アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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WOLVERINE / CAPTAIN AMERICA

マーベルユニバースには大戦時代から活躍しているヒーローが少なからず存在します。中でもキャプテン・アメリカウルヴァリンほど有名なヒーローはいないでしょう。後者は後付け設定ではありますが、大戦時代の描写は多く存在します。不殺の信念で盾を掲げるキャップと、必要ならば殺しさえ厭わないウルヴァリン。同じ地獄を見てきた2人はまるで正反対の立場と言えるでしょう。しかしその魂に流れる正義という理念は変わらず。アベンジャーズX-Menの橋渡し役として、両チームに属していたウォーバード(キャロル・ダンバース)も登場、やや未熟さの残るキャロルを通してそれぞれの道を歩む2人を見ていきましょう。
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〈あらすじ〉

アベンジャーズとして訓練に勤しむキャップとウォーバードの元へコロッサスが訪れる。恵まれし子らの学園で使用されるコンピューターチップが突然変異、調査の途中で強奪されたのだ。一方犯人グループは、恐るべき兵器の数々でウルヴァリンと対峙していた。

 

〈野生と理性〉

アベンジャーズマンションにて訓練に明け暮れるキャップとキャロル。キャロルは戦闘技術が成熟しているからこそ精神面の未熟さが目立ちますが、キャップのサポートで人一倍実力を発揮していました。そんな訓練を中断させたのは、訪問者の知らせでした。ドアの向こうにはコロッサスが切羽詰まった様子で立っています。なんとコロッサスが助けを求めているではありませんか。話を聞くと、ほんらいコロッサスは学園で使うコンピューターチップの突然変異を調査してもらおうと考えていたようです。ところがここへ来る途中、謎のヴィラン軍団によってコンピューターチップが奪われたと語ります。ウルヴァリンを投げ飛ばすほどのパワーを誇るコロッサスを倒したヴィラン軍団が欲しがったコンピューターチップとは何なのでしょうか? それはかつて、シーアー帝国の技術を用いて作られたものでした。そのため地球の技術では理解不能な未知の部分も含まれ、そこが突然変異したのではと考えられます。心得のあるものならどうとでも悪用出来るでしょう。一刻も早く取り戻さねばなりません。既にウルヴァリンが捜索を始めているようですが、話を聞いたからには無視するわけには行きません。キャップとキャロルは、コロッサスの話から犯人がSHIELDの元エージェントたちであると確信、ウルヴァリンとは違う方向から捜査を開始します。犯人を率いるのは、完璧を超える仕事をするとさえ言われたラプチャーと呼ばれる人物。強敵であることは間違いありません。数々の足取りから地下下水道まで辿り着くキャロルとキャップですが、どうやら一足遅かったようです。なんとウルヴァリンが大量の銃弾を撃ち込まれ倒れているではありませんか。傍らにはラプチャーら犯人グループが不敵の笑みを浮かべています。
f:id:ELEKINGPIT:20230625155011j:image倒れ伏すウルヴァリンと、宣戦布告するラプチャーたち。元超エリートエージェントの戦闘力は想像以上だった。

 

敵はSHIELDの最新装備で武装している上、リーダーのラプチャーは微弱ながらテレパスの使い手。相手の動きを先読みして死角から攻撃する戦法を得意としており、1対1の白兵戦では無類の強さを誇るようです。普段のウルヴァリンならばヒーリングファクターでこの程度の怪我さえ一瞬で治してしまうはずですが、今回に限ってヒーリングファクターが上手く作動しない様子。体を引きずってでも戦おうとするウルヴァリンラプチャーへダメージを与えながらも再度敗れてしまいます。残る2人も敵の連携に決定打を与えられず、逃走を許してしまいました。ここでキャップは単独での追跡を決意、戦闘不能のダメージを負ったウルヴァリンはキャロルの手でヘリキャリアへ送ることにします。猟犬のようにしつこく追いかけるキャップ。敵は地上へ、そしてヘリコプターで空中へと逃げようとしています。キャップは屋上からジャンプして追いつこうとしますが、なんとラプチャーらは赤ん坊を人質にしているではありませんか。咄嗟にアパートから攫ってきたようで、キャップが到達できない高度まで達した途端見せつけるかのように赤ん坊を落としてしまいます。親の悲鳴が響き渡ると同時にキャップは走り始めていました。常人の限界を超えた身体能力を持つキャップならば地面に激突するよりも先に追いつくことができるのです。隣のアパートまで到達するジャンプで赤ん坊を見事キャッチ、その表情には安らぎの笑みがありました。
f:id:ELEKINGPIT:20230625161146j:image赤ん坊を助け、屈託ない笑みを浮かべるキャップ。纏う星条旗と盾の意味は、敵を倒すことではなく人を助けるものなのだ。

 

敵を追跡する手段を失ったキャップは、ひとまずヘリキャリアへと戻ります。このままでは変異したコンピューターチップが悪用されてしまうでしょう。何としても敵の居場所を割り出さねばなりません。実はキャップが敵を追跡している間、SHIELDとキャロルはある方法を試みようとしていました。コンピューターチップがシーアー帝国由来のものならば、キャロルの能力で追跡できるのでは? かつてキャロルがバイナリーを名乗りホワイトホールの力を行使していた頃、キャロルのパワーはシーアー帝国に由来するものでした。現在バイナリーの力はほとんど失ってしまいましたが、残り香程度ならばまだ使用はできます。僅かなバイナリーの力を拡大し、同じ波長をエネルギー吸収能力で探索、道筋を辿るのです。この仮説は見事的中しました。どうやらラプチャーらはAIMと取引をしようとしている様子。AIMの手にコンピューターチップが渡ればより予想のつかない大事件へと発展するでしょう。ウルヴァリンのヒーリングファクターも回復し、完全復活したため早速3人で突入します。
f:id:ELEKINGPIT:20230625163634j:imageラプチャーたちが取引を始める前に突入した3人。全員の執念が結束し敵を追い詰める。

 

〈正義の殺人〉

今作で最も注目すべきポイントは、恐らくウルヴァリンとキャップの間で起こったある議論でしょう。悪人は生かすべきか、殺すべきか? ほとんどのヒーローが不殺を実行していることから結論は既に出ていると考えている方も多いでしょう。私もヒーローは不殺であるべきだと考えています。しかし今作はそんな考え方に警鐘を鳴らすようなストーリーがなされます。瀕死の重傷を負いながらも仲間に助けられたラプチャーが、新たな能力を得て今作は幕を下ろすのです。何故悪人を殺すのか? ウルヴァリンはこれ以上悪事をさせないためと答えます。再び悪事が行われたら、それだけ誰かが被害を受けているのです。そんな誰かの被害を未然に防ぐ術は無に等しいかもしれません。しかしここで悪人を殺せば確実に被害は出るでしょう。ウルヴァリンが人を殺すのは、人を守るため、正義のために殺人を犯していると言っても過言ではありません。実はアイアンマンも過去同じ理由でゴーストを見殺しにした経験が。将来起こりうるであろう悲劇を解決するには正義の殺人を犯すことが最も確実で早く終わることは確か。また懲役や禁固刑が行われても、出所までに改心していない可能性も当然考えられます。では何故多くのヒーローが不殺を誓っているのか? 答えはとてもシンプルです。悪事を働くヴィランも赤ん坊も皆等しく救うのがヒーローなのです。例え死刑囚であっても助けねばならない場面では必ず見捨てることはしません。ヒーローが救うべき対象を狭めてしまうのはあってはならないこと。誰も差別して守り続けることがヒーローの使命と言えます。そしてもう1つ、殺すということは悪人の今後の人生が永遠に失われます。もしこの悪人が改心してアベンジャーズX-Menに協力するようになったら? 誰にも分からない未来を奪うのはそれ自体が大変な罪と言えます。現代で殺人か悪とされるのはそんな理由も含まれているはずです。それがどれほど純粋な正義でも殺人は許されるべきではないでしょう。今作では正義の殺人の是非に対する結論は明確に出されませんでした。正義のための殺人は悪だが、それでは後の悲劇を防ぐことができない。史上最悪の第2次大戦を乗り越えてきたウルヴァリンキャプテン・アメリカ。成熟した正義の信念は全く違うものとなりました。果たしてどちらが正しいのか、皆さんはどう考えますか?