、バイナリーの能力を喪失した焦りからくる精神的な挫折でした。キャロルはそこから回復するための日々を過ごしていたのです。一方ドゥームズデイ・マンはどうでしょう。ボディスーツに埋め込まれた小さな体から発されるのは、虚勢と卑屈ばかり。自身がこうなった原因さえキャロルの責任だと叫んで暴れ回ります。挫折してしまったからこそ立ち上がろうとするキャロルに対し、ドゥームズデイ・マンは挫折したまま、ただその時の怒りをぶちまけているに過ぎないのです。悲劇のヴィランでありながら、その器の小ささを象徴するかのように貧弱な体が強調されます。未だアベンジャーズに復帰しないキャロルですが、ドゥームズデイ・マンにはない強さを持っていることは確かです。